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孫から祖父母への暴言|虐待未満の事例に対する介護職員の対応方法を解説!

孫から祖父母への暴言|虐待未満の事例に対する介護職員の対応方法を解説!

利用者さんにとってお孫さんは大切な存在です。そのためお孫さんからの暴言や暴力については、利用者さん自身も周囲に報告をするか迷ってしまうもの…。訪問介護などでお孫さんにも会う機会が多いヘルパーさんもそのような状況を目にするものの対応方法に悩んでいるはず。孫からの暴言・暴力を発見した際の対応方法を専門家が解説します!【執筆者/専門家:古畑 佑奈】


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本日のお悩み:お孫さんが利用者さんに暴言…どのように対応すれば?

訪問介護事業所でヘルパーとして働いています。
私が担当している利用者さんで、家族から辛い接し方をされてしまっている方がいます。

パッドが犬猫などのペット用だったので、「あれ?」と違和感を感じたのがきっかけですが、以前たまたまご家族がいるときに訪問したところ、小学生くらいのお孫さんが利用者さんに暴言を吐いているところを見てしまいました。

子どもが暴言を言うということは、ご家族も普段から言っているのではと思ってしまいます。

責任者に相談したところ、その程度で虐待というには難しいということでした。
「虐待とまではいかないけど…」というとき、どうしたらいいでしょうか?

高齢者虐待の定義はご存知ですか?

執筆者/専門家

古畑 佑奈

https://mynavi-kaigo.jp/media/users/19

社会福祉士、精神保健福祉士、介護支援専門員 特別養護ホーム生活相談員、訪問介護事業、地域包括支援センターにて介護支援専門員の経験あり。 現在は、デイサービス管理者として勤務。 地域でのネットワーク活動では事務局として「死について語る会」や「3大宗教シンポジウム」など幅広いテーマの勉強会やイベントを企画・運営の経験がある。 すきな食べ物はラーメン。

ご質問ありがとうございます。
質問者さんが異変に気が付き、そのままにせずこのように質問をしてくださったことが、 利用者の方の人権を守るためにとても大切な行為です。

高齢者虐待防止法を確認してみましょう!

厚生労働省は、高齢者虐待防止法による「高齢者虐待」の定義として、次の行為を定めています。

ⅰ 身体的虐待:高齢者の身体に外傷が生じ、又は生じるおそれのある暴力を加えること。

ⅱ 介護・世話の放棄・放任:高齢者を衰弱させるような著しい減食、長時間の放置、養護者 以外の同居人による虐待行為の放置など、養護を著しく怠ること。

ⅲ 心理的虐待:高齢者に対する著しい暴言又は著しく拒絶的な対応その他の高齢者に著しい 心理的外傷を与える言動を行うこと。

ⅳ 性的虐待 :高齢者にわいせつな行為をすること又は高齢者をしてわいせつな行為をさせ ること

ⅴ 経済的虐待:養護者又は高齢者の親族が当該高齢者の財産を不当に処分することその他当 該高齢者から不当に財産上の利益を得ること。


上記から、暴言はⅲの心理的虐待となることがわかります。

不適切なケアは虐待に繋がる

質問を拝見すると、直接そのような言葉をかけていたのは小学生のお孫さんだったのですね。

そのご家庭の状況、お孫さんの言葉に対して養護者の方がどのように対応されているのかなど、質問文だけでは分かりかねますが、パッドがペット用だったところから推測すると、不適切なケアが行われている可能性が高いのではないかと感じました。

不適切なケアは、放置してしまうと「ⅱ 介護・世話の放棄・放任」などに繋がり、虐待となることが多々あります。

チームに共有し、迅速に対応しましょう!

まずは、事実確認をしましょう

一度責任者の方に相談されたとのことですが、私は早急に事実の確認をするべきだと考えます。

その利用者さんのお宅へ、他にケアに入っているヘルパーさんはいますか?いる場合は、気になるところがないか聞いてみましょう。

そして事実を集めてもう一度、責任者の方に相談し、「虐待というには難しいといっても、この状況をそのままにしたままでいいのか不安に思う」という旨を伝えましょう。また、ケアマネジャーさんは状況を認識しているのか、認識している場合はどのように判断しているのかを確認してみてください。
もし、ケアマネジャーさんが状況を認識していないのであれば、まずは情報共有をするべきです。

日頃から言えることですが、チームで、ケアの方向性を合わせることが重要になってきます。
その方に限ったことではありませんが、普段のケアに入る際も、変わったことがあれば記録に残し、その都度、責任者の方に相談してみてください。

利用者さんを守るための行動を

利用者の方は、困っていたとしても、ご自身で声を上げられない方がたくさんいらっしゃいます。特に、それが自身のお孫さんとなるとなおさらです。
そして私たち現場の職員には、利用者の方々の権利を代弁する役割があります。

繰り返しになりますが、質問者さんが感じた違和感を共有することは、利用者の方の権利を守るために非常に重要です。どうか、利用者のみなさんが安心して日々を過ごせるよう、これからも行動し続けていただければと思います。

まとめ:事実確認・チーム連携・行動することが大切!

ここまでお孫さんから暴言や暴力などを受けている利用者さんへの対応方法を古畑先生に解説いただきました。

いかがだったでしょうか。家族の問題であるため、難しいと感じやすい事例ですが、とにかく大切にしたいことは「利用者さんのために何ができるか」という部分です。

利用者さんを暴言や暴力からまもるためにも「事実確認・チーム連携・行動すること」を忘れずにこれからも介護業界で働き続けてください。

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社会福祉士、精神保健福祉士、介護支援専門員

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