【事例あり】介護現場でミスや事故を起こしてしまった…落ち込みやすい人の特徴や上手な切り替え方を解説!
事故を起こして落ち込みやすい人の特徴とは?
■物事のとらえ方にはクセがある
人にはそれぞれ、物事のとらえ方のパターンがあります。認知のパターンは十人十色でで、極端な認知のパターンをもつ人は、それに応じてストレスを感じやすくなります。これは、極端な認知のパターンによって気分や行動、身体反応が極端に反応するからです。
ネガティブな気持ちになったとき、自分がどのような認知のパターンにあてはまるかチェックしてみましょう。バランスの良い考え方ができるヒントが得られます。
認知の柔軟性を高めることでストレスと上手につきあうことができるようになり、物事を建設的に考えることができるようになります。
たとえば事故を起こした時、極端に落ち込むことが少なくなります。気持ちを切り替えて今すべきこと、事故対応や再発防止についても建設的に取り組めるようになります。
■代表的な認知(物事のとらえ方)のパターン(クセ)6つ
■べき思考
何事にも「~すべき」とか「~すべきでない」と考え柔軟に対応できない。
・あの時、○○をすべきでなかった
・○○を言うべきではなかった
・約束したら、絶対に守るべきだ
・どんなに大変でも完璧に仕事をすべきだ
解決するには、こう考えてみよう!
・世代や年齢が変われば考え方もとらえ方も変化する
・時代によって常識や価値観も変化する
・尊敬するあの人だったらどのように考えるだろうか
■全か無か思考
曖昧な状況に耐えられず、物事を「白か黒」か、「全か無」か、「1か0」かの両極端で考える。
・1回でもミスしたら、全て終わりだ
・アンケートで9割評価されていても、1割評価が低かったら全てダメだと考えてしまう
解決するには、こう考えてみよう!
・9割評価してくれたからOK!
・できている部分にも目を向ける
・点数をつけてみる
■自分への関連づけ
何か悪いことやよくないことが起きると、自分の責任にしてしまう
・この事故が起こったのは自分のせいだ
・失敗したのは自分のせいだ
解決するには、こう考えてみよう!
・自分以外の要因を分析する
・自分の貢献についても確認する
・エビデンス(根拠)を書き出してみる
■破局視
さまざまな可能性を検討せず、否定的、悲観的な予測をする
・事故を起こしたのだから、クビになる
・○○は、私から離れていくだろう
解決するには、こう考えてみよう!
・エビデンス(根拠)を書き出してみる
・現実的に失敗する要因を検討し、具体的な対処策を検討する
■感情による決めつけ
客観的事実ではなく自分の気分や感情で物事を判断してしまう
・不安なんだから、本番も失敗する
・あの人が嫌いだから、あの人は悪い人
解決するには、こう考えてみよう!
・感情以外の根拠を確認する。感情が根拠になっていないか確認する。
・スモールステップで行動してみる。行動すると感情も変化する。
■拡大解釈と過小評価
否定的な面を拡大してとらえ、肯定的な部分を縮小してとらえる
・成功しても自分の力ではなく、運が良かっただけ
・自分はダメな部分しかなく、良いところがない
解決するには、こう考えてみよう!
・ちょっとした成功や良い部分を認める
・自分に寛容になる
事故を起こしてしまったとき、気持ちを切り替える方法は?
■「認知」と「行動」にアプローチしよう
気持ちを切り替えるポイントは、認知と行動にアプローチすることです。
気持ちや身体反応は変化させることが難しいです。たとえば、ものすごく緊張しているときに気持ちをコントロールしてリラックスすることはなかなかできませんよね。身体反応についても、血圧や心臓はコントロールできません。
認知行動療法の基本モデルはストレッサー(ストレスのもと)によって引き起こされるストレス反応を4つの領域(認知・気分や感情・身体反応・行動)に分けて理解します。
相互作用モデルですので、認知・気分や感情・身体反応・行動の1つの要素が変化すると他の要素も変化します。認知が変われば、気持ち、行動、身体反応も変化し、行動を変えても他の要素が変化します。
■専門家おススメ!気持ちの切り替え方7選
Tips① 「やむなし」、「まっいっか」と考える。声にだす。
Tips② 好きなことをイメージする
Tips③ マインドフルネス(瞑想)する
Tips④ 深呼吸する
Tips⑤ 運動する。ストレッチする。
Tips⑥ おいしいものを食べる
Tips⑦ 趣味や好きなことをする
ぜひ試してみてくださいね!
介護現場での事故を防ぐため、身体介護を学びましょう!
■身体介護を学べる場所とは?
ここからは事故を起こさないため、身体介護を学べる場所についてお届けしたいと思います。
もちろん現場での育成で得られる経験や知識もありますが、育成担当の指導者も日常の業務を抱えており、新人スタッフに対しての育成は業務手順を教えて終わりということも多々あります。その場合、業務の手順については理解できても、このケアはなぜ行うのか?どのような目的で行うのか?など、ケアの根拠が抜け落ちてしまうこともあります。
また、事故が発生した後には、その事故に対する対策や対応についても検討し再発の防止に努めていきますが、基礎知識が得られていない状態だと対策や対応方法への理解も不十分なものになってしまう可能性もありますね。
だからこそ、事業所での学びを深めながら、自ら知識や技術を獲得していくための行動も大切です。
それぞれの技術の成熟度に応じて、3パターンをご紹介します。
■①介護の資格をまだ持っていない場合
初歩的な知識からしっかり学べる、外部研修を受講しましょう
無資格の方については、「わからないことが分からない」という状態から「知っている」「できる」状態にしていく事が求められます。この状態になると、知らないことに対する不安や、対応方法の不安を軽減できると思います。
その為には外部研修を通じて初任者研修や実務者研修を受講し、まずは初歩的な知識や技術、基礎的な知識や技術を習得していきましょう!
初任者研修や実務者研修の内容や資格取得に要する時間などについては、以前の記事で簡単にご説明していますので、参考にしてみてくださいね!
介護の資格、働きながら取得するなら?難易度や取得までの期間と、おすすめの資格もご紹介! | ささえるラボ
https://mynavi-kaigo.jp/media/articles/413【回答者:後藤 晴紀】初任者研修と実務者研修、どちらも捨てがたい!(笑)
事業所の内部研修や業務時間外で職場の先輩から直接指導を受けるということも、「身体介護を学ぶ」という意味では知識の幅を広げられます。ただし介護職は人間の一日を支える仕事なので、初歩的な知識であっても、その内容は多岐にわたります。
事業所での限定的な学びよりも体系立てて専門的な内容を学ぶことが必要です。そういった意味では、知識や技術を得るためには外部研修の受講が最適といえます。
■②初任者研修、実務者研修をすでに取得している場合
外部研修、内部研修、書籍やYouTubeを活用しましょう
外部研修、内部研修、書籍やYouTubeを活用して知識をキャッチしましょう。
ただし、YouTubeでの動画視聴による学びについては、数多くの介護技術の動画が投稿されており、その情報や技術が適切なのかの判断が難しかったり、ご自身のスキル以上の技術だったりする場合もあります。
ご自身の能力にあった正しい動画を視聴しましょう。
また、介護技術研修については様々な団体が研修を開催してくれています。内容を確認し、自分が受講してみたい研修を選んで受けてみましょう!
■③さらに継続して学習したい場合
習得した技術を誰かに伝えることで、レベルアップしていきましょう
継続学習については、上記の方法に加え、ご自身がその技術を内部研修などで説明できる場を作ってみるのはいかがでしょうか?
「知っている」「できる」状態から「伝えられる」状態へとステップアップすることで、自分の中での理解力や技術力が格段にレベルアップします。人前で話すことは勇気がいると思いますが、実は後輩の育成も介護福祉士の役割の一つなんですよ。
日本介護福祉士会倫理綱領を一度見てみると、私たちがやるべきことが明確になると思います。
※介護福祉士倫理要綱(日本介護福祉士会のページに遷移します)
介護技術は、事故を予防するためのものであると同時に、ご自身の身体を守る為の技術でもあります。
研鑽を積んでいきましょう!!
介護現場の事故に関連したお悩み①
■事故を起こして退職したい…
事故を起こしてしまいました。
主任が普段からとても怖い人でなかなか報告できなくて、少し時間が経ってしまってから報告しました。
利用者さんもいるみんなの前で大きな声で怒られて、本当に仕事に行くのがつらくなってしまいました。
利用者さんに本当に申し訳ない気持ちと、また怒られることが本当に怖いです。
仕事をやめたほうがいいですか?
■専門家からの回答
ワ☆ノベーション代表 グロービス経営大学院経営研究科経営専攻修了(MBA) MBA(経営学修士)、公認心理師、社会保険労務士有資格者、社会福祉士。 総合心理教育研究所学術客員研究員。
ご相談ありがとうございます。
事故を起こしてしまって報告をしなくてはいけないことは理解していても、怖い上司だったのですぐに報告ができなかった。
みんなの前で怒鳴られて仕事にいくのが辛くなってしまって、退職を考えているのですね。
■また同じことを繰り返さないために
相談者さんはまた怒られるかもしれない恐怖で「退職したい」。
一方で利用者さんのためにも「責任をもって仕事」をしなくてはいけない。
この狭間で悩まれています。
勢いで退職しても転職先で同じようなことが起きるかもしれないのがリアルな現実です。
■まずは今まで通り、しっかり仕事をしましょう
「気持ち」を優先して退職するか、「現実」を優先していまの職場で仕事をするか。どちらが正解かはわかりません。
即決は避け、いったん判断を保留しましょう。
その間はご自身の仕事を振り返り、良い点は増やして、改善点は修正し成長していく。コミュニケーションで人間関係を良好にしていくことが、安定した就労につながります。
まずはネガティブな感情、モヤモヤを抱えながらもしっかり仕事をしましょう。
そして、納得できたタイミングで仕事を続けていくか、退職するかを決めるのはいかがでしょうか?
■自分自身の味方をしてあげましょう
このような困難な状況のときはココロとカラダのメンテナンスが重要です。
睡眠、食事、運動を意識して取り組んでいきましょう。
※ストレスで体調不良が続いたときは早めに通院してください。
自分が自分の味方であってください。怖れている自分に「怖いよね」って言って自分を受け入れていきましょう。
このできごとは自分自身と上手につきあうチャンス。「怖れ」に対処するスキルが学べます。
「介護現場での事故」に関連したお悩み②
■転倒事故を起こしたことをいつまでも引きずってしまう…
利用者さんの転倒事故を起こしてしまいました。
その日のシフトが私じゃなかったら怪我しなかったかもしれないとか、私のせいで骨折してしまったとか、ずっとぐるぐる考えます。
先輩も主任も「しっかり振り返りして反省したんだから大丈夫」と言ってくれましたが、利用者さんのことを考えて泣いたり眠れなくなったりします。
一人の利用者さんのことでこんなに悩むのも、逆にプロ意識が足りないのかなとも思います。
私は介護に向いていないのでしょうか。
■専門家からの回答
質問を拝見し、質問者さんはとても責任感の強い方だと感じました。
きちんと事故の振り返りもされているとのこと。
チームの方々も、励ましてくださっているのですね。
■この経験をこれからに生かしていきましょう
「自分じゃなかったら」とご自身を責めてしまう気持ち、よくわかります。
ショックなことを正直にお伝えすると、この「自分じゃなかったら」という思いは、消えません。
一生付きまといます。
心に、鉛みたいに重たく残ります。
私にも、そのような鉛が1つではなく、いくつかあります。
思い出すと申し訳なさや恥ずかしさ、悔しさなど様々な感情が湧いてきます。
質問者さんは、今回の件でたくさん利用者さんのことを考え、学んだと思います。
大事なのは、それをこれからどう生かしていくかです。
事故は、あなた「だけ」が原因で起きたことではないのではと思います。
振り返りの際に、様々な要因が考えられたのではないでしょうか。
■ヒヤリハットに気づく観察眼を
ご存じかもしれませんが、ハインリッヒの法則というものがあります。
1つの重大事故の背景には29件の軽微な事故があり、29件の軽微な事故の背景には300件のヒヤリ・ハットがあると言われています。
これから質問者さんにできることの1つをお伝えすると、重大な事故を防ぐためのヒヤリ・ハットに気づく観察眼を磨き対応を考えること、なのではないかと思います。
■最後に
わたしが利用者だったら、あなたのような、責任感を持って向き合ってくださる方に介護してほしい、と思います。
自分を責め過ぎないで、これから出来ることに目を向けてみるのはどうでしょうか。
応援しています。
「介護現場での事故」に関連したお悩み③
■ひとりで全フロアーを見なくてはいけない…私はどうするべきだったの?
私が勤めていた施設は、1フロアーにつきふたり体制でした。
午前中はもうひとりが入浴介助に行ってしまうので、ひとり全フロアーをみないといけません。
ひとりの人に着替えをしていたら他の居室の利用者さんが徘徊してしまい、転倒されたことがありました。
ご家族へ電話で報告をしたときに状況を説明したところ、叱られてしまい、結局ショックでその施設をすぐ辞めてしまいました。
私はどうするべきだったのでしょうか?
相談者:Steker さん
■専門家からの回答
アモールファティ代表 理論と経験に基づく「優しく丁寧に美しい介護」を理念に実践的な介護技術研修/コミュニケーション研修及び介護離職防止の為一般企業様向けに「介護セミナー」を実施しています。
お辛い思いをされましたね。
1フロアーにつき入居者様が何人おられるのかわかりませんが、入浴以外の業務全てを1人で行うことは、かなりの経験者であっても難しいことです。
■事故リスクは施設全体で背負うもの
お客様のその日の体調によっても、心理症状・行動症状は日々異なるので、施設内での事故リスクは、どの様な状況においても施設全体で常々考えていかなければなりません。
その上で、転倒のような事故が起きた場合は、業務分担等を改善していく必要があります。
残念ながら、模範的な施設であっても転倒事故ゼロではありません。
しかし、限りなくゼロに近づけていくためにはどの様な方法をとればいいのか、施設全体で日々研鑽しています。
業務改善マニュアルを作成しているところも少なくありません。
■ひとりで抱え込まず、上長に相談を!
ゆえに、ご利用者様が転倒したのは、ご相談者さんおひとりの責任ではありません。
ご家族に状況を説明し報告したのも、施設のチームの一員として代弁したことです。
ですので、一人で責任をおって施設を辞めてしまう行動は適切ではなかった様に感じます。
ご家族様からのお叱りがあったからこその行動であったのだと思われますが、まずは、上長に自分の素直な気持ちを伝え理解してもらう努力をされた方が賢明だったのではないでしょうか。
上長こそが、業務改善またはご家族の対応についても説明責任を果たし、スタッフが離職しないように考えていくべきであったかと私は思います。
ワ☆ノベーション代表
グロービス経営大学院経営研究科経営専攻修了(MBA)
MBA(経営学修士)、公認心理師、社会保険労務士有資格者、社会福祉士。
総合心理教育研究所学術客員研究員。