本日のお悩み
夜勤中、夜中の1時頃から3時過ぎまで、1人の利用者の訴えを傾聴し、助言をしても気がおさまらないことがありました。
他の入居者も、その利用者の声が大きく眠れないため、その場を収める為に「本日の苦情受け付け時間は終了いたしました。明日朝9時より受付開始します。」と貼り紙をし、その場をおさめました。
後日上司から「貼り紙は拘束、虐待。始末書書いて」と言われてしまいました。
利用者数60人を夜勤職員2人でみており、その場を収める為に致し方なく書きました。
私はどうするべきだったのでしょうか?虐待をしているつもりは全くないのにそのように言われ、気を病んでしまいそうです。
相談者:まる さん
意図せず入居者の方を傷つけてしまうこともありうる、と気づく機会と考えましょう
夜勤は、日中に比べて少ない人数で対応しなくてはならず、気持ちがあせることも多々ありますね。
他の方へも気を遣い、何とかいい方法を考えた結果だったのではないでしょうか。
虐待しているつもりはなかったのに、虐待だと言われて驚いたかもしれません。
じつは、虐待しているつもりがなくても、虐待につながりかねないことが現場ではよくあります。
質問者さんだけの問題ではなく、どの介護現場も、つねにこの問題をはらんでいるのです。
■誰しも加害する可能性がある存在だと認識しましょう
高齢者虐待とは、身体的、心理的、性的、経済的、ネグレクト(介護放棄)、の5つに分類されます。
上司の方は、「ネグレクト」に該当すると判断されたのだと考えます。
ネグレクトとは、高齢者が物理的、精神的、そして社会的に必要としているニーズがあるにもかかわらず、介護者が「これらのニーズを満たすための努力や責任を放棄している状態」を意味します。
まずは、誰しも(このようなお答えをしている私を含め)加害する可能性がある存在だと認識し、自分の言動を振り返ることが大切です。
■では、どうすればよかったのか?
さて、では今回のケースでは具体的にどうしたらよかったでしょうか?
その方がどのような方か、細かくお伺いできればよいのですが、いくつか案をお伝えしますね。
推測でお伝えするため、実際は「その入居者の方」への対応を、チームのみなさんと話し合っていただければと思います。
まず、その方はどのようなことを訴えていらっしゃいましたか?
認知症のある方でしたら、その語られる「言葉」だけが本当のニーズとは限りません。
背景に、寂しさ、不安、身体の異常など、言葉にできないけれど、落ち着かない気持ちがあることが考えられます。
その要因を探って、その場での解決が難しい場合も一緒に悩むことが、その方の安心につながる場合もあります。
とはいえ1時から3時まで、ずっと話を聞き続けていると職員も疲れてきてしまいますね。
ご本人の状況によりますが、そのような場合は1度起きて、温かい飲み物でも飲みながらお話するなど、職員の気持ちにも少し余裕がとれる形でかかわるのもよいかもしれません。
■対応が適切か?は、随時変わっていきます
また、張り紙を読んで理解できる方だったのであれば、お伝えする内容も工夫次第です。
「少し席を外します。〇時に戻ってきます」とか、「伺った内容はきちんと記録し、明日の朝にお返事します」とか、ご本人の思いを汲み取った上で、対応を約束するものにすることや、夜勤職員はお二人とのことなので、内容を相談してもよかったかもしれません。
「その方の訴えやニーズに対してなにが出来るか」は毎日、毎時変わりますし、常に考え続けていく必要があります。その対応が本当に適切なのかどうか?ということも、合わせて常々考えるようにしましょう。
■最後に
思いがけない指摘を受けて悩んでしまわれたかもしれませんが、今回の気づきや学びが、必ず今後のケアに生かされるはずです。
その方にどんなケアが出来るか?職場の方々とも、話し合う機会にしてみてくださいね。
「虐待の疑いをかけられてしまった」に関連する介護職のお悩み
ある日、勤務先の施設の社長から電話がかかってきて「利用者に虐待をしているみたいなので、もう来ないで」と言われました。
食事介助の時に顔の向きを上げた時に叩いてるようにみえたのかな。
精神疾患の利用者様が大声を上げた時に何かしていると思われたのかな。
自分が勘違いされるような行動をとってしまったのかなと思いましたが、社長に聞いても教えてもらえず、心当たりもありません。
結局「みんなに謝れば夜勤を続けても良い」ということになりましたが、介護士を続けていく自信もなくなり、人も怖くなってしまいました。
利用者様に関わる、触れるのがとても怖いです。
どうしたら解決できるでしょうか?
相談者:ドラミ さん
■専門家からの回答
思ってもみない疑いに、辛い思いをされましたね。
質問内容を拝見し、いくつか疑問が残りました。
■職員の対応に残る疑問
通常、虐待の疑いがある場合は必ず事実確認を行います。
時系列に沿って、いつ、誰が、どこで、どうしていたか。
そのようなお話は、一切していないのですよね?
みんなに謝る、という一文に対してもですが、「みんな」とは職員の方々でしょうか。
もし、仮に虐待があったとしても、謝るのは入居者さんに対してであって、職員ではないですよね。
何に対して謝るのか質問者さんも分からないと思います。
また、何をしたからそう言われているかが分からなければ、この先改善することもできません。
■公的な相談窓口も活用して
社長さんともう一度、時間を設けて話すことは出来そうですか?
なぜ、そのような疑いがかけられたのか。それが分からないと、このまま働き続けることは出来ない。
はっきり、そうお伝えしていいと思います。
また、不安が強ければ、公的な相談窓口もありますので相談してみてください。
総合労働相談コーナーでは、解雇、雇止め、賃金の引下げなどの労働条件や、募集・採用、いじめ・嫌がらせ、パワハラなど、労働問題に関するあらゆる分野の相談を、労働者、事業主どちらからでも無料で受けしております。
■自分を守ることを一番大切に
誤解が解けたとしても、質問者さんの感じている怖さが消えるまでは時間がかかると思います。
間を取り持ってくれた方へのお気持ちも理解できますが、何よりご自身を守ることを第一に考え、その先どうするか判断してくださいね。
質問者さんが心穏やかに働ける日々が、1日でも早く訪れることを祈っています。
社会福祉士、精神保健福祉士、介護支援専門員