まず介護職の実態を確認しましょう
この記事では、介護職としてキャリアを積んでいきたいけれど、家庭生活も充実させたいと考えている人や、結婚を考えている相手が介護職で不安と思っている方の不安を軽減するために、介護職の継続と結婚を両立することは可能なのかについて介護業界の現状や将来性、介護職の人間性などさまざまな観点で解説していきます。
■4人に1人が半年程度で離職。働き先を見つけやすいことが背景に
つまり少なくとも4人に1人が半年程度で就職先を辞めているということです。
このような背景から、介護業界は慢性的な人材不足であり、有効求人倍率も高い数値となっています。厚生労働省の「一般職業紹介状況」によると全産業の有効求人倍率が1.08なのに対し、介護サービス職業従事者は3.65と非常に高い数値です。※2
この状況をまとめると、介護職は離職をしても新しい職場を見つけやすい状況にあるということです。では、離職の理由も確認していきましょう。
※1:厚生労働省 医療・介護分野における職業紹介事業に関するアンケート調査
※2:厚生労働省 一般職業紹介状況(令和7年4月分)
■退職理由の多くは「人間関係」や「施設の方針」
2位:法人や施設・事業所の理念や運営のあり方に不満があったため(26.3%)
3位:他に良い仕事・職場があったため(19.9%)
4位:収入が少なかったため(16.6%)
5位:結婚・妊娠・出産・育児のため(8.2%)
上記結果から、人間関係や施設の方針に対する不満からの退職が半数以上を占めていることが分かります。
※参考:介護労働安定センター 令和5年度介護労働実態調査結果
■介護職だけでなく社会全体で結婚や出産との両立が行いやすくなってきている
これは、介護業界に限らず、全産業の離職理由を見ても、結婚や出産を理由とした離職は少なくなってきています。※2
この背景には、物価高による生活費や養育費の上昇、老後資金に対する不安の高まりなどから共働きの需要が高まり、育児休暇制度の充実や、働き方改革といった家庭と両立できる体制が整い始めていることが挙げられます。
※参考1:介護労働安定センター 令和元年度介護労働実態調査結果
※参考2:厚生労働省 令和5年 雇用動向調査結果の概要
安心して結婚できる?介護職のキャリアパスと将来性
次に、結婚するにあたって気になる、介護職の将来性について確認していきましょう。
結婚を視野にいれたとき、相手の仕事について気になることは多々ありますが、ここでは、特に気になる方が多い、収入や勤務時間・休日などの働き方、キャリアパスと将来性などについて紹介していきます。
■1.介護職の給与事情
■介護職の収入は今後も上がっていく見込み
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上記グラフは、厚生労働省が調査した介護職の平均給与の推移を示したものです。多少の増減はあるものの、全体としては右肩上がりの傾向が見られます。この背景には、政府による処遇改善政策の実施が大きく影響しています。
また、介護業界では慢性的な人手不足が続いており、今後も処遇改善などの政策が継続されると考えられます。そのため、介護職の給与は今後も上昇していくことが期待されます。
■【ペルソナで見る】介護職の給与で生活は維持できるか
ここからは、実際のペルソナ(架空の人物像)を設定して、家計の収支バランスを確認していきましょう。
支出の金額については、厚生労働省の人口動態調査の結果※1をもとに、給与については厚生労働省の令和6年度介護従事者処遇状況等調査結果※2をもとに計算していきます。
※1:厚生労働省 人口動態調査 人口動態統計 確定数 婚姻
※2:厚生労働省 令和6年度介護従事者処遇状況等調査結果
ー20代・30代(子なし)夫婦の場合
Aさん、Bさんの年齢はそれぞれ厚生労働省の調査に基づく初婚の平均年齢を参考に設定しています。
※参照:厚生労働省 人口動態調査

※収入参照:厚生労働省 令和6年度介護従事者処遇状況等調査結果
※支出参照:総務省統計局 家計調査報告(二人以上の世帯)

さらに、東京都に在住の場合「東京都介護職員・介護支援専門員居住支援特別手当事業」でさらに1人あたり1万円の手当てを受け取ることもできます。 これらのことから、20代・30代の介護職夫婦は十分な生活を送ることができると言えるでしょう。
※参考:東京都 東京都介護職員・介護支援専門員居住支援特別手当事業
ー40代(子持ち)夫婦の場合
子どもと親の年齢は、厚労省の人口動態調査をもとに第一子、第二子誕生の平均年齢から計算しています。
※参照:厚生労働省 人口動態調査

子どもの教育費用はあくまで目安で算出していますので、通う学校や習い事の有無で出費が異なります。

上記表をもとに収入から支出を差し引くと、145,104円の残金が生じます。子どもがいると医療費などの臨時出費の機会も増えますが、貯金をしながらでも無理なく生活できる状態であると言えるでしょう。
■2.介護職の勤務時間・休日事情
そのため、介護職の勤務時間や休日の取りやすさなど、働き方についても確認していきましょう。
※参照:介護労働安定センター 介護労働者の就業実態と就業意識調査 結果報告書
■1週間の勤務日数
また、全体の平均勤務日数は「4.8日」となっており、週6日以上働いている人の割合はわずか6.5%にとどまっています。
このことから、介護職は基本的に週に2日程度の休みを確保しながら働ける職場が多いと言えるでしょう。
■1週間の残業時間
介護職の残業時間について見てみると、約57.7%の人が「残業なし」と回答しています。次に多いのは「週5時間未満」で24.3%、続いて「週5〜10時間未満」が9.7%となっています。
このように、介護職はシフト制で働くことが多いため、残業が発生しにくく、決まった時間に退勤しやすい職場環境であることがわかります。
■介護職は結婚後も安心!働きやすさが魅力の職業
さらに近年では、ライフイベントと両立しながら長く働き続けられるよう、時短勤務制度や柔軟なシフト対応などに取り組む事業所も増えてきています。こうした取り組みにより、結婚・妊娠・出産といったライフステージの変化を理由にキャリアを諦めることなく、安心して働きやすい環境づくりが進んでいます。
■3.介護職のキャリアパスと将来性
■専門性を高めるステップアップ
初歩的な資格としては「介護職員初任者研修」があり、ここから「介護福祉士実務者研修」、そして国家資格である「介護福祉士」へとステップアップしていくことが可能です。
さらに、介護福祉士の資格取得後には、「ケアマネジャー(介護支援専門員)」や「認定介護福祉士」など、より専門性の高い職種を目指すこともできます。このように、介護職は継続的な成長とキャリアアップが見込める職業であり、長期的な視点で働き続けることができる環境が整っています。
■管理職として成長する選択肢も
たとえば、介護福祉士として一定の経験を積んだあと、チームリーダーや主任として、スタッフの指導や業務の調整など、チーム全体をまとめる役割を担うことができます。
さらに、マネジメントスキルや組織運営に関する知識を身につけていくことで、副施設長や施設長といった、施設全体の運営に関わるポジションを目指すことも可能です。
このように、介護職は専門職としての道だけでなく、管理職としてのキャリアも築いていける職業であり、自身の強みや志向に合わせて多様な方向へ成長できる可能性のある職業です。
■介護職の需要と将来性
それに伴い、国や自治体による処遇改善の取り組みや、キャリア支援制度の整備も進められており、介護職として働く人々がより安心して長く働ける環境づくりが進んでいます。
介護職は、安定した雇用が見込めるだけでなく、人の生活を支えるという大きな社会的意義を持つ職業です。そのため、今後も社会に必要とされ続ける、将来性の高い仕事であると言えるでしょう。
「介護職は変な人ばかりで結婚できない?」その疑問にお答えします!
Q2.介護職の女性は気が強いって本当?
Q3.介護職の男性は結婚できないって本当?
Q4.マッチングアプリでいいなと思った男性が介護職で不安
Q5.介護職として働いていますが、出会いがなく結婚できないかもしれない
■回答者/専門家
■Q1.介護職は変な人が多いって本当?
■A.「変=マイナスな意味」ではありません!
そのため、誰よりも他人想いであったり、利用者さんを楽しませるためクリエイティブ性が秀でていたり…その点では、皆さんが思う普通とは離れているので、変わっていると感じられるかもしれません。
しかし、介護職の方の「変」はけしてマイナスなものではないので安心していただければと思います。
■Q2.介護職の女性は気が強いって本当?
■A.気が強いのではなく、自分の意見をはっきりと伝えられる人が多い!
たしかに、「物事をはっきり言う」=「気が強い」と感じる方も多いかと思いますが、介護現場においては意見をはっきりと伝え、共有することが利用者さんの安心・安全に繋がるのです。
また、厳しいことを言っているように見える介護職の方も、一概に気が強いわけではなく、「言語化して言える人がいないから」「あえて厳しいことを言うことで、相手の成長に繫がるようサポートしている」など周囲の環境から、仕方なく役割を果たしている場合もあります。
そのような方はむしろ、弱音を吐きたい場面もあると思うので、結婚生活をともにするパートナーと支え合いができるとよいですね。
■Q3.介護職の男性は結婚できないって本当?
■A.安心して!そんな時代ではありません!!
「介護職の男性だから、家族を養えない」「介護職の男性だから、家が建てられない」「介護職の男性だから…」
そんな時代ではありませんので安心してください。私も介護職時代の27歳で結婚しました。家のローンも完済しています。周囲を見ても未婚のスタッフが少ないくらいです。
介護職としてキャリアを積み、結婚生活と両立していくためには、できるだけ転職の回数を減らし、専門職としての学びを深めていくことが大切です。経験を積み、スキルを身につけていくと給与アップも目指すことができるでしょう。
マッチングアプリや日々の出会い…実例を交えた介護職の結婚に関するお悩みも回答します!
■回答者/専門家

福岡福祉向上委員会 代表 外資系コンピューター会社の営業、父親が営む会社の経営見習いを経て、2002年に35歳で福祉の世界に入り、14年間で2つの社会福祉法人の経営に携わる。 新規事業立ち上げ・組織づくり・職員育成・労働環境改善を行い、職員の労働満足度を向上させ、離職率の劇的低下を実現する。
■Q4.マッチングアプリでいいなと思った男性が介護職で不安
■A.とにかく自分と相手の気持ちを大切に!
相手の方が介護職で不安とのことですが、まずはじめにお伝えしたいのは、「介護職だから」などと相手の職業ばかりを気にするのではなく、相手の方と自分の気持ちを一番大切に考えていただきたいということです。
そのうえで、介護職の方の魅力もお伝えするので、さらに安心いただければと思います。
■介護職の男性は、利他的で優しい人が多い
まず申し上げたいのは、「介護職」の皆さんは非常に優しく、相手の話にしっかり耳を傾け、気持ちを思いやる力に長けているということです。
困難なことがあっても嫌な顔ひとつせず、黙々と率先して対応される姿勢には、いつも頭が下がる思いです。また、相手が喜んでくれることを常に考え、行動される「利他的」な方が多いように感じています。
ご質問者様のお相手も、きっとこのような素晴らしい特性をお持ちの方なのではないでしょうか。
■介護職はキャリアの選択肢も豊富で将来性も期待できます
現場で経験を積みながら資格を取得し、相談業務や管理職へとステップアップする方、さらには若くして起業する方もいます。
国の施策により給与水準も改善され、全産業平均に近づいてきています。介護職は歴史が浅いため、若いうちから昇進の機会が多く、努力次第で安定した収入と将来性を得ることも可能です。
今は年収が低くても、成長の余地が大きい職種であることを知っていただければと思います。
■シフト勤務は子育てで活躍できる
また、シフト制により保育園の送迎や学校行事への参加がしやすく、子育てにも積極的に関われる職種です。介護職の経験が、育児にも自然と活かされる場面は多いでしょう。
とはいえ、将来性や経済面は人それぞれです。「介護職だから」ではなく、「その人自身」に目を向けて考えることが大切です。
■Q5.介護職として働いていますが、出会いがなく結婚できないかもしれない
■A.出会いを目的とせず、自信と誇りを持って過ごしていきましょう
しかし、まずは日々の仕事や生活の中で、自分らしく誇りを持って過ごすことが、結果として素敵なご縁につながると思います。皆さんにとって出会いの可能性となる機会や、介護職の魅力を確認していきましょう。
■仕事を通じて分かり合える、職場恋愛・職場結婚
ただし、先述した通り、出会いを目的にするのではなく、仕事や趣味に真剣に向き合う中で、自然とご縁が生まれることが大切です。生活リズムの違いも、工夫と理解で乗り越えられます。
■介護職場以外での出会い方5選
2.習い事や社会人サークルに参加する
3.マッチングアプリを活用する
4.友人や同僚の紹介
5.街コンに参加をする
出会いの場に行くことは抵抗もあると思いますが、同じ趣味を持った人との交流の機会だと思うことで、抵抗なく自然に参加ができるでしょう。
■介護職は、結婚相手としても魅力的
ー専門家が考える介護職の方の魅力8選
2.相手を尊重した言動ができる
3.相手の話をしっかりと聴くことができる
4.優しさや寛容さをもっている
5.安定した職業である
6.経験を重ねていくことで、役職をもち、収入が増えていく
7.シフト制を活かして育児なども協力しながらできる
8.起業や専門性の向上などキャリアパスがさまざまある
自信と誇りを持って働く姿は、きっと素敵な出会いを引き寄せるはずです。いつか「結婚します」との朗報を楽しみにしています。
■マンガでまとめ「介護職と結婚しても大丈夫?」


マンガ監修:望月太敦(公益社団法人東京都介護福祉士会 副会長)
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ささえるラボ編集部です。
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