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介護職にも退職金は出る?制度の仕組みや金額の目安を知っておこう

介護職にも退職金は出る?制度の仕組みや金額の目安を知っておこう

将来や老後のことを考えると、あると安心な退職金。介護職も、勤務する事業所によっては退職金をもらえる可能性があります。退職金制度の種類や仕組み、介護業界の退職金事情、退職金の有無をチェックする方法を解説します。【執筆/マイナビ編集部、専門家:大庭欣二】


目次

介護職にも退職金は出る?制度の仕組みや金額の目安を知っておこう

現役の介護職にとってはまだ実感のない話かもしれませんが、将来や老後のことを考えると、退職金があった方が安心ですよね。
介護福祉に関係する事業所も他の業種と同様に退職金は支給されているのが現状です。

今回は、介護職が知っておきたい退職金制度の種類や仕組み、介護業界の退職金事情について解説します。
あわせて、現在の勤め先や転職先に退職金制度があるかどうかをチェックする方法も知っておきましょう。

介護職にも退職金は出る?制度の仕組みや金額の目安を知っておこう

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マンガ監修:望月太敦(公益社団法人東京都介護福祉士会 副会長)

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退職金とは?

退職金とは、従業員が勤め先の企業を辞めるときに支給される手当ことです。
退職金には、大きく分けると、退職時に一括で支払われる「退職一時金」と、退職後に定期的に年金として支給される「退職年金」の2種類があります。

一般的に、これらの退職金を支給する制度を総称して、「退職金制度」と呼びます。
介護職の場合、勤務している事業所が何らかの退職金制度を導入していれば、将来、退職する際に退職金をもらうことができます。

ただし、企業が従業員に退職金を支払うことは、法律上、義務というわけではありません。
そのため退職金の有無や金額は、勤め先の事業所によって異なります。
なお、退職金は、定年退職時にもらえるものというイメージがありますが、定年前に自己都合で辞めるときや事業所の都合で解雇されるときも、事業所の規定によってはもらえる場合があります。

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主な退職金制度の種類

退職金制度には、資金を積み立てる仕組みや支払い方によって、さまざまな種類があります。
ここでは、「退職一時金制度」と「退職年金制度」に分けて、主な制度を紹介します。

退職一時金制度

■事業所独自の退職一時金制度

事業所が独自に内部で資金を積み立てる制度です。
従業員が退職する際に、退職一時金として支払われます。

ただ、共済制度などの外部で資金を積み立てる制度とは違って、事業所が倒産して従業員に退職金を支払うための資産がなくなってしまった場合には、退職一時金をもらうことができません。

■退職金共済制度

事業所が共済制度を契約し、定期的に外部の機関に掛け金を支払うと、従業員の退職時には、共済から退職一時金が支払われる仕組みになっています。

退職金共済制度にも、いくつか種類があります。以下に、介護業界で一般的な退職金共済制度をあげておきましょう。

【社会福祉施設職員等退職手当共済制度】

社会福祉施設に勤める職員の待遇改善を目的に「社会福祉施設職員等退職手当共済法」という法律に基づいてつくられた制度で、のべ約200万人の加入者に退職金を支給してきた歴史があります。
制度の運用や資金の管理は、独立行政法人「福祉医療機構」が行なっています。
退職金の資金は、同制度を契約している事業所が出した掛け金と、国・都道府県からの補助金でまかなわれます。

制度の対象となる従業員が退職すると、退職金は、福祉医療機構からその従業員の口座に直接振り込まれます。
同制度には、従業員の勤続年数が長くなるほど、その従業員が受け取れる退職金の支給額が大幅にアップするという特徴があります。
加入するかどうかは事業所の自由ですが、補助金が出る、従業員の定着につながるなど、事業所にとってもメリットの多い制度です。
福祉医療機構によると、約9割の社会福祉施設が同制度を利用しています。
(出典:独立行政法人福祉医療機構『社会福祉施設職員等退職手当共済制度のご案内』2021年度)

【従事者共済会の退職共済制度】

従事者共済会は、民間の社会福祉施設や団体で働く従業員の福利厚生のため、退職金共済事業や貸付金事業などを行なっている団体で、各都道府県に設置されています。
東京都社会福祉協議会の従事者共済会の退職共済制度の場合、毎月の掛け金は、従業員の基本給の額によって決められ、事業所と従業員が半額ずつ負担します。

退職年金制度

■確定給付企業年金制度

事業所が信託銀行や生命保険会社などの外部の機関に掛け金を払って資金を積み立て、従業員が退職すると、一定の期間、決まった金額が年金として支払われます。
事業所が資金を運用するため、従業員に運用上のリスクはなく、あらかじめ給付額が確定しているのが特徴です。

■企業型確定拠出年金制度

事業所が信託銀行や生命保険会社などの外部機関に掛け金を積み立て、従業員自身がそのお金(資産)を運用する制度です。
従業員が運用リスクを負うため、運用の結果によって、退職後に受け取る年金の額が左右されます。
事業所によっては、事業所が出す掛け金に、従業員自身が掛け金を上乗せする「マッチング拠出」という制度を利用できる場合もあります。

ちなみに、確定拠出年金制度には、企業型のほかに、個人で掛け金を拠出し、運用する「個人型確定拠出年金制度」もあります。こちらは、「iDeCo(イデコ)」という名称でも知られています。

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介護業界の退職金事情

では、介護職の場合、どれくらいの人が退職金をもらえるのでしょうか。
また、金額はいくらくらいで、同じ職場で何年くらい働けばもらえるものなのでしょうか。
ここでは、介護業界の退職金事情について解説します。

正規雇用なら、約6割の施設が退職金あり!

公益財団法人介護労働安定センターが2012年に実施した調査によると、正規職員が対象の場合、約6割(63.7%)の介護事業所が「退職金制度がある」と回答しています。

ただし、非正規職員が対象となると、「退職金制度がある」は、常勤の者で15.2%、パートのような短時間労働者ではわずか5%です。
介護職でも、正規職員として就職すれば退職金をもらえる可能性は十分にありますが、職場や働き方によってはもらえないことも珍しくないようです。
(出典:公益財団法人介護労働安定センター『平成24年度介護労働実態調査』)

ただ、近年の日本社会では、終身雇用が大幅に減り、数年ごとに転職してキャリアアップしていく生き方を選択する人が少なくありません。

こうした社会状況を背景に、退職金制度を見直したり、廃止したりする企業が増えています。
介護業界を対象としたものではありませんが、りそな年金研究所の調査によると、大企業では近年も退職金制度の実施率は9割を超えているものの、中堅・中小企業では、2002年には「退職金制度あり」の企業が88.8%だったのに対し、2020年には65.9%まで減少しています。
(出典:りそな年金研究所『統計でみる退職金・企業年金の実態(2021 年版) ~大企業および中堅・中小企業の動向~』)

こうした状況を考えると、今後、介護業界でも、中小規模の事業所を中心に退職金制度のないところが増えていくでしょう。
今勤務している事業所や転職先に退職金制度があれば、幸運といえるかもしれません。

金額は事業所・勤続年数によってまちまち

退職金の金額は、その人が勤務する事業所の規定や事業所が契約している共済の種類、基本給の額、勤続年数などによって異なります。
数万円のケースもあれば、数百万円もらえるケースもあり、一概に相場はいくらと示すことはできません。

ただ、社会福祉施設を運営する事業所の約9割は前出の「社会福祉施設職員等退職手当共済制度」に加入しているので、同制度における退職金の支給額の例が、ひとつの参考になるでしょう。
同制度では、退職前6カ月間の基本給の平均額をもとに計算した「計算基礎額」に、共済への加入期間や退職理由に応じて定められている「支給乗率」を掛けることで退職金の支給額を計算します。

【社会福祉施設職員等退職手当共済制度の退職金支給額の例(普通退職の場合)】

■ 5年間勤務して退職(基本給の平均額20万円):約50万円
■10年間勤務して退職(基本給の平均額22万円):約115万円
■20年間勤務して退職(基本給の平均額28万円):約572万円
■30年間勤務して退職(基本給の平均額33万円):約1,155万円
■40年間勤務して退職(基本給の平均額41万円):約1,676万円
(出典:独立行政法人福祉医療機構『社会福祉施設職員等退職手当共済制度のご案内』2021年度)

基本給の額にもよりますが、上の例を見ると、勤続年数が長くなるほど退職金の支給額が高くなる同制度の特徴がよくわかります。

退職金が出るのは、勤続1年から

勤め先の事業所が退職金制度を導入していても、働き始めて数週間や数カ月で辞めてしまったというケースでは、退職金は支払われないケースが多いでしょう。
では、どれくらい続けて勤務すれば、退職金をもらえるのでしょうか。

退職金支給の条件となる勤続年数は、事業所が導入している退職金制度によって異なります。
前出の「社会福祉施設職員等退職手当共済制度」の場合、制度に加入した日(正規職員の場合は採用日)から1年以上勤務すると、退職金支給の対象となります。
そのほかの共済制度でも、勤続1年以上を条件としているケースが一般的です。

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退職金の有無を確認するには

就業規則を確認する

自分が勤務する事業所に退職金制度があるのかどうかを把握していない人は、ぜひ一度、就業規則で確認しておきましょう。

就業規則は通常、入職した際に、その法人から従業員に冊子や手帳のような形で配布されます。
事業所が退職金制度を導入していれば、通常、就業規則に、退職金制度の内容や支給時期(支給日)などが記載されているはずです。

給与明細を確認する

毎月の給与明細をチェックするのもひとつの方法です。

というのも、なかには退職一時金や退職年金の掛け金が従業員の毎月の給与から引かれているケースもあるからです。
自分の給与明細の控除(給与から天引きされる項目)の欄に、退職金の掛け金が含まれていれば、その事業所では将来、退職金が支給されることがわかります。

各従業員に就業規則の冊子が配布されていない場合や、就業規則などを確認しただけでは詳しい制度の内容がよくわからないという場合は、現場の管理職や人事労務部の担当者に聞いてみるとよいでしょう。

就職・転職活動中の場合は

就職活動中に志望する事業所の退職金制度の有無を知りたい場合は、求人票の待遇欄を確認しましょう。

先述の通り、事業所にとって、退職金の支給は義務ではないため、退職金制度を導入していないケースも少なくありません。求人票に記載がない場合、その事業所では退職金が出ないと考えられますが、できれば選考が進んで内定が出る可能性が出てきた段階で、人事担当者に確認しておくとよいでしょう。

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【専門家が解説】退職金がない施設が多いのはなぜ?面接で退職金について聞いても大丈夫?

執筆者

大庭 欣二

https://mynavi-kaigo.jp/media/users/11

福岡福祉向上委員会 代表

皆さんの事業所では、退職金制度はありますか?
退職時に退職金はもらえますか?
何年働くとどのくらいもらえるかご存じですか?

介護業界で働かれている方で、上記の質問に正確に答えられる方は少ないのではないかと思います。
賃金や賞与とともに、働く人が得る収入の一つである「退職金」。
さまざまな側面から「退職金」を眺めてみて、皆さんの参考にしていただきたいと思います。

実は支払い義務のない「退職金」

上にあげた「賃金(ここでは月例賃金を賃金と呼びます。)」「賞与」「退職金」。この3つは、当たり前にもらっている人にとっては、考えたこともないかもしれませんが、実は、この3つのうち「賞与」と「退職金」は経営者に支払い義務のないものなのです。

会社の規模が小さいと、退職金制度がないことが多い

そして「退職金」に関しては、事業規模による退職金制度の有無が顕著で、大企業よりも中小企業のほうが、退職金制度がないところの割合が多いのが現状です。
介護業界はどうかというと、規模が小さな法人が多いため、決して多いとは言えないのが現状です。(2012年・正職員の約6割)

求人票でも必ず確認しておきたい、退職金の有無

大企業や他業種にいた方には、あって当たり前だと思いがちな退職金ですから、ハローワークの求人票などでの退職金制度の有無のチェックをしない方も多いかもしれませんね。
私は、月々の給与はいくらくらいもらえるのかの確認とともに、賞与や退職金の有無や目安は知っておくべきだと思います。それにより、年間の収入額や生涯賃金が大きく変動し、人生設計などに大きく影響を及ぼすからです。

面接で退職金について質問しても大丈夫!

そして、より詳しく確認するためには、面接時に確認することをお勧めします。決して恥ずかしいことでも、失礼なことでもありません。ただし、面接の冒頭からそれを聞くのではなく、面接終盤に「何か質問はないですか」などと聞かれたときに尋ねるのが、心証はいいかもしれませんね。

勤務中の事業所に対して、退職金のことを確認したいときは?

規定を見る&事務担当に確認を!

では、既に介護関係の事業所に勤めている方の場合は、どのように確認すればよいでしょうか。

「賃金規定」や「退職金規定」はあるはずですので、確認してみることをお勧めします。これらは、「就業規則」の一部とみなされ、従業員が閲覧できる状態にしなければなりません。
気軽に確認できるところにない場合は、遠慮なく上司や事務担当者に依頼してみましょう。そこには退職金の有無や、退職金がある場合の計算式が明示されているはずです。不明な点は、事務担当者に「今辞めたら、退職金ってどのくらいありますか?」と、聞いてみてはいかがでしょうか。

介護業界が、退職金のない事業者が多い理由は?

前述の通り、介護業界では退職金があるところはさほど多くありません。
では、それはなぜはのか?どのような理由で退職金がないのかを深掘りしてみましょう。

会社の規模が小さい&創業してから数年しか経っていない

まず、介護業界は中小零細企業が多いことがあげられます。
また、創業してからの年数が短いことが大きな要因だと考えられます。

平均勤続年数が短いことも原因

あわせて、職員の平均勤続年数の短さも、経営者が退職金制度を作らないことに大きな影響を与えていると思います。

厚生労働省の平成30年賃金構造基本統計調査によると、介護職の平均勤続年数は約7.0年。介護が職業として確立されて、歴史も浅いことや、離職や転職が多い業界であることから、日本の平均より著しく短いのでしょうね。(日本の全産業平均は12.1年)

そのため、定年退職後の生活保障や功労報酬的な意味合いを持つ退職金が根付いていないとも言えます。
ただ、退職金がない代わりに、賃金にその分を反映させている介護事業者もいますので、面接時にしっかりと確認してみましょう。

自分の労働条件をきちんと確認しましょう!

以上、退職金について記しましたが、介護業界の皆さんは、給与を含め、ご自身の労働条件に無頓着な方が多い気がします。
ご自身やご家族にとって、とても大切なこと。知る権利をもっと行使しましょう。

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まとめ:転職活動では、退職金制度にも注目を

皆さんのなかには、退職金をもらえるのはずっと先だから、当分は関係ない話だと思っている人も多いでしょう。
しかし、若い人でも何らかの事情で数年後に退職する可能性はあります。

また、勤務する事業所がどんな退職金制度を導入しているかによって、もらえる退職金の額や給与からの天引きの有無なども変わってきます。
特にこれから転職する人は、志望する事業所の給与やボーナスだけでなく、退職金制度についてもしっかり確認し、理解したうえで応募することが大切です。
一般的に、勤続年数が長くなると退職金も増える傾向があるので、退職金制度があって長く働けると思える事業所を見つけることが、ひとつのポイントになります。

ただし、転職先には退職金制度があることが望ましいものの、必ずしも必須条件ではありません。
退職金制度がない代わりに、基本給が高い事業所や、他の手当てが充実している事業所もあります。

事業所が倒産する可能性や自分自身が早期に退職する可能性を考えると、退職金がある事業所より、基本給が高い事業所で働く方が得かもしれません。
長く勤務したいと思っている事業所に退職金制度がない場合は、老後や将来に備えて、個人で年金保険や個人型確定拠出年金に加入するという選択肢もあります。
今後の自分の人生や働き方もイメージしながら、柔軟な視点で転職先を選びましょう。

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