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介護の「配置基準を4:1に」、専門家が賛成する理由3つを解説します

介護の「配置基準を4:1に」、専門家が賛成する理由3つを解説します

【回答者:伊藤 浩一】自分達が介護してもらう側になる時も想定した方が良い時期に来ています


本日のお悩み

「配置基準を4:1にする」という議論について、どう思いますか?
いち職員としては、ただ負担が増えるだけだと思います。

賛成している人は、どんな理由で賛成しているのでしょうか?
ロボットを導入するにしてもお金がないと思いますが…。

自分達が介護してもらう側になる時も想定した方が良い時期に来ています

伊藤 浩一

https://mynavi-kaigo.jp/media/users/14

茨城県介護福祉士会副会長 特別養護老人ホームもみじ館施設長 いばらき中央福祉専門学校学校長代行 NPO法人 ちいきの学校 理事 介護労働安定センター茨城支部 介護人材育成コンサルタント 介護福祉士 社会福祉士 介護支援専門員

ご質問ありがとうございます。
「現行の3:1ですら人が足りないのに、もっと減らして介護をしろということか!」
というお怒りの声が聞こえてきます。

そして、
「介護は人と人とのつながり、ロボットを配置するなんてありえない。そもそも、人の代わりになるロボットなんてないじゃないか?」
という叫びも聞こえます。

もちろん、みなさんのお気持ちは十分わかります。
しかし、私はどちらかというと方向性には賛成です。
理由をお伝えしましょう。

賛成理由①:そもそも「配置基準を4:1にする」でなく「4:1を可能に規制緩和する」の議論だから

たいへん申し訳ないですが、質問が間違っています。
この提案は、1月20日、内閣府の規制改革推進会議で提起されたものです。
どこにも4:1に縛るなんて書いてません。

介護の人員規制の緩和を検討することを目的とした会議ですので、噛み砕くと「見守りITを活用してできる事業所さんは、4:1までOKですよ」という制度に緩和してはどうか?検討しようという会議となります。
つまり、できなければ今まで通りでもいいということになります。

私も特養を運営していますが、とても3:1では無理ですよね。
2:1に近い人員でみんなにがんばってもらっています。
あくまでも配置基準であって、仮に4:1になったとしても基準を上回る配置に関しては、今後も問題はないと考えられます。

賛成理由②:介護人材不足は、間違いなくこれから更に顕著になるから

厚労省の推計では、2023年度に22万人、40年度には69万人が足りなくなると言われています。
4:1なんて無理だよ。と思われている質問者さんは、失礼ですがおいくつですか?
今の日本の人口ピラミッドは、団塊の世代(75歳くらい)の層と団塊ジュニア世代(45歳くらい)の層の人口が特に多くなっています。

つまり、あと5年後、10年後を考えた時、団塊の世代は80歳〜85歳、団塊ジュニア世代は50歳〜55歳となります。
今の日本の介護を支えているのは実は40歳以上がほとんどで、若い人は少ないことは質問者さんも肌感覚でわかるでしょう。

想像してみると、高齢者は増加しているのに、メインの働き手も高齢化し、若い職員がいない。
そして、このコロナの影響で外国人技能実習生や特定技能、留学生も先行きが不透明となった・・。どうしましょう?

現実的に3:1は無理になるのではないでしょうか。
ではどうやって不足する人員を埋めるのか?
安定的に供給できる(半導体不足等はありますが)のはロボットであり、今、現場とマッチングできる可能性が高いのは、センサーという図式が完成します。

私は1975年生まれの46歳です。まさに団塊ジュニア世代。
若い時は月5、6回の夜勤を夜勤手当て欲しさに積極的に手を上げていましたが、今はちょっと体力的に自信ないかもです。
50超えたらもっとキツそう(あくまでも私の話)・・。

今でなく2040年を見据えて制度を見直していかなくてはならない時期に来ているということですね。

賛成理由③:チャレンジする組織に介護現場が変わらなければならないから

理由①でお答えした通り、これは、規制緩和の議論です。
では、うちは4:1にチャレンジするんだ!という事業所さんがでてもいいですよね。

実は、私の勤務する特養は、パラマウントベッドさんの「眠りスキャン」を導入しています。
この眠りスキャンが人の代わりにできることは、睡眠のリズムを計測できることとと体動を感知して見守りができるということです。

もちろん、4:1でいけるという極端な確信はありませんが、見守りセンサーで呼吸状態も確認できることにより、夜勤時、2時間おきに巡視していたことが4時間おきや「なし」にできる(もちろんケアプラン上での同意を得て)のは職員にとって大きな負担減になっているようです。
そして、利用者さんの安眠にもつながりました。

だって、寝ている時、部屋に2時間おきに誰か入ってこられたら、質問者さんはゆっくり眠れますか?
私、こう見えて敏感な方なので、ドキッとして眠れないかもです。

つまり、利用者さんにも職員にとっても良い状況が作れれば、4:1もありであって、工夫次第でその可能性は無限にある。
私たちが考えて変われる組織変革にチャレンジしていかなければならないということになります。

補助金の活用は積極的に!

最後にお金ですが、これは質問者さんのいう通り、事業所によってパワーの差はあります。
しかし、高額の補助金が国から提示されているのでその申請作業を面倒と捉えず、積極的に活用することが重要です。

介護業界にいる私たちも、変わらなくてはいけない

4:1の規制緩和については、今後「緩和条件」が明確になると思います。
その条件がなんなのかは注視していく必要があります。

いずれにしても、コロナなど5年後10年後の社会情勢は不透明ですが、人口減少だけは着々と事実として進行していきます。
今がたいへんであることは本当によくわかりますが、先を見据えて私たちが変わることも今求められています。

変わらなければ間に合わない、自分達が介護してもらう側になる時も想定した方が良い時期に来ていると言えます。

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この記事のライター

茨城県介護福祉士会副会長
特別養護老人ホームもくせい施設長
いばらき中央福祉専門学校学校長代行
NPO法人 ちいきの学校 理事
介護労働安定センター茨城支部 介護人材育成コンサルタント
介護福祉士 社会福祉士 介護支援専門員 MBA(経営学修士)

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