本日のお悩み
介護職は公務員にならないのですか?
そもそも公務員にこだわる意味とは・・・。
結論から言いますと…
公務員で介護職に従事している方はいます。
どんな方が公務員の介護職かと言いますと、市町村や都道府県が運営する介護福祉施設、障害者福祉施設等に介護職として勤務する方です。
または、公立の介護福祉士養成課程がある高校等で教員になる方もいます。
後者は、介護職の経験を活かしてということになりますが…。
しかし、介護職の全体数からすればほんの一握りですよね。
■公務員の介護職が少ない理由は?
なぜ介護職の公務員への道は、狭き門なのでしょうか?
第一に、公立の福祉施設が少ないことがあげられます。
1963年に老人福祉法は施行されましたが、当時は高齢者が少なく、公の福祉施設で対応することができました。つまり老人福祉法に基づき行政が福祉施設を作ったので、行政の一機関として公務員が配属されていたということになります。
当然人事異動がありますので、高齢者だけでなく、障がい者、児童などの福祉施設を転々とする方もいらっしゃったでしょう。しかし、時代は2000年に入り、高齢者の急激な増加が予想される中、公的機関だけでは、高齢者福祉が支えることが困難となりました。
そこで、介護保険法が施行され、民間の参入促進や福祉施設の民間への譲渡が進み、公的機関としての福祉施設はごく少数が残るだけとなったのです。
■公務員試験への合格が必須
第二に、公務員試験を合格しなければならないことがあげられます。
介護福祉士は国家資格ですが、公務員試験の受験は別途必要です。試験科目ですが、一般教養、適性検査、作文試験、面接試験のすべてのクリアーが一般的なようです。
■介護職が全員公務員だったら…
さて、以上の2点から介護職が公務員になることは狭き門であることはおわかりいただけたと思いますが、そもそもなぜ質問者さんは公務員にこだわられるのでしょう?
公務員とは、国や地方公共団体などの職員として、広く国民に対し平等に働くことを活動目的とし、営利を目的とせず人と社会のために幸せな生活の舞台をつくりだし支える仕事を担う職業です。
たしかに、社会のためであることは介護職も公務員と同じではと思う気持ちもわかりますが、なぜ試験があるかも考えてみましょう。それは、公務員の給料の財源が税金だからです。
もちろん、社会づくりをする上で必要な一般知識等の確認も試験の目的ではありますが、給料を税金で賄っている以上、人数に限界があり、試験で適正人数に絞っている現状もあります。今、人口減少はどの市町村でも大きな問題です。人口減少=税金が減る=公務員も減らさざるをえないということになりますね。公務員が減れば行政サービスも低下します。
一方で高齢者は右肩上がりで増加しています。介護職が全員公務員だったら、私達いくら税金を払えば賄えるでしょうか…。恐ろしいお話です。
また、公務員の給料は高いと思われていますが、その地域に合わせた平均値をもとに算出されていますので、圧倒的な高給取りというわけではありません。民間の福祉施設でも一般的な公務員より給料が高い方もいると思いますよ。
■最後に
ということで、公務員=良い職業と漠然ととらえるのは「隣の芝が青い」のと同じ発想だということです。最後にもし、あなたの施設や事業所で、年1回の試験での採用方式を取り入れたとしたら成り立つでしょうか?
時期関係なく、介護や自事業所に魅力を感じてくれている人を受入れ、しっかりと教育し、ご利用者の望むくらしの為、地域社会づくりの為、がんばってくれる仲間を着実にマッチングしていくことが今の日本では求められていると思います。
茨城県介護福祉士会副会長
特別養護老人ホームもくせい施設長
いばらき中央福祉専門学校学校長代行
NPO法人 ちいきの学校 理事
介護労働安定センター茨城支部 介護人材育成コンサルタント
介護福祉士 社会福祉士 介護支援専門員 MBA(経営学修士)