介護職員・並木マイの ほっこり成長日記 ~転職して、介護の仕事はじめました~
■監修者
作:伊藤 美穂
編集:株式会社サイドランチ
マンガに登場する「下顎呼吸」と、看取り期について解説します
執筆者
茨城県介護福祉士会副会長 特別養護老人ホームもくせい施設長 いばらき中央福祉専門学校学校長代行 NPO法人 ちいきの学校 理事 介護労働安定センター茨城支部 介護人材育成コンサルタント 介護福祉士 社会福祉士 介護支援専門員
■下顎呼吸(かがくこきゅう)とは?
マイさんは下顎呼吸という言葉に体が固まってしまったようですね。
では、下顎呼吸(かがくこきゅう)について確認しましょう。
下顎とは「したあご」のことです。
亡くなる前に下顎呼吸が起こる仕組みとは?
人は亡くなる数日前から次第に血圧が低下し始めます。これは心臓のポンプ機能が弱くなっていくからですね。
すると胸をつかった呼吸も低下するので、次第に「したあご」を使った呼吸に切り替わります(したあごを上下させ、口をパクパクあえぐような努力性の呼吸)。
この状態を下顎呼吸(かがくこきゅう)と言い、下顎呼吸に切り替わると呼吸回数が極端に減少します。
そして心拍数も低下し始め、心停止に至る。つまり最期を迎えられるということになります。
下顎呼吸は全ての人に出現するのではなく40〜55%程度と言われているそうです。
看取りを迎える人の約半数にあらわれる
私は今まで4施設の特養の施設長をさせていただきましたが、概ね年間10名程度のお看取りを迎えられる方がいます。
やはり約半数くらいに下顎呼吸が見られます。
その他の方は、特に目立つような兆候はなく、家族に囲まれながら眠るように最期を迎えられる方もいますが、思ったより早く意識を失うように最期を迎えられる方もいます。
看取り期は1週間~半年程度
お看取りの期間に関しては、主治医の判断がスタートになります。
早い方で1週間、長い方では半年ほどのお時間があった方もいます。
しかし、長かった方は、ご家族の希望で、点滴などの延命治療を続けた方であって、ちょっと無理をしていたのかもしれません。ご本人も少し辛そうだったなという記憶もあります。
■看取りは、尊い人生の最後をともに過ごすこと
死の徴候に気づき、最期をサポートするのが介護の専門性
マンガの冒頭では、将棋の大好きだった杉山さんが最近元気がなくなったとの描写からスタートしています。
この状態の前には、食欲の低下、活動の低下、排尿が少なくなるなどの兆候が見られていたのではと推測します。
「PPK」、つまりぴんぴんころりで最期を迎えたいという方は多いと思いますが、高齢であればあるほど実際はこのような兆候があって最期を迎えていくことがほとんどではないでしょうか。
この兆候に気がつき、早期に家族との時間をつくっていくこと、ご本人の望む最期をサポートしていくことが介護の専門性だと思います。
下顎呼吸に立ち会ったときの受け止め方
「下顎呼吸」、自分がその瞬間に出会ったらどうしようと思いますが、その過程を人間の体のメカニズムとして整理すれば論理的に受け止めることができるのではないでしょうか。
ご利用者さんとの別れは辛いですよね。
まして、元気な姿を知っていればその変化を受け止められず心を痛める介護職員も多くいると思いますし、私もその一人でした。
しかし、「諸行無常=永遠に同じものはこの世にない」と仏教の教えもあります。尊い人生の最期に携わらせていただいたご縁と思って前を向けばこんなにやりがいのある仕事はないと思います。
私たちの接する「死」は異常なことではなく自然の摂理です。
ささえるラボ編集部です。
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