50代から介護職に転職はできるの?
■執筆者
ささえるラボ編集部です。 福祉・介護の仕事にたずさわるみなさまに役立つ情報をお届けします! 「マイナビ福祉・介護のシゴト」が運営しています。
介護職は50代までに培ったキャリアや、スキルなどの強みを生かせることから、転職先としておすすめなのです。
とはいえ、50代で介護職に転職をすることには、不安を感じる方もいるのではないでしょうか。
そこで、今回は50代の転職先として、なぜ介護職がおすすめなのか、その理由を5つ紹介します。
出典:厚生労働省 介護労働の現状について
50代から介護職への転職は可能!
■介護業界では多くの50代以上の方が活躍しています!
介護業界に従事する職員を年代別に確認してみると、介護施設職員は約4割、訪問介護職員は約6割が50代以上の職員で占めています。
このことから、介護業界は50代以上での活躍が可能な場であることがわかります。また、要介護度が高く24時間体制で介護を必要とすることが多い施設介護と比較して、生活に寄り添うことが多い訪問介護のほうが、より50代以上の活躍が見込めると考えられるでしょう。
出典:厚生労働省 介護労働の現状について
■50代から介護業界への転職活動を始める人も多い
そこで、ここからは介護業界に対し求職している方々の状況を見ていきましょう。
下の図は、福祉人材センターに新規で求職の登録を行った人の年齢階級別割合です。
(※データは福祉分野全般への就職を希望する人の割合のため、障害福祉や保育分野等を志望する人も含みます。)
また、同調査によると新規求職者のうち約8割が福祉に関する何かしらの資格を取得していることもわかります。そのため、介護業界への転職を目指す際は資格を取得していると即戦力として期待され、強みとなるでしょう。
■未経験・無資格でも転職は可能です!
このような事業所は入職後も教育体制や資格取得に向けた体制が整っていることが期待できたり、周囲にも同じように未経験・無資格から入職した人がいたりと安心して働き始められるでしょう。
また、2018年度から国はさまざまな年齢層の方が介護職に参入しやすいよう、介護職の経験がない方でも介護に興味を持ってもらうため、「入門的研修」や「生活援助従事者研修」を行っています。
「入門的研修」とは、介護業務の入門的な知識や技術を習得するための研修で、「生活援助従事者研修」とは訪問介護で生活援助のみを行える研修です。介護職員初任者研修と比較し、必要な時間数も少ないため、未経験・無資格での入職に不安があり、ひとまず介護の基礎知識を習得しておきたいということであれば、これらの研修を受講してみてもよいでしょう。
50代から介護職への転職をおすすめする5つの理由
1.これまでのキャリアや経験が活かせる
2.50代からでもキャリアアップできる
3.50代からでも長く働ける
4.働き方が選べる
5.自分に合った施設・職種を選べる
■1.これまでのキャリアや経験が活かせる
キャリアや経験といっても介護職におけるもの、仕事におけるものだけではありません。
長く子育てや親の介護など、家庭内のサポートをしてきた方も、その家事スキルや介護スキルを活かすことができます。
また、年齢層が他の年代に比べて近いこともあり、利用者も親近感をもちやすく、安心して話せる関係性になりやすいでしょう。さらに、すでに介護職の経験がある場合には、施設のユニットリーダーや管理職、訪問介護ではサービス提供責任者として採用されることも少なくありません。
■2.50代からでもキャリアアップできる
しかし、介護職の場合、介護職員初任者研修や実務者研修は誰でも受講することができますし、介護福祉士国家資格も3年の実務経験を積めば受験が可能です。
介護福祉士の資格を取得した後に、責任ある立場に就く方もいます。自分の頑張り次第で、50代から入職してもキャリアアップが見込めることも、50代での転職先に介護職をおすすめする理由のひとつです。
■3.50代からでも長く働ける
このことから、介護業界に50代で転職をしても10年以上活躍の場があり、あわせてキャリアアップなども目指せるという点で介護業界は50代からの転職におすすめの業界であると言えるのです。
■4.働き方が選べる
そのため、午前のみ、午後のみといった雇用形態や、夜勤専従としての雇用などライフスタイルにあわせた働き方を選択することができます。
さらに、訪問介護では登録ヘルパーとして、自分の希望する時間や曜日のみ働くこともできます。
例えば、家族の介護のため、働く時間に制限がある方が、短時間労働や登録ヘルパーとして働く場合もあります。出勤回数は減らしたいけど収入を減らしたくないから、夜勤専従として働いているという方もいるでしょう。まだまだ元気で変則勤務でもしっかり働ける、という方も50代には少なくありません。
このように、自分に合わせて働き方が選べる介護職は、ライフスタイルに変化が出やすい50代にとって働きやすい環境といえるのではないでしょうか。
■5.自分に合った施設・職種を選べる
例えば、デイサービスなどの通所施設では介護度の低い利用者が多く、高齢者とのコミュニケーションをしっかりとりたい方や、レクリエーションなどで自分の得意分野を活かしたい方に向いています。また、認知症の方としっかり関わりたい方であれば、グループホームや認知症対応型のデイサービスが良いでしょう。すでに介護職としての経験がある場合には、施設の管理職や訪問介護のサービス提供責任者など、責任ある立場として転職を希望することも可能でしょう。
このように、施設によって特性が大きく変わる介護職では、自分がやりたいことや自分の特性などを活かせる施設を選ぶことができる点、また自分の体力などに合わせた仕事ができる施設を選択できる点も、50代での転職先に介護職をおすすめしたい理由のひとつです。
採用担当の視点で50代から介護職への転職はどうなの?
ここからは、実際に介護の現場で採用担当を担う専門家の方に、さまざまな不安や疑問に回答していただきます。
■執筆者/専門家
福岡福祉向上委員会 代表 外資系コンピューター会社の営業、父親が営む会社の経営見習いを経て、2002年に35歳で福祉の世界に入り、14年間で2つの社会福祉法人の経営に携わる。 新規事業立ち上げ・組織づくり・職員育成・労働環境改善を行い、職員の労働満足度を向上させ、離職率の劇的低下を実現する。
私自身も55歳なので、50代での介護業界への転職は勇気がいることであり、不安を感じる方が多いのではと予想がつきます。
事業所側の視点を含めて、回答していきます。
■お悩み1:50代の未経験者を採用するにあたって事業所側が抱える心配な点
事業所側の視点で心配な点があれば教えてください。
1.健康面の心配
何か不安な点があるからといって採用ができないというわけではありません。
しかし、腰の痛みがある方であれば、身体介護を伴わない配置にするであったり、体力の衰えがある方であれば、夜勤のない雇用形態を紹介するなど、入職前に無理のない配置に調整することができ、労働者側も雇用者側も安心できる環境を作り出すことができるため、健康上の懸念点は事前に把握できていることが好ましいでしょう。
2.給与面の待遇に対する心配
そのため、転職と聞くと給与アップや最低限、前職での待遇を担保するイメージがあると思いますが、介護業界においてはそのようなケースは少ないと考えるべきでしょう。
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2.介護職+人事や労務など「+αになるような」業務も行う
3.施設長や管理者などのマネジメント職に就く
資格を取得したり、前職の経験を活かして様々な業務、役職にチャレンジすることは給与アップに繋がると言えます。役職などは事業所によってもポジションに限りがあるため、まずは資格の取得から目指すのが良いでしょう。
3.プライド面の心配
私の経験でもそこを割り切ってやれる方と、過去の積み重ねからくるプライドが邪魔をしている方の2パターンを見かけます。もちろん上司がえらいということはありませんが、介護業界における経験の差は生じてくるので、割り切って素直に知識やスキルを吸収していくことが大切です。
そのためにも、事前に年下の上司に出会う場面が多いと知っておいたほうが良いでしょう。
■お悩み2:50代未経験者を採用するときの3つの期待
1.マネジメント能力への期待
これらの経験は介護業界においてもマネジメント能力として活かしていくことができます。
実は現在、介護現場では、マネジメントできる人材の不足が大きな悩みの1つです。そのため、過去の経験を活かし、組織づくりやチームケアを中心となって進める存在は組織にとって期待できる存在なのです。
2.コミュニケーション能力への期待
コミュニケーションに抵抗なく入職してくださる存在は、事業所としても安心して迎え入れることができるでしょう。
3.ICTへの適応能力
介護現場の方々はこのような電子機器を使いこなすことが比較的苦手な方が多い気がします。しかし、転職で入職される方は、前職の経験によっては、このあたりへの対応能力はお手の物という方もいるでしょう。
さらに、パソコンやスマートフォンを駆使したSNS等での情報発信も、介護現場での大きな武器となります。このように、現在の介護業界において不足している要素を補う経験があると、非常に期待される存在となれるのです。
■お悩み3:前職がなく、アピールできるポイントがない
子育てと両親の介護でブランクがあり、仕事においての経験がありません。そのため、面接等でアピールできるポイントがないのですが入職は可能でしょうか。
■介護業界では、日常生活で身についたスキルも活かせる
例えば、子育て等で家事の経験がある場合、生活援助において洗濯や掃除、料理のスキルなどが活かせます。また、人と話すことが好きである場合、介護職はコミュニケーションが非常に重要な職種ですので、生き生きと働くことができます。
このように、介護の現場では50代までに経験したことがさまざまな形で活躍に繋がるのです。
■訪問介護でヘルパーとして働くという選択肢も!
利用者さんの自宅を訪問するヘルパーは、午前のみ・午後のみという働き方の選択も可能ですし、介護施設と比較して、身体介護の負担も少ないことがほとんどです。そのため、家庭との両立をしながら働きたい、フルタイムではなく時間を区切って働きたいなどという方におすすめです。
ヘルパーとして働く場合、1人で訪問する可能性が高いので「無資格可」の事業所は施設介護と比較すると募集が少なくなっています。「介護職員初任者研修」等の資格を取得しておくと、採用時にも有利になります。
■お悩み4:50代から働き始めた場合のキャリアプラン
■資格×今までの経験でキャリア形成ができます!
例えば、介護職員初任者研修・介護福祉士実務者研修・介護福祉士の順に資格を取得したあと、前職でのマネジメント経験を活かすのであれば、施設長や管理者というポジションにキャリアチェンジをすることができます。
このように、資格の取得と今までの経験を掛け合わせることで20代からキャリア形成を行う人とも差がなく、50代からであるからこその能力を活かしたポジションに就くことができるのです。
■お悩み5:50代で介護職への転職を成功に導くには
1.事前に資格を取得する
このような理由から、後悔なく転職活動を行ううえで、資格取得は強みとなるでしょう。
2.働く施設の種類や働き方を決めておく
そのため、介護業界への転職を決めたら「どのような施設で働きたいか」であったり、「自身が希望する介護の形態」、「働く時間などの労働条件」を明確にしておけるとよいでしょう。
例えば、両親の介護で1対1で向き合うことの大切さを実感した場合は、居宅介護や小規模多機能型居宅介護に焦点を絞って転職活動をしたほうが後悔することなく、働き続けられるでしょう。
働き方についても、急に生活リズムが変わることが不安であれば夜勤のない雇用形態を探したり、逆に昼間は趣味や自己研鑽の時間にしたいということであれば、夜勤のみの働き方も選ぶことができます。
このように条件を明確にしておくと、効率的かつ後悔が少ない転職活動を行うことができるでしょう。
最後に:50代でも5年後・10年後を見据えた転職活動を!
また、事業所や施設を探す際には、労働条件や自身が望む環境などをしっかり絞り、ご自身が生き生きと働ける環境を見つけていきましょう。
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