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介護職への転職を反対する両親…どのように対応する?

介護職への転職を反対する両親…どのように対応する?

自身のやりたいことに対して、ご両親から反対されたとき、どう向き合うのがいいのでしょうか。介護職への転職を反対されるというお悩みに専門家が回答します。 【執筆者:大関 美里(社会福祉士、介護福祉士、認定排泄ケア専門員、排泄機能指導士)】


本日のお悩み

アパレルで接客をしていますが、介護職に転職したいと思っています。
しかし、両親に反対をされてしまいました。難しい仕事であることは理解していますが、アパレルでも人間関係の難しさやサービス業の基本は学んできたつもりです。
高齢社会で人材不足と言われているなかで、介護職は今後も必要な職業ですし、チャレンジしたいと思っています。成人しているので親の反対を押し切ることはできますが、できれば応援してほしいです。どのように両親を説得すればいいでしょうか。

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この記事は、大関さんが執筆しました♪
*資格*
社会福祉士、介護福祉士、認定排泄ケア専門員、排泄機能指導士

解説者/専門家

大関 美里

https://mynavi-kaigo.jp/media/users/13

プロフィール▶ 介護現場の職員の後、祖父の在宅介護での後悔と、自身の介護うつ経験から、そのきっかけになった排泄の支援を追求すべくおむつメーカーへ転職。 1000人以上の方のおむつ交換に触れ、介護する側もされる側も双方が「シッカリ出して、スッキリ生きる」ことが、より良い人生に繋がる。気持ち良く「出す」ことをサポートすることで良い循環が生まれることを実感する。

ご相談いただき、ありがとうございます。

ご相談者さんの言葉から、ご自身のやりたいことを伝える芯の強さと情熱、そしてご両親を思いやる優しさと成熟さを感じて胸が熱くなりました。反対を押し切って突っぱねることを選択しない貴方は本当に素敵です。

現在、アパレルのお仕事をされているとのこと、私も服が好きなので憧れはありましたが、トライする機会も自信も持てませんでした。
そのため、アパレルの本当のお仕事内容は存じ上げません。

ですが、『「対人」のお仕事であり「相手の欲しいと思っているものをコミュニケーションで探っていったり、本人すら気づいていない魅力を引き出してスポットライトを当てる』という意味では、介護職と共通点があるなと思います。

相談者さんは、その部分の難しさはもちろん、サービス業の基本も学ばれていらっしゃって、こんな介護業界にぴったりな方はいらっしゃらないのでは…とも思います。
そちらも踏まえながら、ご相談にお答えしていきますね。

ご両親に話す前に整理したいこと

さて、まずご両親にお話を切り出す前に、介護職への転職について、ご相談者さんも考えていることが多々あるかと思いますが、介護職に関してのポイントを整理してみましょう。

1.介護職の将来性とやりがい

高齢社会の拡大に伴い、介護職の需要は増加しているのはご承知の通りかと思います。
介護はインフラとして将来にわたって重要な職業となる可能性があります。
仕事のやりがいとしても、どんなお仕事よりもその方の「人生」に関わってくる唯一無二のお仕事です。

2.ご自身のスキルとご経験の活かし方

アパレル業界で培われた人間関係構築やサービス業のスキルは、何度も言いますが介護職においても大変有益です。

これらの経験を通じて得たコミュニケーション能力やおもてなしのスキルは、大きな強みですよね。 介護現場でも十分に役立つと思います。

介護職と言うと、直接的な介助が思い浮かびますが、それを根本から支えるのは「信頼関係」です。 信頼を築くためには、コミュニケーション能力やおもてなしのスキルは不可欠であり、逆を言うと、そのスキルさえあれば介護職への適正があると言えます。
介助等の手技は後からでも習得可能ですからね。

3.介護職の実体験のお話を探してみよう

もう既に介護職になるという思いは強く固めていらっしゃるかと思いますが、そのうえでご両親からの理解を得るためには、実体験のお話があるといいですね。
身近にいらっしゃる実例、介護職についての具体的な情報を集めてみることもお勧めします。

ご両親の思いと、切り出し方

「親」の反対には様々な心情が絡んでいることは、ご相談者さんも感じていることと思います。
その気持ちを推理し、それに対する対話の切り出すテーマについて、下記に挙げています。

こちらはあくまでひとつのアプローチですので、ご自身の状況に合わせて良いなと思うところを参考にされてください。

1.不安や心配から反対されている場合

ご両親は介護職が難しい仕事であることを理解しているかもしれません。

この不安を和らげるためには、自分の十分な準備と情熱を伝え、将来のキャリアに対する計画を共有することが有効です。

また、介護職でのやりがいや成長の可能性についても具体的に話すことで、心配や不安な気持ちを減らせる可能性があるでしょう。

2.安定性に対して不安を抱かれている場合

一般的な話題として、介護職に対してご両親は収入や安定性に対する不安があるかもしれませんね。

介護職は社会的な需要が高まっているため、将来的に安定性を保つ可能性があります。
平均月収は、経験や資格の有無や働く場所などにより変動しますが、2022年12月時点で31万8230円です。(※第37回社会保障審議会介護給付費分科会介護事業経営調査委員会資料より)

これは、全産業の平均よりは確かに低いのですが、年々上がっていることや、前述の通り保持資格によっても変動しますし、介護保険外事業ではもっと高収入となる場合もあります。
職場によっては、資格取得を後押しする制度が充実しているところもありますので、スキルアップが比較的しやすい環境と言えますよ。

3.ご両親の期待とは異なる選択だった場合

「親」は子供に対して特定の期待を抱いていることがあります。
ご両親にとってはもしかすると介護職への転職希望は予想外だったのかもしれません。

ここでは、それに共感を示した上で、自分の選択の背景や理由を説明し、将来の幸せや満足感がどれほど大切かを伝えることができると良いですね。

4.ご両親が理解不足なところがある場合

ご両親は介護職の実際の仕事内容やその重要性について、十分な理解がない可能性があります。
先述のとおり、介護職においては人間関係やサービス業のスキルが重要ですが、これは貴方がアパレル業界で培われたのと共通しています。

実例や成功事例を交えながら、介護職が社会的に求められ、自分のスキルが生かせることを具体的に説明すると理解が深まりやすいのではないでしょうか。

切り出しにくいかもしれませんが、ご両親に納得いただくには、一度きりではなく、継続的な対話が大切になると思います。
これらの対話を通じて、冷静かつ誠実に説明することが大切かと思います。ご自身の選択に自信をもち、将来へのビジョンを伝えることで、理解を得る一歩に繋がるのではないかと思います。

その行動は「愛」由来なのか「恐れ・不安」由来なのか

人が何かを決断する、行動する動機には大きく分けると「愛」か「恐れ・不安」があると言います。

愛からくる行動というのは、自分に嘘がなく、文字通り相手に何かを与えたいとか、相手に喜んでもらいたいなどからくる行動ですね。「よい気分の状態」と言っても良いです。

一方で恐れ・不安からくる行動とは、それを選ばなかったら大変になる、苦労する、不幸になる、嫌われてしまうなどが動機となる行動です。
実際には、多くあるのではないかと思いますが、「不安を解消する行動や、備えとしての行動」ですね。
望まないものに目を向けている状態なので、恐れから行動したことは逆に恐れや不安に繋がってくる経験が多いと思います。

私の判断基準ですが「愛からする行動」は、「恐れずに選んでいくGOサイン」だと捉えています。
私は、ご相談者さんからの言葉は、恐れや不安からではなくご両親への「愛」由来だと感じています。
逃げずに、ご自身の思いを伝えようとされているだけで、もうすでに素晴らしいなと思うのです。
ご両親と面と向かい、向き合おうとされている姿勢は、きっとご両親にも伝わっていくと思いますよ。

さいごに

私自身、大切だと思うのは最終的には「ご相談者さんの人生はご相談者さんのもの」ということです。
ご相談者さんが「自分が選んだ道を正解にしていく」そんな気概で進んでいけるように、心から応援しています。

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社会福祉士、介護福祉士、認定排泄ケア専門員、排泄機能指導士

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