第35回 介護福祉士国家試験 過去問と解説(認知症の理解)

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第35回 介護福祉士国家試験 過去問と解説(認知症の理解)

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問題1

次のうち、2019年(令和元年)の認知症施策推進大綱の5つの柱に示されているものとして、適切なものを1つ選びなさい。

1.市民後見人の活動推進への体制整備
2.普及啓発・本人発信支援
3.若年性認知症支援ハンドブックの配布
4.認知症初期集中支援チームの設置
5.認知症カフェ等を全市町村に普及

解答

2.普及啓発・本人発信支援

解説

2019年(令和元年)~2025年(令和7年)における認知症施策推進大綱の5つの柱は、(1)普及啓発・本人発信支援、(2)予防、(3)医療・ケア・介護サービス・介護者への支援、(4)認知症バリアフリーの推進・若年性認知症の人への支援・社会参加支援、(5)研究開発・産業促進・国際展開となっています。
よって、1.(×)、2.(○)、3.(×)、4.(×)、5.(×)、となります。

問題2

Mさん(88歳、女性 )は、アルツハイマー型認知症(dementia of the Alzheimerʼs type)と診断された。夫と二人暮らしで、訪問介護(ホームヘルプサービス)を利用している。訪問介護員(ホームヘルパー)が訪問したときに夫から、「最近、日中することがなく寝てしまい、夜眠れていないようだ」と相談を受けた。訪問介護員は、Mさんが長年していた裁縫を日中にしてみることを勧めた。早速、裁縫をしてみるとMさんは、短時間で雑巾を縫うことができた。
Mさんの裁縫についての記憶として、最も適切なものを1つ選びなさい。

1.作業記憶
2.展望的記憶
3.短期記憶
4.陳述記憶
5.手続き記憶

解答

5.手続き記憶

解説

1.(×)作業記憶(ワーキングメモリー)は情報の一時的な記憶で、意識的に操作できるという特徴があります。例えば、しりとりをする際に機能するのが作業記憶です。
2.(×)展望的記憶は、予定や約束事など、これから行うことについての未来の記憶です。
3.(×)短期記憶は、数分間程度持続する、ごく短期的な記憶です。例えば、電話をかけるためにちょっと電話番号を覚えておくときは短期記憶が使われます。
4.(×)陳述記憶は、過去に体験したエピソードなど、言葉で表すことができる長期記憶です。
5.(○)裁縫の手技などの動作や行為による技能は、繰り返すことで身体に染み付いた長期記憶であり、手続き記憶に該当します。手続き記憶は、認知症が進行しても比較的残りやすいとされています。

問題3

現行の認知症サポーターに関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。

1.ステップアップ講座を受講した認知症サポーターには、チームオレンジへの参加が期待されている。
2.100万人を目標に養成されている。
3.認知症介護実践者等養成事業の一環である。
4.認知症ケア専門の介護福祉職である。
5.国が実施主体となって養成講座を行っている。

解答

1.ステップアップ講座を受講した認知症サポーターには、チームオレンジへの参加が期待されている。

解説

1.(○)チームオレンジは、近隣の認知症サポーターがチームを組み、認知症の人やその家族に対する心理面・生活面の支援を早期の段階から行う取り組みです。チームオレンジには、認知症の人もチームの一員として参加します。
2.(×)新オレンジプラン(認知症施策推進総合戦略)では、認知症サポーターの人数目標を800万人としていましたが、実際には2022年12月の時点で1400万人を超えています。
3.(×)認知症サポーターは、認知症サポーター等養成事業の一環です。
4.(×)認知症サポーターは、認知症に対する正しい知識を備え、認知症高齢者に優しい地域や社会をつくるために、できる範囲で手助けを行います。認知症ケア専門の介護福祉職ではありません。
5.(×)認知症サポーター養成講座は、都道府県、指定都市、市区町村などの自治体や、職域団体、企業が実施主体となります。

問題4

慢性硬膜下血腫(chronic subdural hematoma)に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。

1.運動機能障害が起こることは非常に少ない。
2.頭蓋骨骨折を伴い発症する。
3.抗凝固薬の使用はリスクとなる。
4.転倒の後、2~3日で発症することが多い。
5.保存的治療が第一選択である。

解答

3.抗凝固薬の使用はリスクとなる。

解説

慢性硬膜下血腫は、脳を覆う硬膜と頭蓋骨の間に徐々に血液が貯留して血腫を形成するもので、認知症の原因疾患の一つとされています。
1.(×)血腫の位置により、歩行障害や片麻痺などの運動機能障害が起こることがあります。
2.(×)慢性硬膜下血腫は、打撲などの比較的軽微な頭部外傷が原因とされています。頭蓋骨骨折を伴うほどの外傷であれば、脳内出血を来す可能性が高いと考えられます。
3.(○)抗凝固薬を使用すると血腫が大きくなりやすいため、リスクだといえます。
4.(×)転倒後、2週間~数か月かけて徐々に血液がたまることで脳が圧迫され、症状が出現します。
5.(×)血腫が少量であれば内科的治療も検討されますが、基本的な治療法は外科手術による血腫の除去です。

問題5

Lさん(83歳、女性、要介護1)は、アルツハイマー型認知症(dementia of the Alzheimerʼs type)である。一人暮らしで、週2回、訪問介護(ホームヘルプサービス)を利用している。
ある日、訪問介護員(ホームヘルパー)が訪問すると、息子が来ていて、「最近、母が年金の引き出しや、水道代の支払いを忘れるようだ。日常生活自立支援事業というものがあると聞いたことがあるが、どのような制度なのか」と質問があった。
訪問介護員の説明として、最も適切なものを1つ選びなさい。

1.「申込みをしたい場合は、家庭裁判所が受付窓口です」
2.「年金の振込口座を、息子さん名義の口座に変更することができます」
3.「Lさんが契約内容を理解できない場合は、息子さんが契約できます」
4.「生活支援員が、水道代の支払いをLさんの代わりに行うことができます」
5.「利用後に苦情がある場合は、国民健康保険団体連合会が受付窓口です」

解答

4.「生活支援員が、水道代の支払いをLさんの代わりに行うことができます」

解説

1.(×)家庭裁判所が受付窓口となるのは成年後見人制度です。日常生活自立支援事業の実施主体は都道府県または指定都市の社会福祉協議会であり、受付窓口は市町村社会福祉協議会となります。
2.(×)年金の振込口座を本人以外のものに変更することはできません。
3.(×)利用者本人が事業の契約内容について理解できることが利用条件となっています。
4.(○)生活支援員は、税金や公共料金の支払い手続きを支援することができます。
5.(×)日常生活自立支援事業の利用に関する相談・苦情は、居住する市町村の社会福祉協議会内に設置されている運営適正化委員会が受け付けています。

問題6

アルツハイマー型認知症(dementia of the Alzheimerʼs type)の、もの盗られ妄想に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。

1.説明をすれば自身の考えの誤りに気づくことが多い。
2.本人の不安から生じることが多い。
3.現実に存在しない人が犯人とされる。
4.主に幻視が原因である。
5.症状の予防には抗精神病薬が有効である。

解答

2.本人の不安から生じることが多い。

解説

1.(×)もの盗られ妄想では、自身の行動の記憶そのものが失われているため、説明しても考えの誤りに気付くことはできません。
2.(○)もの盗られ妄想の対象は現金、財布、通帳、貴金属などの貴重品がほとんどであり、大切なものだからと普段とは別の場所にしまい込むことで引き起こされがちです。本人の性格や生活環境なども影響しますが、認知症の症状である記憶障害と不安が重なることで生じると考えられます。
3.(×)本人の身近にいる人ほど犯人にされやすくなります。
4.(×)幻視が原因ではなく、記憶障害による思い込みが原因です。
5.(×)抗精神病薬は主に統合失調症の治療薬であり、副作用として記憶障害を引き起こすことがあります。認知症による妄想に対しては認知症治療薬が用いられますが、まずは本人の不安を受け止める対応が必要です。

問題7

認知症ケアの技法であるユマニチュードに関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。

1.「見る」とは、離れた位置からさりげなく見守ることである。
2.「話す」とは、意識的に高いトーンの大きな声で話しかけることである。
3.「触れる」とは、指先で軽く触れることである。
4.「立つ」とは、立位をとる機会を作ることである。
5.「オートフィードバック」とは、ケアを評価することである。

解答

4.「立つ」とは、立位をとる機会を作ることである。

解説

ユマニチュードは「人間らしさを取り戻す」という意味のフランス語であり、人の関係性に着目したケア技法です。見る、話す、触れる、立つの4つの柱で構成されています。
1.(×)見る際は、正面・近い距離から視線の高さを合わせ、正直であること、平等であること、親近感を抱いていることなどを伝えます。
2.(×)話す際は、低めの大きすぎない声で前向きな言葉を使い、穏やかで心地よい状態をつくります。
3.(×)触れる際は、広い面積で触れ、つかまないでゆっくりと手を動かすことで優しさを伝えます。
4.(○)立つ時間を増やすことで、人間らしさを取り戻すことができると考えられています。
5.(×)オートフィードバックは、今行っているケアの内容を相手に対して実況的に伝えることです。

問題8

認知症ケアパスに関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。

1.都道府県ごとに作られるものである。
2.介護保険制度の地域密着型サービスの1つである。
3.認知症(dementia)の人の状態に応じた適切なサービス提供の流れをまとめたものである。
4.レスパイトケアとも呼ばれるものである。
5.介護支援専門員(ケアマネジャー)が中心になって作成する。

解答

3.認知症(dementia)の人の状態に応じた適切なサービス提供の流れをまとめたものである。

解説

1.(×)認知症ケアパスは、市町村ごとに作られています。
2.(×)地域密着型サービスは介護保険サービスの一類型であり、認知症ケアパスは該当しません。
3.(○)認知症の人やその家族が、いつ、どこで、どのような医療や介護サービスを受ければよいかを標準的に示したものです。各自治体のホームページで配布窓口や内容が公開され、住民がいつでも情報を得られるようにされています。
4.(×)レスパイトケアは、ショートステイなどのサービスを利用することで、在宅で介護を担っている介護者が一時的に介護から離れて休息できるよう支援することです。
5.(×)市町村の自治体担当者などが中心となって作成されます。

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