第36回 介護福祉士国家試験 過去問と解説(認知症の理解)

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第36回 介護福祉士国家試験 過去問と解説(認知症の理解)

問題1

高齢者の自動車運転免許に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。

(注)「サポートカー限定免許」とは、道路交通法第91条の2の規定に基づく条件が付された免許のことである。

1.75歳から免許更新時の認知機能検査が義務づけられている。
2.80歳から免許更新時の運転技能検査が義務づけられている。
3.軽度認知障害(mild cognitive impairment)と診断された人は運転免許取消しになる。
4.認知症(dementia)の人はサポートカー限定免許であれば運転が可能である。
5.認知症による運転免許取消しの後、運転経歴証明書が交付される。

解答

1.75歳から免許更新時の認知機能検査が義務づけられている。

解説

1.(○)選択肢の通りです。最終的に認知症の診断に至った場合は、運転免許の取り消しまたは効力の停止の措置を受けることになります。
2.(×)75歳以上かつ過去3年間で一定の交通違反がある人は、運転技能検査を受けなければなりません。
3.(×)軽度認知障害は、運転免許取り消しの対象とはなりません。
4.(×)サポートカー限定免許の取得は、普通運転免許の所持が前提となります。そのため、認知症の人は取得できません。
5.(×)運転経歴証明書は、運転免許の申請取り消し(全部)を行った日または運転免許の効力が切れた日から過去5年間の運転経歴を証明するもので、主に高齢者の自主返納を促すための制度の一つです。免許取り消しとなった場合は交付されません。

問題2

認知症(dementia)の行動・心理症状(BPSD)であるアパシー(apathy)に関する次の記述のうち、適切なものを1つ選びなさい。

1.感情の起伏がみられない。
2.将来に希望がもてない。
3.気持ちが落ち込む。
4.理想どおりにいかず悩む。
5.自分を責める。

解答

1.感情の起伏がみられない。

解説

アパシーは認知症の行動・心理症状(BPSD)の一つで、普通なら感情が動かされるような刺激に対して関心が持てない、興味や意欲を喪失した状態です。注目されるようになったのは最近のことであり、診断基準などにも議論の余地が残されています。外面的にはうつ病と似た病態だといえますが、アパシーの場合は内面的にも大きな苦痛がなく、無関心であることが特徴的です。
よって、1.(○)、2.(×)、3.(×)、4.(×)、5.(×)、となります。

問題3

レビー小体型認知症(dementia with Lewy bodies)にみられる歩行障害として、最も適切なものを1つ選びなさい。

1.しばらく歩くと足に痛みを感じて、休みながら歩く。
2.最初の一歩が踏み出しにくく、小刻みに歩く。
3.動きがぎこちなく、酔っぱらったように歩く。
4.下肢は伸展し、つま先を引きずるように歩く。
5.歩くごとに骨盤が傾き、腰を左右に振って歩く。

解答

2.最初の一歩が踏み出しにくく、小刻みに歩く。

解説

レビー小体型認知症では、パーキンソン症状としての歩行障害が現れます。
1.(×)休みながらゆっくりした歩行になりますが、足の痛みが理由ではありません。
2.(○)前傾姿勢で歩幅を小刻みにして歩くため、段差などにつまずいて転倒しやすくなります。
3.(×)酔っぱらったように歩くのは、脊髄小脳変性症などでみられる運動失調歩行です。
4.(×)脳血管障害などが原因で、下肢の伸展、つま先を引きずるような歩行がみられることがあります。
5.(×)歩くごとに骨盤が傾き、腰を左右に振って歩くのは、変形性股関節症でみられます。

問題4

認知症(dementia)の人にみられる、せん妄に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。

1.ゆっくりと発症する。
2.意識は清明である。
3.注意機能は保たれる。
4.体調の変化が誘因になる。
5.日中に多くみられる。

解答

4.体調の変化が誘因になる。

解説

1.(×)せん妄は、急激に発症します。
2.(×)せん妄では、意識が混濁します。
3.(×)せん妄では、注意力が低下します。
4.(○)せん妄は、体調の変化が誘因の一つとなります。その他、薬剤の影響や生活環境の変化(入院など)によってせん妄が引き起こされることもあります。
5.(×)せん妄の症状は日内変動を来し、特に夜間に増悪することが多くあります。

問題5

次の記述のうち、若年性認知症(dementia with early onset)の特徴として、最も適切なものを1つ選びなさい。

1.高齢の認知症(dementia)に比べて、症状の進行速度は緩やかなことが多い。
2.男性よりも女性の発症者が多い。
3.50歳代よりも30歳代の有病率が高い。
4.特定健康診査で発見されることが多い。
5.高齢の認知症に比べて、就労支援が必要になることが多い。

解答

5.高齢の認知症に比べて、就労支援が必要になることが多い。

解説

若年性認知症は、65歳未満で発症した認知症です。
1.(×)若年性認知症の症状は、高齢の認知症に比べて進行が速いとされています。
2.(×)高齢の認知症は女性に多いですが、若年性認知症は男性が多いことが特徴です。
3.(×)若年性認知症の平均発症年齢は約51歳であり、30歳代より50歳代の有病率が高いといえます。
4.(×)本人や家族が異常に気付き、受診して発見されることが多いとされています。
5.(○)若年性認知症の発症者は現役世代なので、経済的な困難に陥りやすく、就労支援が必要になることが多いといえます。

問題6

Lさん(78歳、女性、要介護1)は、3年前にアルツハイマー型認知症(dementia of the Alzheimerʼs type)と診断された。訪問介護(ホームヘルプサービス)を利用し、夫の介護を受けながら二人で暮らしている。ある日、訪問介護員(ホームヘルパー)が訪問すると夫から、「用事で外出しようとすると『外で女性に会っている』と言って興奮することが増えて困っている」と相談を受けた。
Lさんの症状に該当するものとして、最も適切なものを1つ選びなさい。

1.誤認
2.観念失行
3.嫉妬妄想
4.視覚失認
5.幻視

解答

3.嫉妬妄想

解説

1.(×)認知症では、対面している相手を別の人物と取り違えるなどの誤認がみられることがありますが、Lさんには該当しません。
2.(×)観念失行とは、かつてはできていた複雑な課題の目的が認識できず、個々の動作を正しい順序で実行できなくなった状態です。
3.(○)Lさんは、「夫が外で女性に会っている」という嫉妬に基づいた妄想にとらわれ、興奮している状態です。
4.(×)視覚失認とは、視力や視野は保たれているのに、目の前にある対象物が何であるのか答えられない状態です。
5.(×)幻視とは、実際に存在しないものが見えていると感じる、幻覚の一種です。

問題7

認知機能障害による生活への影響に関する記述として、最も適切なものを1つ選びなさい。

1.遂行機能障害により、自宅がわからない。
2.記憶障害により、出された食事を食べない。
3.相貌失認により、目の前の家族がわからない。
4.視空間認知障害により、今日の日付がわからない。
5.病識低下により、うつ状態になりやすい。

解答

3.相貌失認により、目の前の家族がわからない。

解説

1.(×)自宅が分からなくなるのは、場所の見当識障害です。
2.(×)記憶障害は、記憶の記銘・保持・想起が障害された状態です。認知機能障害の人が出された食事を食べないのは、記憶障害が原因というより、他のことに気を取られていたり、妄想が原因だったりすることが多いといえます。
3.(○)相貌失認とは、見知っているはずの人の顔を見ても、それが誰だか分からない状態です。
4.(×)今日の日付が分からなくなるのは、時間の見当識障害です。
5.(×)認知機能障害では病識が希薄なので、うつ状態になりやすいとはいえません。

問題8

Mさん(80歳、女性、要介護1)は、アルツハイマー型認知症(dementia of the Alzheimerʼs type)であり、3日前に認知症対応型共同生活介護(認知症高齢者グループホーム)に入居した。主治医から向精神薬が処方されている。居室では穏やかに過ごしていた。夕食後、表情が険しくなり、「こんなところにはいられません。私は家に帰ります」と大声を上げ、ほかの利用者にも、「あなたも一緒に帰りましょう」と声をかけて皆が落ち着かなくなることがあった。
Mさんの介護を検討するときに優先することとして、最も適切なものを1つ選びなさい。

1.Mさんが訴えている内容
2.Mさんの日中の過ごし方
3.ほかの利用者が落ち着かなくなったこと
4.対応に困ったこと
5.薬が効かなかったこと

解答

1.Mさんが訴えている内容

解説

1.(○)Mさんは3日前に認知症対応型共同生活介護(認知症高齢者グループホーム)に入居し、生活環境が大きく変わっています。その不安に起因する反応だと考えられるため、訴えを傾聴し、寄り添っていく姿勢が求められます。
2.(×)日中の過ごし方も大切な検討事項ですが、まずは訴えに対応する必要があります。
3.(×)ほかの利用者の落ち着きを取り戻すためにも、Mさんの訴えに対応する必要があります。
4.(×)対応に困ったことを検討し、ケアに役立てることは重要ですが、まずは訴えへの対応が先です。
5.(×)3日前の入居であり、薬の効果を検討するには時期尚早だといえます。

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