本日のお悩み
職員の卒業や異動のときの、お客様への伝え方について質問です。
私のところでは、「お客様が動揺するから、辞めることは黙っておくように!」というルールがあります。
私は、「アフターケアがめんどくさい」という、職員のわがままなのではないかと思います。
確かに、動揺して泣くお客様はいます。でも、それは素晴らしいことであって、残った職員がアフターケアをすれば良いことであると思うのです。
人間には「喜怒哀楽」という素晴らしい感情があります。
お客様に笑っていただくことはもちろん、泣いたり怒ったりしていただくことも大事な尊厳だと思います。
そうすることで「哀」の感情が減っていくのだと。
嘘をついて、ある日突然「それまでの時間を共有した家族」が消えてしまうことって、ひどくないでしょうか?
私は、それこそが尊厳を無視した虐待であると思っています。
これについて、どう思いますか?
相談者:マロン さん
3つの視点から考えてみて、職場内で対話をしてはいかがでしょうか。
利用者さんとのお別れに際しての伝え方のご相談ですね。
私もいろんな福祉の職場と関わってまいりましたが、対応は施設ごとで異なっています。
それは「これが正解!」というものがなく、法人や組織の考え方に依るところが大きいと言えます。
3つの視点から今回の相談を考えてみましょう。
■利用者さんの視点
まず、利用者さんの視点から。
高齢者であれ、障がい者であれ、人との関わりや繋がりは生活の一部であり、大切なものですね。
ある日突然、信頼関係を築き上げていた職員さんが来なくなり、「Aさんは先月で退職されたのですよ。」なんて後から聞かされると
「なんで事前に伝えてくれなかったの?」「ちゃんとお別れの挨拶やお礼を伝えたかった」などと、「怒」や「哀」の感情は湧いてきて当然だと思います。
「利用者視点」から捉えると、伝えてほしいというのが多くのご意見だと思います。
■経営者・管理者の視点
では、経営者や管理者の視点ではどうでしょう。
現在の労務管理は大変困難で、職員さんも様々な形で退職されていきます。
不義理をされる職員さんもいれば、心身の不調により休職から退職になる方もいます。
そのような状況下で、全退職者を同じような形で利用者さんに伝えるのは難しいのが現状です。
また、利用者さんとの極めて良好な信頼度の高い職員さんの退職は、ご質問のような「ご利用者の動揺」を心配する管理者の気持ちも分かります。
ただし、これは聞くのが退職前でも後でも、動揺はするわけで、理由として相応しくないですね。
このような辞め方の場合、利用者さんが様々な憶測をする恐れもありますよね。
私は、管理者さんが組織を作り上げていくうえで、「人の尊厳」を大切にということを考えるのであれば、組織としては「正しく伝える」というのをルールにしてほしいと思います。
■職員の視点
3つ目に職員さんの視点として考えてみましょう。
前述したように、退職の事情は人により異なります。
退職の事情によっては、利用者さんにきちんと挨拶が出来る場合と出来ない場合とがある。
退職者の感情として、挨拶をしたい職員もいれば、挨拶をしたくない職員もいる。
残された職員さんにとっても、挨拶をしていってほしい退職者とそうでない退職者もいるというのが、現実の職場だと思います。
つまり職員さんの視点から見ると、状況や場面により、挨拶の是非は異なると思います。
■対話の上、ルールをつくる
では、どうあるべきなのか。
最初に書いたように正解はないですが、利用者さんを大切に思う組織であれば、基本的にはしっかりと伝えるべきだと思います。
ご本人が伝えることを軸とし、それが出来ない場合は役職者の方が丁寧に説明をすることが、「尊厳」を大切にする職場である気がいたします。
最後になりますが、このようなことを様々な視点があるということを踏まえながら、職場の皆さんと一緒に考え、ルールを創り上げていくということが大切であると思います。
ぜひとも、皆さんと対話されて、ご自身のお考えを伝えられてはいかがでしょうか。
その過程がとても大切な気がします。
福岡福祉向上委員会 代表