本日のお悩み
特養の管理職をしています。
半年ほど前に他事業所から異動してきた職員について悩んでいます。
その職員自体は経験もあり資格も持っているのですが、どうしても覚えられない、自分で判断することができません。
また、指導したこともすぐに忘れてしまい、あまり覚えていないことが多いです。
一つ作業が終わると誰かに「次どうしたらよいですか」と必ず聞きます。
なので、指導職員等から相談された時私からは、
「自分で考えるようにしてもらって下さい。指示を仰いでもよいですが、必ず自分の中での答え(次の行動予定)を考えてから指示を仰ぐようにしてもらってください」
と伝えるのですが一向に改善されません。
本人としてはやる気もあり出来ているという感覚はあるらしいですが、周囲から見るとそうではありません。
私の勤める施設では通常夜勤を3~5回ほど指導職員と同行して一人立ちしてもらっています。
今その職員は一向に上記のようなことが改善されず、通常のペースを大きく上回って指導同行に入っています。
この間は夜勤中に同じようなことがあり、自分で考えるよう促す意味で指導職員が「自分一人だったらどうする?」と聞くと、
「早出職員が出てきてから聞きます」と答えたようで、自分で考えるということがあまりにも出来ず、成長を促すのは難しいのかもしれないと思ってしまいました。
利用者に対する危険性が高いミスも多く、もし一人で入るとなると事故リスクが高くなるとともに、未遂行業務が多くなり早出職員、日勤職員への負担が増加すると思っています。
職員からも、現状では不安で夜勤に一人では入れられないという声があがっています。
指導職員や一緒に働く職員の不満が大きくなって他職員の退職に繋がったり、利用者の事故につながることを恐れています。
無理にでも一人立ちさせるのか、それとも一人で業務をしてもらうことをあきらめた方が良いのか悩んでいます。
法人の方針としては一日でも早く一人立ちさせるべき、だということですが個人的には諦めモードでいてしまっています。
相談者:じつ さん
ジョブ型雇用も一つの方法では?
茨城県介護福祉士会副会長 特別養護老人ホームもみじ館施設長 いばらき中央福祉専門学校学校長代行 介護福祉士 社会福祉士 介護支援専門員
ご質問ありがとうございます。
ご質問内容からしてとても教育熱心、且つ職員育成のサポート体制がしっかり構築されている法人さんと感じました。
素晴らしいです。
また、法人方針の文章から推測すると、職員ひとりひとりを平等に考え、みんなが一人立ちできるよう支援をしていくことを大切にされているようですね。
これも素晴らしいと思いました。
■「なんでできないの?」という体制になっていませんか?
さて、ご質問の件です。
自分で考えることが苦手な職員への教育の悩み。私も経験があります。
しかし、文面から私も質問者さん同様、法人の考え方もありますが、このままの体制で教育し、目標の一人立ちを支援していくのは難しいと感じました。
つまり「なんでできないの?」という体制になっているのです。
「なんでできないの?」の前提は、職員(おそらく正規雇用)は夜勤ができなければならない。ということではないでしょうか?
そして、その夜勤は、人数も少ない為、自分で状況判断して行動できることが求められる。
それが「自分で考える」ということなのでしょう。
■日本で主流の「メンバーシップ型雇用」
日本では、「先に人を採用してから仕事を割り振る」というメンバーシップ型雇用が主流です。
総合的なスキルが求められ、一定水準をみんなに平等に求められます。
そういった習慣の中で、「経験も資格もあるんだからみんなと同じにできるはず」と雇用したがうまくいかなかった。
まさに夜勤は総合的スキルが求められる業務ですよね。
事業所をあげて、できる限りの教育をしたにもかかわらず難しい=「なんでみんなと同じにできないの?」に陥っていったという感じではないでしょうか?
■できることを任せ、専門性を高める「ジョブ型雇用」
ここでご提案です。
「なんでできないの?」から「できることはなんだろう?」
に切り替えてみてはいかがでしょうか?
メンバーシップ型雇用に対して「ジョブ型雇用」があります。
これは「仕事に対して人が割り当てられる」という考え方で欧米型雇用とも言われています。
もしかすると、この職員さんは総合的なスキルが求められる仕事は苦手なのかもしれませんね。
としたら、できる仕事で力を発揮してもらい、その専門性を高める方針に転換したらいかがでしょうか?
もちろん、就業条件が変わる場合は、就業規則と照らし合わせ、本人と働き方についてしっかりと話さなければなりませんが、長期的にみれば本人にとっても法人にとっても良いことかもしれません。
■一人立ちは誰の視点か?
「一人立ち」
これは、誰の視点なのか?と考えてみてはどうでしょう。
つまり、法人の視点であれば、法人の求める一人の職員像とそのスキル、能力が認められた時「一人立ち」なのでしょうね。
しかし、そもそも人は千差万別、個々が違って当たり前なんだから、本人視点で自立してできる仕事があることも「一人立ち」と言えるのではないでしょうか?
■最後に
人口減少社会により日本は人手不足へとどんどん進行しています。
そして、介護こそ業務を分解、明確にし、分業制にすることがより求められていますよね。
「ジョブ型雇用」の観点を是非取り入れてみてください。
教育熱心な貴法人のこと、人材マネジメントにおいて更に大きな成果があげられると確信します。
茨城県介護福祉士会副会長
特別養護老人ホームもくせい施設長
いばらき中央福祉専門学校学校長代行
NPO法人 ちいきの学校 理事
介護労働安定センター茨城支部 介護人材育成コンサルタント
介護福祉士 社会福祉士 介護支援専門員 MBA(経営学修士)