東南アジアから見る日本の介護業界とは?【ベトナム編】
■執筆者
茨城県介護福祉士会副会長 特別養護老人ホームもくせい施設長 いばらき中央福祉専門学校学校長代行 NPO法人 ちいきの学校 理事 介護労働安定センター茨城支部 介護人材育成コンサルタント 介護福祉士 社会福祉士 介護支援専門員
日本の介護業界は「木を見て森を見ず」からの脱却を
高い場所から下を見ることや、ものごとを広い視野で見ることを意味する言葉です。
逆の言葉は「木を見て森を見ず」でしょうか。
皆さん、今の日本介護業界ですが、「木を見て森を見ず」という状況に陥っていると感じませんか?
日々の介護業務はもちろん大変です。
少子高齢化が進む一方で、人手不足はますます深刻になります。
この深刻な状況でどうしましょうか…。
解決策の1つとして、挙げられる【外国人の皆さんの手を借りるしかない】というお話ですが、この解決策は、森を見ずに木=日本のみを見ている状況だと捉えています。
ここでお伝えしたいことは森=世界を見ることの重要性です。
森=世界の介護業界はどうなっているのでしょうか?
また、日本の介護業界に対して世界はどのように捉えているのでしょうか?
今回は、東南アジアのベトナムに視点を当て、その変化や最新情報をお伝えしたいと思います。
ベトナム編-世界から見る日本の介護業界とは
Mさんは、介護福祉士養成校を卒業し、国家試験も合格した介護福祉士です。
■日本は働く場所としては、不人気?
「ベトナム人にとって日本は好きな国だけど、働くには人気がなくなってますよ」とのこと。
それはなぜなのでしょうか。
コロナの窓際対策、円安、ベトナム経済の状況がもたらしたもの
この厳しい入国規制は、留学や技能実習で日本に来ることになっていたベトナム人の皆さんの人生設計を大きく狂わせました。
1年待ち、2年待ち、本当に日本に行けるのか?たいへんな不安の中過ごされたことと思います。
また規制緩和後の現在も介護については、日本語検定N4以上が求められるなど他国に比べ入国要件は厳しいと言えます。
そして、その待っている間に日本経済は「円安」となりました。
円安とは、円の他通貨に対する価値が相対的に少ない状態のことです。つまり、欧米諸国より給料が安いということになります。
さらに、コロナ禍でも、ベトナム経済は急成長しています。
経済成長率で見てみても、2022年でベトナムは8.02%、同年日本は1.08%です。
昨年度、2度ベトナムに行く機会がありました。
3年ぶりにホーチミンやハノイ(首都)へ行きましたが、高層ビルが立ち並びまだまだ新しいビルが建築途中でした。
おしゃれなカフェもたくさん増え、何より人の活気に満ち溢れているという印象でした。
中国は4位ですが、実は少し前は、1位はベトナムではなく中国でした。
中国は自国の経済発展により、日本に来る必要がなくなり、ベトナムとその割合が逆転したのは明白でしょう。
※出典:法務省 出入国在留管理庁 厚生労働省 人材開発統括官( 外国人技能実習制度について)
平均年齢から見て、若者が多い国のためベトナムから日本に来る方がいなくなるということはもちろんないとは思いますが、その割合は減っていく可能性はあるでしょう。
また平均寿命から考えてベトナムはまだ、日本のような介護保険制度や高齢者施設の早期な充実は必要な状況ではないと考えます。
とはいえ、ベトナムも将来的には高齢化が進むことは間違いありません。
以上を踏まえて、日本の介護業界がベトナムと連携を行っていくという場面において いかに将来を見据え、日本の介護技術をベトナムに伝えることができるか?という考えが重要なのです。
「日本の人手不足をベトナム人に労働力として助けてもらう」というような、木=日本だけを見た発想では、日本の介護業界は立ち行かない状況になることは間違い無いでしょう。
次回は、【ネパール編】をお届けします!
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茨城県介護福祉士会副会長
特別養護老人ホームもくせい施設長
いばらき中央福祉専門学校学校長代行
NPO法人 ちいきの学校 理事
介護労働安定センター茨城支部 介護人材育成コンサルタント
介護福祉士 社会福祉士 介護支援専門員 MBA(経営学修士)