新卒で介護職はもったいない?誤った先入観と就職メリットを解説!
「介護の仕事はいつでも誰でもできる」という先入観が原因
茨城県介護福祉士会副会長 特別養護老人ホームもくせい施設長 いばらき中央福祉専門学校学校長代行 NPO法人 ちいきの学校 理事 介護労働安定センター茨城支部 介護人材育成コンサルタント 介護福祉士 社会福祉士 介護支援専門員
「新卒で介護職はもったいない」実は私も聞いたことがあります。 なぜだと思いますか?
「介護の仕事はいつでも誰でもできる」という先入観が
このような言葉が聞かれる原因になったのではないでしょうか?
私は介護福祉士養成校の経営にも携わっていますが
高校を訪ねた時に「先生がこのような言葉を言っていた」
「学生さんが介護の道に進もうとしていたのに同様の言葉で先生に反対された」というような話を聞くことがありました。
■解決策は「介護入門的研修」から新しい知見を得ること
このような課題から、茨城県では高校の先生に介護を学んでもらうとことを働きかけ、
本年度は「介護入門的研修」に約30名の先生が参加しました。
実施アンケートの結果では嬉しいコメントが多数寄せられた
参加した先生からのアンケート結果では、
「教育体系がしっかりされているのに驚いた」
「自分自身も認知症の母の介護に苦しんだ、もっと早く受講していればよかった」
「介護の専門性を学ぶことができた、安心して学生の進路先として勧めたい」
「自分たちもお世話になる身になるかもしれないが、人材が不足することをあらためて学んだ」
「介護離職を防ぐことは日本の社会を支えること、そんな大事な役割を介護職のみなさんが担っていることを知ることができた」など
嬉しいコメントがたくさん寄せられました。
いかがでしょうか?
「介護の仕事の意義や専門性を知らない」それなのに先入観で
「介護の仕事はいつでも誰でもできる仕事」と決めつけてしまっていたということですよね。
人口減少社会において私は「いつでも誰でもできる仕事」は非常に魅力的でであると考えます。
しかし、先生の発言の裏には、「可愛い学生にやらせる仕事ではない」と言った負のイメージが強いのではと感じました。
先入観定着の考えられる2つの理由とは
■①ハーディング効果の影響から介護職はもったいないと定着?
ハーディング効果とは、人間は周りと同じ行動をとることに安心して、
周りに合わせてしまう心理現象のことを言います。
おそらく高校の先生方も同様に情報としてインパクトのある負の印象(3K=きつい汚い給料安い)
ばかりが定着していってしまったのではないでしょうか。
■②介護職の発信不足が要因
先入観が定着してしまっていることは、一つの見方では一般の方々の理解不足といえますが、
もう一つの見方としては私たち介護職が一般の人々へ介護入門的研修や介護を体験できる機会を
積極的に増やす機会を十分に設けられていないことで、誤った先入観の定着を防げなかったともいえるのではないでしょうか。
■リアルな体験と正しい情報発信を増やしていくことで先入観を脱却
リアルな体験と正しい情報を増やしていくことで先入観を脱却していくことが大切だと考えます。
介護職の皆さんは、忙しくて現場から抜けられませんと理由を付けて、発信をすることをしないままでは負のスパイラルに陥る一方だと考えます。
更なる発信をしていきましょう。
新卒で介護職になるメリットとは
さて、次に「新卒で介護職になるメリット」はなにかを考えてみます。
私は、社会経験を踏んで介護職に転職することはウェルカムだと日々言っています。
なぜなら、サービスの対象者は様々な人生を歩んできた方々であり、
一人ひとりに寄り添うにはその背景を想像できる人生経験が役に立つからです。
■新卒だからこそ、ご利用者に可愛がってもらえ、温かく「成長」を見守ってもらえる
人生経験が少ない新卒者はご利用者に寄り添えないじゃないか?と突っ込まれそうですが、
私は新卒だからこそ、寄り添えなくてもよいと考えています。
逆を言えば、ご利用者は人生の大先輩です。教えてもらえばよいのです。
かく言う私も新卒で介護職として就職しました。
右も左もわからない日々で不安ばかりでしたが、助けてくださったのはご利用者でした。
失敗しても「いいんだよ」と言ってくださり、
人生や礼儀についても教えてくださる方もいました。
お客様から仕事・人生・人として大切なことなど、たくさんのことを教えていただける業界はそう多くないのではと思います。
人生経験の豊富なご利用者から、暖かく成長を見守ってもらえ様々なことを教えてもらえる介護職は、働く方の人生も豊かになると言えるでしょう。
新卒で就職する会社を見極めるコツ
■①新人教育体制がどうなっているか
「新卒で介護職になるメリット」も成長というキーワードでお話しさせていただきましたが、
新卒者は右も左も分からなくてよい、そして不安なんだということを会社が受け入れ、
丁寧な教育体制を構築していることはとても重要だと思います。
■②新卒者同士の横の繋がりを広げる支援を会社が率先しているか
医療・福祉の業界では入社3年目未満の離職率は大学生で約38%という調査もありますが、
新卒の方々が早期離職をしてしまう理由を考えてみましょう。
その理由は、人間関係だけと思いきや、実は将来性についても不安に思う方も多いそうです。
つまり、
・自分がどう成長できるのか?
・将来の不安を話し合える仲間がいるのか?
そのような新人職員の思いに目を向け、教育体制を構築している会社はおすすめです。
※厚生労働省「新規大卒就職者の産業別就職後3年以内の離職率」より(厚生労働省のPDFに遷移します)
<総括>
■今回のご質問回答のテーマは「知らない」ことの怖さだと考えられる
介護の仕事を「知らない」先生の思い込み、新卒で介護職になるメリットを
「知らない」故の不安、新卒者の思いを「知らない」会社が離職率を高めていると思います。
■「知らない」の怖さにどう対処するべきか?
「知らない」ことの怖さへの対処方法は、「発信すること」です。
5月から新型コロナウイルス感染症も感染症の位置づけが5類となり、人々の動きが再開し、興味関心の意識も広がります。
私たちも自分たちの仕事のことや自事業所の取り組みなど、もっとオープンに発信していきましょう。
私は、今のタイミングこそが介護のことを皆さんに広く知っていただく大きなチャンスだと捉えています。
茨城県介護福祉士会副会長
特別養護老人ホームもくせい施設長
いばらき中央福祉専門学校学校長代行
NPO法人 ちいきの学校 理事
介護労働安定センター茨城支部 介護人材育成コンサルタント
介護福祉士 社会福祉士 介護支援専門員 MBA(経営学修士)