本日のお悩み
私は介護職4年目で、特養で働いています。先月妊娠していることが分かったのですが、これからおなかが大きくなってくるとできる業務が少なくなってきてしまいそうです。
私が知っている範囲では、施設で妊婦が働くのが初めてみたいなので不安です。かといって、あれはできない、これはできないと自分から言いづらいし、どうしたらいいでしょうか。
できる事、できないことは今のうちから決めておきましょう!
ご質問ありがとうございます!
まずは、妊娠おめでとうございます!
新たな命の誕生に、期待と不安な日々を送られている事と思います!
ご質問の内容ですが、これまでの出産の経験や体調にも大きく左右される内容かと思います。
ご質問者さんは初産と推測させていただき、回答させていただきますね!
回答としては、できる事、できないことは予め決めておいてください。
■まずは様々な変化に気を配り、ご自身を大切に。
冒頭でも触れましたが、妊娠は女性にとって体調の変動が大きい期間ですよね。
今日現在も身をもってそのことを感じている事と思います。
1か月、1週間、1日の中でも日々体調や気持ちの変化、ホルモンバランスの変化が起きていますよね。
特に安定期に入っていない今の時期は、身体に負担をかけないように、栄養と睡眠を十分摂るように意識してくださいね。
これは、事業者にとってもご質問者さんにとっても、とても大切なことです。
ご質問者さんもちょっとした体の変化や異変に大きな不安を抱かれるかと思います。
業務負担が減ってしまうのも気が引けるかと思いますが、それには理由があることをお忘れなく。
■主治医や管理者と相談の上、仕事内容を決めましょう
一般的には妊娠から4~5ヵ月ほど経過すると、不安定な体調やつわりが落ち着いてくるといわれていますよね。
これも個人差が大きいので、最低限のできる事を決めていきましょう。
体調面だけではなく、精神面も負担やストレスが大きくなりますからね!
質問者さんの今一番のお仕事は、元気な赤ちゃんを迎える準備をすることです。
お仕事の内容についてですが、ご自身だけの判断では決めずに、主治医とよく相談し体調を考慮したうえで明確に決めていく事がよろしいかと思います。
事業所としての判断や産前産後の働き方についても、上司や管理者とよく相談のうえ決めていきましょう。
事業所としては主治医の意見を聞きたいと思いますので、まずは主治医の先生や助産師さん看護師さんと共に、今後の体の変化や心の変化について知識や情報を深めていきましょう。
■自分から意思表示をすることも大切です
これまでに妊婦さんが働いたことがない事業所との事なので、過度な負担を強いられてしまう場合があるならばそこはしっかりと意思表示をしてくださいね。
周囲に負担や迷惑がかかると思い、それを受けてしまう方もいらっしゃいますがそれは大きな間違いです。
ご自身とお腹の子を守れるのは、ご質問者さんしかいませんからね。
どのように対応すればよいのかも記しておきますので、ご参考にしてくださいね!
■自分の状態を把握して、それを周囲に伝えましょう
まずは、自分の体の状態や心理状態について、これまで以上に冷静に観察し判断してみてください。
これまで4年の介護業務を担ってきたのですから、ご自身の心理状態の評価や分析はできますね。
食欲や睡眠量、気だるさや嘔気、集中力など総合的に判断されてみてください。
恐らく負荷の高い業務は難しい状況にあるかと思います。
それをきちんと周囲に伝え、意思疎通を図っていきましょう。
周囲のスタッフの皆さんは、ご質問者さんが感じている以上に、『分からない』状態です。
ご自身の状態や体調を伝えていく事も、大切なお仕事ですからね。
周囲も何をお願いしても良いのか、気を使いすぎて困ってしまう事もありますので、意識合わせは大切な作業となります。
その為にも、受け身ではなく、ご自身から伝えていく事を心がけてくださいね。
ごく稀に、ご自身の出産経験を基に、根性論で『働いても大丈夫』『私の時はこうだった!』と持論を押し付けてこられる方もいるかもしれませんが、そうしなければならない理由はありませんので、気にしないようにしてくださいね。
この時期に周囲に迷惑をかけてしまう事は悪いことではありません。
どんどん周囲を頼って、ご質問者さんから『ありがとう』の感謝をたくさん伝えていってくださいね。頼られた方は、結構うれしいものですよ!
■控えたほうがいい業務、できそうな業務はこちら
ここで、控えた方が良い業務をお伝えしますね。
①移乗介助(トランスファー)
②入浴介助
③介護度の重い方の排泄介助
こちらの業務内容は控えられた方がよろしいかと思います。
できる事としては、
①食事介助
②トイレ誘導
③環境整備
④記録
⑤清掃
⑥入浴等の準備
等の間接業もあるかと思いますので、事業所の業務に合わせて相談されて行ってくださいね。
■最後に
どうしても過度な業務を強いられたり、負担が大きいと感じられた場合には、『母性保護規定』を活用してくださいね!労働基準法に定められた働く妊産婦さんを守るための強い味方です!
事業所側への情報伝達ツールに『母健連絡カード』というものも、厚労省のホームページからダウンロードできます!必要に応じて主治医に記入してもらってくださいね!
一度こちらの内容について、調べておかれてくださいね。これは、ご質問者さんの権利ですからね。知らなかった事が無いように、情報収集もお忘れなく!
出産頑張ってください!
ご質問者さんの人生で一番うれしいと思える瞬間を、楽しみにしていてくださいね!!
「母健連絡カード」はこちら!
母性健康管理指導事項連絡カードの活用方法について|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/www2/topics/seido/josei/hourei/20000401-25-1.htm母性健康管理指導事項連絡カードの活用方法についてについて紹介しています。
妊娠した介護職の同僚を「迷惑」だと思ってしまう…そんなときは?
茨城県介護福祉士会副会長 特別養護老人ホームもくせい施設長 いばらき中央福祉専門学校学校長代行 NPO法人 ちいきの学校 理事 介護労働安定センター茨城支部 介護人材育成コンサルタント 介護福祉士 社会福祉士 介護支援専門員
私は20年以上介護業界で働いていますが、常にだれかは妊婦さんとして働いてくれています。本当に感謝です。
妊娠しても継続して働きたいとの申し出があれば、「まずは、自分の体とお腹の赤ちゃんを大切に無理せず働いてね」といつも伝え、ほぼ100%の職員が産休、育休を終えて職場に復帰してくれています。
ちなみに産休には、産前休業(出産予定日の6週間前)と産後休業(出産後8週間)があります。ということは妊婦で働く期間は出産予定日の6週間前までとなりますね。
■マタニティハラスメント(マタハラ)を知っていますか?
ハラスメントとは「嫌がらせ」
質問者さんは、「マタニティハラスメント(マタハラ)」という言葉をご存知ですか?
マタニティハラスメントとは職場における妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメントをいいます。法令としては、男女雇用機会均等法と育児・介護休業法の両方に「マタハラ」に対する規定があります。また、ハラスメントという言葉も当たり前のように使用していますが、厚生労働省では「嫌がらせ」と定義しています。
妊娠を理由に、人格まで言及してはいけない
つまり、職場における妊娠・出産・育児休業等に関する嫌がらせ=「マタニティハラスメント」とういことになりますね。
具体例としては、「妊娠を理由に辞めて欲しいと言う」「なぜ忙しい時に妊娠したんだと言う」「妊婦はいつ休むかわからないから仕事は任せられないと雑用ばかりさせる」などがあげられます。
そして、この例のポイントは、「妊娠を理由に業務を越えて人格に言及するような言動、態度をとり、その言動、行動に対し妊婦さんが嫌がらせと感じたか否か」と言うことになるでしょう。
■職場全体でマタニティハラスメント研修を行うのがおすすめ
さて、「妊婦の同僚を迷惑だと思ってしまう人の対処法、受け止め方」についてです。
これに関してはまず職場で上記マタニティハラスメントの研修を行い、組織全体として共有することをお勧めします。
妊婦によくない動作は、他の職員に任せる
妊婦さんにとっては腰をひねる動作や、おなかを圧迫する動作、バランスを崩しやすい動き、めまいや立ちくらみを起こしそうな運動、心拍数が過度に上がる運動、重いものを持ち上げることがよくないとされています。
介護の仕事は、どうしても移乗介助等、前述に該当しそうな業務がありますので、妊婦さんが働く際は、このような業務を避けた業務に調整する必要がありますよね。
もちろん、そのような場合、他の職員に業務負担がいくことも予想されます。
妊婦側は、嫌がらせを受け止める必要はない
しかし、マタニティハラスメントについて理解をすれば、妊婦さんを尊重し、協働することが求められていることがわかります。
ですから、「迷惑だ」なんて妊婦さんが嫌がらせと捉えるような言動、態度をとることが法令違反であり、そのような態度を受け止める必要なんてないのです。
とはいえ、人は感情の生き物です。妊娠したことについては丁寧に説明して職場の皆さんに協力を依頼する姿勢は重要でしょう。
■妊婦さんも多様性の一つ、職場全体でマタニティハラスメントの周知を!
多様性を認めて協働できる環境を
「ダイバーシティ&インクルージョン」、お悩み相談でも何度か紹介しているキーワードです。今、世界中の企業が目指している働き方ですが、多様性を認めて協働している状態のことを指します。
つまり、妊婦さんも多様性の一つ、産休、育休を終え、仕事に復帰してくれた職員は、その経験により人間として大きく成長されていると私はいつも感じます。頼もしい限りです。
職場全体で、マタニティハラスメントへの理解を高めよう
もし、質問者さんの職場が、マタニティハラスメントの理解がない職場であれば、ぜひ管理者の方に声をあげていただき周知徹底をお願いしてください。
日々忙しい現場だけでは感情論になってしまいそうです。妊婦であっても安心して働き続けられる職場づくりをぜひ、現場発信で構築してください。
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介護職が妊娠したときの、夜勤やつわり対策から、復帰後のことまで。基本をまとめました。
・けあぷろかれっじ 代表
・NPO法人JINZEM 監事
介護福祉士、社会福祉士、介護支援専門員、潜水士