マイナビ福祉・介護のシゴト
1人で16名、6時間休憩なしの入浴介助…もう限界です

1人で16名、6時間休憩なしの入浴介助…もう限界です

【回答者:伊藤 浩一】第三者を頼ることもご利用者を守る術(すべ)


本日のお悩み

入浴介助専従のパートとして週に5日勤務している介護福祉士です。

最初の契約上では1日4時間入居者を8名入れる、となっていました。
ですが、人が辞める度に「あなたがフォローするように」と言われ残業が続き、今は1人で16名6時間休憩無しでやっています。
何度も施設に掛け合っていますが「人を募集しても来ない」と言われ何も対応してくれません。

入浴室に浴槽が2個ありますが1人で2人介助の方を同時に2名ずつ無理やり入れなければ6時間で16人入れきれません。
本当に無茶な介護をしており利用者に申し訳なく、またこちらの精神的身体的負担も物凄いものです。

大量募集してひとりあたりの契約上の4時間をも減らす、と脅されます。
減らされるくらいなら残業して頑張るしかありません…。
施設側もそう納得させたいのだと思います。

相談できるところがなく、とても追い詰められてます。
6時間風呂に籠ることを考えると前の日の夜から毎日身震いしています。

どうかいい手だてを一緒に考えていただきたいです。
よろしくお願い致します。

相談者:つかさ さん

第三者を頼ることもご利用者を守る術(すべ)

伊藤 浩一

https://mynavi-kaigo.jp/media/users/14

茨城県介護福祉士会副会長 特別養護老人ホームもみじ館施設長 いばらき中央福祉専門学校学校長代行 介護福祉士 社会福祉士 介護支援専門員

ご質問ありがとうございます。
「1人で16名6時間休憩なしの入浴介助」これは過酷すぎます。
入浴介助は、熱気のこもる浴室で、体力も使います。
週5日、休日出勤もあるとなれば、体や心を休める間もありません。

さらに、「1人で二人介助の方を同時に2名ずつ無理やり入れなければ6時間で16人入れきれません。」とのこと。
こんな介助をしていては、いつ重大な事故がおきてもおかしくはありませんよ。

そして、「大量募集してひとりあたりの契約上の4時間をも減らす、と脅されます。」との記述。
つまり、労働者としての配慮もない劣悪な環境で、労働条件の圧縮を盾に脅されながら、労働を強要されている状況ですよね。

所管の行政機関へ、すぐ相談を

結論です。
転職を覚悟されて所管の行政機関(介護保険課等)に相談へ行くことをオススメします。

心配なのは、質問の文脈から、「辞める、転職」の文字が出てこないということです。
もちろん経済的な理由もあるとは思いますが、この劣悪な環境で現仕事を継続している理由は、「利用者さんに申し訳なく」という記述からも想像できる通り、本当に利用者思いであること、そして責任感からだと考えます。

逆を言えば、その質問者さんの思いを事業者に利用されてしまっているのではないでしょうか?
今、質問者さんは、逃げ道がない状態です。心も体も限界の状態と感じます。

この状態を打破する為に、第三者の力を借りましょう。

市役所などの、介護保険業務を担当している課へ相談を

相談先としてオススメする所管の行政機関をもう少し詳しくお伝えします。

例えば、勤務する施設がある〇〇市の介護保険業務を担当している課(市町村によっては介護保険課と言ったり、高齢福祉課と言ったりで呼称が違うと思いますので注意してください)がありますよね。
介護保険を担当しているということは、介護給付を担当しています。
つまり、介護事業が適正に運営されるよう、ご利用者、ご家族からの苦情や介護事故についても相談等の窓口になっているのです。
今回の事例、苦情や事故につながる可能性が大ですので、未然に防ぐ為にも、相談にのってくれるはずです。

また、労働状況に関しては、労働基準監督署への相談も考えられます。
事業所から「脅されている」という事実は、労働基準法違反が考えられますので、質問者さんの負担も考慮しながら相談先として視野に入れられるといかがでしょうか。

「福祉の精神」を悪用する事業者

介護業界が、介護職員の皆さんの「福祉の精神」に支えられていることは間違いありません。
自分がたいへんでも「目の前の助けが必要な人のためだから」と我慢してしまう方がほとんどだと思います。

しかし、その精神が伝わっていない事業者が残念ながら少なからずいることも事実。
介護職員の善意を利用するような事業者に改めてもらうためにも、また、このような事例をオープンにすることによって、介護事業の適正化をより社会的に進めるためにも、質問者さんに一歩踏み出していただきたいです。

相談することは、目の前のご利用者から逃げることではない

質問者さんからすれば、目の前のご利用者から逃げることのように感じてしまうかもしれませんが、決してそんなことはありません。
この一歩はご利用者や一緒に働いている他職員を守るためにもポジティブな一歩となると考えます。

とにかく第一に質問者さんが心配です。
このアドバイスが一刻も早く質問者さんに届くことを切に願います。

介護職のお悩み相談はこちら!

この記事のライター

茨城県介護福祉士会副会長
特別養護老人ホームもくせい施設長
いばらき中央福祉専門学校学校長代行
NPO法人 ちいきの学校 理事
介護労働安定センター茨城支部 介護人材育成コンサルタント
介護福祉士 社会福祉士 介護支援専門員 MBA(経営学修士)

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