本日のお悩み
介護職の転職って実際売り手市場なのでしょうか。景気が悪くなっても求人は減らないってよく聞きますけど、私が働いているところはけっこう面接に来た人を落としているようです。
極端に人が足りない施設は、何かしらの問題がある施設じゃないでしょうか?実際どうなのでしょうか?
人材定着の好スパイラルをまわせ!
回答者
質問者さんのおっしゃる通りです!
極端に人が足りない施設は、何かしらの問題が潜んでいるといっていいと思います。
実は、求人を出している事業所は、「①極端に人が足りなくて背に腹も変えられず、とにかく求人を出しまくっている事業所」と「②欠員1名程度に対して良い人材を選んで入れたい事業所」の2パターンに別れます。
その2パターンのカラクリを一緒に見ていく事で問題を明確にしましょう。
せん。
■①極端に人が足りなくて背に腹も変えられず、とにかく求人を出しまくっている事業所 とは?
①の事業所は、おそらく「今」人が足りなくて(例えば、職員が産休に入る、急な家庭の事情等)求人を出しているのではなく、以前から常に人がいなくて継続的に求人を出している事業所です。なぜ、以前から人がいないのか?答えは簡単で、新入社員が入社してもすぐ辞めてしまうからです。では、なぜ辞めてしまうのか?それは、教育体制が構築されていないことが原因です。
人手不足に逼迫している現場では、すぐにでも現場に入って、見習い期間が少なく、すぐ一人前として働ける即戦力を求めています。先輩職員は、日々の業務で手いっぱいですから新人さんに教える時間が取れず、新人さんをほったらかしにしてしまいます。ほったらかしにされた新人さんは理想と現場のギャップや人間関係に不信感を抱き退職に至る。この流れ、実は、管理者さん(求人担当者)はわかっているけど先輩職員を指導できない。
なぜなら、先輩職員を指導して辞められてはもっと大変だからです。その内、現場と管理者の力関係もバランスが崩れ、事業所全体の空気が悪くなり、噂を聞いてか求人の応募すらもなくなる「負のスパイラル」が完成します。
■②欠員1名程度に対していい人材を選んで入れたい事業所 とは?
②の事業所は、「今」もしくは「未来」に人が足りなくなることを見越して求人をかけてる事業所です。この事業所は、求人を出していても現場は支障がなく運営できています。理念やケアの方針が明確に定まり、且つ、語れる管理者がいることで、職員の働く意義・目的も明確になっている事業所でしょう。
更に、絵にかいた餅の理念や各種マニュアルがあるだけではダメで、OJTでの意識づけが重要であることがわかっています。
つまり、職員研修がしっかり体系化されている為、その方向性に共感できる職員は続けるし、合わない職員は辞めていく明確な線引きができている事業所です。その為、働いている職員の定着率は高く、必要な人材像(理念に共感できそうか?)も明確な為、現場も中途半端な人材を求めないことから、未来を見越したゆとりある求人をかけることができる「好スパイラル」が完成しています。
■まとめ
つまり、これも質問者さんのおっしゃる通り、経験のある介護職の転職は、人手不足を背景に喉から手が出るほど欲しい事業者も多いことから売り手市場と言えるでしょう。
しかし、同じく求人をかけていても、内部事情は事業所によって全く異なります。質問者さんの施設は、面接にきた人を落としているとのこと。ということは、しっかり選んでいるという事で②の好スパイラルの事業所さんだと言えるでしょう!
もしよろしければ、管理者の方になぜ落としているのか聞いてみてはいかがですか?きっと明確に理由を語れるはずです。
又、当たり前のように研修教育に力を入れていると思います。①の事業者さんが「負のスパイラル」に陥っていることに気がつき、忙しいからを理由にするのではなく、質問者さんの施設を参考に改善されることを切に願います。きっと、今はなんとかなっても、数年先、今の先輩職員がもたなくなった時、事業存続が難しくなるでしょう。最後に、一番困っているのは、人手不足の職員ではなく、入居者さんであることを忘れてはいけません。
茨城県介護福祉士会副会長
特別養護老人ホームもくせい施設長
いばらき中央福祉専門学校学校長代行
NPO法人 ちいきの学校 理事
介護労働安定センター茨城支部 介護人材育成コンサルタント
介護福祉士 社会福祉士 介護支援専門員 MBA(経営学修士)