介護の「夜勤専従」ってどんな働き方?交代制との違いや意外なメリットに注目!
介護老人福祉施設(特養)や有料老人ホームなどの入居型の介護施設で働く介護職には、夜勤がつきものです。
多くの施設では、交代制のシフトを組んで、各従業員に月に数回の夜勤が回ってくるようにしています。
しかし施設によっては、夜勤専門で働く夜勤専従の介護職を雇用しているところもあります。
夜勤というとしんどいイメージがありますが、夜勤専従には多数のメリットもあります。
そのため、介護職のなかには、あえて夜勤専従を選ぶ人もいるようです。
今回は、その働き方や一般的な交代制との違い、メリット・デメリット、どんな人に向いているのかなど、夜勤専従について知っておきたい基礎知識を紹介します。
夜勤専従の働き方
夜勤専従は、日勤と夜勤が混ざった一般的な交代制の勤務スタイルと比べると、勤務時間、出勤日数、仕事内容に違いがあります。
それぞれどのように違うのか、詳しく見ていきましょう。
■勤務時間
勤務する施設にもよりますが、夜勤専従では、夕方4時から翌朝の9時頃まで、1回に16時間ほど勤務するのが一般的です。
労働基準法では1日の勤務時間は原則8時間と定められていますが、「変形労働時間制」というルールを適用すれば、一定期間内の勤務時間を柔軟に調整することができます。
介護職の夜勤専従は、「1カ月の勤務時間を平均して、1週間当たりの時間が40時間以内であればよい」とする1カ月単位の変形労働時間制に則っています。
■出勤日数
一回の勤務時間が長い分、夜勤専従の出勤日数は、週に2~3回、月に10日程度と、一般的な交代制の勤務スタイルより大幅に少なくなります。
■仕事内容
夜勤でも、勤務時間中に利用者が食事や排泄をする際にその介助が必要になる点は日中と変わりません。
異なるのは、歯磨きなどの就寝準備、着替えなどの起床準備の介助がある点と、夜間に利用者が寝ている間の見回りがある点です。
なお、夜勤専従では日勤が一切ないため、体操やゲームといったレクリエーション対応をすることはありません。
夜勤専従のメリット
夜勤専従には日勤にはないメリットがあり、それを理由に夜勤専従を選ぶ人も少なくありません。
主なメリットを一つずつ見ていきましょう。
■収入が高い
もっともわかりやすいメリットは、収入の高さでしょう。
夜勤専従は、基本給に割増賃金や夜勤手当てがプラスされるため、同じ時間を日勤メインで働くより収入が高くなるのです。
深夜、時間外は25%以上の割増賃金が発生
割増賃金とは、事業所に労働基準法で支給が義務づけられているものです。
事業所は、従業員が午後10時~午前5時に働いた場合には、時間給(基本給)の25%以上の「深夜割増賃金」を、1日8時間の法定時間外に働いた場合には、時間給の25%以上の「時間外割増賃金」を支払わなければなりません。
深夜勤務と時間外勤務が重なる時間帯には、割増率は50%以上になります。
労働基準法で定められた以上の割増賃金を支払えば良いため、実際にはこれ以上の金額を支給される場合もあり、金額は事業所によって異なります。
また、「固定残業代(みなし残業)」といって、一定時間分の割増賃金があらかじめ月給に含まれる制度を採用しているケースもあります。
施設によってはさらに夜勤手当てが出る場合も
施設によっては、割増賃金とは別に、事業所から1回につき決まった額の夜勤手当てが支給される場合があります。
夜勤手当ては、法律で定められた制度ではありません。
割増賃金を支給して労働基準法を守っていれば、夜勤手当を支給するかどうかは任意です。
なお、紛らわしいのですが、一般的には、前出の割増賃金も夜勤手当てという呼び方をされることがあります。
給与明細を確認する場合は、注意をして表記と内容を見ましょう。
ひと月の夜勤手当ての目安額は約6万円
日本医療労働組合連合会の調査によると、2交代制の介護施設で働く正規職員の場合、1回当たりの夜勤手当て(割増賃金も含む)の平均額は6,125円です。
夜勤専従で勤務日が月10回なら、月当たりにすると6万1,250円になります。
(出典:日本医療労働組合連合会「2019年 介護施設夜勤実態調査結果」)
上記の金額はあくまで一例ですが、日勤メインの勤務スタイルに比べると、夜勤専従では収入が大幅に高まる傾向があることは確かです。
実際に求人サイトで夜勤専従の介護職の募集を見ると、30万円以上の月収を提示している施設が少なくありません。
割増賃金や夜勤手当ての支給方法はさまざまで、手当て分として一律額が払われるケースもあれば、割増賃金のみのケース、割増賃金+一律額の手当てというケースもあります。
また、非正規雇用では、日給に含まれるケースもあるようです。
夜勤専従の求人に応募するときには、必ず割増賃金と夜勤手当ての支給方法や金額を確認するようにしましょう。
■生活リズムをキープしやすい
通常、入居型の介護施設で働く介護職は、日勤をしながら月に4~5回の夜勤をこなさければなりません。
勤務の時間帯が異なる日勤と夜勤が混ざると不規則な生活になるため、睡眠のリズムが崩れやすくなり、疲れがたまりがちになります。
一方、夜勤専従は、活動時間帯が昼夜で逆転するものの、毎回同じ勤務時間で働けるため生活リズムをキープしやすいのです。
■日中の時間を有効活用できる
夜勤は勤務時間が長いため、夜勤明けは休日の扱いになるのが一般的です。
そのため夜勤専従は通常の勤務より勤務日が少なく、休日が多くなります。
日中の多くの時間が自由になるので、副業や通学、趣味の活動と両立することも可能です。
■自分のペースで働ける
夜間は眠っている利用者がほとんどなので、一般的な入居型の介護施設では現場に配置する従業員の数を日中より少なくしています。
ワンフロアを一人の介護職で担当するケースも珍しくありません。
人数が少ない分負担は増しますが、人間関係のストレスが少なく、自分のペースで働きやすいと感じる人も多いようです。
夜勤専従のデメリット
夜勤専従にはメリットが多い一方で、デメリットもあります。
次に、主なものを紹介します。
■勤務時間が長くハード
夜勤専従の勤務時間は、1回に16時間ほどの長時間勤務になるうえ、一人だけで利用者の身体介護にあたらなければならないケースが多く、相当の体力が求められます。
また、夜勤専従では1回の勤務で1~2時間程度の休憩・仮眠時間が設けられているのが一般的ですが、利用者からの呼び出しや排泄介助などが複数回発生すれば、休憩をとれないこともあります。
■無資格では採用されにくい
先述の通り、どの介護施設でも夜間は少人数体制で、なかには一人の介護職に現場を任せる施設もあります。
夜勤専従の介護職には、利用者の体調の急変や転倒といった万一のリスクの際にも、一人で臨機応変に対応できる判断力が求められます。
無資格で経験の少ない初心者の場合、夜勤専従の介護職として採用される可能性は低いようです。
採用の基準は施設によってまちまちですが、夜勤専従で採用されるには、介護職員初任者研修修了以上の資格を持っていて、介護の実務経験があることが望ましいでしょう。
国家資格である介護福祉士があると、専門の知識とスキルを身につけた介護のプロとみなされるため、より有利になります。
■昼夜逆転してしまう
夜勤専従では、生活リズムは安定するものの、昼夜が逆転した夜型の生活になります。
なかには、夜型生活が体に合わないという人もいるかもしれません。
向いているのはこんな人!
では、夜勤専従に向いているのは、どんな人なのでしょうか。
まず必須条件として、十分な体力と、少人数の体制でも対応できる現場経験やスキルが求められます。
それらの条件を満たしたうえで、できるかぎり収入を上げたい人、集中的に効率よく働いてプライベートの時間をたっぷりと確保したい人には、夜勤専従の働き方はおすすめです。
昼間は学校に通いたい人、日中の仕事とダブルワークをしたい人にも適した働き方といえるでしょう。
また、子育て中の介護職のなかには、子どもの学校の行事に参加しやすいという理由で夜勤専従を選ぶ人もいるようです。
ただし、夜間や早朝に家を空けている間にパートナーや両親に子どもの世話を任せられることが前提になります。
メリット・デメリットを知ったうえで、夜勤専従も選択肢の1つに
今回紹介したように、夜勤専従には、いくつかデメリットもあるものの、メリットもたくさんあります。
勤務時間の長さや少人数体制で責任を持って働くことが苦にならない介護職にとっては、魅力的な働き方といえそうです。
介護業界での転職を考えるときには、夜勤専従での勤務も検討してみるといいでしょう。
ただ、無資格で経験が浅いうちは、採用される可能性は高くありません。
将来は夜勤専従で働いてみたいと思っている人は、まずは十分な経験を重ねて介護職員初任者研修などの資格を得ることを目指しましょう。
コラム:ぶっちゃけ、介護職の夜勤専従はきつい?専門家が解説!
執筆者
茨城県介護福祉士会副会長 特別養護老人ホームもくせい施設長 いばらき中央福祉専門学校学校長代行 NPO法人 ちいきの学校 理事 介護労働安定センター茨城支部 介護人材育成コンサルタント 介護福祉士 社会福祉士 介護支援専門員
ご質問ありがとうございます。
「夜勤」をやったことない人は未知の領域。不安が募りますよね。
実は私、介護福祉士養成校出身ですが、就職してはじめて夜勤をやりました。
比較的、睡眠はしっかりとる派なので、夜間働く自分を知らない初夜勤は緊張したことをいまでも覚えています。
夜勤16時間勤務が普通の時代、慣れてきたらそのまま遊びに行くことも!
しかし、やってみれば体も慣れてきますし、私の現役時代は16時間夜勤(だいたい16時から翌朝9時まで)が主流でしたので、次の日は明けで休みのようなもの。
若い時はそのまま遊びに出掛けてました(笑)。
また、夜勤明け連休なんていったら3連休みたいなものなので、よく旅行にも行きましたね。
平日は空いてるし、安いし最高です。また、夜勤回数は、月5回くらいが自分はペース的に安定していました。
今は、8時間夜勤(22時から翌朝7時くらい)が主流ですね。私たち16時間で育った世代は、「明け」の時間が魅力でした。
夜勤手当も大きな魅力!
しかし、若い世代からは16時間という勤務時間が長すぎて苦痛だという意見もあり(体も楽)、徐々に時代は8時間にシフトしてきたと思います。
さらに、夜勤は夜勤手当も魅力です。
当時は7,500円くらいでしたか・・、今は1万円以上なんて事業所さんもありますよね。5回もやれば約5万円、これも大きい!
■専門家・伊藤さんが考える、夜勤のメリット・デメリット
自分のペースや働き方が、夜勤に合っているか?が大切
ということで何が言いたいかと言いますと、、
自分の生活ペースや働き方が夜勤専従にあってれば良いし、あわなければやめた方が良いというだけではないでしょうか?
つまり、自分の感じ方次第だと思います。
前述も含めて「夜勤専従」のメリットデメリットをまとめてみましょう。
<メリット>
・日中の時間が取れる=ダブルワークも可能
・人に会わず仕事ができる。
・回数が多ければその分夜勤手当てがもらえる。
<デメリット>
・生活リズムが人と異なる
・他の職員とコミュニケーションが図れない
・日中のご利用者の様子がわからない
■夜勤専従の介護職員に対して、事業所側はどう思っているのか?
夜勤の人員は必ず確保しなければならない
事業所としては、夜勤者は必ず確保しなければなりませんが、担い手が不足している現状があります。そのため、夜勤専従でも働いてくれるのであれば助かります。
ほとんどコミュニケーションを取れない点は不安
見守りセンサーなどの導入も進んでいる
一方で不安もあります。
それはほとんどコミュニケーションが図れないことです。
日中の状況がわからない人に夜勤を行なってもらうリスクはないのか?
そのため、センサー、電子記録の導入など、夜間の業務を少しでも省力化し、誰でも働ける環境を整えることも大切だと思います。センサーの活用が定着している施設であれば、夜間の巡回も少なく業務負担も少ないのではないでしょうか?
■自分の意志と、働く事業所の環境を確認しよう!
ということで「夜勤専従」で働くかどうかは、まずご自分がどう生活したいのか?との整合性を図ってもらうとともに「夜勤専従職員」をどう受け入れているのか?働く施設の環境を確認することが大切だと思います。
ご参考になれば幸いです。
ささえるラボ編集部です。
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