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介護職が高齢者施設から障がい分野へ転職する時の2つの注意点とは?

介護職が高齢者施設から障がい分野へ転職する時の2つの注意点とは?

【回答者:伊藤 浩一】高齢も、障がいも、目的は一つ


本日のお悩み

私は介護職6年目です。今は高齢者施設に勤めているのですが、障がいの施設もいいなと最近感じていて、転職を考えています。障がいに向いている人はどんな人ですか?私にもできるのか不安で迷っています。

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高齢も、障がいも、目的は一つ

伊藤 浩一

https://mynavi-kaigo.jp/media/users/14

茨城県介護福祉士会副会長 特別養護老人ホームもくせい施設長 いばらき中央福祉専門学校学校長代行 NPO法人 ちいきの学校 理事 介護労働安定センター茨城支部 介護人材育成コンサルタント 介護福祉士 社会福祉士 介護支援専門員

ご質問ありがとうございます。

私は現在、特別養護老人ホームと救護施設が同じ建物で併設している施設で施設長を務めています。救護施設とは、身体や精神の障がいや、何らかの課題(生きづらさ)を抱えていて、日常生活を営むことが困難な方たちが利用している福祉施設です(全救協HPより)。

併設していることもあって人事異動もあり、特養から救護施設へ、または救護施設から特養へという職員、どちらも経験している職員もいます。
このような中で介護職を経験し、障がい分野で働くヒントとして2点をお伝えします。

①「社会参加」に目を向けられるか?

まずは障がい・高齢者支援のの基本理念を比較

内閣府の示す「障害者基本計画」には以下の内容が書いてあります。
「21世紀に我が国が目指すべき社会は、障害の有無にかかわらず、国民誰もが相互に人格と個性を尊重し支え合う共生社会とする必要がある。共生社会においては、障害者は、社会の対等な構成員として人権を尊重され、自己選択と自己決定の下に社会のあらゆる活動に参加、参画するとともに、社会の一員としてその責任を分担する」

一方で、介護保険法の基本理念は「尊厳の保持」と「自立支援」です。

できることを活かして、どう社会と繋がるか?という視点を持つ

この違いを考察すると障がい分野では、より社会参加が大切ということではないでしょうか?
そもそも障がい者の方の方が年齢が若いこともあります。
「できないことに目を向けるのでなくできるところに視点を置き、その力がどうしたら社会と繋がることができるのかを考えることができる。」
これが障がい分野で働く大きなポイントでしょう。

例えば、アート界においては障がい者の方が書いた絵や作品が注目されています。集中力やその独自の感覚、視点が価値がると評価されているんですね。そういった社会の動きに対しても敏感に察することが求められるでしょう。

②「デザイン思考」

ある障がい者施設の例を見てみましょう

障がい者の方のできる力を引き出す思考に「デザイン思考」があります。仕事の手順やアイディアをデザインの力で見える化していく手法です。

例えば、ある障がい者施設では、お弁当づくりをやっています。とても健康的だと大評判のお弁当ですが、障がい者の方達が自立してつくる工夫がたくさん散りばめられています。
みなさんは「ハンバーグ弁当を障がい者の皆さんと作る」となった時どのように作りますか?
文字だけのレシピ本を渡して、これで作れるよね。とはしませんよね。まずは、一緒につくる障がい者の皆さんのできる力を把握することが重要でしょう。
その上でどうしたら自立して行動できるか考えなければなりません。

できないと決めつけず、できることを行動につなげる

その施設さんは、レシピを文字でなくイラストでわかるように工夫し、大きく張り出すことで常に見ながら作業できるようにしたんです。
このようにできないと決めつけるのでなく、できることを行動につなげる力が障がい分野ではより求められると思います。

介護福祉士とは何か?

介護福祉士養成校で私は「支えて護り幸せにする専門職」だと教えています。
その中で誰を?という主語がないことにも着目してもらっています。
私が考える主語とは、高齢者だけでなく障がい者、そのご家族、そしてそのご家族が生活する社会全体だと教えています。

社会と、ご本人の間に入ってつなげ続ける仕事

また、介という字は「介錯」「介抱」など間に入るという意味もあります。何の間に入るのか?それは社会とご本人の間に入り、つなげ続けるということですよね。

高齢者分野でも障がい者分野でも本人を尊重し、社会とつながり続けられる支援をするという本質は変わりません。ぜひ高齢者介護の経験をもって障がい者分野でチャレンジしてください。その可能性の広がりに魅力を感じるかもしれません。そして、将来的に高齢者にもどるとしてもその時は高齢者介護への考え方が深くなっているでしょう。

目的は一つ、高齢でも障がいがあっても共に認め支え合って生活できる社会「地域共生社会」の実現です。ともにがんばりましょう。

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この記事のライター

茨城県介護福祉士会副会長
特別養護老人ホームもくせい施設長
いばらき中央福祉専門学校学校長代行
NPO法人 ちいきの学校 理事
介護労働安定センター茨城支部 介護人材育成コンサルタント
介護福祉士 社会福祉士 介護支援専門員 MBA(経営学修士)

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