本日のお悩み
半身麻痺の男性利用者の立ち上がり介助が上手くいかなく、悩んでいます。
両脇に手を置いて1、2、3の3で体を持ち上げるのですが、私がやる時だけ立ち上がれず困っています。
最初は上手くやれていたのですが、最近失敗の方が多く、その事が頭から離れません。
アドバイスのほど、宜しくお願いします。
相談者:きなこ さん
ボディメカニクスを活用した、立ち上がり介助のポイント6つを教えます!
マンガ監修:望月太敦(公益社団法人東京都介護福祉士会 副会長)
執筆者
ご質問ありがとうございます。
半身麻痺の方の立ち上がり介助の方法ですね!
頭の中でイメージするのと、実際に行うのとでは、分かっているつもりでも、なかなか上手にサポートできないですよね。
私も仕事を始めたころはうまくできずに、悩んだ経験がございます。
ポイントに分けて、説明させていただきますね。
■ボディメカニクスの活用を!
まずはボディメカニクスを活用した介助方法を心がけましょう。
ボディメカニクスとは、身体力学を活用した介助技術のことですが、支援者の腰痛予防にもなり、習得しなければならない介助技術でもあります。
介護技術の移乗動作や立位動作など、様々な場面で活用しますので、それぞれの活用方法などを今一度ご確認いただきたいと思います。
今回ご質問頂いた立位補助の主な場面では、
・介助者やご利用者の支持基底面積を広くとる
・大きな筋肉を使用する
・介助者の重心を低く落とし、重心移動でサポートする。
等がポイントとなりますが…難しい表現ですよね。
もう少しわかりやすくご説明しますね。
■立ち上がり動作のポイント6つ
ご利用者様についてですが、半身麻痺の方で、左右どちらかの上下肢に麻痺は残るものの、健側に力を入れることで、立位が可能との事ですね。
初めはうまくいっていたとのことですが、力任せに持ち上げていただけかもしれませんので、基本を押さえたうえでご自身で行っていた方法を振り返ってみてください。
ポイントを6つに分けて説明します。
①立ち上がる為の同意をとる
いきなり立ち上がるわけではないかと思いますので、これから何のために立ち上がって頂くか、ご利用に説明をして下さいね。
うなずく事や言葉での返答で、確認ができるかと思います。
②浅く座っていただく
車椅子に深く座って頂いている場合、そのままだと力が入らず、立ち上がる為の動作が大変になってしまいます。
お尻の位置を座面の少し手前に引いていただき、立ち上がりの動作をスムーズにサポートしてくださいね。
③『こちらの足を引いていただけますか?』など声かけをする
健側の足を膝に対して直角になるように、もしくは少し下げて頂くように『こちらの足を引いていただけますか?』など声かけをします。
この際、足底がきちんと床についているかが重要なポイントとなりますので、ご確認をお願いします。
麻痺側の足は膝よりも前に来るように場所を変えて差し上げてください。
両足が引かれている状態だと、立ち上がった際に前のめりに転んでしまいますからね。
④手前に引きあげるイメージで、立位動作を補助する
前かがみになりながらこれから立ち上がることをご本人に伝え、健側の足底に体重が乗るように、手前に引きあげるイメージで立位動作を補助します。
ご本人がこれから立ち上がることを理解していないうちに、力任せに持ち上げようとしてしまった場合は、ご本人は立ち上がるばかりか、怖さを感じて体に力を入れてしまいます。
そこで、『私が支えていますから、立ち上がって頂いてもよろしいですか?』と、立ち上がる為の声掛けは忘れないでくださいね。
足底に体重が乗ると、太ももの前方(大腿四頭筋)やお尻(大殿筋)の大きな筋肉に力が加わり立ち上がりやすくなります。
⑤麻痺側の膝折れを支える
立ち上がる際に麻痺側の膝折れが発生する場合は、膝が折れないように支えます。
膝折れを防止する方法はいくつかありますが、私が行っている方法は、膝が外側に向かって開いてしまう場合であれば、ご自身の膝をご利用者さんの膝の外側に合わせるように置くことで、外側に開いてしまう事を防ぎます。
前方に膝折れがある場合には、ご利用者さんの足の外側にご自身の足を付け、ご自身の脛骨とご利用者の脛骨をクロスするように添えておきます、押し付けてはいけませんよ。
⑥苦痛などがないか観察する
立ち上がり動作から立ち上がるまで、ご本人の表情を観察し、苦痛などがないか観察してください。
立ち上がった際には起立性の低血圧などを起こされていないか確認する意味でも、『ご気分悪くありませんか?』などとお声掛けするのが良いと思います。
※注意点
『持ち上げる』は間違いです。イメージとしては、『手前に引き上げる』です。
・持ち上げる(リフト)
⇒2人介助などで頭部と足をそれぞれ持ちながら移乗する際等はこちらのイメージです。
・手前に引き上げる(シフト)
⇒立位の介助はこちらのイメージです。
『リフト』と『シフト』の違いは覚えておいてくださいね。
そして立ち上がる際は、ゆっくりと。
急に力任せにシフトしても、びっくりされてしまい、体に余計な力が入ってしまいますからね。
ご利用者ご自身の力を発揮できるように支持して差し上げてください。
全介助ではなく、軽介助で立位していただく時には、ご質問者さんは腋下を両手で支えているとの事ですが、ご利用者さんとの間にスペースが無いと、立ち上がりの動作の妨げになってしまうので、ご注意くださいね。
ご本人の立ち上がる力が弱い時には、腋下ではなく、肩甲骨まで手を差し入れて立位動作の補助を行うとスムーズかと思います。
■練習方法は?
私がよく行っていた練習方法ですが、ご利用者さんの状態を自分で再現して、椅子に座り、ご質問者さんがどうすれば立ち上がりやすいのか実際にやってみると、どのように支持してもらえると立ち上がりやすいのかイメージできると思います。
立ち上がりやすいのは、
・浅く座る
・足を引く
・床に足底を付ける
・前傾になる
このような姿勢だと、太腿の筋肉に力が入ることを感じることができるはずです。
逆に立ち上がりにくい姿勢は
・深く座る
・足を投げ出す
・頭を前に倒さずに立ち上がろうとする
です。このような時はどう頑張っても絶対に立ち上がれないと思いますよ!
■最後に
この違いがご理解できれば、ほとんどの方の立位介助ができるようになります!
正しい動作を繰り返し反復することで、よりスムーズになりご質問者さんの力となりますからね!
応援しています!頑張ってくださいね!
ありがとうございました。
・けあぷろかれっじ 代表
・NPO法人JINZEM 監事
介護福祉士、社会福祉士、介護支援専門員、潜水士