東南アジアから見る日本の介護業界とは?【ネパール編】
今回はネパール編です。
■執筆者
茨城県介護福祉士会副会長 特別養護老人ホームもくせい施設長 いばらき中央福祉専門学校学校長代行 NPO法人 ちいきの学校 理事 介護労働安定センター茨城支部 介護人材育成コンサルタント 介護福祉士 社会福祉士 介護支援専門員
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日本は介護人材が不足しているという観点(木)を、海外から見る(森)とどうか?という問題提起です。
ベトナム編としては、コロナ前後で日本に対する見方が変わってきており、人材は待っていれば来てくれるという時代ではなくなったということです。
ではベトナム以外の国も見てみましょう。第2回はネパール編です。
外国人介護人材の活用は「一方よしから三方よし」への意識改革
■ネパールってどんな国?
人口は、約3,000万人・面積は14.7万平方キロメートルと北海道の約1.8倍の広さがあり、首都はカトマンズです。
出典:外務省「ネパール(Nepal)基礎データ」
実は私、今年の5月に初めてネパールの地を踏みました。
目的は、介護福祉士養成校の留学生受け入れ促進です。
初めてのネパールの印象は、「ご飯がおいしい!」ということでした。
日本で最近よく見かけるインドカレーのお店は、実はネパールの方が経営していることが多いそうです。
なので、日本のインドカレー店で食べるインドカレーやチャーハン、タンドリーチキン、焼きそば、餃子(ネパールではモモ)は、ネパールこそが本場であり、非常に日本人が食べやすい味だなと思いました。餃子好きの私としては最高です!(笑)
また、北はヒマラヤ山脈が連なり(素晴らしい景色!)、ヨーロッパから登山に訪れる方も多いため、首都部にはイタリア料理店も多いと感じました。
■ネパール人の介護の概念
ネパールの平均寿命は68.45歳です。
出典:GraphToChart「グラフで見るネパール人の平均寿命は長い?短い?」
日本と比べると随分と若いですね。
勘のよい読者さんは、お分かりかと思います…「まだ、介護の概念はないな」と。
平均寿命が若いということは、介護が必要な状況になる前に亡くなる可能性が大きいです。
また、認知症が発症する前に亡くなる可能性も高いということになります。
さらには、平均寿命は、医療・食事・健康意識が大きく影響すると言われています。
となれば、これらもまだ発展途上なのでは?とも、予想がつくかと思います。
■ネパールの人々と日本の介護業界
ネパールの方は、とても優しい印象を受けました。
私はファンになりました。
主の信教であるヒンドゥー教・仏教は、お年寄りや家族を大切にする文化です。
それもあり、介護の仕事に向いている方が多いとも感じました。
一方で、内陸国であることもあり、自国で産業が発展しにくいとも感じました。
海がないと船での貿易が難しく、山岳地帯が多いので工場が立ちにくいのです。
これらの状況を踏まえると他国に行って学んだり、働いたりすることを求める方も多くなるでしょう。
日本にも、来日し介護人材として活躍してくださるチャンスはあるのではと思います。
しかし、ベトナム編でも述べた通り、日本は2023年8月現在、円安です。
そのため、オーストラリア・カナダ・韓国で働くことの選択肢も人気が高まっているという話を伺いました。
成功のカギは「三方よし」の実現
しかし、「一方よし」だけではなく、「三方よし」を作り出すことが重要です。
「一方よし」とは、日本の介護人材不足を補って欲しいというだけの視点です。
これでは、自分(日本)のことだけですよね。
そうではなく、
・ネパールにとって何がよいか?
・国際社会にとって何がよいか? も明確であることが大切です。
■ネパールの若者にとって、日本の介護業界で働くメリットとは
ネパール(ベトナムもですが)では3040問題があるそうです。
20代の若いうちに短期的な収入のために海外で働いたとしても、自国に帰り30代~40代では、仕事がないという状況のことです。
この状況を打開するためには、30代~40代になっても母国で仕事に就ける能力、技術を身につける教育支援をすることが有効です。
また、これから東南アジア諸国も高齢者問題は必ず発生します。
20年、30年先かもしれませんが、今から備えていたらどうでしょう?
現時点で世界一の超高齢社会である日本での学びは、必ず母国のためになるはずです。
まとめ
介護分野における外国人材の活用は「一方よしでなく三方よし」で考え、「木を見て森を見ず」からの脱却を図りましょう。
ぜひ、意識してみてください。
ささえるラボの人気コーナー、専門家が答える「お悩み相談室」では、介護職として働く皆様からの質問を募集しています。
茨城県介護福祉士会副会長
特別養護老人ホームもくせい施設長
いばらき中央福祉専門学校学校長代行
NPO法人 ちいきの学校 理事
介護労働安定センター茨城支部 介護人材育成コンサルタント
介護福祉士 社会福祉士 介護支援専門員 MBA(経営学修士)