本日のお悩み
介護の賃上げのことで質問です。
ケアマネが対象外になっていることに納得いきません。
私たちも高齢者への福祉を担う重要な役割だと思って働いています。
なぜケアマネだけ対象外にするのでしょうか?ご意見を聞きたいです。
ケアマネの存在意義とは?

茨城県介護福祉士会副会長 特別養護老人ホームもみじ館施設長 いばらき中央福祉専門学校学校長代行 介護福祉士 社会福祉士 介護支援専門員
ご質問ありがとうございます。
私も同感です。ケアマネは、もっと評価されて然るべきと考えています。
しかしながら、一度冷静になって「なぜケアマネは介護の賃上げから外されるのか?」
考えてみましょう。
■理由1 平均賃金が介護職平均賃金より約4万円高いから
厚生労働省「令和2年度介護従事者処遇状況等調査結果の概要」より
介護職員の平均給与額(月給・常勤)は、325,550円
ケアマネジャーは362,510円 と示されています。
つまりケアマネの方が36,960円高いことになります。
となれば、国の優先順位は介護職より下がってしまうことが想像できます。
■理由2 介護職員の不足数 > 介護支援専門員不足数
厚生労働省は、今年の7月11日、2019年度の介護職員数を基準として、2023年度に介護職員は、22万人不足(必要数:約233万人に対して)するとの推計を公表しています。
これに対して、ケアマネ不足の論調は出ていますが、ケアマネの必要数を厚生労働省が公表していないこと、そして2018年度の試験から大幅に合格者数を減らしていること(合格者数:2017年28,233人→2018年4,990人 前年比:83%減)を捉えると、国の危機感がケアマネジャーに対して薄いことがわかります。
つまり、国は現状まだ足りていると捉えているのではないでしょうか?
■理由3 介護福祉士の上位資格としてのケアマネ
「理由2」で述べた2018年の合格者数が大きく減少した背景には、受験資格の変更があります。
2017年まではホームヘルパー2級や介護職員初任者研修、実務者研修修了の資格を有し、5年以上介護業務に従事すればケアマネ受験資格を得ることができました。
しかし、2018年度からは、国が定める国家資格等に基づく実務経験、もしくは国が定める相談援助業務に従事する期間が5年以上かつ900日以上であることとなりました。
介護の資格でいうと介護福祉士もしくは社会福祉士を取得してから5年以上の実務経験を経ないと受験できなくなったのです(理由は、介護支援専門員の質向上のための制度厳格化)。
ということは、裾野である介護職が増えなければ介護支援専門員は成り立ちませんので、優先順位としてはまたもや介護職員に軍配が上がった形になります。
■今後は介護支援専門員の高齢化も問題に
日本介護支援専門員協会では、「介護支援専門員(ケアマネジャー)は、介護保険法に位置づけられた職種であり、介護保険の根幹であるケアマネジメントを担う専門職です」と定義しています。
つまり、介護支援専門員がいなければ介護保険制度は成り立ちません。
また、介護支援専門員の平均年齢は令和2年度時点51.8歳と高齢化(平成20年度は45.9歳)していることもわかっています。
あと5年、10年経過すれば今活躍している層も高齢化が進み、離職も増加するかもしれません。
■最後に
このような実態を踏まえると、ケアマネの賃上は、限られた財源の中での優先順位が下がるため、もう少し時間がかかってしまうかもしれません。
しかし、声をあげなければ世は変わりませんので、職能団体に加入するなどの方法も有効かもしれませんね。
そして、地道かもしれませんが、選挙に参加することも大切かと思います。
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茨城県介護福祉士会副会長
特別養護老人ホームもくせい施設長
いばらき中央福祉専門学校学校長代行
NPO法人 ちいきの学校 理事
介護労働安定センター茨城支部 介護人材育成コンサルタント
介護福祉士 社会福祉士 介護支援専門員 MBA(経営学修士)