日本介護福祉士会とはどんな団体?気になるその役割について教えます!
「介護福祉士の未来は介護福祉士自身が切り開く」――そんな熱いメッセージとともに、介護・福祉業界の最前線で活動を続ける日本介護福祉士会。
その理事を務める望月太敦さんに、実際にどのような活動を行なう団体なのかを教えていただくとともに、同会がめざす未来や介護福祉士のこれからについてお話しいただきました。
■お話をうかがった人
写真は、すべて本人(保護者)の許可を得て掲載しております。
望月太敦さんのプロフィール
公益社団法人日本介護福祉士会 理事
公益社団法人東京都介護福祉士会 副会長
社会福祉法人 三育ライフ 杉並エリアマネジャー
杉並区立重症心身障害児通所施設わかば 園長
介護福祉士 社会福祉士 介護支援専門員
社会福祉法人三育ライフへ入職後、介護福祉士として現場で勤務した後、特別養護老人ホームの介護課長や相談課長、グループホームのホーム長を経験する。
2015年4月より、重症心身障害児が通う児童発達支援事業所の開設に携わり、その後は、重い障害や医療的ケアが必要な未就学のこどもたちの支援をしている。
又、職能団体の理事や東京都福祉サービス第三者評価の評価者としての活動などをするほか、筑波大学大学院を修了し、重症心身障害児の地域生活に関する研究に取り組んでいる。
■介護福祉士なら誰でも入れる日本介護福祉士会。そもそも何をしている団体なの?
公益社団法人 日本介護福祉士会とはどのような団体ですか?
簡単にいうと、介護福祉士の有資格者による全国組織です。医師が医師会に、薬剤師が薬剤師会に所属するのと同じように、介護福祉士には介護福祉士会があり、日本介護福祉士会は全国組織の職能団体の1つとなります。
※職能団体とは
専門的資格を持つ専門職従事者らが、自己の専門性の維持・向上や、専門職としての待遇や利益を保持・改善するための組織のこと。
どのような目的を持っていますか?
日本介護福祉士会には、『介護福祉士の職業倫理の向上、介護に関する専門的教育及び研究を通して、その専門性を高め、介護福祉士の資質の向上と介護に関する知識、技術の普及を図り、国民の福祉の増進に寄与すること』という目的があります。
介護福祉士は国家資格ですから、私たちが専門的な知識や技術を磨くことにより、国民の皆さまの福祉に寄与することがいちばんの目的となります。
実際、どのような活動をしていますか?
介護福祉士の専門性をさらに高めるための組織活動を中心に、職業倫理の向上や教育体制の構築に取り組んでいます。
さまざまな研修や調査研究を行なうほか、介護保険制度の報酬改定をはじめ、国で議論されていることについて組織的に発信していくなど、福祉・介護分野で大きな役割を担っています。
いろいろな活動をされているのですね。特に力を注いでいるのはどのようなことですか?
介護福祉士一人ひとりが専門性を担保し、求められる役割を担うために必要な知識を習得するには、その機会を提供することが大切です。日本介護福祉士会では、「介護福祉士基本研修」「ファーストステップ研修」「認定介護福祉士養成研修」を軸に、全国の都道府県介護福祉士会と連携しながらさまざまな研修を推進しています。
気になったのですが、日本介護福祉士会と全国にある都道府県介護福祉士会は違う団体なのでしょうか?
別の団体ではありますが、同じ目的を持ち、連携しながら活動しています。日本介護福祉士会の会員の皆さんには、パートナー団体である都道府県介護福祉士会への同時入会をお願いしているんですよ。
どちらにも入会するのですね。介護福祉士であれば誰でも会員になれますか?
介護福祉士の資格をお持ちで、会の目的に賛同いただける方であれば、どなたでも入れます。学校を卒業するタイミングで入会する人もいれば、研修などを受けた後に入会する人もいます。入会のための費用を手当として支給する事業所もあるようです。学校などから入会する場合には、入会金が免除されることもあります。
■日本介護福祉士会の活動を通じて、“刺激”や“横のつながり”を感じながら成長できる。
日本介護福祉士会に入ると、どのような恩恵が受けられますか?
介護職には、介護福祉士のほか、社会福祉士やケアマネージャーなど、さまざまな資格があります。
日本介護福祉士会に入会する人の中にも、社会福祉士やケアマネージャーの資格を持つ人はいますが、介護福祉士会に所属するいちばんのメリットは、やはり介護福祉士の資格に関する専門的な発信を多く受け取ることができることです。研修を優先的に受けることができるほか、研修費の割引などもあります。
いろいろなメリットがあるのですね。
はい。また、研修を通して職場の外でも横のつながりができ、多くの人と知り合うことで視野を広げることができます。高齢者福祉や障がい者福祉など、学べる内容も多岐に渡ります。そのほかにも、やはり職能団体として声を発信できるところも大きいと思いますね。
望月さんご自身は、どのような理由で入会されたのでしょうか。
まずは、介護福祉士として自分自身の質を高めたいという想いがありました。
また、介護福祉士の専門性を明確化させたい気持ちも強かったですね。
現場で実践を積むことも大切ですが、横のつながりができる部分にも大きな意味があると思っていて、世の中の人たちに介護福祉士の資格の意味、介護福祉士だからできること、他職種との違いを伝えることも凄く大事だと考えていました。
入会していかがでしたか?
有資格者同士の横のつながりが広がることで、各地域や市町村単位で住民の皆さまの困りごとに対応できることがあると知りました。大規模な調査研究を通じて新しい知見を得ることができたほか、実践的に地域の中で積み上げていくことの大切さをあらためて感じました。
日本介護福祉士と都道府県介護福祉士が連携することで、今後もいろいろなことができると考えています。
日本介護福祉士会の理事の役割についても教えてください。
理事の任期は1期2年です。理事になると、今年度はどのようなカタチで動くのか、どの方向で事業を進めるのかなど、全体的な部分を見ていきます。また、組織内にはさまざまな委員会や部会がありますが、今年度は会報誌やHPに関することなど、広報的な部分の業務が多くありましたね。
理事としての苦労はありましたか?
会議資料のボリュームが多く、前準備にも時間を費やしますし、課題について限りある時間の中で話し尽くさなければならない苦労がありました。
その中で、どんな成果がありましたか?
日本介護福祉士会で議論された内容が社会保障審議会をはじめ、さまざまな場面で話し合われる素になるため、議論の質も高く、成果と密接に関係していくところにやりがいを感じました。ずっと明確化したいと考えていた資格の専門性を明らかにするための研究に携わることができたことも嬉しかったですね。
※社会保障審議会とは
厚生労働省に設置された審議会のひとつ。社会保障制度全般に関する基本事項や、各種の社会保障制度のあり方について審議・調査し、意見を答申する。
どのような調査研究に関わられたのでしょうか。
ケアの質の向上に向けた科学的介護情報システム(LIFE)に関する調査研究です。
介護福祉士が行なう介護実践には明確な根拠があり、ケアマネジメントのサイクルでも展開されています。そのもとになる介護課程には何が必要になるのか、LIFEを活用することで介護過程がどのように変化するのか、実際に効果はあるのかなどを調査研究しました。
介護保険の報酬改定につながる基礎資料となるものをきちんと発信していくことはとても大切で、介護福祉士としての専門性を明確化するためにもこのような調査研究は重要だと考えています。
※科学的介護情報システム(LIFE)とは
科学的に効果が裏付けられた自立支援・重度化防止に資する質の高いサービス提供の推進を目的とし、PDCAサイクルの推進及びサービスの質の向上を図る取組みを推進するためのシステム。
■福祉・介護業界のこれから、介護福祉士の未来とは――。
望月さんのこれからの目標を教えてください。
個人的な目標は、障がい者福祉の横のつながりを強めることです。
何かを成し遂げるには、地域が一つになり、全国が一つになることが大切。そのためにも日本介護福祉士会や都道府県介護福祉士会の発信力を強め、より良い組織づくりを進めたいですね。
日本介護福祉士会のホームページに記されているように、介護福祉士の未来は介護福祉士である私たち自身が切り開かなければなりません。誰かが何とかしてくれるという意識ではなく、一人ひとりが課題と向き合い行動していくためにも職能団体であることの意味は大きいと感じています。都道府県単位から国に働きかけていく意義を介護福祉士の未来を担う若い人たちにもぜひ伝えたいですね。
職能団体だからこそできることがある、ということでしょうか。
そうですね。資格取得の背景や地域差に関わらず、介護福祉士として一定の質を担保するためにも職能団体は必要だと感じますし、それを伝える仕組みが求められているのも事実です。
有資格者が一定の水準できちんと専門性を発揮することは当然のあるべき姿であり、そのために資格試験があると思っています。その専門性を言語化しながら高いレベルの実践を積み上げていくことが大切で、そこで積み上げたものを国に伝えてカタチにしていくためにも、さまざまな福祉の現場で介護福祉士が行なう実践の質をきちんと示していく必要がありますね。
日本介護福祉士会としては、まだ多くの課題があるということでしょうか。
はい。今後は高齢者福祉でも障がい者福祉でも質の部分がさらにシビアに求められるようになるでしょう。医療的ケア児への注目も高まり、新しい法律も動き出しました。
しかしながら、介護を必要とする子どもたちに光が当たりにくい部分もあるので、高齢者福祉だけでなく、さまざまな福祉現場において介護福祉士の活躍の場を広げたいと考えています。そうすることで、必要としている人に支援がきちんと届く体制ができ、介護福祉士の専門性を明確にしながら一人ひとりが力を発揮できる環境が整うと考えています。
※医療的ケア児とは
NICU等に長期入院した後、引き続き人工呼吸器や胃ろう等を使用し、たんの吸引等の医療的ケアが日常的に必要な子どもたちのこと。
そのためにも、多くの仲間が必要ですね。これから介護福祉士や福祉・介護業界をめざす人にメッセージをお願いします。
福祉・介護業界では、さまざまな物事が動いています。
近年は機器や介護ロボットの活用が増えるなど、その内容も広がりを見せています。高齢者福祉といっても施設と在宅で仕事内容は異なりますし、障がい者福祉といっても学校介護に携わったり、機器や介護ロボットを使いながら自立支援に取り組んだり、実にさまざまです。
一人ひとりの生活に寄り添いながらいろいろな情報の中から最適なものを組み合わせて提案する力が求められる時代だからこそ、働く人の希望が叶いやすい環境があるといえるのではないでしょうか。どのような現場で働きたいのか、どういう人にどのような支援をしていきたいのか、自ら選べる状況にあるため、仕事に面白みを感じられると思いますよ。
最後に介護福祉士の皆さまにもメッセージをお願いします。
介護福祉士という国家資格を持ち、その役割を果たしている皆さんには、ぜひ日本介護福祉士会に所属し、その質を高める活動に参加していただきたいと思っています。
国に働きかけていく職能団体として、大きな役割を果たしていることも知っていただきたいですね。
身近なところでは、都道府県介護福祉士会で企画されているものなど、気軽に参加できる活動も多くあると思います。興味を持っていただけたら、ぜひ一度覗いてみてください。
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