本日のお悩み
認知症の利用者さんの、被害妄想への対応について教えてください。
「あの人にお金を盗まれた」「いつも職員に悪口を言われて死にたい」と言うだけでなく、ご家族が面会に来た際に「職員が息子(利用者さんの息子さん)に色目を使っている」などと言っているようです。
ケアマネにも事情を話し、ご家族にも説明しているのですが、本気にされないかと心配で仕方ありません。
このような被害妄想にはどう対応したらいいのでしょうか?
なぜ被害妄想が起こってしまうのでしょうか?
アドバイスをください。
・「一緒に困りごとを解決したいと思っている姿勢」で対応していこう
被害妄想は不安の現れ、安心できる働きかけを
社会福祉士、精神保健福祉士、介護支援専門員 特別養護ホーム生活相談員、訪問介護事業を経験し、介護業界に9年携わる。 地域でのネットワーク活動では事務局として「死について語る会」や「3大宗教シンポジウム」など幅広いテーマの勉強会やイベントを企画・運営。 現在は介護職やマネジメント経験を活かし、介護系ライターとして研鑽中。
被害妄想は、不安や悲しみの現れの1つであるととらえ、周囲の方々とも関わり方を考えていきましょう。
■記憶障害は認知症の中核症状の1つ
中核症状とは、認知症になると程度に差はあれ、誰にでも現れる症状です。
記憶障害があると、記憶のプロセスに困難さが生じます。
■記憶のプロセスに障害が生じると、生活にも困難が出てくる
1.物事を記銘(情報を取り込む)する
2.物事を保持(情報を蓄える)する
3.物事を想起(情報を取り出す)する
例えば、買い物に行くとき「冷蔵庫に卵がないな」と記銘し、それを覚えて、スーパーへ行って「何を買うんだっけ、ああ卵だ!」と想起します。
認知症の方の場合、このプロセスに障害が生じ、生活にさまざまな困難を感じる場面が出てきます。
例えば、「卵がない」という記銘の際にそもそも「卵」がなんなのかわからなかったり、「卵がないから買い物へ行く」という記憶の保持が難しく、何のために外に出たのかわからなくなったり、スーパーには着いたものの何を買うのかわからなくなったりです。
■被害妄想の背景には、忘れてしまったことに対する不安や悲しみがある
そんなとき、自分が記憶しているお財布の中身が減っていたりすると、途端に不安が大きくなります。
本人にとっては、「お金が減っている」という「事実」があり、買い物で使ったという「記憶」はありません。
そうなると、「お金が減った理由」を考えます。 大抵の場合、それは「誰かが盗ったのではないか」という疑念になります。 そして往々にして、普段から関わりの深い家族や介護者がその犯人とされてしまうことがありま盗った その背景には、「私が忘れるはずがない」というやり場のない不安や悲しみの気持ちがあります。 その気持ちから自分自身を守る自衛の心の働きが、被害妄想として現れてしまうと言われています。
一緒に解決したいという寄り添いの姿勢を見せましょう!
しかし、誰もあなたを責める人はいないので大丈夫です。
その方にとっての「事実」を否定せず、利用者さん本人が一番不安であるということを踏まえて「一緒に困りごとを解決したいと思っている姿勢」を示してみてください。
最後に:仲間に相談しつつ対応を検討しよう
利用者さんの不安な気持ちが少しでも和らぎ、質問者さんの気持ちも楽になることを願っています。
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社会福祉士、精神保健福祉士、介護支援専門員