本日のお悩み
利用者さんの事で悩んでます。
ある利用者さんに嫌われてます。初対面からそうでした。
「あんたの顔、嫌い!ぶっさいく!」と言われます。
たまに「ありがとうね」と優しい眼差しで話してくれるのですが…。
認知のある方なのでいつ切り替わるか解らないのです。
でも認知があるからって思うのも私自身を正当化してしまいます。
夜間は自分しかいないので、いくら叩かれても対応しないといけません。
叩かれたりするのはまだ平気なのですが、拒否されるのが辛いです。心臓がバクバクです。
他のスタッフには、そんな事なくいつも笑顔で話しています。
拒否される時は大きな声を出されるので、フロアーにいるみんなが見ています。
他のスタッフはそれを見て「もう~そんな事言わないの」と言って対応を代わってくれますが、でもその時は本当に辛いです。
ただ単に自分自身のプライドが高いだけなのでしょうか。
質問者:チョコ さん
利用者さんに好かれる介護職・嫌われる介護職の特徴とは?
マンガ監修:望月太敦(公益社団法人東京都介護福祉士会 副会長)
執筆者
介護現場で仕事をしていると、『○○さんにはしてほしくない』とか、『○○さんがいい』なんて、利用者さんから良くも悪くも指名を受ける職員がいらっしゃいますね。
私の施設でも、実際に利用者さんからそのような声が聞こえてきたことがあります。
利用者さんからお話を伺ったり、職員本人から理由を聞いたり、普段の働いている姿を見ていると、利用者さんから『好き嫌い』を決められてしまう職員の特徴が見えてきます。
今回は、利用者さんから好かれる職員、嫌われてしまう職員の特徴をお届けします。
■利用者さんから好かれる職員の特徴4つ
① 笑顔でハキハキ対応する。
② 利用者さんのお話をよく聞く。
③ 利用者さんから言われたことを、出来るだけ早くに対応(笑顔と謝罪が上手い)。
④ 職員側から利用者さんの困りごとを聞いてくれる。
利用者さんから評判の良い職員を観察してみたら…
『あの子はいつも元気。こっちがうれしくなっちゃう。』『いつもよく声をかけてくれて、名前はわからないんだけど、いい子ですよね。』
私の施設でも、利用者さんからいつもそう言ってもらえる職員がいます。
実際にその職員の現場での様子を見てみると、現場での動きや流れは、他の職員と大きく違いはありません。
ではなぜ、利用者さんからの信頼が厚いのでしょうか?
普段の何気ない関り方から、このスタッフが好きと言われる理由が見えてきました。
利用者さんから好かれる職員の、実際の対応
利用者さんの入浴の準備を行っていた際に、他の利用者さんからコールがあった際の対応でした。
職員:『今○○さんから呼ばれたので、一度行ってきますね!!終わったらまた戻ってくるので、どちらのシャツにするか選んで待っていただけますか!』とその場を離れると、コールを押された方の居室へ行き
職員:『お待たせしました!遅くなってごめんなさい!どうされました??』と笑顔で対応していました。
その方の対応を済ませて、元の利用者さんの居室に戻ると
職員『お待たせしました!途中で抜けてしまってごめんなさい!どちらのシャツに決めましたか??』
利用者:『こっちにするよ。』
職員:『やっぱり、○○さんのお気に入りですからね!』
利用者:『よくわかったね』
職員:『もちろん』
利用者:『あんたにゃかなわんね』
職員:『ありがとうございます!また来ますね!』と笑顔で談笑を交えながら、またいつもの対応に戻っていきました。
「接遇」を理解した対応をしているか?
当たり前のことのように思えるかもしれませんが、私はこれを『接遇』を理解した模範的な対応だと感じます。
衣類準備という目的を達成するだけではなく、その対応の中には『笑顔』『説明と同意』『謝罪』『感謝』これらの思いを言葉と態度という形で相手に届けられているからこそ、このスタッフはご利用者さんから厚い信頼を得ているのです。
普段の業務ではどうしても慌ただしくなってしまうこともありますが、この『意識』があるかないかで、利用者さんとの大切な時間が少し晴れやかになるのだと感じています。
また、利用者さんへ一方的に話をするのではなく、相槌を打ち、質問をしながら利用者さんの話を伺う姿勢が、利用者さんにとって大切な時間になっているのだと思います。
スキマ時間に、自分から声掛けを!
忙しくてそんな時間はない!と言いたくなるかもしれませんが、業務の合間の5分、入浴時間、廊下でのすれ違いのお声掛け等、実は短時間でも利用者さんと関われる時間はあるんです。
ここが見つけられるか見つけられないかが、大きな差になってきます。
利用者さんから声をかけていただくのを待つのではなく、まずはこちらから声をかける!!
まずはここから始めてみてください!
■利用者さんから嫌われる職員の特徴3つ
① 無表情(怖い印象を受ける)
② 早歩きで話を聞いてくれない(声もかけずらいな。話を聞いてほしいな。忙しいんだろうね。と利用者さんが思う)
③ 言葉がきつい(そもそも接遇としてダメ)
まずは自分の行動を振り返ってみましょう
上記の項目に一つでも当てはまる方は黄色信号ですよ!!そして③は赤信号です。
職員本人も気づいていない場合があるので、周囲の方が気付かせてあげるか、ご自身の言動を今一度振り返ってみましょう。
『自分は大丈夫』その思い込みも黄色信号です!
なぜこの特徴のある職員は嫌われてしまうのか?
ではなぜこのような職員は嫌われてしまうのでしょうか?
まずは『接遇』という面からみて、問題ありです。忙しい?次の業務がある?人が少ない?だからこそ丁寧に接するんです。
利用者さんはあなたの一挙手一投足をよく見ていますよー!!
もっとわかりやすくイメージできるようにお伝えします。ご自身のパートナーがいつもこんな行動をっていたら、あなたはどう思いますか?
それを想像したときに起こる感情が、利用者さんの気持ちなんだと思います。
専門家・後藤さんの経験:先輩からのアドバイス
ここからは少し余談になりますが、私がまだ新人だったころ、夜勤中に先輩からこんなことを教えられました。
『夜勤中に利用者さんが不眠になってしまうのは、職員の理由もあるんだよ。特に嫌いな職員が夜勤だと、不安で眠れなくなるんじゃないかな。夜は特に丁寧に対応しなきゃダメだよ。』
今でこそ、睡眠障害や、環境の変化など多くの要因で夜眠れないという事はわかっていますし、大晦日等、一晩ぐらいなら無理に眠る必要もないと思っています。
しかし、この言葉は今でも私の教訓として覚えています。
この先輩の言葉から少しずつ、普段からの関係性、夜勤時の対応など、その場面で最適な対応を考えるようになりました。
その中心にあったのは、『どうしたら利用者さんの不安を軽くできるのか?』という思考です。
不安の軽減ということを軸に、時には1時間以上もお話を聞き、時にはご本人が眠りにつくまで背中をさすり、静かな声で「大丈夫ですよ、側にいますから大丈夫です。」と声をかけ続けたりしていました。
その対応を申し送り、同じ対応が他のスタッフもできるようになっていくと、夜はしっかり眠れるようになることが増えていくんです。
自分なりに、利用者さんの気持ちになって考えてみましょう
利用者さんの気持ちをどうやって想像するか?
不安をどのように軽減できるのか?
それをチームにどのように伝えていくのか?
自分なりに考えていけば、それぞれの方法が見つけられると思います。
利用者さんとしっかりと向き合い、答えを探していきましょう!!
認知症でも、情動や感情の機能は保たれていることを忘れずに
最後に、認知症により海馬(記憶)の機能が低下しても、偏桃体(情動や感情)の機能は保たれているばかりか、より過敏になっていると言われています。
その感情を不快なものにするのか、快なものにするのかは、一人ひとりの介護職員の力次第です。
名前はわからなくても、顔を見て『この人好き、この人嫌い』というのは、ばっちり判断されていますからね。
不眠の方がいらっしゃるという夜勤のくだりは、実はここが関係しているんじゃないかと今でも思っています。
ご質問ありがとうございました!!
利用者さんとの関係性は、割り切ってもあきらめない。2つの方法を試してみてはどうでしょうか。
ご質問を拝見し、「利用者さんに嫌われてしまった」という自身の気持ちとうまく向き合おうとしている質問者さんは、とても強い方だなと感じました。
ぐさっ、と胸に刺さる言葉を、利用者さんから直接言われると、とてもつらいですよね……
私自身も経験がありますが、その瞬間、ショックで頭がガーンと殴られた感覚を受けました。
心臓がバクバクするお気持ちも、よくわかります。
普段、いろんな感情をぐっとこらえながらお仕事されているのだと思います。
本当にお疲れさまです。(温かい飲み物を差し入れしたい気持ちです)
ご自身を責める必要はないので、安心してください。
辛い気持ちにどう対処していくか、少し考えてみましょう。
■苦手意識が伝わってしまっているのかも?
まず、大前提としてお伝えしておきたいのですが、認知症の方であっても、なくても、信頼関係の構築にはコミュニケーションが欠かせません。
(質問の文中で、認知がある、という書き方をされているところ、適切な言い方ではないので、認知症の症状で、という言い方にしていきましょう)
認知症の方とのコミュニケーションにはいくつかコツがありますが、もうすでにご存じのことも多いかと思います。
どうしたらその利用者さんとコミュニケーションが上手くとれるのか。初対面から悩んでいらっしゃる、とのことなので、その方への苦手意識が、相手に伝わってしまっていることもあるかもしれません。(ちなみに私は、新人時代に恐る恐る介助していたら「あなたは頼りない、不安だ」と言われたことがあります。無意識でも、感情が伝わるんだと感じた出来事でした)
どんな人間関係もそうですが、相手を変えることはできないので、自分が変わるしかありません。
大きく分けて、2つの方法があると思います。
■解決策1. 自分の行動・言動を変えてみる
1つ目は、自分の「行動」「言動」を意識して変えてみる。
その方と、上手くコミュニケーションをとっているなぁと感じる人の行動や言動を、真似してみるのがよいかと思います。
特に、認知症の方の場合は、「快」「不快」を意識した働きかけが大切です。
その方が、生活の中でどんなときに「快」と感じるのかを観察して、コミュニケーションの際に取り入れてみてください。
それから、勇気のいることかもしれませんが、客観的な意見を聞くのもありかと思います。
信頼できる先輩や上司に相談して、その方とのコミュニケーションの取り方についてアドバイスをもらうと、なにか糸口が見つかるかもしれません。
ただ、人間関係には相性というものが必ず付き物。
質問者さんだけでなく、どんな人でも、相性が合わない人というのはいます。
■解決策2. 割り切って、自分の気持ちを変えてみる
そこで2つ目。自分の「気持ち」を変える。
仕方がない、と割り切る気持ちも、時に必要かと思います。
ただ、その方との関係性の構築をあきらめることは避けてほしいな、と思います。
なぜなら、その方の気持ちも、常に変わりうるものだからです。
質問者さんが変わることで、相手にも変化が現れる「かも」しれません。
相手が変わることを期待はしないほうがよいですが、可能性は捨てず、向き合ってほしいなぁと思います。
■これを乗り越えたらレベルアップ!ゲーム感覚で
最後になりますが、自身と相手の感情の波と向き合うことは、思っている以上にパワーを必要とします。
理屈や、理想と現実にギャップがあるのも介護の仕事の醍醐味。
私はどうしてもつらいときは、「これをクリアしたらレベルアップした自分になるはず!」というゲーム感覚で乗り切っています。
繰り返しになりますが、ご自身を責めずに。
相手が「快」と感じる行動や言動を追究してみましょう。
自身の気持ちと向き合う姿勢のある質問者さんなら、私は介護をお願いしたい!と思います。応援しています!
介護拒否のとらえ方を変える!信頼関係を築くかかわり方
■「拒否」は利用者さんの防御反応
「介護拒否」は介護職であれば誰もが1度は経験することではないでしょうか。
対応する職員が誰であっても介入が難しいこともあれば、特定の職員のかかわりが難しいこともあります。
いずれにせよ、「拒否」という反応は、「防御」であると考えられます。つまり、対象者の方が不快に感じることから自分を守る反応です。
ケアは、まず信頼関係を築くことからはじまります。
私たちはどうしても、食事や入浴、排泄等のケアを「すること」に意識が向いてしまい、それができないときにその場しのぎの声かけをしてしまいがちです。
しかしそれで本人が嫌がる行為をしてしまうと、嫌な感情が残ってしまい、その後のケアにも影響し「拒否」と言われる状態になってしまいます。
命にかかわる状況であれば別ですが、そうでない場合はまず信頼関係を築くことを大切にしましょう。
■ユマニチュードという技法を知っていますか?
ユマニチュードという認知症ケアの技法では、まずその人に「会いに行く」という、介護職の意識の持ち方を変える必要性を述べています。
例えば、入浴を嫌がる方がいる場合の具体的な手順を説明します。
手順1 その人の隣にただ何もしないで2分くらい座り、去る
まずは入浴をするためにその方へ話しかけるのではなく、その人の隣にただ何もしないで2分くらい座り、去ります。
その人にとって、誰かが自分の傍に来るけれど何も嫌なことはされないという経験が大切です。
手順2 30分後にもう一度行き、興味のありそうなことを話して、去る
そして30分後にもう一度行き、今度も何もせず、例えば雑誌を持って行き、興味のありそうなことについて会話をして、それが終わったらまた去ります。
手順3 また30分後に行き、同じように過ごす
毎回、近づいても何もしないで帰ることを繰り返すうちに、自己紹介をしたり握手したり、その方の体に触れるタイミングを得ていきます。
そのようなことを繰り返し、「何かお手伝いできることはありますか」と聞いてみて、「ありません」と言われたらすぐに退室するようにします。
手順4 さらに30分後行き、今度は「お身体をキレイにしましょうか?」と聞いてみる
また30分後くらいに行って、今度は「お身体をキレイにしましょうか?」と聞いてみます。
「嫌だ」と言われたら、それに共感する姿勢を見せます。
「そうですよね。私だってあなたのような状況でしたら嫌です」と言って帰ります。
こうしたことを繰り返すと「なんとなく感じのいい人だ」という印象がその人の感情の記憶に残ります。
このように少しずつ近づいては離れてということを繰り返す「無償の時間」を重ね、ケアをする人が「酷いことをしない人なんだ」と分かってもらうためのステップを踏んでいくことが大切です。
よくある介護拒否と、その対処法3例
とはいえ、具体的なケアの場面においては、信頼関係をじっくりと築く余裕がなく、その場で臨機応変に対応が求められることも多いかと思います。
よくあるシーンと対処法について、例を挙げたいと思います。
■排泄ケアの拒否
おむつを使用されている方で、交換しようとすると手や足が出て必死に抵抗する、という方の場合、恐怖心や羞恥心で職員のことを「敵」と感じているかもしれません。
対処法
・相手の視界に入り目線を合わせ、目をきちんと合わせる。
・いきなりケアの話をせず、まずは会話をする。
・「下着を交換しますね」「温かいタオルで拭きますね」など、先にこれから何をするかを伝え、相手の反応を待つ。
・下から支えるように、広い面積で触れる。手足をつかまない。
・事前に物品準備を整え、排泄ケアに入る時間を最小限にする。
■口腔ケアの拒否
口腔内を触られることに抵抗を感じる人も多いと思います。
無理にケアをすると、利用者の方も職員も怪我をしてしまいかねないため注意が必要です。
対処法
・口腔内に残渣物が少なくなるよう食後にお茶などを飲んでいただく。
・食後が難しい場合は、タイミングを変えて声をかけてみる。
・歯ブラシが難しい場合はうがいのみなど、臨機応変に対応する。
・口腔内のトラブル(入れ歯が合わない痛み、歯周病等)により痛みや違和感を感じている可能性もあるため、歯科医師に診てもらう。
■入浴ケアの拒否
入浴が嫌と感じる理由も様々です。億劫だったり、寒いのが嫌だったり、元々入浴が嫌いだったり……
入浴には身体の清潔を保つ以外にも血行を良くして身体を温めたり、リラックスしたりといった効果があるため、出来れば入っていただきたいですよね。
対処法
・脱衣所を暖房、浴室はシャワーの蒸気を利用し温める、湯温を調整するなど、浴室の環境をその方に適した状況に整える。
・散歩や体操など、少し身体を動かした流れで「汗を流しましょう」「着替えをしましょう」と声をかける。
・面会や外出、写真撮影などの人前に出る予定をつくる。
・どうしても難しいときは無理に入らず、清拭や足浴・手浴といった部分浴、ドライシャンプーを使用する。
■最後に
いずれにしても、かかわりの基本は同じです。
見る、話す、触れるといった日頃の行為を、自分が相手だったらどう感じるか?という視点から振り返ってみましょう。
「拒否がある」ではなく、「私たちの対応に課題がある」という、問題意識を我々が捉えるところからはじまるのではないかと思います。
社会福祉士、精神保健福祉士、介護支援専門員