本日のお悩み
看取りがどうしてもつらいのですが、私は介護職に向いていないのでしょうか…
誰よりもつらさがわかるのはむしろ介護職の強み
つらい気持ちがとてもよくわかって、思わず質問を読んで深くうなづいてしまいました。
じつは、私も特養で働き始めた1年目のころ、同様のことで悩んでいました。
自分のメンタルが持たないから辞めようかな、と考えていました。
質問者さんは、今仕事をはじめてどのくらいでしょうか?
あくまでも私の経験なので、余計に苦しい思いをさせてしまったら申し訳ないのですが、なぜ私が今まで仕事を続けられているかを少しお話したいと思います。
■専門家・古畑さんの辛かった看取り経験
介護の仕事をするまで、人の「死」に向き合って考えたことがなかった私は、ただただ「悲しい」「さびしい」という思いだけ抱えて、看取りを別れ=苦しいだと思っていました。
穏やかに過ごしていた方の最期を穏やかな形で送ることができができず、泣いて仕事ができなくなった私を、当時の上司は厳しくあたたかい言葉で叱りました。
そして、「○○さんに教わったことを次に生かすことが仕事だ」と言われ、考えました。
それからもさまざまな本を読んだり、人と話したり、看取りケアを経験し「死」は単に別れやおわりではないのかもしれない、と思うようになりました。
■「死」と向き合うのは介護の仕事だけではないはず
質問者さんは、人が死んだらどうなると思いますか?
ある人は「土に還る」といい、ある人は「星になる」といい、ある人は「無になる」と答えるかもしれません。
人それぞれに死生観をもっていて、そこに正解はありません。
人はみな平等に最期を迎えるにもかかわらず、私は「死」がどういうものなのかを学んだり、考えたりする機会がほとんどないまま大人になってしまいました。
もしかしたら、質問者さんもそうなのかもしれません。
介護の現場は、つねに死と向き合いながら、です。
でも考えてみると、私たちの生活は、みな同じはず。
生きることには必ずリスクを伴います。
つまり、介護の仕事を避けたとしても、いつかは「死」と向き合わなければならないときが、必ず訪れるのです。
■ご家族にとっての大きな支えに
とはいえ、やっぱりつらいし悲しいし、慣れないです。
その気持ちは、むしろ持ち続けたほうがいいと思っています。
家族や親しい人は、看取りにより大きな感情の波を持つと思います。
そのとき、その感情の波を理解してくれる介護職がそばにいてくれることが、とても大きな支えになるのではないか、と思うのです。
■「グリーフケア」を学んでみても良いかもしれません
質問者さんのつらい気持ちは、どこからくるものでしょうか。
そこに向き合い、「死」がどういうものなのかを一度自分の言葉にしてみるのもいいかもしれません。
また、もしかしたら、同じ職場にも同様につらい思いをしている人もいるかも。
グリーフケアといったことをチームで学んでみると、少し客観的に自分の心の動きをみることができるかもしれません。
■辛い気持ちを理解できることは大きな「強み」です
質問者さんが、つらい気持ちを理解し共感できることは、大きな「強み」だと思います。
自分の心を無理に変えようとはせず、向き合い考える時間を大切にしてみてください。
なるべく、考えたことを心の許せる職場の人と話せると楽になるかもしれません。
つらいときにはつらい、と発信するのも大切なので、また困ったらいつでもご相談いただければと思います。
社会福祉士、精神保健福祉士、介護支援専門員