本日のお悩み
施設で介護職員をしています。私の施設では処遇改善手当が年額50,000円の支給です。
こちらは安いように感じますがいかがでしょうか。
また看護師や事務員にも処遇改善が支給されているのですが…なんとなく納得できません。
本来、介護職のみに支給されるものではないのでしょうか。
今後処遇改善の支給額がどのように変わっていくのかも併せて教えてください。
介護職への処遇改善の支給額に納得できない…他職種にも支給?その理由とは。
おかげさま社労士事務所 代表 地域包括支援センター センター長 社会保険労務士・主任介護支援専門員・社会福祉士・介護福祉経営士1級・ファイナンシャルプランナー2級
ご質問・ご相談をいただきありがとうございます。
日々現場の最前線で働く介護職員の皆さまには敬意を表します。
最近、このように介護職員の皆さまから処遇改善加算の金額が少ないのではないか?
きちんと配分されていないのではないか?など、ご質問をいただくことが増えてきました。
さて、処遇改善加算の支給額が年額50,000円は安くないかとのご質問ですが、これは言い変えると処遇改善加算はどのように金額が決まり、どのように配分されるのでしょうかという質問にもなるかなと思います。
先に結論から申し上げると、50,000円が安いか高いかは判断しかねるというのが結論となります。
以下についてその理由をお話していきたいと思います。
■(理由1)処遇改善加算の支給目的と支給対象者が異なるから
処遇改善加算と一言でいっても以下のように全部で3種類があります。
①介護職員処遇改善加算
②介護職員等特定処遇改善加算
③介護職員等ベースアップ等支援加算
①は介護職員を対象にしており、介護職員の処遇を改善する目的に創設されました。
ただ制度の沿革で介護職員と介護職員以外の職種(看護師や事務員)との賃金の整合性を考慮する必要が出てきました。
例えば、ケアマネジャーは介護職員には該当せず、支給をしない場合、ケアマネジャーと介護職員の賃金で差が出てきてしまうなどです。
そうなると経験のある方と経験の浅い方に逆転現象が起こってしまいます。
②はこの逆転現象を回避するための余地を施設側に与える配慮がされた上で創設されました
また、基本給を中心とした月々のベースアップを図る目的として③が創設されました。
つまり同じ処遇改善加算でも制度の趣旨が異なるということです。
①は介護職員のみに支給される加算ですが、②や③は看護師や事務職員など他の職員との賃金との整合性を図るためもあると考えております。
名称に介護職員等の「等」が含められているのはそれが理由となります。
■(理由2)処遇改善加算の支給額が事業所ごとによって異なるから
そもそも処遇改善加算金はどのように支給額が決定されるのかご存知でしょうか。
支給額は事業所単位の総報酬額に加算区分の割合を乗じた金額で計算をします。
配分比率は決まっていますが、誰にいくら振り分けるかは法人が決めています。
また、複数の事業を展開している法人では事業所の売上規模も異なるため全体従業員の平均で処遇改善加算金を支給している場合もあります。
つまり支給額は事業所の売上に比例する、また法人内の配分によるということです。
そして誰にどれだけ振り分けるかは法人が決め、就業規則等に根拠を定める、どのように配分するか等の周知は制度上求められております。
もし金額が少ないなと感じた場合は法人に確認をしてもよいでしょう。
■今後の処遇改善加算の支給額の展望
介護報酬改定に基づいて算出をされるため、将来の支給額については正確に予測することができません。
ただし、政府や業界団体などから、介護業界の待遇改善に向けた取り組みや支援策の提案されており、処遇改善加算の支給額も増額をする可能性はあります。
一方で高齢化が進展する中で、介護給付費を含めた社会補償費は増加しています。
今後に関しては、しっかりと政治や経済の動向を見ていく必要があるでしょう。
最後に
処遇改善加算を利用して介護職員の待遇を改善していくのは一つの手段だと考えています。
短期的には賃金が上がることはもちろんですが、中長期的には処遇改善加算の原資を利用して介護職員の皆さまの日頃の頑張りが適切に評価され、安心して長く働き続けることができるようになることを願っております。
おかげさま社労士事務所 代表
元地域包括支援センター センター長
社会保険労務士、社会福祉士・主任介護支援専門員・介護福祉経営士1級・
ファイナンシャルプランナー2級(AFP)・簿記3級