第35回 介護福祉士国家試験 過去問と解説(コミュニケーション技術)

第35回 介護福祉士国家試験 過去問と解説(コミュニケーション技術)

第35回 介護福祉士国家試験の試験科目【コミュニケーション技術】の過去問と解説を用意しました。 力試しや国試対策にご利用ください。


\あなたにぴったりの求人が見つかる/
「介護職員」の求人を見る

第35回 介護福祉士国家試験 過去問と解説(コミュニケーション技術)

問題1

Eさん(87歳、女性、要介護3)は、介護老人福祉施設に入所していて、認知症(dementia)がある。ある日、担当のF介護福祉職がEさんの居室を訪問すると、Eさんは、イライラした様子で、「私の財布が盗まれた」と言ってベッドの周りをうろうろしていた。一緒に探すと、タンスの引き出しの奥から財布が見つかった。
F介護福祉職は、Eさんのケアカンファレンス(care conference)に出席して、この出来事について情報共有することにした。
Eさんの状況に関する報告として、最も適切なものを1つ選びなさい。

1.「Eさんの認知機能が低下しました」
2.「Eさんは、誰かに怒っていました」
3.「Eさんには、もの盗られ妄想があります」
4.「Eさんは、財布が見つかって、安心していると思います」
5.「Eさんは、財布が盗まれたと言って、ベッドの周りをうろうろしていました」

解答

5.「Eさんは、財布が盗まれたと言って、ベッドの周りをうろうろしていました」

解説

1.(×)認知機能の低下を判断するのは、医師の役割です。
2.(×)イライラした様子ではありましたが、誰かに怒っていたかどうかは不明です。
3.(×)Eさんの状態は認知症の行動・心理症状(BPSD)の一つである「もの盗られ妄想」に該当すると考えられますが、介護福祉職が断定することはできません。
4.(×)「安心している」と思ったのは介護福祉職であり、主観に基づく報告となっています。
5.(○)客観的事実に基づき、Eさんのありのままの様子を伝えていることから、最も適切な報告だといえます。

問題2

Cさん(75歳、男性)は、老人性難聴(presbycusis)があり、右耳は中等度難聴、左耳は高度難聴である。耳かけ型補聴器を両耳で使用して静かな場所で話せば、なんとか相手の話を聞き取ることができる。
Cさんとの1対1のコミュニケーションの方法として、最も適切なものを1つ選びなさい。

1.正面で向き合って話しかける。
2.高音域の声を使って話しかける。
3.耳元で、できるだけ大きな声で話しかける。
4.手話で会話をする。
5.からだに触れてから話しかける。

解答

1.正面で向き合って話しかける。

解説

1.(○)正面で向き合い、口の動き、表情、ジェスチャーなどの非言語的コミュニケーションも活用することが最も適切です。
2.(×)老人性難聴では高音域の音から聞こえにくくなります。
3.(×)補聴器は聴力に応じて音を増幅するため、耳元で必要以上に大きな声を出すと逆に聞き取りにくくなります。
4.(×)Cさんが手話を身に付けているという情報が記載されていないため、適切かどうか分かりません。
5.(×)突然からだに触れると驚かせてしまうため、正面で相手の注意を引いてから話しかけることが適切です。

問題3

次のうち、閉じられた質問として、適切なものを1つ選びなさい。

1.「この本は好きですか」
2.「午後はどのように過ごしますか」
3.「困っていることは何ですか」
4.「どのような歌が好きですか」
5.「なぜそう思いますか」

解答

1.「この本は好きですか」

解説

「はい/いいえ」で答えられる閉じられた質問は、会話が苦手であったり、発語が困難であったりする人との会話で有効なコミュニケーション技法の一つです。また、会話の焦点を絞り、端的に答えを引き出したい場合にも用いられます。一方、開かれた質問は「はい/いいえ」で答えられないため、自由な言葉により多くの情報を引き出し、互いの関係性を深めることが可能となります。
よって、1.(○)、2.(×)、3.(×)、4.(×)、5.(×)、となります。

問題4

Dさん(90歳、女性、要介護5)は、重度のアルツハイマー型認知症(dementia of the Alzheimerʼs type)である。介護福祉職は、Dさんに声かけをして会話をしているが、最近、自発的な発語が少なくなり、会話中に視線が合わないことも増えてきたことが気になっている。
Dさんとのコミュニケーションをとるための介護福祉職の対応として、最も適切なものを1つ選びなさい。

1.引き続き、言語を中心にコミュニケーションをとる。
2.Dさんが緊張しているので、からだに触れないようにする。
3.表情やしぐさを確認しながら、感情の理解に努める。
4.視線が合わないときは、会話を控える。
5.自発的な発語がないため、会話の機会を減らしていく。

解答

3.表情やしぐさを確認しながら、感情の理解に努める。

解説

1.(×)自発的な発語が少なくなっていることから、言語だけに頼らず他のコミュニケーション方法を検討する必要があります。
2.(×)Dさんに緊張はみられません。また、一般的にスキンシップは緊張を解きほぐす有用なコミュニケーション方法です。
3.(○)言語的コミュニケーションが困難になってきたことから、表情やしぐさなどの非言語的コミュニケーションを含めて感情の理解に努めます。
4.(×)視線が合わないことが会話の拒絶を意味するとは限らないため、さまざまな方法でコミュニケーションを図る努力をすべきです。
5.(×)会話の機会を減らしてしまうと、認知症がさらに進行するおそれがあります。

問題5

介護実践の場で行われる、勤務交代時の申し送りの目的に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。

1.翌月の介護福祉職の勤務表を検討する。
2.利用者のレクリエーション活動を計画する。
3.利用者の問題解決に向けた事例検討を行う。
4.利用者へのケアの継続性を保つ。
5.利用者とケアの方針を共有する。

解答

4.利用者へのケアの継続性を保つ。

解説

複数の介護福祉職が関わる中で均質なケアを安定的に提供するため、前任者が行った業務の内容、注意事項、利用者の状況などを後任者に引き継ぎ、利用者へのケアの継続性を保つ必要があります。他の選択肢もすべて介護実践の場で必要な内容ではありますが、勤務交代時の申し送りの目的ではありません。
よって、1.(×)、2.(×)、3.(×)、4.(○)、5.(×)、となります。

問題6

利用者の家族と信頼関係を形成するための留意点として、最も適切なものを1つ選びなさい。

1.家族の希望を優先する。
2.話し合いの機会を丁寧にもつ。
3.一度形成した信頼関係は、変わらずに継続すると考える。
4.家族に対して、「こうすれば良い」と指示を出す。
5.介護は全面的に介護福祉職に任せてもらう。

解答

2.話し合いの機会を丁寧にもつ。

解説

1.(×)家族の希望も傾聴すべきですが、最も尊重されるのは利用者本人の希望です。
2.(○)話し合いの機会をつくってコミュニケーションを図り、家族が抱える悩みや不安を受容することは、信頼関係を形成する上で欠かせないステップです。
3.(×)良好な信頼関係が一度形成されたとしても、言葉遣いや何気ない対応一つで破綻してしまうことがあります。
4.(×)「こうすれば良い」という押し付けではなく、「こうしたらどうでしょう」という提案をし、家族と一緒に模索する姿勢が望まれます。
5.(×)家族だからこそできるサポートも重要であり、介護福祉職と家族がチームとなって共に介護を行います。

\あなたにぴったりの求人が見つかる/
「介護職員」の求人を見る

この記事のライター

ささえるラボ編集部です。
福祉・介護の仕事にたずさわるみなさまに役立つ情報をお届けします!

「マイナビ福祉・介護のシゴト」が運営しています。

関連する投稿


第36回 介護福祉士国家試験 過去問と解説(こころとからだのしくみ)

第36回 介護福祉士国家試験 過去問と解説(こころとからだのしくみ)

第36回 介護福祉士国家試験の試験科目【こころとからだのしくみ】の過去問と解説を用意しました。 力試しや国試対策にご利用ください。


第36回 介護福祉士国家試験 過去問と解説(医療的ケア)

第36回 介護福祉士国家試験 過去問と解説(医療的ケア)

第36回 介護福祉士国家試験の試験科目【医療的ケア】の過去問と解説を用意しました。 力試しや国試対策にご利用ください。


第36回 介護福祉士国家試験 過去問と解説(総合問題)

第36回 介護福祉士国家試験 過去問と解説(総合問題)

第36回 介護福祉士国家試験の試験科目【総合問題】の過去問と解説を用意しました。 力試しや国試対策にご利用ください。


介護福祉士国家試験の「パート合格」導入|仕組みやメリット・デメリットについて専門家が解説します!

介護福祉士国家試験の「パート合格」導入|仕組みやメリット・デメリットについて専門家が解説します!

2024年9月、厚生労働省の検討会から介護福祉士の国家試験を3つのパートに分け、合格基準を満たしたパートは翌々年まで受験を免除するという「パート合格」の仕組みを導入すると発表しました。働きながら取得する人たちへの負担軽減が期待される一方で、介護福祉士の価値が下がる、質が下がるといった心配の声も…。この記事では専門家の方にパート合格での変更点を解説いただいたあと、メリット・デメリットについても説明いただきます!【執筆者/専門家:脇 健仁】


【2024年度版】介護福祉士国家試験過去問題(解答・解説つき!)

【2024年度版】介護福祉士国家試験過去問題(解答・解説つき!)

第37回介護福祉士国家試験対策問題として、過去5年分の介護福祉士国家試験問題過去問題を用意しました。年度別や試験科目ごとに力試しができるので、苦手な科目にチャレンジしてみましょう! 皆さんの合格を応援しています!【ささえるラボ編集部】


マイナビ福祉・介護のシゴト 閲覧ランキング
【北海道・東北】
【関東・甲信越】
【北陸・東海】
【関西・中四国】
【九州・沖縄】

最新の投稿


第36回 介護福祉士国家試験 過去問と解説(こころとからだのしくみ)

第36回 介護福祉士国家試験 過去問と解説(こころとからだのしくみ)

第36回 介護福祉士国家試験の試験科目【こころとからだのしくみ】の過去問と解説を用意しました。 力試しや国試対策にご利用ください。


第36回 介護福祉士国家試験 過去問と解説(医療的ケア)

第36回 介護福祉士国家試験 過去問と解説(医療的ケア)

第36回 介護福祉士国家試験の試験科目【医療的ケア】の過去問と解説を用意しました。 力試しや国試対策にご利用ください。


第36回 介護福祉士国家試験 過去問と解説(総合問題)

第36回 介護福祉士国家試験 過去問と解説(総合問題)

第36回 介護福祉士国家試験の試験科目【総合問題】の過去問と解説を用意しました。 力試しや国試対策にご利用ください。


介護職が行う自立支援|4つの基本ケアや実際の取り組みについて解説!

介護職が行う自立支援|4つの基本ケアや実際の取り組みについて解説!

自立支援介護とは、介護が必要になった高齢者が、可能な限り自分の力で生活できるように支援する介護のことです。高齢化が進む日本において、デイサービスなどを提供する介護施設でも近年、自立支援介護は注目されています。この記事では、自立支援介護の4つの基本ケアや実際の取り組みについて専門家が解説します!【執筆者/専門家:古畑 佑奈】


介護施設で年末年始にできるイベント|クリスマス会や忘年会の準備のポイントを解説!

介護施設で年末年始にできるイベント|クリスマス会や忘年会の準備のポイントを解説!

年末年始は、クリスマス会や忘年会などさまざまなイベントが行われる時期です。介護施設でもこれらのようなイベントを実施すると、利用者さんたちの活力を高めたり、親睦を深めたりする良い機会になります。この記事では、年末年始のイベントを企画するにあたって準備したいこと、当日取り入れられるレクリエーションなどを紹介します。【執筆者/専門家:後藤 晴紀】


マイナビ福祉・介護のシゴト
「マイナビ福祉・介護のシゴト」は、福祉・介護職に特化した中途、パート向け求人サイトです。
介護職をはじめ、福祉・介護業界に関連する職種の求人を掲載しています。
本当に自分にあった施設や事業所を、ご自身で手軽に探すことができるよう職場の雰囲気がリアルに伝わる情報を用意することで、適切なマッチングを実現していきます。
【職種から求人・転職情報を探す】