介護職に多い「腰痛」に注意!原因や起こりやすい業務、予防法を紹介
要介護者の移動をサポートするために体を抱えたり、前かがみや中腰の姿勢になったりすることが多い介護職は、腰痛になりやすい職業です。
実際のところ、介護職を含む保健衛生業では、腰痛の発生率は年々増加傾向にあります。
介護職を長く続けるためには、日常の業務のなかで腰に負担をかけすぎないように気をつけなければなりません。
そこで今回は、腰痛の主な原因や腰痛につながりやすい業務、予防のための対策を紹介します。
マンガ監修:望月太敦(公益社団法人東京都介護福祉士会 副会長)
腰痛の発生状況
厚生労働省の発表によると、平成31年(令和元年)に発生した休業4日以上の業務上疾病(しっぺい)は8,310件。うち5,132件が腰痛(災害性腰痛)で、全体の約6割に上ります。
業種別に見ると、介護職を含む「保健衛生業」が最も高く、5,132件のうち約3割にあたる1,648件を占めます。
(※出典:厚生労働省「業務上疾病発生状況等調査(平成31年/令和元年)」)
なお、厚生労働省も労働現場における腰痛の発生率の高さを問題視し、「職場における腰痛対策行動指針」(平成6年策定、平成25年改訂)などを通して、重量物を扱う事業者などに対策を呼びかけています。
保健衛生業において腰痛は、年々増加する傾向にあります。
特に腰に負担がかかる業務が多い介護職に起こりやすいため、介護事業者には入念な取り組みが求められます。
腰痛が起こる主な要因
腰痛が起こる原因は、主に次の3つだと言われています。
■動作的要因
重いものをひんぱんに持ち上げる、無理な姿勢で作業するといった動作による、腰への過度な負担・負荷
■環境的要因
職場が寒くて冷える、ベッドなどの配置が悪く移動しづらい、照明が暗く足元の様子を確認しづらいといった職場の環境に関係すること
■個人的要因
年齢や性別、体格、筋力、既往歴、基礎疾患の有無など、個人的な属性に関わること
上記の3つのほかに、職場の人間関係によるストレスなど、心理・社会的な要因も関係していると考えられています。
また、慢性的な人手不足でスタッフそれぞれの業務量が多すぎるなど、一人ひとりのスタッフの疲労蓄積が大きくなっているケースが考えられます。
このケースでは組織体制の問題が要因であるとも言えるでしょう。
多くの腰痛において、原因は1つだけではなく、これらのうち複数の因子が重なって症状を引き起こします。
腰痛につながりやすい姿勢と業務
介護職は、腰痛を引き起こす「動作的要因」が生じやすい職種といえます。
ここでは、腰痛を招きやすい姿勢・動作と、それらを含む介護業務を確認しておきましょう。
■前かがみ・中腰の姿勢
介護者は、要介護者のおむつ交換や体位交換、入浴介助、トイレ介助などで前かがみ、中腰になる機会が多く、その都度、腰に負担がかかります。
■腰をひねる姿勢
たとえば介護者が要介護者の隣に座って介助を行う食事介助では、要介護者の方に体を向けることで必然的に腰をひねる姿勢になるため、腰に負担がかかります。
このほか、移乗介助や入浴介助も、腰をひねる動きが多い業務です。
■持ち上げる動作
要介護者が車椅子からベッドに移動する際や入浴、トイレの際などに、要介護者を抱えて持ち上げる移乗介助は、介護業務にはつきものですが、腰に大きな負荷がかかり、腰痛につながりやすい動作です。
■長時間同じ姿勢を続けること
長時間にわたって立ったまま、あるいは座ったままなど、同じ姿勢でいることも腰に負担をかけます。
介護職の場合、たとえば長時間休憩を取らずに立ち仕事を続けるケースなどが当てはまります。
腰痛の予防方法
では、介護職の腰痛を予防するためには、どうすればいいのでしょうか。個人でできるものと組織で取り組むべきものに分けて、主な対策を紹介します。
■個人でもできる対策
体に負担のかかりにくい姿勢や動作を身につける
基本的な対策として、まずは介護者自身が、腰や体に負担がかかりにくい姿勢や動作を身につける必要があります。
たとえばベッドや床に寝ている要介護者の体を抱き起こす際には、腰を曲げて前かがみになるのではなく、膝を曲げて腰を落とし、重心を低くした状態で動くようにします。
また、要介護者の移動をサポートするために体を抱える際には、できる限り要介護者の体に自分の体を近づけて密着させると、密着した部分が支点になり、少ない力で楽に動かすことができます。
食事介助の際には、腰をひねらず、体ごと要介護者に向けるようにすると良いでしょう。
普段の姿勢の良し悪しも腰に影響するので、立っているときや座っているときにはできる限り背筋を伸ばし、正しい姿勢を保つようにしましょう。
長時間同じ姿勢にならないようにする
長時間立ちっぱなしにならないよう、立ち仕事が続くときには適度なタイミングで座って休憩を取るようにしましょう。
立ち仕事の間に座ってできるデスクワークを挟むなど、変化のある作業計画を立てて同じ作業が続かないようにすることも大切です。
また、入浴介助の際には同じ体勢をとり続けてしまいやすいので、自分で意識して体勢を変えるようにしましょう。
要介護者の力を最大限に活かす
介護の基本は、要介護者がどうしてもできない部分だけ力を貸し、本人の能力を最大限に活かすことです。
担当する要介護者の能力を把握したうえで、介助の際には無理のない範囲で本人に動いてもらうようにすると、介護者の負担が軽減できるだけでなく、要介護者の自立にもつながります。
また、介助の際に、相手の動きに合わせて動くことも大切です。
たとえば車椅子やイスから要介護者が体を起こすことをサポートするときには、無理に上に引っ張りあげるのではなく、手を取って支えながら、本人の動きに合わせて前に引くようにします。
エクササイズを習慣にする
腰痛は、腰とその周辺の筋肉が緊張することで起こるため、体の血行をよくし、筋肉の凝りをほぐすエクササイズは、腰痛予防に有効です。
特に簡単で取り入れやすいのが、腰や背中、脚などの筋肉を伸ばすストレッチングです。
業務の合間や休憩時間、凝りや疲れを感じたときに行う習慣をつけましょう。
ささえるラボ編集部です。
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