マイナビ福祉・介護のシゴト
立ち上がり介助|ボディメカニクスを活用した6つのポイントを解説します!

立ち上がり介助|ボディメカニクスを活用した6つのポイントを解説します!

[2024年9月更新]毎日おこなう立ち上がり介助。力任せで行ってしまうと、介助者の負担はもちろん、介護をされる側の負担も大きいものです。双方の負担を少しでも減らすためにボディメカニクスを活用した立ち上がり介助について6つのポイントを解説します!【回答者/専門家:後藤 晴紀】


\あなたにぴったりの求人が見つかる/
「介護職員」の求人を見る

立ち上がり介助が上手くできない…

本日のお悩み

半身麻痺の男性利用者の立ち上がり介助が上手くいかなく、悩んでいます。
両脇に手を置いて「1、2、3」の「3」で体を持ち上げるのですが、私がやるときだけ立ち上がれず困っています。

最初は上手くやれていたのですが、最近失敗のほうが多く、そのことが頭から離れません。
立ち上がり介助がうまくいくポイントなどについてアドバイスをよろしくお願いします。

執筆者/専門家

後藤 晴紀

https://mynavi-kaigo.jp/media/users/9

けあぷろかれっじ 代表 ・NPO法人JINZEM 監事 介護福祉士、社会福祉士、介護支援専門員、潜水士 『介護福祉は究極のサービス業』 私たちは、障がいや疾患を持ちながらも、その身を委ねてくださっているご利用者やご家族の想いに対し、人生の総仕上げの瞬間に介入するという、責任と覚悟をもって向き合うことが必要だと感じています。 目の前のご利用者に『生ききって』頂く。 私たち介護職と出会ったことで、より良き人生の総仕上げを迎えて頂ける為のサポートをさせていただく事が、私たちに課せられた使命だと思っています。

ご質問ありがとうございます。

半身麻痺の方の立ち上がり介助の方法ですね!
頭の中でイメージするのと、実際に行うのとでは、分かっているつもりでも、なかなか上手にサポートできないですよね。初めはうまくいっていたとのことですが、力任せに持ち上げていただけかもしれませんので、基本を押さえたうえでご自身で行っていた方法を振り返ってみてください。

私も仕事を始めたころはうまくできずに、悩んだ経験がございます。
ポイントごとに分けて、説明させていただきますね。

ボディメカニクスを活用した立ち上がり介助を行いましょう!

立ち上がり介助が上手くいかず悩まれているとのこと。おそらく立ち上がらせようという気持ちも強くなり、質問者さんの身体に大きな負担がかかっているはずです。また、介助者が負担に感じているとき、実は介護される側も負担を感じている場合が多いのです。

双方の負担を減らすための方法として身体力学を活用したボディメカニクスという介助技術があります。
介護技術の移乗動作や立位動作など、様々な場面で活用しますので、それぞれの活用方法などを今一度ご確認いただきたいと思います。

今回ご質問頂いた立ち上がり介助の主な場面では、
・介助者やご利用者の支持基底面積を広くとる
・大きな筋肉を使用する
・介助者の重心を低く落とし、重心移動でサポートする

等がポイントとなりますが…言葉だけで表すには難しい表現ですよね。
もう少しわかりやすくご説明しますね。

立ち上がり介助のポイント6つ!

では、早速ですが立ち上がり介助のポイントを6つに分けて紹介します。
立ち上がり介助のポイントは以下の通りです。
1.立ち上がるための同意を得る
2.利用者さんに浅く座ってもらう
3.『こちらの足を引いていただけますか?』など声かけをする
4.手前に引きあげるイメージで、立位動作を補助する
5.麻痺がある場合、麻痺側の膝折れを支える
6.苦痛などがないか観察、確認する 

■1.立ち上がるための同意を得る

立ち上がることに対する同意を得る

これから何のために立ち上がっていただくのか、利用者さんに説明をしましょう。

うなずくことや言葉での返答で、利用者さんに伝わっているかどうか確認ができると思います。

ご本人がこれから立ち上がることを理解していないうちに、力任せに持ち上げようとしてしまった場合は、ご本人は立ち上がるばかりか、怖さを感じて体に力を入れてしまいます。
そこで、『私が支えていますから、立ち上がっていただいてもよろしいですか?』など、立ち上がるための声掛けは忘れないようにしましょう。

■2.利用者さんに浅く座ってもらう

利用者さんに浅く座ってもらう

車椅子等に深く座っている場合、そのままだと力が入らず、立ち上がるための動作が大変になってしまいます。
お尻の位置を座面の少し手前に引いていただき、立ち上がりの動作がスムーズになるようサポートしましょう。

■3.『こちらの足を引いていただけますか?』など声かけをする

こちらの足を引いてもらえますかのように声かけをする

健側の足を膝に対して直角になるように、もしくは少し下げていただくよう『こちらの足を引いていただけますか?』など声かけをします。

この際、足底がきちんと床についているかが重要なポイントとなりますので、確認を行いましょう。 麻痺側の足は膝よりも前に来るよう場所を変えて差し上げてください。 両足が引かれている状態だと、立ち上がった際に前のめりに転んでしまうので要注意です。
※健側:ケガや麻痺による障害を受けておらず、通常どおりに動かせる側の下肢や上肢のこと

■4.手前に引きあげるイメージで、立位動作を補助する

手前に引きあげるイメージで、立位動作を補助する

前かがみになりながらこれから立ち上がることを利用者さん本人に伝え、健側に体重が乗るように、手前に引きあげるイメージで立位動作を補助します。

足底に体重が乗ると、太ももの前方(大腿四頭筋)やお尻(大殿筋)の大きな筋肉に力が加わり立ち上がりやすくなります。

■5.麻痺がある場合、麻痺側の膝折れを支える

麻痺がある場合、麻痺側の膝折れを支える

立ち上がる際に麻痺側の膝折れが発生する場合は、膝が折れないように支えます。

膝折れを防止する方法はいくつかありますが、私が行っている方法は、膝が外側に向かって開いてしまう場合であれば、自分の膝を利用者さんの膝の外側に合わせるように置くことで、外側に開いてしまうことを防ぐ方法です。
前方に膝折れがある場合には、利用者さんの足の外側に自分の足を付け、自分の脛骨とご利用者の脛骨をクロスするように添えておきます。押し付けることのないよう注意してください。

■6.苦痛などがないか観察、確認する 

苦痛などがないか観察、確認する 

立ち上がり動作から立ち上がるまで、ご本人の表情を観察し、苦痛などがないか観察してください。

立ち上がった際には起立性の低血圧などを起こされていないか確認する意味でも、『ご気分悪くありませんか?』などとお声掛けするのが良いと思います。

※介助時の注意点※

1.「リフト」と「シフト」の違いを覚えておこう
2.立ち上がる際は急かさず「ゆっくり」と
3.軽介助の場合は利用者さんとの「スペース」を大切に

ー1.「リフト」と「シフト」の違いを覚えておこう

立ち上がり介助において持ち上げる(リフト)はNGです。正しいイメージとしては手前に引き上げる(シフト)です。

持ち上げる(リフト)は 2人介助などで頭部と足をそれぞれ持ちながら移乗する際などに活用します。「リフト」と「シフト」の違いは必ず覚えておきましょう。

ー2.立ち上がる際は急かさず「ゆっくり」と

そして立ち上がる際は、ゆっくりと立ち上がれるようサポートしましょう。
急に力任せにシフトしても、びっくりされてしまい、利用者さんの体に余計な力が入ってしまいます。 利用者さんご自身の力を発揮できるように支持して差し上げてください。

ー3.軽介助の場合は利用者さんとの「スペース」を大切に

全介助ではなく、軽介助で立位していただく際、腋下を両手で支えてしまいがちですが、利用者さんとの間にスペースがないと、立ち上がり動作の妨げになってしまうので、ご注意ください。

利用者さんの立ち上がる力が弱いときには、腋下ではなく、肩甲骨まで手を差し入れて立位動作の補助を行うとスムーズかと思います。

立ち上がり介助の練習はどのように行う?

ー利用者さんの状態を自分で再現してみましょう

私がよく行っていた練習方法は、利用者さんの状態を自分で再現して、椅子に座り、どうすれば立ち上がりやすいのかを実際にやってみることです。これを行うことで、どのように支えてもらえると立ち上がりやすいのかイメージできると思います。

【立ち上がりやすい姿勢】
・浅く座る
・足を引く
・床に足底をつける
・前傾になる
→これらのような姿勢だと、太腿の筋肉に力が入ることを感じることができるはずです。


【立ち上がりにくい姿勢】
・深く座る
・足を投げ出す
・頭を前に倒さずに立ち上がろうとする
→このようなときはどう頑張っても絶対に立ち上がれないと思います。

最後に:マンガで立ち上がり介助のポイントを確認!

ポイントをおさえたうえで、実際の利用者さんの立場が理解できると、立ち上がり介助への苦手意識がなくなると思います。

正しい動作を繰り返し反復することで、よりスムーズになり質問者さんの力となります!
慣れるまでは大変だと思いますが、応援しています!頑張ってください!

最後にマンガで立ち上がり介助のポイントを復習しましょう。
立ち上がり介助のポイント①

立ち上がり介助のポイント②

マンガ監修:望月太敦(公益社団法人東京都介護福祉士会 副会長)

あわせて読みたい記事

【排泄介助の注意点!】排せつ介助のポイントや苦手を克服する方法、ADLに合わせた用具選びのポイントも解説!【専門家:大関 美里】 | ささえるラボ

https://mynavi-kaigo.jp/media/articles/134

[2024年5月更新]排泄介助とは?未経験者だと苦手、汚いと感じている人も多いのではないでしょうか?この記事では排泄介助の進め方、ADL(日常生活動作)に合わせた用具選び、苦手に対する心構えなどを解説します!大切なのは、トイレをすぐに諦めないこと。【回答者:大関 美里】

正しい食事介助のポイントとは?安全な姿勢、準備や手順、注意点を確認しよう | ささえるラボ

https://mynavi-kaigo.jp/media/articles/392

【2024年4月更新】自力で食事をとることが難しくなった高齢者には、食事介助を行う必要があります。要介護者が安全に食事を楽しめるよう、介護者が工夫しながら正しい方法で介助することが大切です。基本の食事介助の姿勢や手順、注意点、スプーンの入れ方など、食事介助のポイントを紹介します。施設での研修の際、マニュアルとしてもご利用いただけます。【コラム:後藤晴紀】

\あなたにぴったりの求人が見つかる/
「介護職員」の求人を見る

この記事のライター

・けあぷろかれっじ 代表
・NPO法人JINZEM 監事

介護福祉士、社会福祉士、介護支援専門員、潜水士

関連する投稿


介護職が行う自立支援|4つの基本ケアや実際の取り組みについて解説!

介護職が行う自立支援|4つの基本ケアや実際の取り組みについて解説!

自立支援介護とは、介護が必要になった高齢者が、可能な限り自分の力で生活できるように支援する介護のことです。高齢化が進む日本において、デイサービスなどを提供する介護施設でも近年、自立支援介護は注目されています。この記事では、自立支援介護の4つの基本ケアや実際の取り組みについて専門家が解説します!【執筆者/専門家:古畑 佑奈】


介護施設で年末年始にできるイベント|クリスマス会や忘年会の準備のポイントを解説!

介護施設で年末年始にできるイベント|クリスマス会や忘年会の準備のポイントを解説!

年末年始は、クリスマス会や忘年会などさまざまなイベントが行われる時期です。介護施設でもこれらのようなイベントを実施すると、利用者さんたちの活力を高めたり、親睦を深めたりする良い機会になります。この記事では、年末年始のイベントを企画するにあたって準備したいこと、当日取り入れられるレクリエーションなどを紹介します。【執筆者/専門家:後藤 晴紀】


住居型有料老人ホームでの老老介護|介護職員ができるサポート方法とは?

住居型有料老人ホームでの老老介護|介護職員ができるサポート方法とは?

住居型有料老人ホームなどの介護施設では、夫婦での入居が認められています。長年連れ添った家族と同じ施設に入れることは安心感がある反面、施設に入居をしているにもかかわらず、老老介護になってしまうというリスクもあります。この記事では、夫婦で入居している方に介護職員ができるサポート方法を専門家が解説します!【執筆者/専門家:伊藤 浩一】


第128話 利用者さんへの声かけ/ほっこり介護マンガ

第128話 利用者さんへの声かけ/ほっこり介護マンガ

「介護職員・並木マイの ほっこり成長日記 ~転職して、介護の仕事はじめました~」 保険会社から介護の仕事に転職した、並木マイさん(31歳)の成長と 介護現場のあるあるを描く、ほっこり癒し系マンガ! 休憩時間、このマンガを読んだあなたが クスっと笑えてちょっと癒され、ほっこりした気持ちになれますように。


【2024年最新版】介護職の離職率が過去最低に!|離職率が下がった背景や今後の展望について解説

【2024年最新版】介護職の離職率が過去最低に!|離職率が下がった背景や今後の展望について解説

令和5年度介護労働実態調査によると、介護職の離職率が過去最低の13.1%となりました。この背景には、何があるのでしょうか。考えられる要因と、今後の展望について社労士の山本先生に解説していただきます!【執筆者/専門家:山本 武尊】


マイナビ福祉・介護のシゴト 閲覧ランキング
【北海道・東北】
【関東・甲信越】
【北陸・東海】
【関西・中四国】
【九州・沖縄】

最新の投稿


第36回 介護福祉士国家試験 過去問と解説(こころとからだのしくみ)

第36回 介護福祉士国家試験 過去問と解説(こころとからだのしくみ)

第36回 介護福祉士国家試験の試験科目【こころとからだのしくみ】の過去問と解説を用意しました。 力試しや国試対策にご利用ください。


第36回 介護福祉士国家試験 過去問と解説(医療的ケア)

第36回 介護福祉士国家試験 過去問と解説(医療的ケア)

第36回 介護福祉士国家試験の試験科目【医療的ケア】の過去問と解説を用意しました。 力試しや国試対策にご利用ください。


第36回 介護福祉士国家試験 過去問と解説(総合問題)

第36回 介護福祉士国家試験 過去問と解説(総合問題)

第36回 介護福祉士国家試験の試験科目【総合問題】の過去問と解説を用意しました。 力試しや国試対策にご利用ください。


介護職が行う自立支援|4つの基本ケアや実際の取り組みについて解説!

介護職が行う自立支援|4つの基本ケアや実際の取り組みについて解説!

自立支援介護とは、介護が必要になった高齢者が、可能な限り自分の力で生活できるように支援する介護のことです。高齢化が進む日本において、デイサービスなどを提供する介護施設でも近年、自立支援介護は注目されています。この記事では、自立支援介護の4つの基本ケアや実際の取り組みについて専門家が解説します!【執筆者/専門家:古畑 佑奈】


介護施設で年末年始にできるイベント|クリスマス会や忘年会の準備のポイントを解説!

介護施設で年末年始にできるイベント|クリスマス会や忘年会の準備のポイントを解説!

年末年始は、クリスマス会や忘年会などさまざまなイベントが行われる時期です。介護施設でもこれらのようなイベントを実施すると、利用者さんたちの活力を高めたり、親睦を深めたりする良い機会になります。この記事では、年末年始のイベントを企画するにあたって準備したいこと、当日取り入れられるレクリエーションなどを紹介します。【執筆者/専門家:後藤 晴紀】


マイナビ福祉・介護のシゴト
「マイナビ福祉・介護のシゴト」は、福祉・介護職に特化した中途、パート向け求人サイトです。
介護職をはじめ、福祉・介護業界に関連する職種の求人を掲載しています。
本当に自分にあった施設や事業所を、ご自身で手軽に探すことができるよう職場の雰囲気がリアルに伝わる情報を用意することで、適切なマッチングを実現していきます。
【職種から求人・転職情報を探す】