介護職として、転倒や急変などの緊急時の対応で大切なこと
緊急時に慌てないためにも、対応方法を知り備えておきましょう。
ご利用者の状態から得られる情報を評価/判断できる経験を重ねていきましょう!!
■執筆・専門家
・けあぷろかれっじ 代表 ・NPO法人JINZEM 監事 介護福祉士、社会福祉士、介護支援専門員、潜水士 ▶プロフィール 『介護福祉は究極のサービス業』 私たちは、障がいや疾患を持ちながらも、その身を委ねてくださっているご利用者やご家族の想いに対し、人生の総仕上げの瞬間に介入するという、責任と覚悟をもって向き合うことが必要だと感じています。 目の前のご利用者に『生ききって』頂く。 私たち介護職と出会ったことで、より良き人生の総仕上げを迎えて頂ける為のサポートをさせていただく事が、私たちに課せられた使命だと思っています。 そんな想いから、『生ききる』為の支援の実践者を養成するため『けあぷろかれっじ』を設立。 介護職による介護職の為の有志団体として、セミナーを中心に活動しています。 ご本人やご家族、介護に関係のない一般の方々の想像を超える実践を目指し、現場への提案や助言、実践を行っています。
大切なことは、日々の業務の中での経験を積み、その状況に応じた判断ができること、医療従事者との連携や必要な情報提供となります!
転倒や急変に係る対応のポイント
■転倒/転落
次いで外傷の重症度を判断することとなります。
- 1. 転倒発見
ご本人へ駆け寄り、お声掛けをするとともに状況を把握しましょう
呼吸や脈拍などの生命兆候の確認をしてください
また、発生発見時の時刻確認もしましょう
2. 応援要請
このとき、すぐにはご利用を動かさず、看護職員や介護職員へ応援要請をしましょう
3. ボディチェック、外傷の有無、痛みの確認を実施
4. ベッドや車いすなど安全な場所へ移動
5. バイタルサインの測定
その後は、ご家族や親族、保証人への事実の報告や受診の可否についての検討が重要となります。
ボディチェック前にご利用者を移動させない理由としては、骨折などしている場合、安易に動かしてしまうことで重症化してしまう可能性があるためです。
ボディチェックを行ったうえで、複数人で安全な場所に移動させることが望ましいですね。
■急変時/搬送時
初動がとにかく重要となるため、冷静に落ち着いて対応していただければと思います。
AEDや携帯酸素ボンベ等の必要機材については、どこにあるのかを日頃から把握されておくとスムーズに対応できると思います。
日頃から急変に備える準備も重要ということです。
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1. 急変発見
ご本人へ駆け寄り、お声掛けをするとともに状況を把握
呼吸や脈拍などのバイタルサインの確認をしてください
発見時の時刻確認もしておきましょう
2. 応援要請
3. 必要に応じてAEDや心肺蘇生を実施
4. 救急搬送要請
5. ご家族等への連絡
6. 必要情報の記録の立ち上げ
そのため、その判断の根拠となるバイタルサインの確認が必要となります。
バイタルサインが示す数値についての知識は、医療従事者との連携には必要となります。
緊急時に備え、介護職でも覚えておく必要があるでしょう。
対応については、優先順位というよりは、同時並行して対応が進みます。
夜勤帯などは限られた人数での対応となる場合もありますが、その手順や関わる職員については各事業所内でのマニュアルがあると思いますので、事前に確認をしておきましょう。
介護職が知っておきたいバイタルサインについて
主に「呼吸」「体温」「血圧」「脈拍」の4項目のことを指しますが、高度急性期や急性憎悪のような状態では、「意識レベル」「尿量」の6項目をバイタルサインと称することがあります。
介護現場でも、ご利用者の体調を把握するために重要な指標となります。
日頃の観察が緊急対応の備えに繋がるため、今回は介護職にとって身近なバイタルサインに関してのポイントも解説します。
■体温の計測方法と観察のポイント
そのため体温測定のやり方は、知っていると思っている方も多いかと思いますが、実は体温測定は、知っている様で知らないポイントがあります。
特に腋窩(えきか:脇の下)での計測の際、体温を測るといっても、どこの体温を測定しているのか、医療職以外は知っている人はほとんどいません。
答えは、脇の下に通っている腋窩動脈の近くの表皮の温度を計測しています。
そのため、脇の下に挟むのではなく、腋窩動脈近位の皮膚に当たっている必要があります。
介護現場の職員でも散見されますが、上から斜め下に体温計を差し入れるのでは無く、下から斜め上に差し入れ、脇の下の皮膚に触れている必要があるという事を意識して検温を正しくしましょう。
数値の判断に関しては、もちろん基準値との乖離確認が必要です。
ただし、ご利用者本人の普段の平熱も大切な基準となります。
平熱が35.0℃の方が37.0℃になる場合と、平熱が36.8℃が37.0℃になる場合では、ご本人が辛いと感じる程度に差があります。
一般的な基準値のみではなく、ご本人のいつもの状態と比較し、観察のレベルも変える必要があります。
■血圧の観察のポイント
血圧の基準値のみではなく、その方の日頃の血圧を見ながら、経時的な観察をしていく必要があります。
また例えば、日頃の血圧が160台の方で、基準値からは高血圧の状態の方でも急に100台まで血圧値が低下した場合は、異常な状態の可能性に気づく必要があります。
表情や顔色、チアノーゼという唇や指先が紫色に変色していないかなどと、血圧変化に伴う異常を察する観察のポイントもあります。
血圧は季節によっても左右され、温かい夏場は下がり、寒い冬だと上がることがあります。
入浴後も身体が温まり血圧が下がることがあります。
急な気温の変化は血圧上下のリスクを高めます。
低血圧は転倒リスクを高め、高血圧で脳梗塞や心筋梗塞のリスクを高めますので、そのような知識があると先回りした配慮もできるでしょう。
介護職としては、普段の様子をいかに把握できるか、また知識を携えているかが肝要となりますので、覚えておきましょう!
■血中酸素飽和度の基礎知識
「血中酸素飽和度」は一般的にパルスオキシメーターという医療機器で計測した「経皮的動脈血酸素飽和度」を指します。このパルスオキシメーターでは脈拍の測定もできます。
表記や呼び名がいろいろとあるため、注意が必要です。
特に救急隊員など、医療用語を略語で聞いてこられる場合があります。
昨今では新型コロナウイルスの流行もあったため、重症度評価にパルスオキシメーターの利用があらためて注目されたたため、知っておくとよいでしょう。
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【SPO2】これなんて読むの!?どういう意味?
読み:エスピーオーツー(saturation=飽和度/percutaneous=経皮的/O2=酸素)
略名:サチュレーション(サットやサーチ、サーチレーションという方もいます)
意味:動脈血液中の酸素飽和度
この数値が低下すると呼吸苦等の症状が疑われる
正常値:99%〜96%
異常値:95%以下(持病のある方や喫煙者は、平常時飽和度が95%以下の方もいらっしゃいます)
異常値以下に数値が下回る場合、救急搬送の可能性が出てくる。
搬送時はしっかりと情報共有を!
適切な処置に繋げられるように、医療従事者が求めるであろう情報を事前に確認しておく必要があります。
その情報についても解説しますね。
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【搬送の際に必要な情報】
1.日中の様子やご本人のADL等の情報(介助量等)
2.最終排便
3.食事量
4.バイタルサインなどの数値
5.ご本人の住所、ご家族への連絡について
6.発見時の状況等(いつから異常な状態だったのか等)
7.かかりつけ医、搬送先
上記のような情報が必要となりますので、救急隊員が到着するまでには情報を集められておくとよいと思います。
繰り返しになりますが、情報収集も含めて、対応については、お一人での対応は大変かと思います。
複数人での役割分担を決めて対応するようにしましょう。
まとめ/いざというときのために具体的なイメージを
急な対応は、慌てずに冷静に対応できるよう日頃から心の準備、知識の準備の具体的なイメージをしておきましょう。
お役に立てれば幸いです。
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・けあぷろかれっじ 代表
・NPO法人JINZEM 監事
介護福祉士、社会福祉士、介護支援専門員、潜水士