■本日のお悩み
最低賃金の時給で、フルタイムで働いている介護福祉士です。
月に1回の欠勤や遅刻早退で、事前の連絡相談をしていても、1ヶ月前に申請をしないと処遇改善手当などが半額になってしまいます。これって有りですか?酷くないですか?
■執筆者/専門家
おかげさま社労士事務所 代表 元地域包括支援センター センター長 社会保険労務士、社会福祉士・主任介護支援専門員・介護福祉経営士1級・ ファイナンシャルプランナー2級(AFP)・簿記3級 ▶プロフィール 大学(福祉学)卒業後、大手教育会社を経て、介護業界へ転身。 介護業界に関わる人の優しさに触れると共に、低待遇と慢性的な人手不足の課題解決のため社会保険労務士の資格を取得し、2021年に開業。 地域包括支援センターでセンター長として長年勤務した経験を活かして、介護現場の最前線で活躍する事業所と人をサポートしている。 また、介護関連の執筆・監修者としての活動や介護事業書向けの採用・定着・育成・組織マネジメントなど、介護経営コンサルタントとしても幅広く活動中。
ご質問・ご相談をいただきありがとうございます。
日々のお仕事本当にお疲れさまです。皆さま方のお力でご利用者様が安心して生活ができていると思っております。今回もご質問内容からわかる範囲で回答をさせていただきます。
今回のケースは内容によっては労働基準法違反になる可能性があります
いずれにしても今回はいわゆる「賃金カット」についてのお話になりますが、賃金は労働者である皆さんにとっては生活をしていくためには欠かせないものです。その「重要な賃金をカットする」という意味を考える必要があるでしょう。
「賃金カット」とはそもそもどういうことなのか
今回のようないわゆる「賃金カット」は「減給の制裁」と言います。「減給の制裁」とは、職場の服務規律に違反した従業員に対する制裁の一種として、本来その従業員が受け取るはずの賃金から、一定額を差し引くことをいいます。
労働基準法では、一定の制限を設けることで労働者の生活を守っております。
■労働基準法上の減給の制裁とは
(制裁規定の制限) 第91条 就業規則で、労働者に対して減給の制裁を定める場合においては、その減給は1回の額が平均賃金の1日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の10分の1を超えてはならない。
※平均賃金…直近3カ月間に支払われる賃金の総額÷その期間の総日数
●混同しやすい、欠勤控除について
欠勤控除は「ノーワーク・ノーペイ」の原則に基づき。労働を提供していなかった時間分の賃金を控除するものであり、制裁(懲戒処分)ではありません。
●具体例を見てみましょう
<前提条件>
・就業規則に減給の制裁の記載があり
・月給が25万円で減給前3ヵ月総額は(10月~12月)75万円
・3ヵ月の総日数(10月~12月)は92日
上記の場合の平均賃金は75万円÷92日となり、平均8,152円(端数切捨て)となります。
この平均賃金8,152円に対して、1回あたりの減給額が5,000円であるため、1日分の半額を超えていることになります。
このケースでは1回あたりの減給限度額を超えているために労働基準法違反となります。
●罰則について
「1回の減給金額が平均賃金の1日分の半額を超える」、または「総額が1か月のおける賃金総額の10分の1を超える」これらの場合は、労働基準法違反となり事業所は、30万円以下の罰金が科されます。(労働基準法第120条第1号)
●今回のケースでの重要なポイント
つまり今回のケースでは以下のポイントが注意すべきポイントです。
・就業規則に減給の制裁の記載があるか
・その減給額は、労働基準法第91条の範囲内(1日の平均賃金の半分を超えてない、または1月の10分の1を超えていないか)であるか
・上記の説明がされていたか
ぜひ、確認をしてみてください。
■仮に適法であっても、労働者の納得感が大切です
ご質問者さんのように納得感という観点からは従業員の理解は得にくいかもしれません。
働いている方の不満が多い職場は、よい労働環境とは言えません。
適法であっても、不満の多い職場は、能力のある人材が退職をしてしまう恐れもあります。
社員の幸せを願う職場であるかどうかという観点も大切にする必要があるでしょう。
私ども、社労士が依頼を受けて就業規則を作成をする際には適法化か否かの観点のみではなく、事業主、従業員ともに幸せになるように作成を心がけます。
処遇改善加算の減額についてはどう捉えるのか
処遇改善加算も労働基準法上は「賃金」に該当をするため、一定額の減給は法律上可能です。
ただし処遇改善加算は本来、処遇改善加算は介護職員の処遇を改善することを目的とした加算となります。そのため減給の対象とするのは個人的には適切とはいえないと考えます。
ましてや、処遇改善加算は配分のルールがあるため、減額をすることで従業員へ適正に配分されているのかも疑問が残ります。
それでは、なぜこのような現状が生じてしまうのかも考えてみましょう。
恐らく、事業主の労働基準法への理解が乏しいからという部分が主な原因になるでしょう。
大企業と比べ、中小企業になるほど法令順守への意識が低くなる傾向はあります。
特に、介護業界はその意識がさらに低いと感じています。
理由としては、労働基準法よりも介護保険法への意識が強いからであると考えております。
■このような状況があった場合の対応方法は
裁判など手段も1つの方法かもしれませんが、時間や費用がかかるため得策とは言えません。
それよりも、あなたのことを必要としている会社や事業所は他にも必ずあります。
察するに、このケースの職場では、残念ですが現場で働く皆さまが安心をして働くとしては課題が多いかもしれません。
このような不満やトラブルに皆さんが悩んだり対応をしたりする時間や費用を浪費してしまう状況はできれば避けたいですよね。
悔しい気持ちや納得できない気持ちもあるかもしれませんが、転職も含めて新しい職場環境を検討することをおすすめします。
皆さんのお力を待っている社員思いな介護事業所・介護施設他とのご縁があることをお祈りしております。
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おかげさま社労士事務所 代表
元地域包括支援センター センター長
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ファイナンシャルプランナー2級(AFP)・簿記3級