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介護慰労金、なぜ一律の金額じゃないの?

介護慰労金、なぜ一律の金額じゃないの?

【回答者:伊藤 浩一】「慰労とは労をねぎらうこと」に注目!


本日のお悩み

介護職への給付金は、コロナ感染者が発生していたら20万円、いなかったら5万円だそうですが、一律ではないことに納得いきません。コロナが出なかった施設はを発生させないための努力をしていたし、同じ金額にしてほしいです…。

「慰労とは労をねぎらうこと」に注目!

とってもタイムリーなご質問ありがとうございます。
私の施設でも、どの職種まで対象なのか?など良く話題になっていますね。
また、金額に関しても相談者さんと同じく5万円なのか?20万円なのか?などそれぞれに調べているようです。感染者や濃厚接触者が確認された施設、事業者さんはもちろん、感染防止に最大限の対応を図っている現場の皆さんからすれば、当然の関心ごとと思います。

さて、ご質問の件です。

この給付金、金額や対象者に目が入ってしまいがちですが、どのような目的のお金でしょうか?そもそも、正確には、「介護慰労金」が名称です。介護予防サービスを含む、全介護サービス事業所で、利用者と接しながら継続的にサービス提供する職員が支給対象となるようです。この「介護慰労金」、分解してみると「介護」と「慰労金」という言葉に別れます。「慰労」とは、労をねぎらうこと。すなわち介護事業に関わる者(正確には利用者に接する者に限定されていますが)に対して、その労をねぎらうことを目的とした給付金となります。

とすると、この「労」に20万円と5万円の差をつけた。
ということになりますでしょうか。

では、「労」を感染者が確認されなかった事業所と確認された事業所に分けて考えてみましょう。

感染者が確認されなかった事業所は、感染対策をしっかり行いこの感染力が高い新型コロナウイルスからご利用者を守られました。事業所の職員全員が感染防止の意識を高く持たれ、日々の勤務はもちろん、私生活に至るまで気を休める間もなかったことと推測します。
一方、感染者が確認された事業所は、決して感染対策を怠っていた訳でなく、予期せず感染者が確認されてしまったケースがほとんどではないでしょうか?感染が確認されてからは、クラスター拡大防止の為、ゾーニング、防護服の着用はもちろん様々な対策を取らざるを得ず、自分の感染はもちろん、家族の感染も覚悟しなければならない状況で、実際、自宅に帰れなかった方も多かったと聞いています。家族とも会えず、世間の厳しい目とも戦いながら、自分が感染する恐怖を抱え、目の前のご利用者の支援を継続する。そして、その感染者の支援継続は、ほとんどの感染確認された事業所の職員自らが、手を上げて対応にあたってくださったと伺いました。本当に心から脱帽いたします。

 この新型コロナウイルス、誰もが不安の中、精一杯の行動をとってきました。しかし、冷静に「労」という視点で、感染が確認されなかった事業所と、確認された事業所を比較してみると、大きな違いがあるのではないでしょうか。

質問者さんの気持ちも十分にわかりますが、
ここは自分が、感染確認された事業所で働いたらどのような状況になるか?ちょっとだけ想像してみてください。責任感の強い質問者さんは、きっと自ら志願して対応にあたってくださることが想像できます。その時、感染確認されてない事業所の職員さんと一律に同額の給付金で納得できますか?
ここは素直に、「お疲れ様でした」と差額に感謝を込めるのも良いかもしれませんね。

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この記事のライター

茨城県介護福祉士会副会長
特別養護老人ホームもくせい施設長
いばらき中央福祉専門学校学校長代行
NPO法人 ちいきの学校 理事
介護労働安定センター茨城支部 介護人材育成コンサルタント
介護福祉士 社会福祉士 介護支援専門員

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