本日のお悩み
ケアマネとして働いています。
業務量が多い割に給料が安く、ケアマネ不要論などもあって将来が不安です。
ケアマネはこれから国家資格になるんでしょうか?
または介護職員と同じように、改善がされていくのでしょうか?
ケアプラン有料化でも、ケアマネは不要にならない。資格も廃止しない。分かりやすく解説します!
■不易流行~本質的なものを忘れず、新しく変化しているものも取り入れていく~
回答者
茨城県介護福祉士会副会長 特別養護老人ホームもくせい施設長 いばらき中央福祉専門学校学校長代行 NPO法人 ちいきの学校 理事 介護労働安定センター茨城支部 介護人材育成コンサルタント 介護福祉士 社会福祉士 介護支援専門員
ご質問ありがとうございます。
昨今、「ケアマネ不要論」なんて言葉がチラホラと聞こえますが、この言葉に引っ張られて、ケアマネに対する不安感が広まっているのですね。
ケアマネは不要にはなりません。
「ケアマネ不要論」と併せて「ケアプラン有料化」の是非について解説します。
■ケアマネは不要にならない。資格も廃止しない。その理由とは?
そもそも、介護保険制度の根幹は「ケアマネジメント」です。
2000年に介護保険法が施行される際、その基本理念として「自立支援」が掲げられました。
そのうえで、自立支援型の介護サービスを提供するシステムとして、サービス担当者が利用者の立場でそのニーズを把握し、一緒になって、サービスの基本方針である「介護サービス計画(ケアプラン)」を立案する「介護支援サービス(介護保険制度におけるケアマネジメント)」が生まれたそうです。
その立案者こそがケアマネージャーであるので、介護保険制度の根幹が覆らない限りは、ケアマネージャーは不要にはならないのです。
■「ケアマネ不要論」が浮上した理由は、ケアプラン有料化論争にあり
社会保障費の増加を食い止めることが、第一の狙い
では、なぜ「ケアマネ不要論」が浮上したのか?
この根拠がケアプラン有料化論争に関係してきます。
2021年4月の財務省資料から日本の社会保障給付費は、ここ20年(2000年〜2020年)の間に78.4兆円から126.8兆円に増加しています。まさに1.6倍です。そして、この中で介護給付費の割合も4.2%から9.7%に増加しています。
国の財布を管轄する財務省としては、当然、どうしたらこの増額に歯止めをかけられるかを考えるわけです。そこで目についたのは、要介護度認定者の増加です。介護保険制度では、介護度が上がる程、給付費が増額になるシステムです。
ケアマネ不要論にたどり着くまでの思考回路
「介護保険法の理念は自立支援のはず、その目的に向かって支援しているはずなのにどうして介護度が上がるんだ!介護度が上がらないように支援しているキーマンは誰なんだ?=ケアマネージャー、じゃあケアマネは何やってるの?」
乱暴な理論ですが、お金からの観点ではそんなお話になってしまったようです。
つまり、目的に寄与できないのならいらないんじゃないかと。
制度の複雑さから見ても、簡単にケアマネ不要とは言えない
しかし、そもそもの背景である高齢者の増加、制度の複雑さを考えれば簡単に不要とは言えません。
セルフプラン(ケアマネでなく高齢者自身でケアプランを作る)も制度化されていますが、肌感覚からほとんど利用している人はいません。保険制度である以上、ホテルに泊まると同じ感覚では介護サービスは利用できないのです。
政府の考え①:質向上のため、研修や主任ケアマネの設置をした
では、どうするか?
ケアマネの質を向上させようと国は、主任ケアマネの設置や研修受講の強化なども制度化しました。しかし、これは一方でケアマネージャーの大きな負担ともなっています。
政府の考え②:ご利用者からケアプラン代をいただこう
そして、もうひとつ財務省が目をつけたのがケアプランの有料化です。
確定ではありませんが、1月1,000円/人の負担をご利用者からいただくという案だそうです。
現在、ケアプランに本人負担はありません。しかし、事業所には、ざっくり月10,000〜15,000円/人の介護報酬費が給付されています。つまり、その中の1,000円が利用者負担になるだけでも介護給付費は減額できるというお話なんです。
政府の考え③:ケアプラン有料化で、ケアマネの意識が高まるかも…?
また、財務省はこうも考えました。
要介護度を上げないためにはケアプランが肝、ケアプランについてもご利用者から自己負担をいただいているのではればケアマネージャーの意識も高まり、ケアの質も高まる。一石二鳥ではないかと・・。
コロナウイルスで政府の出費が増大。ケアプラン有料化は避けられない。
さらに、日本は、ここ2年間、予想外の大きな出費を強いられました。それは、皆さんもご存知の通り、新型コロナウイルス関連費です。新型コロナウイルスにより更に財政が圧迫された日本。
以上の理由により令和3年度の介護報酬改定では回避できたケアプラン有料化も次期は避けられないのではと考えます。
■結論、ケアプランが有料化されたらケアマネはどうなる?
ここまで「ケアプラン有料化」の背景について解説してきました。するとみなさんの質問の答えが導き出されます。
①ケアプランが有料化されてもケアマネージャーはなくなりません。
②有料化に伴っても、介護給付費削減のための自己負担なのでケアマネの給料は上がりません。
③ケアマネの将来性は、質の向上をさらに求められるようになるのではないでしょうか。
*ケアマネの給料については以下の記事を読んでみてください。(介護職の賃上げ、ケアマネが対象外の理由は?)
介護職の賃上げ、ケアマネが対象外の理由は?専門家が考察します。 | ささえるラボ
https://mynavi-kaigo.jp/media/articles/719【回答者:伊藤 浩一】介護支援専門員がいなければ介護保険制度は成り立たない。なぜケアマネが介護職員処遇改善支援補助金(賃上げ)の対象外になったのか、専門家が考察します。
■ケアマネージャーは日本の介護保険制度を支える根幹
この状況は「不易流行(いつまでも変化しない本質的なものを忘れない中にも、新しく変化を重ねているものをも取り入れていくこと)」という言葉がぴったりかなと思いテーマにしました。
ケアマネージャーは日本の介護保険制度を支える根幹だと思っています。
これからより高齢者の生活背景は複雑になっていくでしょう。その中で、ひとりひとりに寄り添い、関わる多職種や社会資源の活用をマネジメントしていく。
たいへんな仕事ですが、そこに使命感ややりがいを感じてがんばっているケアマネジャー。いつも感謝と尊敬しかありません。
ケアマネは国家資格になる?
■ケアマネは2003年に国家資格として政府に認められていた
2003年の国会で提出された答弁書の「国家資格一覧」の中に、介護支援専門員が含まれていたことが分かりました。
これは、2022年1月5日に日本介護支援専門員協会の調べで明らかになったものです。
■経緯の詳細
これは、長妻昭衆議院議員(当時)が提出した「国家資格と事業認定制度による資格、それぞれの資格数と資格名すべてを示してほしい」という内容の質問主意書に対し、小泉純一郎内閣総理大臣(当時)より衆議院議長あてに提出した、閣議決定された答弁書に記載されていたものです。
※閣議決定されているということは当時の内閣を組織していた大臣全員が合意した内容だということで、政府は国家資格として認識していたということになります。
これに対して日本介護支援専門員協会は、公式ホームページで以下のようにコメントを掲載しています。
ご承知のように、当協会は従来から介護支援専門員の国家資格化に取り組んで参りましたが、その経過において介護支援専門員が国家資格であるという見解は示されたことがありませんでした。
当協会としても、想定外の事実として受け止めており、今後の対応について検討を開始したところです。繰り返しとなりますが、まずは当協会が把握した事実をご報告させていただき、今後は、理事会等でも改めて報告し、今後の対応について協議を進めてまいります。
今後の動向にも、さらに注目していきましょう。
ケアマネの給料は安いのか?
回答者
ご質問ありがとうございます。
長い介護福祉士の経験を経て、ご自身のキャリアアップの為、ご利用者の為にと取得した介護支援専門員の資格でしたが、その業務量の多さに見合った収入なのか?今後の需要はあるのか?と疑問に感じているのですね。
■まずは結論から
まず、最初に結論です。
① 福祉業界において、ケアマネージャーの給与は決して安くはない!
② 経験年数や在職年数、基礎職種(看護師やPT)によって収入額が増加していく。
③ ケアマネージャーの存在意義は居宅、施設共に大きな期待が寄せられている!
項目ごとにご説明させていただきます。
■福祉業界において、ケアマネージャーの給与は決して安くはない
厚生労働省の平成30年度介護従事者処遇状況等調査結果によれば。ケアマネジャーの平均月給は常勤で35,320円、非常勤で229,050円となっています。
その他の職種については、介護職員が300,970円、生活相談員が321,080円、看護師が372,070円、機能訓練指導員が344,110円となっています。
という事は、実はケアマネージャーは看護師に次いで2番目に高い給与水準であるということが言えますね!
法人の規模や従業員数、利用者人数によっても変わってきますが、いずれにせよ他職種より高い水準にあるんです。
■経験年数や在職年数、基礎職種(看護師やPT)によって収入額が増加していく
ケアマネージャーは、経験を重視されることが多い職種です。
特に法人内で長く勤める事によって、給与水準は年々高くなっていきます。
これは、他の職種にも同様のことが言えますね。
具体的な平均額は、
1年目~4年目は約235,000円
5年目~9年目では約265,000円
10年~14年では、約280,000円
15年以上では約300,000円
という結果となっています。
やはり10年を超えてくると、かなり優遇されますね。
また、年齢別にみても給与額に差がみられます。
経験年数の平均で比較すると、25歳~29歳のケアマネージャーと40歳~44歳のケアマネージャーでは給与額が変わってきます。
理由としては、経験年数とケアマネージャーになる前職の経験が反映されている事が考えられます。
特に医療関係からケアマネージャーに転職される場合は、応用の効くケアマネージャーとして優遇される傾向がありますね。
■ケアマネージャーの存在意義は居宅、施設共に大きな期待が寄せられている
厚生労働省「介護支援専門員の資質向上と今後のあり方に関する検討会」によれば、2025年に向けて団塊の世代が75歳以上になることから、要介護者発生率が高くなると予想されていますね。
そんな中『介護が必要になったら自宅で受けたい』という希望を持つ人は約74%に上るといわれています。
この多様なニーズに応えるためには、施設や居宅などさまざまな場所で、それぞれの利用者にあった、その人らしい柔軟なケアプランやサービスを提供することが求められます。
そのためケアマネジャーの質の向上には大きな期待が寄せられており、2018年からはケアマネジャー資格を取得するための受験要件が見直されましたね。
介護職ですと、介護福祉士の資格を取得後、5年の勤務経験を持つ人のみ受験資格を持つことができます。
出会うケアマネージャーによって、人生の総仕上げが良くも悪くもなってしまう事はあってはならない事ですからね。
ケアマネージャーの仕事の責任の重さを鑑み、受験までのハードルが高くなった事が伺えますね。
■最後に
来るべき時代に備え、専門性を高める!
ケアマネージャーの価値はケアマネージャーが高めていかなければいけませんよね!
責任と覚悟をもって、その人らしいケアプランを追求していきましょう!!
日本介護協会 理事長の見解は?
株式会社コンソーシアムジャパン 代表取締役 有限会社ケアステーション大空 代表取締役 一般社団法人日本介護協会 理事長
AIケアプランやケアプラン作成ソフトなど様々なツールが開発されてから、たしかにケアマネ不要論なども出ていますね。
ただ、私は利用者様の本当の想いを聞き、人生を支えていくケアマネジャーの皆さんは介護業界に欠かせないと思っています。
■感情を汲み取る、ケアプランの複雑さ
利用者様から聞いたことをそのままプランに反映するほど、ケアプランは単純なものではないですよね。
特に人って言葉と想いが異なる時って多くあります。
例えば利用者様の「早く死にたい」という言葉の裏には
「さみしい」や「居場所がない」などの想いがあり、心から死にたいと思っていない場合はたくさんあります。
この感情を理解して言葉の裏側にある本当の想いを理解するのは「人」だからこそできることだと私は思っています。
■スキルアップが給料アップに
2021年度の改正でLIFEの導入がなされ、科学的介護も求められています。
ケアプランの質も求められ、もしかしたら今後ケアプランの質により、報酬も変わるかもしれないという話も出ていると聞いています。
利用者様のためになるケアプランを立てられるように日々スキルアップすることが、ご自身の給料を上げることにもつながるかもしれません。
■今後の動きにも注目
また国家資格化や処遇改善対象の動きがあることも私も耳にしています。
今後どのようになっていくのかは私も注目していますので、介護保険改正情報をチェックしていきたいと考えています。
茨城県介護福祉士会副会長
特別養護老人ホームもくせい施設長
いばらき中央福祉専門学校学校長代行
NPO法人 ちいきの学校 理事
介護労働安定センター茨城支部 介護人材育成コンサルタント
介護福祉士 社会福祉士 介護支援専門員 MBA(経営学修士)