マイナビ福祉・介護のシゴト
高齢者の誤嚥とは?原因や簡単にできる予防・工夫方法を徹底解説!

高齢者の誤嚥とは?原因や簡単にできる予防・工夫方法を徹底解説!

歳を重ねるごとに食事の際、飲み込みに負担を感じるなど、以前とは異なる違和感や、悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。この違和感を放置してしまうと誤嚥に繋がるリスクがあります。この記事では、介護施設や自宅で簡単にできる誤嚥の予防・工夫策を紹介します。【執筆者/専門家:大関 美里】


\あなたにぴったりの求人が見つかる/
「介護職員」の求人を見る

本日のお悩み:誤嚥が起こりやすい食べ物や対策方法が知りたい!

毎年、お正月になると、餅の喉詰まりによる窒息死が注目されます。一方で、餅は注目を浴びているため特に注意する傾向がありますが、他の食べ物でも誤嚥は起こると思います。

誤嚥が起こりやすい食べ物や、誤嚥を発生させないための対策方法について教えてください。

食べる楽しさを守るための「誤嚥」の知識と予防策

執筆者/専門家

大関 美里

https://mynavi-kaigo.jp/media/users/13

社会福祉士、介護福祉士、認定排泄ケア専門員、排泄機能指導士 介護現場の職員の後、祖父の在宅介護での後悔と、自身の介護うつ経験から、そのきっかけになった排泄の支援を追求すべくおむつメーカーへ転職。 1000人以上の方のおむつ交換に触れ、介護する側もされる側も双方が「シッカリ出して、スッキリ生きる」ことが、より良い人生に繋がる。気持ち良く「出す」ことをサポートすることで良い循環が生まれることを実感する。

ご相談ありがとうございます。
著名な方のニュースがあったことからも、誤嚥の危険性が注目されていますね。 「自分の親は大丈夫かな」と不安を感じた方もいらっしゃるのではないでしょうか。

近年、食品が原因で発生する窒息事故は、特に高齢者にとって看過できないリスクです。実際に、食物による窒息で亡くなる方は年間約3,500人(65歳以上)にのぼり、その多くが80歳以上の方です。

このような窒息は、食べ物や飲み物が誤って気管に入り込む「誤嚥」が引き金となる場合も少なくありません。お餅のような特定の食品は確かにリスクが高いですが、誤嚥のリスクは普段の食事の中にも潜んでおり、肺炎や窒息といった命に関わる問題になり得ます。

この記事では、誤嚥がなぜ起こるのか、注意すべき食品、そして今日から実践できる予防策を解説します。 大切な「食べる楽しみ」を守るため、この記事がお役に立てば幸いです。
※参考:厚生労働科学研究補助金 食品による窒息の現状把握と原因分析研究

そもそも「誤嚥」とは? なぜ高齢者に多いのか?

「誤嚥」とは、食べ物や飲み物が、食道ではなく空気の通り道である気管に誤って入ってしまうことです。 誤嚥すると、むせたり咳き込んだりして異物を排出しようとしますが、この防御反応が弱かったり、異物が大きいと窒息の危険があります。

また、自覚がないまま少量ずつ気管に入る「不顕性誤嚥」は、誤嚥性肺炎の原因となり、高齢者の命を脅かすことも少なくありません。 高齢者に誤嚥が多いのは、以下で紹介するような加齢に伴う身体的な変化が関係しています。

・唾液の減少と飲み込む力の低下
・感覚の低下
・病気や薬の影響
・認知機能の影響

唾液の減少と飲み込む力の低下

唾液が減って食べ物がまとまりにくくなり、飲み込みに関わる筋力も衰えるため、うまく食道へ送る力が低下します。

感覚の低下

喉の感覚が鈍くなり、食べ物が気管に入りかかっても気づきにくくなります。

病気や薬の影響

脳卒中などの後遺症や、薬の副作用で嚥下機能が低下することもあります。

認知機能の影響

認知機能の低下が見られる方の場合、食事に集中できなかったり、早食いや詰め込み食いをしたり、あるいは特定の食べ物への強いこだわりから、周りの方が安全な食事形態を勧めても、なかなか受け入れてもらえなかったりするケースもあります。


これらの変化は一人ひとり異なるため、「最近よくむせる」「飲み込みにくそう」といった変化に気づいたら、自己判断せず、医師や歯科医師、言語聴覚士といった専門家に相談することがとても重要です。

専門家は、検査を通してその方の「飲み込む力」を評価します。 お一人ひとりに合った最も安全な食事の方法や対策を考えることが、誤嚥を防ぐ確実な第一歩となります。

要注意!誤嚥・窒息につながりやすい食べ物

誤嚥 食べ物

お餅以外にも、注意が必要な食品はたくさんあります。

・粘り気が強いもの: 団子、餅、蒸しパン、ごはん(特に冷めたもの)など
・硬くてばらけやすいもの: 肉の塊、こんにゃく、ナッツ類、豆類、繊維の多い根菜類など
・パサパサしてまとまりにくいもの: パンの耳、カステラ、ビスケット、ゆで卵の黄身など
・サラサラして流れ込みやすいもの: 水、お茶、汁物など
・つるんとして丸呑みしやすいもの: ミニトマト、ブドウ、こんにゃくゼリー、そうめんなど


消費者庁の報告でも、パン類、ごはん、果物、肉類なども窒息事故の原因として上位に挙げられています。日常的な食品でも、体調や食べ方によってはリスクになり得ることを知っておきましょう。

今日からできる!誤嚥を防ぐための具体的な対策6選

誤嚥防止

誤嚥は、日々の心がけと工夫でリスクを減らせます。専門家の評価を踏まえつつ、ご家庭でもできる対策をご紹介します。

1.食事環境を整える

食事に集中できるよう、テレビなどを消し、落ち着いた環境で食べましょう。
また、正しい姿勢で食べるようにしましょう。
※正しい食事介助については :「正しい食事介助のポイントとは?安全な姿勢、準備や手順、注意点を確認しよう」

2.食べ方を意識する(介助の場合も含む)

一口はティースプーン1杯程度を目安にしましょう。カレースプーンのような大きな食具は避けるのが望ましいです。 また、パサパサした食品は、水分と交互に、または水分を含ませてから食べましょう。

食事介助では、正しい姿勢を確認し、ご利用者のペースに合わせて、飲み込んだことを確認してから促します。 食事中にむせたり、声がガラガラになったり、顔色が悪くなったりしないか、様子を見守りましょう。

3.調理方法の工夫をする

誤嚥を防ぐためには、食べ方も大事ですが、調理方法でも工夫することができます。具体的には、以下の通りです。

・食べやすい大きさと形状に切り(隠し包丁を入れるなど)、柔らかく調理する
・サラサラした水分は誤嚥しやすい傾向があるため、必要に応じてとろみ調整食品を活用する

これらの工夫をしても飲み込みが難しい場合は、専門家の評価に基づき、その方に合った「嚥下調整食」が必要です。医師や管理栄養士、言語聴覚士などの適切な食事形態の指導を受けましょう。

4.口腔ケアを習慣にする

食前・食後の清掃を徹底し、口内細菌を減らすことも誤嚥性肺炎予防の鍵です。
唾液腺マッサージで唾液分泌を促しましょう。

5.嚥下体操を取り入れる

口や舌を動かす体操は、飲み込む力の維持・向上に役立ちます。

6.食後も注意を払う

食事を終えても、食後の様子を確認することも大切です。
食後すぐに横になると、胃から食べ物が逆流し、誤嚥につながる危険があります。実際に、介護施設にて食後に何らかの原因で嘔吐し、その嘔吐物によって窒息してしまった痛ましい事例もあります。

食後少なくとも30分〜1時間は座った姿勢を保つようにしましょう。食後しばらくは会話を楽しみながら様子を見る時間をもち、万が一の変化に気づきやすくすることも大切です。

まとめ:専門家の力も借りながら、安全で豊かな食生活を

誤嚥は特に高齢者にとって深刻な問題ですが、予防は可能です。
加齢による変化を理解し、食事の環境、食べ方、調理法、食後の過ごし方に注意を払いつつ、口腔ケアや嚥下体操も取り入れましょう。

何より重要なのは「飲み込みにくさ」のサインを見逃さず、専門家に相談し客観的な評価に基づいた適切な対策をとることです。「食べること」は、栄養だけでなく、喜びやコミュニケーションの源でもあります。最近では「スマイルケア食」などスーパーやドラッグストア手軽にで手に入れることもできますので、そういったものや専門家の力も借りながら、ご本人もご家族も、安心して食事の時間を楽しめるようにしたいですね。

※個々の状態に応じた具体的な診断や指導については、必ず専門の医療機関や専門職にご相談ください。
※出典:農林水産省農林水産省:スマイルケア食(新しい介護食品)

あわせて読みたい記事

正しい食事介助のポイントとは?安全な姿勢、準備や手順、注意点を確認しよう | ささえるラボ

https://mynavi-kaigo.jp/media/articles/392

[2024年12月26日更新]食事介助では要介護者が安全に食事を楽しめるよう、介護者が工夫しながら正しい方法で介助を行うことが大切です。基本の食事介助の姿勢や手順、注意点、スプーンの入れ方など、食事介助のポイントを紹介します。施設での研修の際、マニュアルとしてもご利用いただけます。【コラム執筆者/専門家:後藤晴紀】

口を開けない利用者さん…食事介助が難しいときの観察項目7つ・対応5選を紹介します | ささえるラボ

https://mynavi-kaigo.jp/media/articles/444

認知症の方への食事介助のポイントとは?食事介助で対応できるものと、再アセスメントが必要な場合の見分けも大切です。担当者会議を開催し、食事介助中に口を開けない利用者さんへの具体的な支援方法や状態を振り返って再アセスメントを!【回答者:後藤 晴紀 古畑 佑奈】

\あなたにぴったりの求人が見つかる/
「介護職員」の求人を見る

この記事のライター

社会福祉士、介護福祉士、認定排泄ケア専門員、排泄機能指導士

関連する投稿


【高齢者詐欺対策】介護職が知っておきたい!現場で見たリアルな被害と未然に防ぐための対応策

【高齢者詐欺対策】介護職が知っておきたい!現場で見たリアルな被害と未然に防ぐための対応策

近年、高齢者を狙う詐欺被害は手口も巧妙化しています。高齢の利用者さんと関わる機会が多い介護職に向けて、詐欺の実態と、利用者の様子から「もしかして?」と感じたときの予防策や対応方法を紹介します。【執筆者/専門家:牧野 裕美】


梅雨の介護施設で気をつけたいこと!|利用者さんに快適に過ごしてもらうためにできる工夫策とは?

梅雨の介護施設で気をつけたいこと!|利用者さんに快適に過ごしてもらうためにできる工夫策とは?

梅雨の季節は雨の日が多く、思うように行動できなかったり、湿度が高くじめじめしたりと利用者さんにとっても職員さんにとっても過ごしづらい日々が続きます。少しでも快適に過ごせるよう、介護施設におけるカビ対策・湿度管理・雨の日の過ごし方の工夫を紹介します。【執筆者/専門家:伊藤 浩一】


介護施設ができるSDGsへの取り組み|6月5日は環境の日!環境問題への取り組み方を考えてみましょう

介護施設ができるSDGsへの取り組み|6月5日は環境の日!環境問題への取り組み方を考えてみましょう

6月5日は環境の日です。介護施設でも近年話題となっているSDGsや環境問題への取り組みを行うことが可能です。この記事では、介護施設で利用者さんと一緒にできる環境問題への取り組みやエコ活動を紹介します!【執筆者/専門家:後藤 晴紀】


介護施設で取り組む口腔ケア!|歯と口の健康週間で取り組むべきことや日常ケアの重要性

介護施設で取り組む口腔ケア!|歯と口の健康週間で取り組むべきことや日常ケアの重要性

6月は「歯と口の健康週間」があります。歯の健康を怠ると、口腔内の不調だけでなく、心身ともにさまざまな不調が生じます。この記事では介護施設で「歯と口の健康週間」に取り組む際にできることを紹介します!【執筆者/専門家:羽吹 さゆり】


看護職・介護職のストライキとは?現場視点で考えるストライキの実態やこれからできることを紹介します!

看護職・介護職のストライキとは?現場視点で考えるストライキの実態やこれからできることを紹介します!

2024年3月13日に看護職と介護職の一斉ストライキがありました。賃上げの実現を目的に行われたストライキですが、一部では「賃上げだけでは意味がない」という声も。この記事では、そもそもストライキとはどのようなものかという基礎から介護職の現場の実態、これからできることなどを紹介していきます。【執筆者/専門家:山本 武尊】


マイナビ福祉・介護のシゴト 閲覧ランキング
【北海道・東北】
【関東・甲信越】
【北陸・東海】
【関西・中四国】
【九州・沖縄】

最新の投稿


介護職のボーナスはいくら?施設・職種による違いをチェック!

介護職のボーナスはいくら?施設・職種による違いをチェック!

介護職のボーナス事情を徹底解説!施設や職種による支給額の違いや、正社員・パート別の支給率、賞与額を増やす方法まで、転職時に確認すべきポイントを紹介。介護業界で働く方や働きたい方必見です!【執筆者:ささえるラボ編集部/コラム・専門家:大庭 欣二】


第155話 「声の大きさ」/ほっこり介護マンガ

第155話 「声の大きさ」/ほっこり介護マンガ

「介護職員・並木マイの ほっこり成長日記 ~転職して、介護の仕事はじめました~」 保険会社から介護の仕事に転職した、並木マイさん(31歳)の成長と 介護現場のあるあるを描く、ほっこり癒し系マンガ! 休憩時間、このマンガを読んだあなたが クスっと笑えてちょっと癒され、ほっこりした気持ちになれますように。


【高齢者詐欺対策】介護職が知っておきたい!現場で見たリアルな被害と未然に防ぐための対応策

【高齢者詐欺対策】介護職が知っておきたい!現場で見たリアルな被害と未然に防ぐための対応策

近年、高齢者を狙う詐欺被害は手口も巧妙化しています。高齢の利用者さんと関わる機会が多い介護職に向けて、詐欺の実態と、利用者の様子から「もしかして?」と感じたときの予防策や対応方法を紹介します。【執筆者/専門家:牧野 裕美】


介護現場における働き方改革とは?実践方法や課題を紹介します!

介護現場における働き方改革とは?実践方法や課題を紹介します!

近年、リモートワークや労働時間の短縮、週休3日制など労働者が自分らしく働き続けるためにさまざまな働き方改革が行われています。一方で、対人サービスである介護の現場において、働き方改革は可能なのでしょうか?この記事では、介護現場で行われている働き方改革や、その課題を紹介します!【執筆者/専門家:脇 健仁】


第154話 「父の日」/ほっこり介護マンガ

第154話 「父の日」/ほっこり介護マンガ

「介護職員・並木マイの ほっこり成長日記 ~転職して、介護の仕事はじめました~」 保険会社から介護の仕事に転職した、並木マイさん(31歳)の成長と 介護現場のあるあるを描く、ほっこり癒し系マンガ! 休憩時間、このマンガを読んだあなたが クスっと笑えてちょっと癒され、ほっこりした気持ちになれますように。


マイナビ福祉・介護のシゴト
「マイナビ福祉・介護のシゴト」は、福祉・介護職に特化した中途、パート向け求人サイトです。
介護職をはじめ、福祉・介護業界に関連する職種の求人を掲載しています。
本当に自分にあった施設や事業所を、ご自身で手軽に探すことができるよう職場の雰囲気がリアルに伝わる情報を用意することで、適切なマッチングを実現していきます。
【職種から求人・転職情報を探す】