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家族の変化に気づく夏|お盆の帰省で確認したい親の介護サイン5つ!

家族の変化に気づく夏|お盆の帰省で確認したい親の介護サイン5つ!

お盆の帰省は、親の介護が必要かどうかを見極める絶好のタイミングです。介護の専門家の実体験をもとに、家族の変化に気づくための5つのチェックポイントを紹介します。「うちの親はまだ大丈夫」と思っている方もぜひご覧ください!【執筆者/専門家:伊藤浩一】


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本日のお悩み:両親に介護が必要か、お盆の帰省で確認したい!

お盆休みに、実家へ帰省をしようと思っています。普段遠方でなかなか会うことができないので、帰省をした際に、両親に介護が必要そうか確認をしたいと思っています。

どのような観点で確認すればよいか教えてください。

実例をもとに、ご両親の状態を確認しましょう!

執筆者/専門家

伊藤 浩一

https://mynavi-kaigo.jp/media/users/14

茨城県介護福祉士会副会長 特別養護老人ホームもくせい施設長 いばらき中央福祉専門学校学校長代行 NPO法人 ちいきの学校 理事 介護労働安定センター茨城支部 介護人材育成コンサルタント 介護福祉士 社会福祉士 介護支援専門員 MBA(経営学修士)

ご質問ありがとうございます。

お盆の帰省を利用して、ご両親の状態(介護が必要か?)を確認したいとのこと。最近ありました私の実体験をもとにご質問にお答えしたいと思います。

【伊藤先生の実体験】父が要介護になった日|介護職として、そして子として私が感じたこと

久しぶりの帰省

今年のゴールデンウィーク、久しぶりに実家へ足を運びました。 とはいえ、実家は私の家のすぐ隣。玄関を出て、ほんの数十歩の距離です。
それでも、普段の私は忙しさを理由に、ほとんど顔を出していませんでした。

「何かあればすぐ行ける」「いつでも会える」そんな安心感が、かえって足を遠ざけていたのかもしれません。 でも本音を言えば、「いつまでも元気でいてほしい」という願いと、「親の変化を直視したくない」という葛藤が、心の奥にあったのだと思います。

父の介護認定|突然始まる介護の現実

そんな私のもとに、父が要介護2の認定を受けたという知らせが届いたのは、4月末のこと。まさに青天の霹靂でした。
内臓系の病気を発症し、入院を余儀なくされたことで、体力や筋力が低下したのが原因です。

自分の父が「介護を受ける側」になったと知った瞬間、胸の奥にズシンと重いものが落ちるような感覚がありました。

これって介護が必要かも?家族の状態を確認する際に意識したいポイント5選

お盆 帰省 両親 介護

父が要介護認定を受けてから、私はようやく父の姿を冷静に見るようになりました。 専門職としての目線で、どこまで自立しているか、どんな支援が必要かを観察しようと心がけました。

その際に、特に注意したのは以下の5点です。

1.におい(清潔感)
2.足の動き
3.モチベーション(やりたいことがあるか)
4.言動の整合性
5.同居者の声に耳を澄ます

1.におい(清潔感)

心身の状態が低下すると、清潔感への意識が薄れ、体臭や衣類のにおいに現れることがあります。

父の様子を観察したところ、気になるにおいはなく、少し安堵しました。 とはいえ、においは状態変化の大きなサインとなるため、今後も注意深く見守る必要があります。

2. 足の動き

廊下を歩く姿や椅子から立ち上がる動作を注意深く見ると、以前よりスピードが落ち、ふらつきが目立ちました。

父は気丈に「なんでもない」と振る舞っていましたが、その言葉の裏には「子どもに弱さを見せたくない」というプライドが感じられました。

3.モチベーション(やりたいことがあるか)

DIYやインターネット検索、読書が趣味の父。自宅には、父が趣味で建てたログハウスがあります。
入院中は「好きなことができない」と嘆いていましたが、その言葉は裏を返せば「やりたいことがある」というモチベーションの表れでもあります。

退院後、父の最初の目標は、自分の居場所であるログハウスに自分の足で行くことでした。

4.言動の整合性

認定調査員の方から「季節を間違えて話していた」と聞き、不安を感じました。 そこで、会話の中で話の前後やつじつまが合っているか、話の根拠が明確かを注意深く確認しました。

父は新聞やニュースをよく見て自論を語るのが好きなので、最近のトランプ大統領の話題を振ってみたところ、比較的明確な返答があり、少し安心しました。

5.同居者の声に耳を澄ます

そして何より大切だったのが、同居する母の話をよく聴くことでした。 父は私の前では普段どおりを装いますが、それは父の優しさであり、プライドでもあると思います。

一方、母は日常の変化に気づいています。

「夜中に何度もトイレに起きて、私も眠れないの」
「テレビばかり見て、話しかけても返事がないことがある」

こうした母の声から、日々の困りごとや母自身の疲労感を確認することに努めました。 「介護が始まる」ということは、父だけでなく、母の人生にも大きな変化をもたらすのだと、改めて実感しました。

介護は突然やってくる、気づいたときが始まりのタイミング

今回の出来事を通して、私は介護職としてだけでなく、子どもとして、家族として大切なことに気づきました。

それは、「変化に目を背けない勇気」です。

親の老いを認めることは、子どもにとってとてもつらいことです。だからこそ、「元気なままでいてほしい」という願いが強くなり、変化に気づかないふりをしてしまうことがあります。

けれど、介護はいつも突然始まります。 だからこそ、「あれ?」と思ったその瞬間に、変化を受け止め、備えることがとても大切なのだと、あらためて実感しました。

最後に:介護を「突然のこと」にしないために、できることを始めましょう!

介護職である私ですら、父の要介護認定を「他人ごと」ではなく、「家族の現実」として受け止めるまでに時間がかかりました。

けれど、それはきっと誰にでもある、自然な反応なのだと思います。もし今、この記事を読んでくださっている方が「うちの親はまだ大丈夫」と感じていたとしても、この夏、お盆などの機会に、ぜひお伝えした5つのポイントを参考に、ご家族の様子を少しだけ深く見てみてください。

そこに、これからの人生を支えるヒントが隠れているかもしれません。気づいたときが、始まりにできるチャンスです。私自身もこれから、「近くにいるけれど見えていなかった」両親に、ちゃんと向き合っていこうと思っています。

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この記事のライター

茨城県介護福祉士会副会長
特別養護老人ホームもくせい施設長
いばらき中央福祉専門学校学校長代行
NPO法人 ちいきの学校 理事
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