最初に働くならどの施設?介護施設の種類と働き方
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「特養(とくよう)」って何なんだろう…?知識がなくても大丈夫!
みなさんは、「特養(とくよう)」という言葉を聞いたことがありますか?
特養は、「特別養護老人ホーム」のことで、自宅での介護が難しくなった高齢者が介護サービスを受けながら暮らす施設のことです。
入居者のほとんどが人生の最期までここで生活をすることも多いため、要介護度も重度の方の割合が高く、介護職員の皆さんも24時間365日シフトを組みながらチームで介護をしています。
今回は介護が未経験の方にも簡単に分かりやすいように、こういった施設の種類ごとの特徴や初心者におすすめの施設についてお話しします。
■「特養」の特徴
特別養護老人ホームは、先にも述べたように、要介護度が重度の方の割合が高い施設です。施設内で亡くなるまで生活される方も多いため、その場合は「看取り」も行います。
ここで働く介護職は、介護度が重度な方向けの介護が必要になります。介護技術や別途研修を受けて、医療的なケアをすることもあります。
■「特養」の働き方
特養では看護師や理学療法士など、色々な資格を持った職員と一緒に入居者を支えていきます。
認知症の介護や入浴介護、レクリエーションなど、専門性や得意分野を生かして仕事をしている人が多く、シフトも日勤、早出、遅出、夜勤など様々なシフト形態もあります。さらに、例えば夜勤専従という夜勤だけする人もいたりと働き方も選べるのが特徴です。
また、ベトナムや中国、シンガポールなどの外国人介護職の受入れをしている施設もあります。
介護業界で中心的な位置づけとなる施設のため、最近ではパワースーツや清掃ロボット、コミュニケーションロボットなどの介護ロボットを導入するなど、最新の環境で介護を提供することが可能です。
特養は民間企業では運営できず、社会福祉法人が主な運営母体となるため公的なサービスの要素が強く、比較的低価格で入居することができます。
高齢者からも人気で、待機者が数百人という特養も少なくありません。
介護施設の種類はいろいろ、その違いとは?
「介護施設」と一言でいっても、様々な種類や形態があります。
- 特別養護老人ホーム
- 介護老人保健施設(介護医療院)
- 経費老人ホーム(ケアハウス)
- 有料老人ホーム(介護付き、住宅型、健康型)
- グループホーム
- サービス付き高齢者向け住宅
など、高齢者が施設に入居して生活するようなサービスを「介護施設」と総称して呼ぶことが多いです。
ただし、介護形態としては特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、軽費老人ホーム、介護付き有料老人ホームは「施設介護」であり、住宅型有料老人ホーム、健康型有料老人ホーム、グループホーム、サービス付き高齢者向け住宅は「在宅介護」と、介護保険上では位置づけが異なります。
※「在宅介護」は基本的に初任者研修(ホームヘルパー2級)以上の資格が必要となります。
介護施設の種類により、入居費用や入居期間、施設の機能は異なります。
例えば、経費老人ホーム(ケアハウス)は基本的に自立した高齢者が入居する施設です。
介護をするというよりは、見守りや清掃などの生活支援をすることが多いのが特徴です。
逆に、特養や介護付き有料老人ホームでは「終の棲家」として入居される方が多く、介護度も比較的高い方が多いです。
入居者の体に触れる「身体介護」、入居者の生活の手助けをする「生活支援」など提供するサービスも異なりますので、自分が気になることやチャレンジしたいことを明確にして就職する施設を選んでみましょう。
【施設の選び方】施設形態毎のメリットとデメリットを比較しよう | ささえるラボ
https://mynavi-kaigo.jp/media/articles/19転職のために介護の求人を見ていると、給料や勤務時間の他に施設形態も異なっていることに気づくと思います。本記事では施設形態別の特徴と、働く上でのメリットとデメリットを解説します。
初めて介護の世界に飛び込む方へおすすめの施設形態をご紹介!
私は、初めて介護施設で仕事をされる方には特別養護老人ホーム(特養)や介護老人保健施設(老健)などで仕事をすることをお勧めします。
なぜなら、大きな介護施設であれば先輩職員も多く教育体制がしっかりしていると考えられるからです。
入居している利用者さんの人数も多いため、介護経験を多く積むことができますし、最新の介護用具を使いながら仕事をすることができるため、とても勉強になると思います。
■利用者さんとの向き合い方にも注目
とはいえ、大きな施設で仕事をするとどうしても職員一人で複数人の利用者さんを支えることになり、利用者さん一人ひとりと向き合うことができないという声を多く聞きます。また、歴史の長い施設では、職員同士の人間関係が出来上がっているため心配される求職者の声もあるのが現状です。
利用者さん一人ひとりとゆっくり向き合い、介護を提供していきたいと思っている方はグループホームがお勧めです。
グループホームでは1ユニット9人と人数が限定されていますので、比較的ゆったりとした時間が流れています。
その中で入居者の生活を一緒にお手伝いするという仕事内容のため、比較的人気の施設の種類です。
しっかり経験を積んで学びたい方は、特別養護老人ホーム(特養)や介護老人保健施設(老健)などを、利用者さんと向き合いたいという方はグループホームなどを選んでみても良いと思います。
平栗さんから皆様へメッセージ
利用者さんの人数や介護度、提供する介護サービスの種類などは介護施設により大きく異なります。
同じサービス付き高齢者住宅でも、医療依存度(医療の提供がどのくらい必要かという度合い)の高い利用者さんを中心に受け入れている施設もありますし、逆に軽度の利用者さんのみを受入れている施設もあります。
どのような利用者さんがいるのか、面接や見学に行った際に確認して、どのような介護を提供しているのかぜひ確認してみてください。
介護労働安定センターのデータによりますと、介護職の皆さんが仕事をやめる二大理由は「介護理念や介護のやり方に不満」「職場の人間関係の悪化」です。
就職する前にどのような方針で介護をしているのか、想いをぜひ確認してみると自分に合った介護施設を選ぶことができると思います。
またどのような方が職場で働いているかも併せて確認しましょう。
雰囲気の良い介護施設では、介護職員の連携をとるためにコミュニケーションの回数が多かったり、また笑顔で仕事をしていたり、生き生きと仕事をしている人が多いです。
そのあたりも面接や見学に行った際に確認しましょう。
どんなにきれいな施設であっても、大切なのはどのような方が施設で働いているかだと思います。
面接官も先輩になる方ですから、感じの良い対応だなと感じる施設が自分に合った施設だと思います。
介護業界はまだまだ人材不足の業界です。
仕事をする方が比較的職場を選ぶことができる業界だからこそ、色々な施設を見て、聞いて、実感して自分に合った職場を選んで頂けましたら幸いです。
「特養」と「老健」具体的な働き方の違いとは?
執筆者
特養と老健、全国にどれくらいの数がある?
令和元年度時点の全国の特別養護老人ホーム(以下、特養)の施設数は約8,200事業所、介護老人保健施設(以下、老健)は約4,300事業所となっています。
私からは、特養と老健の働き方の違いについてご説明します。
■「特養」って、どんな施設?(おさらい)
特養については、平栗さんが丁寧に説明をして下さっていますね!!
ポイントはリハビリや治療という目的ではなく、365日24時間切れ目ない支援を提供する、生活の場所であるという事でした。
その人を深く知り、信頼関係を構築しながら日々の生活を笑顔で送って頂くために『生活の場としての計画に沿って』サービスを提供していきます。
■「老健」って、どんな施設?
一般的には、『病院と在宅を繋ぐ中間的な施設』と言われています。
医療的な管理のもと、介護や機能訓練その他必要な医療並びに日常生活上の支援を行い、心身機能の維持向上を図り在宅への復帰を図る施設です。
2つの施設では、支援の目的が異なる
介護職員として提供する業務内容は、『日常生活上の支援』です。
食事、入浴、排泄、レクリエーションの提供等、業務の内容だけ見ると特養での業務内容と似ている部分も多くあります。
ただし老健の場合、入所されている目的が特養とは大きく異なります。
目的が変わるということは、業務内容の意味も一つひとつ変わってくるということです。
特養の目的は、これまでの生活を継続すること
特養での業務支援は『それまでの生活の継続』を軸に計画が立てられ、支援が提供されます。
在宅生活で送ってきた、その人らしい生活を紐解き、生活の場所が『特養』という場所に代わっても、可能な限りこれまでの生活サイクルや習慣を大切に、お一人お一人の生活サイクルに合わせて支援が提供されていきます。
老健の目的は、在宅復帰(家に帰ること)
一方で老健という施設の場合には、『在宅復帰』が入所の目的となります。
入所期間も基本的には3か月以内で、その期間に集中的にリハビリテーションが実施されることとなり、在宅生活へ戻る前の準備をして行く施設となります。
■老健の役割とは?
入院してベッド生活が続くと、もとの生活に戻りにくくなる
認知症の状態や加齢に伴う心身機能の衰えによって、怪我や病気で入院をしてしまうことがありますよね。
病院に入院すると、入院期間の多くはベッド上での生活になります。
当然、その期間が長ければ長いほど下肢筋力(脚の筋肉等)の低下など身体的な機能は低下します。
治療が完了し退院したとしても、その低下したままの状態で在宅生活に戻るとどうなるでしょうか?
日常生活に戻るためのリハビリ等をするのが老健
入院前には行けたはずのトイレに一人で行くことが難しくなっていたり、ちょっとした段差でつまずきやすくなってしまったり、浴槽をまたげなかったりと、家で生活を送るには様々な弊害が生まれてしまいます。
以前の生活に戻るためには、衰えた心身機能をできるだけ元の状態まで戻すことが必要ですよね。
病院での治療は完了しているので、ベッド上で長期間療養を続ける理由もありません。
そこで入所するのが、医療的管理のもと提供されるリハビリテーションや介護の機能がある、老健ということになります。
たくさんの専門職と一緒にチームで働く
老健では常勤の医師が配置されており、看護職員や理学療法士(PT)、作業療法士(OT)、言語聴覚士(ST)といったリハビリ専門職が、その方にとって必要な、「家に帰る」ためのリハビリを提供していきます。
介護職員もそのチームの一員となり、他の専門職が専門性を発揮できるように、目的や情報を共有しながら、退所までのご利用者の日常生活の支援を行います。
以上が老健での介護職員の業務内容です。
特養と老健では、施設としての機能が違うこと、業務内容が同様であってもその目的が変わってくるということは、ご理解いただけたでしょうか?
特養と老健、どんな人が向いている?
特養と老健では、業務内容に大きな差はないことをお伝えしましたが、では自分はどちらの施設形態があっているのか?一緒に考えていきましょう。
■特養に向いているのはこんな人
特養はご利用者と、とことん向き合える
老健では入所期間が3か月以内という『期限』があります。
チームとして一生懸命支援をして、無事元気になり、在宅で生活できるまでの機能が回復したご利用者は在宅へと帰っていきます。
そしてまた新しいご利用者が入所してきます。
そんな時に、『もっと関わりたかった』『もっとたくさんお話をしたかった』『もっとじっくり関係を築きたい』『最後まで関わりたい』という想いを抱く可能性があるのであれば、特養が向いているかもしれません。
老健はあくまで、在宅復帰をサポートするリハビリの機能を重視した施設です。
ご本人との人間関係が築けてきたころには退所してしまうという寂しさもあるかもしれません。
特養に向いている人の特徴は?
よって、特養に向いている人は、総合的な保健医療介護の知識や技術を得ながら、とことんご利用者のことを知り、関係を築きながら最後までその方と関わり続けたいと思うかた!
そして、お看取りという人生の総仕上げを経験された後に、深く悲しみながらも、感謝をもってその想いを他のご利用者に全力で活かせるかたです!
■老健に向いているのはこんな人
老健は、期限があるからこそ、集中してご利用者と向き合える
老健で働く場合、在宅復帰を目的としたチームの一員として、『終身ではない』その瞬間の関わるというところに力の見せ所があると思います。
日々の生活の中で心身機能の維持や向上を実感できることで、在宅復帰という目的が達成された際には、大きなやりがいや喜びを感じられます!
また、老健ではリハビリをはじめとした医療看護の専門職が特養に比べて多く配置されているので、専門職との連携の中で介護技術や医療的な知識も得ることができます。
老健に向いている人の特徴は?
よって、老健に向いている人は
技術や知識を総合的に学び、入所者の在宅復帰という目標を支援できる喜びを感じれるかたです。
職業選択をされる際の参考になれば幸いです!!
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