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【例文あり】介護記録はどう書く?書き方のコツとポイントを徹底解説!

【例文あり】介護記録はどう書く?書き方のコツとポイントを徹底解説!

[2024年2月更新]介護記録の苦手を克服する方法を解説します。また、場面別の具体的な記録の文章例文や介護ロボットやICTの活用した介護記録の事例もご紹介します。利用者の状態や行動、気持ちの変化などが誰にでも正しく伝わる記録を目指していきましょう。【監修者:伊藤 浩一】


目次

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【場面別の例文あり】介護記録はどう書く?上手な書き方のコツとポイントを徹底解説!

【場面別の例文あり】介護記録はどう書く?上手な書き方のコツとポイントを徹底解説!

この記事は、伊藤さんが監修しました♪
資格:介護福祉士、社会福祉士、介護支援専門員

監修者

伊藤 浩一

https://mynavi-kaigo.jp/media/users/14

<経歴> 茨城県介護福祉士会副会長| 特別養護老人ホームもくせい施設長| いばらき中央福祉専門学校学校長代行| NPO法人 ちいきの学校 理事| 介護労働安定センター茨城支部 介護人材育成コンサルタント| <プロフィール> 介護福祉士として8年の現場を経験後、33歳で特別養護老人ホームの施設長に就任。現在まで、4カ所の特養の施設長を経験。また、介護福祉士養成校の経営に携わる観点から福祉人材の確保定着をライフワークと位置づけ「茨城から福祉で世界を元気にするプロジェクト(いばふく)」を法人の垣根を超えて横展開している。 令和元年にNPO法人ちいきの学校を設立。元気なシニアが中心となって多世代が笑顔で暮らす新しいちいきをつくることにもチャレンジしている。 20年で培った現場経験と教員経験、管理者経験を生かして、認知症ケアから組織やチームマネジメントの悩みなど幅広く対応する。

介護の現場では、介護記録は必ず書かなければなりません。

しかし、特に若手の方を中心に「どんなことを書いたらいいの?」「いつも同じような内容になってしまう」と悩んでいる方は多いのではないでしょうか?
実は、介護記録は書き方のポイントを押さえることでうまく書けるようになります。

また昨今では、国が進める介護現場の生産性向上の観点から、「外国人介護職の方の増加」や「介護ロボット・ICT」を活用した業務展開が進んでいます。

そのような現場の変化の中で、介護記録の書き方で注意すべきポイントに変化があったり、記録に定量的視点が用いられるケースが増えると考えられます。
(定量的観点を介護記録に残すことで、データ分析に活用でき科学的介護につなげることが可能となります。)


そのような背景も踏まえながら、介護記録の書き方のポイントについて詳しく解説していきます。

介護記録とは? チーム間で情報を共有するため重要な記録

一般的に介護記録とは、介護サービス事業者が利用者にどのようなサービスをしたのかを記録した介護経過記録のことをいいます。
記録する媒体に決まりはなく、手書きで書き込むものやパソコンやタブレット端末で記入するものなど、さまざまなものがあります。

介護保険法では、介護記録の作成と保存が義務付けられています。そのため、介護職につく者にとって介護記録は大切な仕事です。しかし、「介護記録に何を書けばいいかわからない」と悩んでいる人は多く、特に、新人介護スタッフにとっては、最初に悩む仕事のひとつのようです。

介護記録はその目的を改めて理解することで何を記録しておくべきなのかがわかるようになります。新人のうちは、以下に示す7つの介護記録の目的を知っておくだけでも、格段に介護記録が書きやすくなるでしょう。

介護記録を書く目的とその理由とは?

*介護記録を書く目的*
1.提供した介護サービスの実践内容を報告するため
2.利用者の生活の様子や変化を観察し共有するため
3.ケアプランに活用するため
4.介護スタッフ間、チーム間で情報を共有するため
5.統一した介護サービスを提供するため
6.介護スタッフと利用者やその家族との情報交換に活用するため
7.事故時の対応や状況の説明を残し証拠とするため

それぞれに関して、目的となる理由を解説します。

1.提供した介護サービスの実践内容を報告するため

実際にどのようなサービス内容を提供したのかを記載しておくことで、利用者やその家族、ケアマネジャーなどの他職種への報告がスムーズになります。

2.利用者の生活の様子や変化を観察し共有するため

サービスを提供したときに利用者が「どのような様子であったのか」「ケアをした際に、どのような変化があったのか」を記載することで、その後の経過観察や将来的な介護サービスの発展に役立ちます。

特に、体調が大きく変化したときや入院したときには、いつから症状が現れたのかを振り返ることで適切な治療につながることがあります。

また今後の介護記録は「文章」で記録を残す定性的な記録のみではなく、介護ロボットやICTを利用して「データ」の記録を残す定量的な記録も求められるでしょう。
目的に応じて、それぞれの記録を活用することで、利用者の様子を確認することができます。

3.ケアプランに活用するため

「ケアプランに記載された目標がどれくらい達成できているか」を介護記録を見て判断し、「新たなケアプランに反映すること」ができます。

4.介護スタッフ間、チーム間で情報を共有するため

介護の現場では、ひとりの利用者に対して多くの介護スタッフが関わるため、情報を共有する必要があります。

自分が実践した介護サービスについて介護記録に記載しておくことで、介護スタッフ間での情報共有がスムーズに行えます。

また、外国人介護スタッフも増えていますので、「外国人にもわかりやすい」「より簡潔な記録」が求められます。

5.統一した介護サービスを提供するため

利用者に対して、介護スタッフによって違う対応をしてしまうと、利用者が混乱する原因になったり、不安な気持ちになったり、体調を崩す原因になったりする可能性があります。

介護記録は「介護スタッフがどのような対応をし、どのようなケアを継続してきているのかを理解し、また次にケアを行う介護スタッフに伝えるためのもの」です。

こうした作業を徹底して行うことで統一した介護サービスの提供ができます。

6.介護スタッフと利用者やその家族との情報交換に活用するため

介護記録には、サービス提供時の利用者の様子を記載するため、ご利用者やその家族と介護スタッフが情報を交換するときの資料として活用することができます。
そのため、介護スタッフのみではなく、ご家族へも提供される場合があることを意識し、記載する必要があります。

7.事故時の対応や状況の説明を残し証拠とするため

万が一、サービス提供時に利用者がけがをした場合、事故の経過や利用者の状況、介護スタッフの対応などを詳細に残すことで、介護サービス事業者が責任をきちんと果たしているかの証拠とすることができます。

※なお、広い意味で「介護記録」と言う場合には、利用者の基本情報やアセスメント表など、介護サービス全般に関わる記録全てを指します。

介護記録が具体的であれは、その後のケアの質も向上する

介護記録を書く前に、意識しておくべきことがあります。

それは、「良いケアは、良い介護記録から生まれる」ということです。

介護は、情報収集→アセスメント→ケアプラン立案→実行→評価のケアマネジメントサイクルが基本プロセスです。そのスタートである情報が介護記録になります。

そのため、記録が適切(具体的)であれは、その後のプロセスの質も上がりますが、記録が不適切(抽象的)であれば、その後のプロセスは崩れていくこととなります。
そのため、介護記録は具体的に書く必要があります。


以下には、具体的な記録の例を挙げ、説明します。

介護記録に記載するとよい、具体的な内容とは?ー入浴介助のケース

入浴介助を例に紹介しましょう。

入浴は、細かく状況をわけると以下のように分けることができます。
この一連の流れのなかでのご利用者の「動作」だけでなく、その時の「言動や表情など」も書き記すとより具体的でしょう。

入浴の声かけ
→ 脱衣
→ 体を洗う
→ 浴槽に入る
→ 出ると声かけ
→ 出るとき
→ 洋服を着る

特に、「このお風呂は気持ちいいね」と笑顔が見られたといった様子や、「最近靴下がうまく履けなくなって……」と利用者が何気なく告げた愚痴に近いような一言であっても、記録できるかぎり記録することを心がけます。
そういったやりとりは、利用者の様子を知る貴重な情報となり、ケアプランを作成する際に大いに役立ちます。

まずは、信頼関係の構築が必須

しかし、このようなやり取りは、介護スタッフと利用者の関係性が良くなければ生まれてこないものです。ですから、介護スタッフは利用者に安心してもらい、信頼してもらえる関係性を築くことが大切です。

そして、利用者と接していくなかで気付いたことは、その場でメモを取るようにしておきましょう。具体的に、ケアを行ったときの利用者のちょっとした反応や言動などをメモしておくと、後から介護記録を書き込むさいに記憶を呼び起こしやすくなります。特に新人のうちは、気になったことは何でもメモをする癖をつけておきましょう。

様々な人が見るからこそ、押さえておきたい介護記録の書き方のポイント【基本編】

介護記録は、書いた本人だけでなく他の介護スタッフやケアマネジャーなど、多くの人が目を通す可能性のある文書です。

また、利用者やその家族など、専門職ではない人にも開示されることがあります。そのため、誰が見ても何が書かれているのか、内容がわかるように記載されている必要があります。そのために、書き方の基本と基礎的な表現を学んでおきましょう。

書き方の6つの基本ポイント

*書き方の6つの基本ポイント*
1.正しく日本語を使おう
2.専門用語や業界用語、施設独自の表現は避けよう
3.支配的・命令的な表現は使わない
4.根拠に基づいた記録をしよう
5.5W1Hで文章を構成する

1.正しく日本語を使おう

介護記録を読んだ人が正しく内容を理解するためには、文章が正確に読めなくてはなりません。
まず、漢字や句読点、接続語を適度に使用しましょう。

ひらがなやカタカナが多い文章や句読点が少ない文章は、意味を取り違える可能性があります。また、新人のうちは正しく伝えようとして一文が長くなりがちです。

一文は短く簡潔に。接続詞を使ってつなげる場合は、正確に接続詞を使わなければなりません。

2.専門用語や業界用語、施設独自の表現は避けよう

介護の現場で当たり前に使っている専門用語や業界用語は、利用者やその家族が読んでも意味が分からない言葉となります。誰が読んでも意味が把握できる表記を心がけましょう。

また同様に、施設独自の表現は、外部の人には意味が伝わりません。さらに、無意識にしろ、施設内で当たり前に使っている表現が、他者が聞くと差別的な表現に聞こえる、

あるいは見下されているような気持ちになるなど、差別・蔑視を含む表現であるケースがあります。

表現においては、気づかないリスクがあることも注意しておく必要があります。どういった言葉が専門用語や業界用語なのか、施設独自の表現になるのかわからないときには、周りに相談しましょう。

特に、経験年数が長くなるほど、専門用語や業界用語、施設独自表現を意識せず使いがちです。新人や利用者に伝えるつもりで書くと、誰が読んでもわかりやすい表現になります。

3.支配的・命令的な表現は使わない

利用者の様子を書き記すときに気を付けたいのが、「〇〇させた」「〇〇を与える」と言った支配的、命令的な表現です。

このような表現は、利用者の気持ちに沿わない介護スタッフ本位のケアを行っているように感じさせます。利用者の家族がこのような介護記録を読んだとしたら、「ここに通わせていて大丈夫かしら?」「不当な扱いを受けているのでは?」と不安になる可能性もあります。

介護記録の目的をよく理解し、何のために書く記録なのかをつねに意識しておくことが必要です。

4.根拠に基づいた記録をしよう

介護記録は介護計画やケアプランの評価を行うときの参考になる重要な書類です。
評価を行うときには、客観的事実や根拠が必要となります。

そのため、介護記録は根拠に基づいた記録を書くようにしましょう。
特に、健康状態や身体機能に関する記録をするときには、食事量や体温、血圧など具体的なデータを用いたうえでその時の様子を書いておくとよいでしょう。

誰が見ても状況が正しく伝わる記録として活用できます。

+α 睡眠の質の確認は、目検と文章でなくてよい

寝ている利用者にセンサーを用いて睡眠の質をモニターできる介護ロボット(ICT)を活用すると、介護スタッフが部屋に巡回に行かなくても、利用者が寝ているか寝ていないかを確認することができます。

また、睡眠効率(70%以上が良)や入眠時間(20分以内が良)などの標準値と利用者のデータと比較することで、その方の眠りの質がわかります。

眠りの質がわかれば、原因を推測し、共通理解のもと、睡眠ケアを利用者に行うことができます。
睡眠ケアを行えれば、利用者の日中の生活の質を向上させることができ、認知症の症状軽減にも効果的です。
介護スタッフが夜間に巡回し、睡眠の質を目検でチェックし、文章の定性的な介護記録を残すのではなく、介護ロボットを利用することで、定量的なデータの記録を残すことも介護記録の付け方としては重要になります。

5.5W1Hで文章を構成する

介護記録にかぎらず誰かに何かを伝える文章を書く場合、基本になる構成を覚えておくと書きやすくなります。代表的なものが5W1Hです。

5W1Hというのは、いつ、どこで、誰が、何を、なぜ、どのように、を英語で表記したものです。

When(いつ)
Where(どこで)
Who(誰が)
What(何を)
Why(なぜ)
How(どのように、どうなったのか)

この5W1Hを意識して書いていくと、内容が充実した介護記録が書けます。

特に、Why(なぜ)の部分は、ケアの根拠になる部分です。詳細に記録することが必要な部分でもあります。しかし、利用者が認知症の場合や言語障害がある場合には、Why(なぜ)の部分を利用者自身が細かく説明することができません。そこで、介護スタッフは利用者の様子をよく観察して状況を分析し、Why(なぜ)の部分を推測して書きます。

新人のうちは推測がうまくできないこともあります。そのときには、利用者をよく観察したうえで、周りの人に相談し、一緒にWhy(なぜ)の部分を考えるようにすると、表現の仕方、状態の把握の仕方など、スキルアップにもつながります。

食事介助、排泄介助、入浴介助の介護記録の書き方とは?

ここからは、場面別の観察ポイントと介護記録の書き方、記録例を見ていきましょう。

食事の際の介護記録の書き方

利用者の食事の様子を観察するときには、外面的ポイントと内面的ポイントの両方を押さえておくと、記録が書きやすくなります。それぞれの具体的な観察ポイントは以下の通りです。

介護記録 書き方 食事介助 観察

●外面的な観察ポイント

・食器や箸などの使い方
・食べている時の姿、表情
・食べ方、飲み込み
・食べた量、残した量
・入れ歯の使用状況 など

●内面的な観察ポイント

・発熱や脱水などの体調
・便秘やお腹の張り
・かみ合わせや入れ歯があっているかどうか
・その日の運動量、空腹感
・薬の副作用
・不安や悩みや心配ごとの有無
・食事への不満 など

食事時の介護記録では、観察したポイントだけでなく、実際に食べた量や内容も重要です。高齢期においては、食事は健康を大きく左右する要素でもあるため、具体的かつ詳細に記録しておきます。

●食事時の介護記録 例文

1/15 12:20
いつもに比べて食事が進んでおらず、食べ物を口に含んでいる間も眉間にしわを寄せていた。
声をかけてみると、「入れ歯の調子が悪いようで、固いものを食べると痛くて食べられない。」と話された。
入れ歯が合わずに痛みが出て、固形物の食べ物がうまく噛めない様子。
本人の了承を得てご飯をおかゆに変えてみると、「これなら食べられる」と完食された。

排泄の際の介護記録の書き方

排泄の介護記録では、「排泄量」や「排泄回数」の記録と、「排泄動作の様子」を記録します。

排泄量や排泄回数は利用者の健康状態を知る重要な情報です。
しかし、排泄リズムは人それぞれ違います。排泄回数が多すぎるもしくは少なすぎると感じた時には、本人の普段の排泄リズムと照らし合わせて判断するようにしましょう。

排泄動作の様子を観察するときは、利用者への配慮が必要です。
排泄の一連の動作は誰もが人に見られたくないと思うものです。利用者の気持ちを最優先に考え、いたわりの気持ちを持ったうえでさりげなく必要な部分を観察するようにしましょう。排泄動作の様子で観察しておきたいポイントは次の通りです。

●排泄動作の様子で観察しておきたいポイント

・トイレ内の立ち座りや歩行の状態
・便座に正しく座って排泄できるかどうか
・服や下着の上げ下ろしの様子
・自分で陰部やお尻をきちんと拭けるかどうか
・水を流すことができるか

介護スタッフによる介助を行った場合は、介助の様子やそのときの利用者の表情や言動なども介護記録に書いておきましょう。

●排泄の介護記録 例文

2/5 13:10
昼食後、介護スタッフが声をかけて一緒にトイレに行く。
個室に入ると、麻痺側の右肩を壁にもたれて体を支えながら、右手でゆっくりと自分でズボンを下ろしていた。紙パンツは腰にひっかかりうまく下ろせなかったので、介助すると紙パンツ内に多量の尿失禁が見られた。
紙パンツの重みで自分ではうまく下ろせなかったようである。

入浴の際の介護記録の書き方

入浴は、全身状態の把握や介護の必要度がどれくらいかを知る絶好の機会となります。

そのため、介護記録には、全身状態と入浴に関わる一連の動作についての様子をしっかりと書き残しておきましょう。入浴時に観察しておきたいポイントは次の通りです。

介護記録 書き方 入浴 観察

●全身状態の観察

・皮膚の状態
・やせ、肥満度
・感染症の有無
・手足の動き
・浴槽に入っている時の呼吸や疲労度
・痛みや苦痛の有無 など

●入浴動作の観察

・姿勢の維持
・衣服の着脱
・自分でどこまで洗えるか
・浴槽に自分で出たり入ったりできるか など

入浴の場面では観察する部分が多いため、細かく観察し深く掘り下げることで充実した内容の介護記録が書けます。
新人のうちは、観察すべきポイントが多すぎて何を書いていいのかわからなくなりがちです。その時には、利用者の個別目標や気を付けるべきポイントを参考に観察するとよいでしょう。

●入浴の介護記録 例文

1/20 10:30
入浴される。いつもは髪を自分で洗われるが、「今日は肩が痛くて腕が上がらないの。洗っていただけないかしら?」と言われたため、介護スタッフで洗髪を行った。
肩に腫れや赤み、あざなどは見られない。浴槽に入られると、「肩が温まって痛みが和らぐわ」と気持ちよさそうな表情をされていた。
以前より寒い日が続くと肩が痛むと話されており、この数日は特に冷え込んだため痛みが出たと思われる。

行事・活動(レクリエーション)の際の介護記録の書き方

レクリエーションでは、利用者同士の交流が自然と増えるため、表情や言動に注目して観察すると利用者本人だけを見ているときには見られない様子を記録として残すことができます。

また、レクリエーションの内容と反応を合わせて書いておくと、利用者の好みに合わせたレクリエーションが計画できるようになります。

敬老会やクリスマス会のような季節行事では、利用者が普段と違う反応をすることが多くなります。 特に、入所施設でボランティアや近隣の子どもたちが慰問してきた場合には、普段はあまり反応を見せない人でも、涙を流して喜ばれることも少なくありません。

このような記録は、家族が読まれたときにも非常に喜ばれますし、信頼関係を築くことにもつながります。行事や活動で見せる利用者の表情や言動をよく観察しておき、些細なことでも記録に残すようにしましょう。

●行事・活動の介護記録 例文

9/21 11:00
〇〇保育園の園児さん25名が敬老会で慰問に来られた。Aさんは最前列に座り、園児さんの出し物を熱心に見られ、何度もハンカチで涙をぬぐっておられた。園児さんが帰った後は、ご自身のお孫さんの話をたくさんしてくださった。

認知症の人の介護記録の書き方

認知症の人の様子を観察するときには、できないことに目がいきがちです。特に新人のうちは、認知症の人の対応に悩まされることが多く、介護記録もネガティブな視点になることが多いでしょう。
しかし、利用者の家族ができないことばかり書かれた介護記録を見たらどう思うでしょうか。介護スタッフや施設に対し、不信感や不安を持つかもしれません。また、他の介護スタッフが読んだ時にも、暗い気持ちになり、ケアに影響する可能性もあるでしょう。

認知症の人の記録を書くときには、利用者の立場で考え、小さな変化や効果をポジティブな視点が書くよう心がけましょう。利用者がつぶやいた何気ない言葉も記録しておくと、その後のケアのヒントになることもあります。

●認知症の方の介護記録 例文

8/10 10:00
ホールのテレビで高校野球が始まると、突然大きな声で出場校の校歌を歌い始めた。ちょうどBさんの母校の試合が始まったところだったので、昔野球をやっていたことを思い出されたのかもしれない。

まとめ/良い介護記録をの残すことがよいケアを生み出す

良い介護記録を書くことは、よいケアをするスタート時点です。
ケアプランやその後の治療にも活用するものとして、身体的な面、行動的な面、症状や行動については詳細であり、正確で具体的であるように努力しましょう。
その根底には、利用者を尊重する気持ちが大切です。

利用者の「心の動き」や「その時の感情」などが想像できる介護記録であることが「良い介護記録」であるということになります。
普段から利用者に敬意を表したケアを行い、利用者とその家族にとって大切な思い出の記録ともなるような介護記録を書くように心がけましょう。

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【コラム】伊藤先生に聞いた!介護記録の苦手を克服するには?

介護福祉士養成校で介護福祉士の教育に携わる伊藤先生に、介護記録の書き方のアドレスをいただきました。こちらもぜひ、お役立てください。

執筆者/専門家

伊藤 浩一

https://mynavi-kaigo.jp/media/users/14

茨城県介護福祉士会副会長 特別養護老人ホームもくせい施設長 いばらき中央福祉専門学校学校長代行 NPO法人 ちいきの学校 理事 介護労働安定センター茨城支部 介護人材育成コンサルタント 介護福祉士 社会福祉士 介護支援専門員

新人職員向け記録の研修を行う際、私は必ず冒頭にこんな質問をします。

「介護記録が得意な人は手を上げてください!」
結果はみなさんご想像の通り。
「シーーーン」
ですよね。

こんな状況をどう打開するか?そんなヒントをお伝えします。

なぜ苦手が苦手なのか?その理由を探ってみましょう

介護記録がなぜ苦手なのか?
それは書くことが目的になっているからです。

「書かなければならない」という強迫観念にも似たプレッシャーが、介護記録にあるのではないでしょうか?
そして、「書かなければならない」の前にどんな感情があるかというと「何を書いていいかわからない」という感情ではないでしょうか。

つまり、「何を書いていいのかがわからないのに書かなければならない」のが苦手=嫌いなんです。

専門用語を使うと「それっぽく」なる

そんな中で助けてくれる言葉(ワード)があります。
「不穏」「徘徊」・・・等、介護の専門用語的ワードです。

なんとなくこのワードを使用しているとカッコがつくんですよね。書いてる感じになる。
それで、介護記録を書くという目的は達成されるんです。

しかし、介護記録はなぜ書かなければならないんでしょうか?

why なぜ書くのか?を考えてみよう

介護記録は、チームケアをする上での大切な情報源

介護の仕事はチームで行います。
そして何のために仕事をしているのかというと、「ご本人の望む暮らしを実現するため」です。

チームは、介護職だけでなく、看護、リハビリ、栄養士等々様々な専門職で構成されています。
チームは、「ご本人の望む暮らしを実現するため」にそれぞれの専門性をもってアプローチしていますのでその判断のもととなる情報が必要となります。その情報こそが「介護記録」なんですね。

なぜ「介護記録」を書くのか?
それは、「ご本人の望む暮らしを実現するため」チームが専門性を発揮するための判断のもととして記録している。ということになります。

なんか重要な仕事に感じてきませんか?
でも、書く目的はわかったけど何を書いたらいいかはまだわからない。そんな声が聞こえてきそうですね。
次は介護記録は誰に書くのか?を考えます。

who誰に書くのか?を考えてみよう

専門職同士が知りたいことを、お互いが分かる言葉で書こう

ピンとくる方はまず「介護、看護、リハビリ、栄養士等々様々な専門職」に対して書くことはおわかりだと思います。
でもここをしっかり捉えることが何を書くのかに繋がるんです。

専門職は、お互いの専門性がわかっているようでわかっていません。
介護職が看護職の仕事を全てわかるのか?
看護職が栄養士の仕事を全てわかるのか?
わからないですよね。
それなのに記録をお互いが自分の専門用語をバンバン使って書くことに意味が
あるのでしょうか?
ないですよね。

つまり、お互いが知りたいであろう情報をお互いがわかる言葉で書くことが重要です。

介護記録で使ってはいけない言葉と、その理由

先ほど「不穏」という言葉を紹介しましたが、私はNGワードとしています。
なぜなら「不穏=おだやかでない状態」だけではどんな状況かわからないからです。

立ったり座ったり繰り返しているのか?怒っているのか?落ち込んでいるのか?
具体的な状況がわからなければ各専門職も自分が何をアプローチすれば良いか判断ができないでしょう。

what何を書くのか?を考えてみよう

お互いが知りたいであろう情報を書くと前段で述べました。
ではお互いが知りたいであろう情報とはなんでしょうか?

実は各専門職が「ご本人の望む暮らしを支えるため」それぞれの専門性を活かしたアプローチを記載したシートがありますよね。
そうです、「ケアプラン」です。

何を書くのか?=ケアプランに対する評価や状況を書く

結論です。
何を書くのか?=ケアプランに対する評価や状況 を記載すればいいんです。

例えば、「ケアプランに週末自宅に帰るため自宅で歩行できるよう下肢筋力を向上させる」というプランが立っているとします。
具体的な訓練として、「施設でも自宅のリビングとトイレまでの同距離を歩行器を活用して歩く」だったら、どんな風に歩いていたか?右足の出が悪いとか、途中で疲れてしまって歩けなかったとかを具体的に記載できますよね。

つまり、ケアプランを読めば何を書けば良いか?が書いてあるんです。

新人さんにこそ、ケアプランを教えましょう

冒頭の質問には続きがあります。
「ではケアプランを読んだことがある人?」
「シーーーン」

新人さんにはケアプランは難しいから・・・と後回しにする事業所さん、実は多いのではないでしょうか?

でも逆です。
新人さんにこそケアプランをまず教えなければなりません。
なぜならケアは介護計画に沿って行われることが大前提ですから。

介護記録が書けない=ケアプラン(根拠=why)を教えていないだけだと私は考えています。
ぜひwhyからはじめることをお勧めします。

マンガでわかる介護記録の書き方のポイント

介護記録の書き方まとめ①

介護記録の書き方まとめ②

マンガ監修:望月太敦(公益社団法人東京都介護福祉士会 副会長)

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「介護職員・並木マイの ほっこり成長日記 ~転職して、介護の仕事はじめました~」 保険会社から介護の仕事に転職した、並木マイさん(31歳)の成長と 介護現場のあるあるを描く、ほっこり癒し系マンガ! 休憩時間、このマンガを読んだあなたが クスっと笑えてちょっと癒され、ほっこりした気持ちになれますように。


介護職から転職するなら? 経験を活かせる職種や業種、成功のコツを解説

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介護職から転職する場合、どんな職種・業種なら経験やスキルを活かせるのでしょうか。おすすめの職種をはじめ、他業界に転職するメリット・デメリット、成功のコツなど、介護職が転職を考えるにあたって知っておきたい知識を紹介します。【執筆者:ささえるラボ編集部】


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