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旦那様が亡くなった利用者さんへの声かけ、良い対応は?(段階に分けて解説します)

旦那様が亡くなった利用者さんへの声かけ、良い対応は?(段階に分けて解説します)

【回答者:後藤 晴紀】今できる事を一緒に考えてみましょう


本日のお悩み

デイサービスに勤務しています。旦那さんが亡くなった利用者さんに対してどう声をかけたらいいでしょうか?ずっと悲しそうで元気がなく、心配です。

今できる事を一緒に考えてみましょう

ご質問ありがとうございます。

私たちの目の前にいらっしゃるご利用者は、その長い人生の道のりの中で沢山の喪失体験を経験してきていますよね。

何故自分だけ残されて。。。そんな思いをしている方もいらっしゃるかもしれません。
その傍らで、落ち込んでいるご利用者を見ていると、何もできない自分自身の無力さを感じますよね。どうにか、以前のお元気な姿に一日でも早く戻っていただきたいですよね。
その気持ち、私も何度も経験してきました。

質問の回答ですが、少し時間を差し上げてください。
そして、何をするでもなく、ただ隣にいて差し上げるだけでも、無言で背中をさすって差し上げるだけでも良いと思います。

食事量や言動に注目しましょう

その中でも、ご本人の言動やお食事の量など、いつも以上に状態把握に努めていきましょう。
喪失体験をされた方の中には、それが原因でうつ傾向になってしまう方もいらっしゃいます。
元気な状態に回復できる、体力と気力のバランスは注視していきましょう。

一般的な、喪失体験から回復する過程ですが、現段階でどのステージなのかを認識する事は支援者として大切な行動の一つです。
その段階ごとに、関わり方や声の掛け方などをチームで共有し、元気な姿に戻れるようにサポートしていく事が肝要と感じます。

まずはご質問者様が感じている心配事を、会議を通じて仲間たちに発信していただきたいと思います。

ショック期の対応

過程についてですが、一般的なものとなりますので、必ずしも個別のケースに当てはまるものではありません。そのプロセスから脱しても再び繰り返されるケースもありますが、チームとご利用者さんの力になることを信じてお伝えいたします。

まずは、大きく分けて3つの段階があります。
第1段階はショック期と呼ばれ、その事実を受け入れられず、信じることができない状態です。
この状態では、『死』というものを強く否定し、苦しく、涙も止まらない状態で、何事も考えられず、パニックとなっている状態です。

ご質問者さんやチームで言葉を掛けても、ご本人には届かない時期かもしれません。
そっと見守り、背中をさすって差し上げるしかできない状況かもしれません。
食事も喉を通らない状態かもしれませんが、栄養や睡眠がしっかりとれているのか確認してください。

私たちの想いを届けることはできると信じています。

喪失期の対応

続いて第2段階です。
第1段階の『死』というものを受け入れられはしましたが、もっとこうすればよかったという悔みや、自分の大切な人を奪われた、やり場のない怒りによる喪失期となります。

ここでは、個人への観念が強く思い起こされ、感情の起伏が激しく、哀しみや怒りが押し寄せてくる段階と言われています。

喪失感による抑うつ症状と似た症状がみられるかもしれません。
この段階では、ご本人のあるがままを受け入れ、決して否定せず『○○さんはそう思われるのですね』『そう思われて当然ですよ』『大切な方ですからね』と認めて差し上げてください。

この時期にも食事や言動、精神状態の観察は継続してくださいね。この過程を繰り返し、長い時間をかけて受容期・回復期へと向かっていきます。

スタッフの皆さんは、距離をとるのではなく、いつも通りの対応で良いと思いますが、一つだけ約束事を決めておいてください。

その約束事は、ご利用者さんに『あなたに出会えて私はうれしいです。』という事を伝える事
『たくさんのありがとう』を伝える事、その為の簡単な役割を創って差し上げる事です。

ポイントは、『私たち』ではなく、『私は』と個人の気持ちを伝えると、より質問者さん達の想いがご利用者さんに届くかと思います。
『私は一人じゃない。私にも役割がある』と感じていただけるように、時間をかけて伝えてください。協力的なご家族であれば、ご家族とも共有できるとより良いかもしれませんね。

受容期・回復期の対応

この期間を経て、受容期・回復期へと向かっていきます。

この時期になると、気持ちも前向きになりますが、新たな人間関係をつくったり、新しい場所へ移動するとご本人への負担が増大して、再び抑うつ状態になってしまう可能性もあります。

新しいご利用者との関係や別の新しいサービスの利用は少し待った方がよいかもしれません。
また、仲の良いご利用者との会話の中でも『私の場合はこうだったから、あなたもこうよ』などと、他のご利用者からの励ましや介入には注意して差し上げてくださいね。
気を付けないと、気持ちの押し売りになってしまいますので。。。

喪失感は人それぞれ、同じプロセスを踏んでも、考え方やその悲しみの度合いは全く異なります。
その場合は『○○さんも大変だったんですよね。私は今はお二人がお元気で居てくれることが幸せですよ』等と声をかけて差し上げると、不快感を与えずに話題を変えられるかもしれません。

ご利用者の悲しみの中で、私たち介護職の役割とは

冒頭でも触れましたが、ご利用者の皆様は多くの喪失体験を経験されてきました。長年連れ添ったご主人を亡くされ、ご自身の半身が失われた様な、これまでにない深い悲しみの中におられるのかもしれません。私には想像すらできない悲しみです。
そして、その経験を乗り越えてこられた方々も沢山いらっしゃいますよね。

私たちが思っている以上に、ご利用者の皆さんは強いと思います。
強いと信じています。

でも、一人では立ち上がれないことだってありますよね。
そんな時に、傍にいて下さる皆さん介護職員のチームは、かけがえのない存在になれると思います。
ご利用者さんに、沢山学ばせていただきましょうね!

続報が気になりますが、まずは適切に関われるように願っています!!
その先にある、ご利用者さんの想いや夢や願いを叶えて差し上げられる事を願っています!

この記事のライター

・けあぷろかれっじ 代表
・NPO法人JINZEM 監事

介護福祉士、社会福祉士、介護支援専門員、潜水士

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