本日のお悩み:介護施設でできる口腔ケアとは?
介護施設でも「8020運動」などを行っていければと思うのですが、どのようなことを行えばいいでしょうか。日常的にできる口腔ケアがあれば教えてください。
介護施設における「歯と口の健康週間」の取り組みと日常ケアの重要性
■執筆者/専門家

(有)⽻吹デザイン事務所介護事業部アモールファティ代表 ・アモールファティスクール⻑ 介護福祉⼠/介護⽀援専⾨員/介護技術指導員/⽇本語教員/社会科教員 介護職員実務者教員/社会福祉主事任⽤ 理論と経験に基づく「優しく丁寧に美しい介護」を理念に実践的な介護技術研修/コミュニケーション研修及び介護離職防止の為一般企業様向けに「介護セミナー」を実施しています。
■「歯と口の健康週間」とは?
この期間中、学校や地域、医療機関などさまざまな場でイベントや講習会が行われますが、近年では介護施設でもこの機会を活かし、職員・利用者双方が「口腔ケアの大切さ」に改めて目を向ける動きが広がっています。
■制度の変化と介護現場の対応
これは単なる「歯磨き」ではなく、利用者さんの健康維持、QOL(生活の質)の向上、そして命を守ることにもつながる極めて重要なケアであるという認識が、社会全体で広まりつつある結果といえるでしょう。
■なぜ高齢者に口腔ケアが重要なのか?
なかでも注意したいのが、「誤嚥性肺炎」のリスクです。厚生労働省の調査によると、日本人の死因の第6位に位置づけられるこの病気は、高齢者が罹患しやすく、場合によっては命に関わる重大な疾患です。食べ物や唾液に含まれる細菌が誤って気管に入ってしまうことで肺に炎症が起こるもので、特に就寝中や嚥下機能が衰えている人ではリスクが高まります。
しかし、日常的な口腔ケアを徹底することで、口腔内の細菌を減らし、このリスクを大きく下げることができるのです。
介護施設での実践的な口腔ケア方法

■口を開けてもらう=心を開いてもらうこと
まず大切なのは、「口を開けてもらうこと」です。これは単に物理的に口を開けさせるという意味ではなく、利用者に安心して口腔を委ねてもらう、つまり「心を開いてもらう」プロセスが重要になります。
そのためには、信頼関係の構築が不可欠です。握手や軽いスキンシップ、アイコンタクト、優しい声かけなど、段階的に距離を縮めていく工夫が必要です。
■認知症の方への配慮とコミュニケーション
そのため、道具を見せながら一つひとつ説明し、「今から歯をきれいにしましょうね」といった肯定的な言葉を使って、安心感を与えることが大切です。
■ケアの手順や道具の使い分けも行いましょう
まずスポンジブラシで粘膜や歯茎、頬の内側などの汚れを優しく取り除いてから、歯ブラシで歯を丁寧に磨くという順序が推奨されます。食べかすが多く残ったままいきなり磨くと、喉に落ちて誤嚥の原因になることがあります。スポンジブラシは湿らせてから使用し、使い捨てることで衛生的にケアが可能です。
また、歯間ブラシや義歯ブラシなども併用し、利用者さん一人ひとりの状態に合わせた道具の使い分けもポイントです。
■ケアの時間帯や姿勢も大切に
眠気が強い時間帯や食後すぐなどは避け、しっかりと覚醒しているタイミングを見計らい、座位で顎を引いた姿勢を保って行うと、より安全にケアができます。
「歯と口の健康週間」を活かした施設内の取り組み
次に、「歯と口の健康週間」を活かして取り組めるイベントなどを紹介します。
・介護職にむけて口腔ケアの大切さを再認識してもらう勉強会の開催
・利用者さん、職員、ご家族などで口腔体操の実施
・歯科衛生士さんによる講話
このように、日々のケアをもちろん大切にしつつ、「歯と口の健康週間」であるからこそ口腔ケアの大切さを再認識してもらう機会にできるとよいのかと思います。
最後に:日常ケアの積み重ねが健康を守る

しかし実際の現場では、高齢になるにつれ口腔の清潔を保つことが難しくなるという課題に直面します。義歯の取り扱いや保管が不適切であったり、歯磨きを面倒に感じたり、認知症によってケアを拒否したりと、さまざまな事情が重なります。そうした中で、利用者さんにとって、日々行われる「介護職員によるケア」が、口腔の健康を支える大きな力となるのです。
これからも日々のケアを大切にしつつ、年に1回「歯と口の健康週間」でさらに全員の意識を高めていけるとよいでしょう。
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・(有)⽻吹デザイン事務所介護事業部アモールファティ代表
・アモールファティスクール⻑
介護福祉⼠/介護⽀援専⾨員/介護技術指導員/⽇本語教員/社会科教員
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