マイナビ福祉・介護のシゴト
介護支援専門員(ケアマネージャー)の更新研修は必要?なぜ多くの研修を受けなければならないのか研修の目的や意義を解説!

介護支援専門員(ケアマネージャー)の更新研修は必要?なぜ多くの研修を受けなければならないのか研修の目的や意義を解説!

介護支援専門員(ケアマネージャー)の更新研修については、費用が高い、時間が長いなど批判的な意見が多く挙がっています。ではなぜ、ケアマネージャーはこんなに多くの研修を受けなければならないのでしょうか。研修の目的や意義について専門家が解説します![執筆者/専門家:脇 健仁]


\あなたにぴったりの求人が見つかる/
「ケアマネージャー(介護支援専門員)」の求人を見る

本日のお悩み

ケアマネージャーの資格は更新する必要があるのでしょうか。
更新研修は受講料も高く、時間も長いイメージです。この研修を受ける必要性や、更新しなかった場合どうなるのかを教えてください。

ケアマネとして働くのであれば研修を!そもそも受ける意義について考えてみましょう

執筆者/専門家

脇 健仁

https://mynavi-kaigo.jp/media/users/22

ゆりかごホールディングス株式会社 代表取締役 株式会社ゆりかご 代表取締役 茨城県訪問介護協議会 副会長 茨城県難病連絡協議会 委員 水戸在宅ケアネットワーク 世話人 茨城県介護支援専門員協会 水戸地区会幹事 茨城県訪問看護事業協議会 監事 水戸市地域包括支援センター運営協議会 委員 水戸市地域自立支援協議会全体会 委員 介護労働安定センター茨城支部 介護人材育成コンサルタント 日本社会事業大学大学院 福祉マネジメント研究科 在籍中 介護福祉士・社会福祉士・精神保健福祉士・看護師・介護支援専門員・相談支援専門員・FP2級

ご質問ありがとうございます。
「ケアマネの資格を更新する必要があるのか」という質問の回答ですが、「介護支援専門員(以下、ケアマネジャー)として働くなら更新が必要ですが、そうでなければ更新は不要」です。ケアマネジャーという資格が更新制(5年)となっているためです。

今回は、ケアマネジャーとして働くうえで、なぜたくさんの研修を受けなくてはならないのか制度としての説明ではなく、研修の目的や意義から考えていきたいと思います。
制度的なものについては、厚生労働省介護支援専門員資質向上事業(※外部サイトに遷移します)をご参照ください。

更新研修は、利用者のために一定水準以上の知識と技術を担保するためにある!

介護職員 研修

そもそもケアマネジメントとは、すべての要介護者の自立支援

令和5年4月に厚生労働省が発表した「介護支援専門員資質向上事業ガイドライン」によると、ケアマネジメントとは「生活全般の状況を総合的に把握し、自立した日常生活に向けての希望を十分に把握し、それを踏まえてニーズに応じたサービスを一体的に提供する専門的な機能」とし、介護保険制度におけるケアマネジメントの目的は「介護保険制度が目指す「自立支援」の理念を実現すること」とあります。

そして、「すべての要介護者が等しく、サービスの利用における権利を担保すること」がケアマネジメントの意義であり、その意義を実現するために他の介護保険給付とは異なり、居宅介護支援は全額が保険給付で提供されていると述べています。
※ 出典:厚生労働省 介護支援専門員資質向上事業ガイドライン

更新研修を行うことで、介護の質向上やボトムアップを図っている

ケアマネジャーの更新研修を含む、法定研修には、専門的な知識・技術を生かしてケアマネジメントの価値を実現していくために、利用者の決定を支援するに足る一定水準以上の知識・技術を有することが求められています。

そのため、研修の目的としては、「ケアマネジャーとして利用者の自立支援に資するケアマネジメントに関する必要な知識及び技能を習得し、地域包括ケアシステムの中で医療との連携をはじめとする多職種協働を実践できるケアマネジャーの養成を図ること」とあります。

つまり、ケアマネジャーとしての「ケアマネジメントに関する必要な知識及び技能」を研修の機会として設けることで、質の向上やボトムアップを図ろうとしているのです。

ケアマネの法定研修に対する声として、回数が多い、時間が長い、更新期限が短い、費用が高いなどが挙がっているようですが、その方たちは回数を少なくし、時間を短くしても、ケアマネジャーの質の担保はできるとお考えなのだと思います。

前述しましたが「一定水準以上」という部分が大切で、一定水準以下のケアマネジャーをどこまでボトムアップさせていくかが、研修の目的なのです。よって、きちんとケアマネジメントを理解し、多職種連携も実践できている人からすると、とても煩わしい研修と感じるのにも無理はないのかもしれません。
※ 出典:厚生労働省 介護支援専門員資質向上事業ガイドライン

ケアマネジメントを評価する方法として研修は大切!

ケアマネジメントを自己評価することは危険

しかし、自分がケアマネジメントについて、どこまで理解して、実践できているかを、誰がどのように評価するのでしょうか。

自己評価では、自分でできているつもりとなっていても、他者評価ではこのケアマネジャーはできていないと判断されることもあると思います。また、仮にこのケアマネジャーは良くないと思っても、直接指摘をしてもらえる機会は少ないとも感じます。

その背景として、介護サービス事業者は、ケアマネジャーがサービスをコーディネートするという機能がある以上、できるだけ自社サービスを利用してほしいと思うので、ケアマネジャーに苦情や改善について言いづらいという構造があるからです。

ケアマネジメントを正確に評価することは難しい

国は、医療でもそうですが、ドナベディアンモデルによる「アウトカム評価」でサービスの質を評価しています。
ドナベディアンモデルとは、1.ストラクチャー(構造)、2.プロセス(過程)、3.アウトカム(結果)の視点から考えるもので、ストラクチャーは人員配置など、プロセスは事業者と利用者間の相互作用等(要介護度別の基本報酬や訓練等の実施)があたります。

1つ目と2つ目のストラクチャーとプロセスの例として、基本報酬や訪問看護の特別管理加算やサービス提供体制強化加算、訪問介護等の特定事業所加算などがあります。そして、3つ目のアウトカムはサービスによりもたらされた利用者の状態変化等があたり、例として、介護予防通所介護の事業所評価加算や、老人保健施設の在宅復帰・在宅療養支援機能加算などがあたります。このアウトカム評価では、要介護度の改善やデータの蓄積と分析をすること、PDCAサイクルによる継続的なサービスの質改善のプロセスのあり方が問われています。

みなさんは、ケアマネジメントにおける質の評価を客観的に行っていますか?満足度調査もその1つですが、これも利用者の立場では、悪い評価は書きづらいという構造もあります。

最後に:更新研修は客観的な視点を取り入れるチャンス!

ケアマネジャーとして、ケアマネジメントがしっかりと実践できているかを知るためにも、集団研修によるグループスーパービジョンや参加者同士によるピアスーパービジョンなどで、自分が同じケアマネジャーの中で、どのくらいの習熟度があるかという自己覚知の機会と、新たな学びの機会など更新研修を含めた、法定研修や法定外研修などは、必要だと考えます。

資格所持のための研修でもあるのですが、本来の目的はケアマネジャーとして、目の前の利用者のために、本当に利用者主体のケアマネジメントが実践できているかを振り返り、訓練する場なのではないでしょうか。常に専門職として、自己研鑽を重ねることは、このVUCAの時代変化に、多様化する社会的課題を、介護保険制度により支えていく立場にとって必須だと思います。ぜひ積極的に様々な研修に参加して、たくさん学んでいきましょう。

あわせて読みたい記事

ケアマネジャー(介護支援専門員)とは?資格試験の要件や仕事内容、勤務先について解説 | ささえるラボ

https://mynavi-kaigo.jp/media/articles/956

ケアプランを作成し、利用者を必要なサービスへとつなぐケアマネジャー。 資格を得るには、受験要件を満たしたうえで、試験に合格する必要があります。 資格の取り方から仕事内容まで、ケアマネジャーに関する基礎知識を解説します。【ささえるラボ編集部】

ケアマネがやってはいけないこととは?頼まれがちなこと、解決方法も紹介 | ささえるラボ

https://mynavi-kaigo.jp/media/articles/849

この記事では、ケアマネの仕事内容を振り返り、ケアマネがやってはいけないことや、やってはいけないけどケアマネが頼まれがちなことについて紹介していきます。解決方法もあわせて記載しているので、参考にしてみてください。

\あなたにぴったりの求人が見つかる/
「ケアマネージャー(介護支援専門員)」の求人を見る
お悩み相談室への投稿はこちら!
マイナビ福祉・介護のシゴト 閲覧ランキング
【北海道・東北】
【関東】
【北陸・東海・甲信越】
【関西】
【中四国・九州・沖縄】

この記事のライター

ゆりかごホールディングス株式会社 代表取締役
株式会社ゆりかご 代表取締役
茨城県訪問介護協議会 副会長
茨城県難病連絡協議会 委員
水戸在宅ケアネットワーク 世話人
茨城県介護支援専門員協会 水戸地区会幹事
茨城県訪問看護事業協議会 監事
水戸市地域包括支援センター運営協議会 委員
水戸市地域自立支援協議会全体会 委員
介護労働安定センター茨城支部 介護人材育成コンサルタント
日本社会事業大学大学院 福祉マネジメント研究科 在籍中

介護福祉士・社会福祉士・精神保健福祉士・看護師・介護支援専門員・相談支援専門員・FP2級

関連する投稿


訪問介護ができること、できないこと~医療行為との境目を知る~

訪問介護ができること、できないこと~医療行為との境目を知る~

介護職は医療行為(医行為)にあたるサポートはできないものとされています。しかし、日常生活を支える介護の現場において、この境目の判断は難しいものです。そこで、この記事では改めて、介護現場における医療行為(医行為)について解説し、介護職ができることと、できないことを解説します。【執筆者/専門家:脇 健仁】


介護業界で働きたい人必見!転職活動のポイント総まとめ

介護業界で働きたい人必見!転職活動のポイント総まとめ

「介護の仕事をしてみたいけれど知識が十分でなく、一歩を踏み出すのが不安……」。そうした人に向けて、施設やサービスの種類、介護業界の業務内容、必要な準備や心構えなどについて解説します。入念なリサーチで職場とのミスマッチを防ぎ、新しい人生の一歩を踏み出しましょう!


介護と仕事の両立|「介護離職」を防ぐために何ができるか

介護と仕事の両立|「介護離職」を防ぐために何ができるか

超高齢社会の日本において、親の介護を抱えている労働者は非常に多くいます。また、介護を理由に仕事を辞めてしまう「介護離職」も一定数いるのが実情です。この記事では、仕事と介護の両立を目指すためにどのような工夫ができるか、実体験をもとに専門家が解説します。【執筆者/専門家:大関 美里】


介護職の仕事内容とは? 施設の種類による違いや仕事の魅力についても解説!

介護職の仕事内容とは? 施設の種類による違いや仕事の魅力についても解説!

近年、高齢者や障がい者への支援のニーズが高まるなか、社会的なニーズも高まり、将来性のある仕事として注目されている介護職。そんな介護職の主な仕事内容、施設の種類による仕事内容の違い、給与事情、仕事の魅力など、介護職の仕事に関する基礎知識を徹底解説します。【執筆者:ささえるラボ編集部】


介護業界の生産性向上って?実際の取り組み例をご紹介します!~実践事例編~

介護業界の生産性向上って?実際の取り組み例をご紹介します!~実践事例編~

介護職員等処遇改善加算の加算要件にもなった生産性向上。過去2回にわたって生産性向上とは何かという導入編、実際にどのような取り組みができるかという実践編を紹介してきました。3回目となる今回は、執筆者である伊藤先生が実際にご自身の事業所で生産性向上に取り組まれた内容を紹介する実践事例編です。生産性向上に対するイメージがより具体的になりますように。[執筆者/専門家:伊藤 浩一]


最新の投稿


訪問介護ができること、できないこと~医療行為との境目を知る~

訪問介護ができること、できないこと~医療行為との境目を知る~

介護職は医療行為(医行為)にあたるサポートはできないものとされています。しかし、日常生活を支える介護の現場において、この境目の判断は難しいものです。そこで、この記事では改めて、介護現場における医療行為(医行為)について解説し、介護職ができることと、できないことを解説します。【執筆者/専門家:脇 健仁】


介護業界で働きたい人必見!転職活動のポイント総まとめ

介護業界で働きたい人必見!転職活動のポイント総まとめ

「介護の仕事をしてみたいけれど知識が十分でなく、一歩を踏み出すのが不安……」。そうした人に向けて、施設やサービスの種類、介護業界の業務内容、必要な準備や心構えなどについて解説します。入念なリサーチで職場とのミスマッチを防ぎ、新しい人生の一歩を踏み出しましょう!


第126話 介護職のユニフォーム/ほっこり介護マンガ

第126話 介護職のユニフォーム/ほっこり介護マンガ

「介護職員・並木マイの ほっこり成長日記 ~転職して、介護の仕事はじめました~」 保険会社から介護の仕事に転職した、並木マイさん(31歳)の成長と 介護現場のあるあるを描く、ほっこり癒し系マンガ! 休憩時間、このマンガを読んだあなたが クスっと笑えてちょっと癒され、ほっこりした気持ちになれますように。


介護と仕事の両立|「介護離職」を防ぐために何ができるか

介護と仕事の両立|「介護離職」を防ぐために何ができるか

超高齢社会の日本において、親の介護を抱えている労働者は非常に多くいます。また、介護を理由に仕事を辞めてしまう「介護離職」も一定数いるのが実情です。この記事では、仕事と介護の両立を目指すためにどのような工夫ができるか、実体験をもとに専門家が解説します。【執筆者/専門家:大関 美里】


第125話 介護職になってよかったと思うときとは?/ほっこり介護マンガ

第125話 介護職になってよかったと思うときとは?/ほっこり介護マンガ

「介護職員・並木マイの ほっこり成長日記 ~転職して、介護の仕事はじめました~」 保険会社から介護の仕事に転職した、並木マイさん(31歳)の成長と 介護現場のあるあるを描く、ほっこり癒し系マンガ! 休憩時間、このマンガを読んだあなたが クスっと笑えてちょっと癒され、ほっこりした気持ちになれますように。


マイナビ福祉・介護のシゴト
「マイナビ福祉・介護のシゴト」は、福祉・介護職に特化した中途、パート向け求人サイトです。
介護職をはじめ、福祉・介護業界に関連する職種の求人を掲載しています。
本当に自分にあった施設や事業所を、ご自身で手軽に探すことができるよう職場の雰囲気がリアルに伝わる情報を用意することで、適切なマッチングを実現していきます。
【職種から求人・転職情報を探す】