第32回 介護福祉士国家試験 過去問と解説(認知症の理解)

第32回 介護福祉士国家試験 過去問と解説(認知症の理解)

第32回 介護福祉士国家試験の試験科目【認知症の理解】の過去問と解説を用意しました。 力試しや国試対策にご利用ください。


\あなたにぴったりの求人が見つかる/
「介護職員」の求人を見る

第32回 介護福祉士国家試験 過去問と解説(認知症の理解)

問題1

認知症(dementia)の行動・心理症状(BPSD)に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。

1.トイレの水を流すことができない。
2.物事の計画を立てることができない。
3.言葉を発することができない。
4.親しい人がわからない。
5.昼夜逆転が生じる。

解答

5.昼夜逆転が生じる。

解説

認知症の症状には、脳の機能低下を直接反映する中核症状と、精神症状や行動障害などの随伴症状である行動・心理症状(BPSD)の2種類があります。

1.(×)トイレの水を流すことができないのは失行であり、中核症状に分類されます。
2.(×)物事の計画を立てることができないのは実行機能障害であり、中核症状に分類されます。
3.(×)言葉を発することができないのは失語であり、中核症状に分類されます。
4.(×)親しい人が分からないのは失認であり、中核症状に分類されます。
5.(○)昼夜逆転が生じるのは行動障害であり、BPSDに分類されます。

問題2

前頭側頭型認知症(frontotemporal dementia)の症状のある人への介護福祉職の対応として、最も適切なものを1つ選びなさい。

1.周回がある場合は、GPS追跡機で居場所を確認する。
2.甘い食べ物へのこだわりに対しては、甘い物を制限する。
3.常同行動がある場合は、本人と周囲の人が納得できる生活習慣を確立する。
4.脱抑制がある場合は、抗認知症薬の服薬介護をする。
5.施設内で職員に暴力をふるったときは、警察に連絡する。

解答

3.常同行動がある場合は、本人と周囲の人が納得できる生活習慣を確立する。

解説

1.(×)本人の同意なくGPS追跡機を装着したのであれば、プライバシーの侵害にあたる可能性が高いと考えられます。
2.(×)同じ食べ物に強くこだわるのは、常同行動の一種です。制限をかける前に、甘い食べ物へのこだわりについて本人の話を聞いてみることが適切です。
3.(○)常同行動とは、一見無目的な行為を何度も繰り返すもので、前頭側頭型認知症の症状としてみられます。強引な制止をせずに、本人と周囲の人が話し合う場を設け、全員が納得できる生活習慣を確立することが適切です。
4.(×)脱抑制とは、状況に対する反応としての衝動や感情を抑制することが困難になる症状です。批判や否定、叱責などは避け、脱抑制が生じる状況を観察して早めに周囲が気付けるようにすることである程度の対応は可能です。まずは服薬以外での対処方法を検討することが適切だと考えられます。
5.(×)暴力に至った経緯の情報収集をし、回避するための工夫を検討することが先決です。

問題3

認知症対応型共同生活介護(グループホーム)で生活している軽度のアルツハイマー型認知症(dementia of the Alzheimerʼs type)のDさんは、大腿骨(だいたいこつ)の頸部(けいぶ)を骨折(fracture)して入院することになった。認知症対応型共同生活介護(グループホーム)の介護福祉職が果たす役割として、最も適切なものを1つ選びなさい。

1.理学療法士に、リハビリテーションの指示をしても理解できないと伝える。
2.介護支援専門員(ケアマネジャー)に、地域ケア会議の開催を依頼する。
3.医師に、夜間は騒ぐ可能性があるので睡眠薬の処方を依頼する。
4.看護師に、日常生活の状況を伝える。
5.保佐人に、治療方法の決定を依頼する。

解答

4.看護師に、日常生活の状況を伝える。

解説

1.(×)リハビリテーションがスムーズに行えるよう、Dさんの特性などを理学療法士に伝えることが適切です。
2.(×)地域ケア会議は、支援の充実や社会基盤の整備など、地域包括ケアシステムの実現に向けた会議であり、市町村や地域包括支援センターが開催します。
3.(×)夜間の状況などを伝えることは大切ですが、睡眠薬の必要性を判断するのは医師の役割です。
4.(○)これまでの生活に関する情報を提供して日常生活の連続性を保ち、Dさんが混乱しないような対応を依頼することが適切です。
5.(×)保佐は成年後見制度の一つであり、判断能力が不十分な状態の被保佐人について、保佐人は同意権や取消権を行使して法的保護を行います。治療方法に関しては、本人の意向にできる限り沿うべきであり、医療職と本人が話し合って決定することが適切です。

問題4

Eさん(75歳、男性)は、1年ほど前に趣味であった車の運転をやめてから、やる気が起こらなくなり自宅に閉じこもりがちになった。そのため、家族の勧めで介護予防教室に参加するようになった。最近、Eさんは怒りっぽく、また、直前の出来事を覚えていないことが増え、心配した家族が介護福祉職に相談した。
相談を受けた介護福祉職の助言として、最も適切なものを1つ選びなさい。

1.「認知症(dementia)でしょう」
2.「趣味の車の運転を再開するといいでしょう」
3.「老人クラブに参加するといいでしょう」
4.「音楽を流して気分転換するといいでしょう」
5.「かかりつけ医に診てもらうといいでしょう」

解答

5.「かかりつけ医に診てもらうといいでしょう」

解説

1.(×)相談を受けた段階で、医師の診断もないままに認知症と断言することはできません。
2.(×)実際に認知症であれば、車の運転を避けたほうがよい場合もあるため不適切です。
3.(×)すでに介護予防教室に参加しており、他者との交流や外出の機会は確保できています。今後Eさんに必要なケアや介護サービスを選択するためには、医師による診断が必要です。
4.(×)気分転換を図るだけでは、事態の好転は期待できません。
5.(○)かかりつけ医への受診を勧めることが最も適切です。医師の診断を受けることでEさんの状態を明確にし、その結果に応じて適切な医療や介護認定の申請などにつなげることができます。

問題5

2012年(平成24年)の認知症高齢者数と2025年(平成37年)の認知症高齢者数に関する推計値(「平成29年版高齢社会白書」(内閣府))の組合せとして、適切なものを1つ選びなさい。

(注)平成37年とは令和7年のことである。

1.162万人―約400万人
2.262万人―約500万人
3.362万人―約600万人
4.462万人―約700万人
5.562万人―約800万人

解答

4.462万人―約700万人

解説

「平成29年版高齢社会白書」において、認知症高齢者数は2012年(平成24年)には462万人であり、2025年(平成37年/令和7年)には約700万人と推計されています。認知症高齢者数の割合をみると、2012年では高齢者の約7人に1人、2025年では約5人に1人となる計算です。なお、介護認定を受けている人数は、2016年度のデータで632万人となっており、こちらも増加傾向にあります。
よって、1.(×)、2.(×)、3.(×)、4.(○)、5.(×)、となります。

問題6

抗認知症薬に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。

1.若年性アルツハイマー型認知症(dementia of the Alzheimerʼs type with early onset)には効果がない。
2.高度のアルツハイマー型認知症(dementia of the Alzheimerʼs type)には効果がない。
3.レビー小体型認知症(dementia with Lewy bodies)には効果がない。
4.症状の進行を完全に止めることはできない。
5.複数の抗認知症薬の併用は認められていない。

解答

4.症状の進行を完全に止めることはできない。

解説

抗認知症薬には、コリンエステラーゼ阻害薬であるドネペジル、ガランタミン、リバスチグミンと、NMDA受容体拮抗薬であるメマンチンの4種類があります。

1.(×)抗認知症薬は、若年性アルツハイマー型認知症にも有効性が認められています。
2.(×)高度のアルツハイマー型認知症に対しては、ドネペジルとメマンチンが有効とされています。
3.(×)レビー小体型認知症に対しては、ドネペジルが有効です。
4.(○)抗認知症薬は、認知症の症状を抑制し、進行を遅らせる目的で使用されます。
5.(×)同じ作用を有するコリンエステラーゼ阻害薬を複数併用することはできませんが、ドネペジル、ガランタミン、リバスチグミンのいずれか一種と、メマンチンの併用であれば可能です。

\あなたにぴったりの求人が見つかる/
「介護職員」の求人を見る

この記事のライター

ささえるラボ編集部です。
福祉・介護の仕事にたずさわるみなさまに役立つ情報をお届けします!

「マイナビ福祉・介護のシゴト」が運営しています。

関連する投稿


第36回 介護福祉士国家試験 過去問と解説(こころとからだのしくみ)

第36回 介護福祉士国家試験 過去問と解説(こころとからだのしくみ)

第36回 介護福祉士国家試験の試験科目【こころとからだのしくみ】の過去問と解説を用意しました。 力試しや国試対策にご利用ください。


第36回 介護福祉士国家試験 過去問と解説(医療的ケア)

第36回 介護福祉士国家試験 過去問と解説(医療的ケア)

第36回 介護福祉士国家試験の試験科目【医療的ケア】の過去問と解説を用意しました。 力試しや国試対策にご利用ください。


第36回 介護福祉士国家試験 過去問と解説(総合問題)

第36回 介護福祉士国家試験 過去問と解説(総合問題)

第36回 介護福祉士国家試験の試験科目【総合問題】の過去問と解説を用意しました。 力試しや国試対策にご利用ください。


介護福祉士国家試験の「パート合格」導入|仕組みやメリット・デメリットについて専門家が解説します!

介護福祉士国家試験の「パート合格」導入|仕組みやメリット・デメリットについて専門家が解説します!

2024年9月、厚生労働省の検討会から介護福祉士の国家試験を3つのパートに分け、合格基準を満たしたパートは翌々年まで受験を免除するという「パート合格」の仕組みを導入すると発表しました。働きながら取得する人たちへの負担軽減が期待される一方で、介護福祉士の価値が下がる、質が下がるといった心配の声も…。この記事では専門家の方にパート合格での変更点を解説いただいたあと、メリット・デメリットについても説明いただきます!【執筆者/専門家:脇 健仁】


【2024年度版】介護福祉士国家試験過去問題(解答・解説つき!)

【2024年度版】介護福祉士国家試験過去問題(解答・解説つき!)

第37回介護福祉士国家試験対策問題として、過去5年分の介護福祉士国家試験問題過去問題を用意しました。年度別や試験科目ごとに力試しができるので、苦手な科目にチャレンジしてみましょう! 皆さんの合格を応援しています!【ささえるラボ編集部】


マイナビ福祉・介護のシゴト 閲覧ランキング
【北海道・東北】
【関東・甲信越】
【北陸・東海】
【関西・中四国】
【九州・沖縄】

最新の投稿


第36回 介護福祉士国家試験 過去問と解説(こころとからだのしくみ)

第36回 介護福祉士国家試験 過去問と解説(こころとからだのしくみ)

第36回 介護福祉士国家試験の試験科目【こころとからだのしくみ】の過去問と解説を用意しました。 力試しや国試対策にご利用ください。


第36回 介護福祉士国家試験 過去問と解説(医療的ケア)

第36回 介護福祉士国家試験 過去問と解説(医療的ケア)

第36回 介護福祉士国家試験の試験科目【医療的ケア】の過去問と解説を用意しました。 力試しや国試対策にご利用ください。


第36回 介護福祉士国家試験 過去問と解説(総合問題)

第36回 介護福祉士国家試験 過去問と解説(総合問題)

第36回 介護福祉士国家試験の試験科目【総合問題】の過去問と解説を用意しました。 力試しや国試対策にご利用ください。


介護職が行う自立支援|4つの基本ケアや実際の取り組みについて解説!

介護職が行う自立支援|4つの基本ケアや実際の取り組みについて解説!

自立支援介護とは、介護が必要になった高齢者が、可能な限り自分の力で生活できるように支援する介護のことです。高齢化が進む日本において、デイサービスなどを提供する介護施設でも近年、自立支援介護は注目されています。この記事では、自立支援介護の4つの基本ケアや実際の取り組みについて専門家が解説します!【執筆者/専門家:古畑 佑奈】


介護施設で年末年始にできるイベント|クリスマス会や忘年会の準備のポイントを解説!

介護施設で年末年始にできるイベント|クリスマス会や忘年会の準備のポイントを解説!

年末年始は、クリスマス会や忘年会などさまざまなイベントが行われる時期です。介護施設でもこれらのようなイベントを実施すると、利用者さんたちの活力を高めたり、親睦を深めたりする良い機会になります。この記事では、年末年始のイベントを企画するにあたって準備したいこと、当日取り入れられるレクリエーションなどを紹介します。【執筆者/専門家:後藤 晴紀】


マイナビ福祉・介護のシゴト
「マイナビ福祉・介護のシゴト」は、福祉・介護職に特化した中途、パート向け求人サイトです。
介護職をはじめ、福祉・介護業界に関連する職種の求人を掲載しています。
本当に自分にあった施設や事業所を、ご自身で手軽に探すことができるよう職場の雰囲気がリアルに伝わる情報を用意することで、適切なマッチングを実現していきます。
【職種から求人・転職情報を探す】