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セクハラに対して「利用者さまもさみしいのよ」という責任者。納得できません。

セクハラに対して「利用者さまもさみしいのよ」という責任者。納得できません。

【回答者:伊藤 浩一】令和3年度介護報酬改正重点施策「ハラスメント対策の強化」に注目


本日のお悩み

ご利用者様からのセクハラについて

ご利用者様からのセクハラへの対応に困ります。
下腹部を触り男性職員は秘部を握るなどの行為を行い『辞めてください』などの声かけを行うも
次は他の利用者へのセクハラを行い、自分の所へ職員が止めに入るのを待ちまた触る等の行為を行います。

責任者の人は特に注意することなく、自分のだけ触ってもいいです。
と言い、利用者様も寂しいのよと言われますが…それと私達が触られる理由にはならないと思うのです。

令和3年度介護報酬改正重点施策「ハラスメント対策の強化」に注目

ご質問ありがとうございます。

本当にこの問題は深刻です。
ご利用者のセクハラについてのテーマ、私もこのお悩み相談でお答えするのは2回目になります。

前回は、セクハラに悩む新人さんを組織で課題解決する方法について記載しましたが、今回は、ご質問にある「責任者の視点(利用者様も寂しいのよ)と現場の視点(利用者様が寂しい=私達が触られる理由にならない)との食い違いに焦点をあて、解決策を探っていきたいと思います。

介護報酬改定によって、「セクハラはしょうがない」では済まされなくなる

結論からお伝えします。
令和3年度以降、質問者さんが利用者さんからセクハラを受けていると認識し、訴えていれば責任者は「それはしょうがないよね」という回答だけでは済まされなくなります。

厚生労働省は、令和3年度介護報酬改正の重点施策の中に「ハラスメント対策の強化」を盛り込みました。国のデータでは、「これまでに利用者からハラスメントを受けた経験がある」と答えたのは、介護老人福祉施設70.7%、訪問介護50.1%、通所介護45.6%となるそうです。また、ご利用者やご家族からハラスメントを受けたと回答したうち、「仕事を辞めたいと思った」と答えたのは、介護老人福祉施設36.4%、訪問介護29.3%、通所介護29%などとなっているようです。(介護職1万人が回答)

つまり、「それはしょうがないよね」で済ませていると、ご利用者からのハラスメントによる介護職の退職が増加する。そして、2025年に38万人不足と言われている介護職不足に対し、追い打ちをかける結果が目に見えているので、国は今回、重点施策化したということになります。

詳細は順次発表されます

具体的には、介護事業所に対策マニュアルの整備を求める、自治体が行う事業所を対象にした研修や相談体制の強化にかかる費用を助成したりするとなっているようですが、次年度の介護報酬改正の詳細については、現在、次々に情報が公開されていますので詳細の発表にアンテナを立てていきましょう。

責任者と一緒に考えてみましょう!

これからの時代、高齢者の数が増加するとともに利用者のセクハラや今までなかったケースのカスタマーハラスメントも多様化してくることが予想されます。きっと責任者さんも質問者さん以上に頭を悩ませるかもしれませんね。

そんな時、全てを責任者さんの責任とせず、質問者さんも新しい制度を勉強し、「〇〇責任者さん、このセクハラについては、この文章にこのような対策があると書いてますよ」「マニュアル一緒につくります!」「行政からセクハラ対策研修の先生をお呼びしてみんなで勉強しましょう!」なんて助言できたりすることも解決策の一つかもしれませんね。

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この記事のライター

茨城県介護福祉士会副会長
特別養護老人ホームもくせい施設長
いばらき中央福祉専門学校学校長代行
NPO法人 ちいきの学校 理事
介護労働安定センター茨城支部 介護人材育成コンサルタント
介護福祉士 社会福祉士 介護支援専門員 MBA(経営学修士)

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