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食事介助のポイントとは?正しい姿勢や手順、注意点を確認しよう

食事介助のポイントとは?正しい姿勢や手順、注意点を確認しよう

自力で食事をとれない高齢者には、食事介助を行う必要があります。要介護者が安全に食事を楽しめるよう、介護者が工夫しながら正しい方法で介助することが大切です。基本の食事介助の姿勢や手順、注意点、スプーンの入れ方など、食事介助のポイントを紹介します。施設での研修の際、マニュアルとしてもご利用いただけます。


食事介助のポイントとは?正しい姿勢や手順、注意点を確認しよう

高齢になって自分で食事をすることが難しくなった人には、介護者が食事介助を行う必要があります。
食事は活力の源ですが、介助の方法を間違うと、要介護者にとって食事の時間が負担になったり、思わぬトラブルを招いたりすることもあります。
介護者が正しく安全な方法で介助し、声かけなどの工夫で食事を楽しめるようにすることが大切です。

そこで今回は、要介護者が食事をするときの基本の姿勢や手順、スプーンの入れ方、注意点など、食事介助のポイントを紹介します。

食事の重要性

人が生きるためには、身体機能を維持し、活動に必要なエネルギーを得るために、食事を摂取し続ける必要があります。
もちろん、介護を必要とする高齢者も、食事から十分な栄養を摂らなければなりません。

ただし、食事が持つ意味は、単なる栄養補給だけではありません。
まず、食べることは要介護者にとって大きな楽しみのひとつです。
毎日楽しく、「おいしい」と感じながら食事を摂ることが、活力を生み、人生を豊かにします。

また、食事は、身体機能を維持するために必要な行為でもあります。
朝、昼、夕と規則正しく食事をとることで、消化酵素やホルモンのバランスが保たれ、生活や排便のリズムも整います。
さらに食べ物をよく噛むと脳の活性化につながるうえ、噛めば噛むほど唾液の分泌量が増加し、内蔵の働きが活発になるというメリットがあります。
このように、食事を楽しむことは、要介護者の心身にさまざまな良い影響をもたらすのです。

食事が難しくなる主な要因

私たちは普段あまり意識していませんが、人が食事をする際には、歯や舌、のど、食道といったさまざまな器官が最適なタイミングでうまく機能することで、食べ物を噛み砕き、飲み込んで体に取り込んでいます。
しかし、加齢とともにそれぞれの器官の機能が低下し、のどやあごの筋力が衰えるため、スムーズに食事をすることが難しくなってきます。

食事介助を行う介護者は、そのような高齢者の体の変化を知っておかなければなりません。
ここでは、高齢者の食事を妨げる身体機能面の主な要因を紹介します。

噛む力が弱くなる

私たちは食べ物を口に入れた後、歯や舌、頬を使って細かく噛み砕いています。
高齢になると舌の運動機能が低下し、あごや頬の筋力も衰えてくるため、食べ物を噛む力が弱くなってきます。
また、人によっては、歯の本数が少ない、入れ歯が合わないといった要因も重なります。

噛む力が弱くなると、ゴボウやタケノコ、キュウリといった繊維質が多く硬い食べ物は食べにくくなり、おかゆやプリンのような軟らかい食事を好むようになっていきます。
要介護者の状態に合わせて、食べやすい大きさにカットし、軟らかく調理した食事を用意する必要があります。

飲み込む力が弱くなる

口の中で食べ物を噛み砕いた後、唾液と混ぜ合わせて飲み込みやすい形にすることを食塊形成といいます。
高齢になると唾液の分泌量が少なくなるため、食塊形成が難しくなってきます。

また、通常、食べ物が喉を通るときには、瞬時に喉頭蓋(こうとうがい)が気管の入り口にフタをして食べ物を食道へと導きます。
この動きを「嚥下(えんげ)反射」と呼びます。
ところが年齢を重ねると、のどの筋肉や靭帯の衰えにより嚥下反射がうまくできなくなってくるため、気管に食べ物が入ってしまう「誤嚥(ごえん)」が起こりやすくなります。

味覚が鈍くなる

高齢になると、舌や口の中にある「味蕾(みらい)」と呼ばれる味を感じ取る器官の細胞が減少します。
そのため甘味、旨味などの味を感じにくくなり、濃い味つけの料理を好むようになります。
さらに嗅覚が衰えることで食べ物や料理の匂いを感じにくくなるため、食欲が刺激されず、食事を楽しめなくなることがあります。

消化機能が低下する

加齢とともに胃液の分泌が減り、消化器官の機能も衰えてくるため、食事の後に胃もたれが起こりやすくなります。
不調が続くと、食欲不振につながることがあります。

喉の乾きを感じにくくなる

高齢者は体内の水分量が少なく、脱水症状になりやすい傾向があります。

また、加齢とともにのどの渇きを感じる感覚機能が低下するため、体が水分摂取を必要としていても、喉の乾きを感じられない場合があります。
介護者は、要介護者が水分不足にならないよう、摂取量を確認しながらこまめに水分摂取を促す必要があります。

認知機能が低下する

認知症や認知機能の低下も食事に影響します。

たとえば認知症の症状である「失念(目の前にあるものが何かわからなくなること)」が原因で、食べ物を食べ物として認識できなくなり、食事を拒否することがあります。
また、「失行(今までできていたことができなくなること)」という症状が生じて、食べ方がわからなくなってしまうこともあります。
このような場合には、介護者が「これはおいしい○○ですよ」などと声かけをする、実際に食べる動作を見せて真似てもらうといった対策が考えられます。

食事前の準備

食事前にはまず排泄を済ませ、テレビを消し、食事に集中しやすい環境を整えます。
口の中が汚れていると、食事中に誤嚥した場合に細菌が体内に入って、誤嚥性肺炎を起こしやすくなります。
予防のため、歯みがきやうがいなどで口の中を清潔にしておきましょう。

さらに、「今日のメニューは○○ですよ」「おいしそうですね」「お腹はすきましたか?」などと声かけをして、ちゃんと意識があるかどうかを確認し、食べる意欲を引き出しましょう。

食事をとるときの正しい姿勢

体のバランスを保ち、食べやすくするためにも、誤嚥予防のためにも、正しい姿勢を確保することが重要です。
上半身がイスの座面に対して約90度になるよう、深く腰掛けてもらいましょう。
イスに肘掛けと背もたれがあること、足がちゃんと床につくことも、安定して座るためのポイントです。
食事中は頭を少し前傾させてあごを引き気味にすると、食べ物が気道に入りにくくなります。

要介護者の体の状態によっては、車椅子やリクライニングベッドで食事をとってもらう場合もあります。
リクライニングベッドの場合は、要介護者が楽に食べられる角度に調整し、頭の後ろにクッションやタオルを置いて顎を引いた状態を保つようにしましょう。

食事介助のポイントと注意点

準備と姿勢が整ったら、食事を始めます。

要介護者が自分で箸やスプーンを持って食べられるうちは、介護者が様子を見守りながら必要に応じてサポートします。
自力で食事をするのが難しい場合は、介護者が食事介助を行う必要があります。次に、そのポイントと注意点を紹介します。

介護者が隣に座る

介護者は必ず座って介助しましょう。
立ったままで食事介助を行うと、要介護者のあごが上がって食べ物を飲み込みにくくなり、誤嚥のリスクが高まります。

要介護者と同じ目の高さで介助することで、のどの動きや表情を確認しやすくなるのも利点です。座る位置は、要介護者の隣が基本です。
対面だと、見張られている感じがして落ち着かない場合があるので避けましょう。

スプーンは下から運ぶ

スプーンや箸は、必ず下から要介護者の口に運ぶようにします。上から食べ物を運ぶと、要介護者のあごが上がり、誤嚥しやすくなります。
スプーンを口に入れたら、奥まで入れすぎないよう注意し、要介護者の唇が閉じたところで水平に引き抜きます。

適量を口に入れる

一口分の量が多いと、むせたり窒息したりする危険があります。
かといってあまり少なすぎても、嚥下反射が起きにくくなり、ちゃんと飲み込めないことがあります。
適量は人によって異なりますが、ティースプーン1杯程度を目安にするといいでしょう。

バランスに気をつける

要介護者が飽きないよう、ごはん、おかず、味噌汁などを交互にバランスよく口に運ぶのが基本です。
ただし、食べたい順番は人それぞれなので、できる限り本人の希望に合わせるようにしましょう。
口の中が乾くと飲み込みにくくなるので、途中、お茶や水などで適度に水分を補給することも必要です。

急かさず、ゆっくり進める

要介護者ののどの動きをよく見て、「ごっくん」と飲み込んだのを確認してから次の一口を運びます。
急かして食べさせると誤嚥の原因になるだけでなく、食事をするのが苦痛になってしまう可能性があります

高齢になるほど食事に時間がかかるようになるので、要介護者のペースに合わせ、十分な時間をかけて食事を進めましょう。
食事中に「ゆっくり食べましょうね」などと声をかけると、急いで食べなくてもいいのだと安心してもらえます。

ときには食が進まないこともあるかもしれませんが、無理に完食させようとせず、まずは食べられない原因を探って対策を考えてみましょう。
ただし、「食べたくない」「甘いものが食べたい」といった要介護者の要求を受け入れすぎると、栄養不足や脱水になって健康を害するおそれもあります。
介護者には、要介護者の気持ちと健康状態の双方を考慮しながら、柔軟に対応していく姿勢が求められます。

食後のケア

食後は、入れ歯を外して手入れをする、口内をゆすぐ、歯を磨くなど、要介護者の状態に合わせた口腔ケアを行います。

食事をとった後にすぐに寝てしまうと、食べ物が逆流するおそれがあるので、食後しばらくは座った姿勢のままで休んでもらうようにしましょう。
食事や水分の摂取量、食欲の程度などを記録することも、介護者の重要な役目です。

まとめ:要介護者に寄り添った食事介助で、食事を楽しい時間に

体が自由に動かせなくなり、趣味や外出の機会が減った高齢者にとって、食事は貴重な楽しみの時間です。
毎日の食事を心からおいしいと感じながら味わうことが、生きがいを生み、身体機能の維持にもつながります。

要介護者が食事を楽しめるかどうか、食べる機能を長く維持できるかどうかは、介護者の食事介助のやり方にかかっています。

体の状態や食への意欲、好み、習慣は人によって違うので、その人に合わせたサポートをすることも重要です。
基本の知識とスキルを身につけたうえで、積極的にコミュニケーションをとりながら、要介護者に寄り添った正しく安全な食事介助を心がけましょう。

食事介助のポイントを動画でチェック!

【食事介助編】全力応援!介護の現場チャンネル | ささえるラボ

https://mynavi-kaigo.jp/media/articles/59

介助技術を楽しく学べる動画「全力応援!介護の現場チャンネル」食事介助編です。

この記事のライター

ささえるラボ編集部です。
「マイナビ福祉・介護のシゴト」が運営しています。
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