本日のお悩み
訪問で働いています。コロナで2人ほど退職し、忙しいのと不安で限界です。
体調もすぐれません。でもギリギリでやっているので私が辞めたら職場のみんなにも利用者さんにも迷惑をかけてしまうので、休んだり辞めたりできません。
どう対処したらいいのでしょうか?
どこも同じようなものだと思いますが、ニュースでも訪問は人が足りないと見ました。
給料を上げるとか、何か対策を打ってほしいです。
求人は戦略をもって実行していますか?
「訪問介護の人手不足」
これは本当に重大な問題です。
私も特養に併設する形で訪問介護事業所を運営しています。現場で頑張っているみんなの話を聞いても、また、訪問介護サービス協会の皆さんにお聞きしても、いくら求人をかけても応募すらない、ヘルパーが高齢化している、更にコロナで訪問するのが怖い、などなど課題が山積です。
質問者さんもきっと同じか、よりつらい状況で使命感の為、業務に当たり続けている、そう推測されます。
では、読者の方には、あまり訪問介護をご存じないという方もいらっしゃると思いますので、ひとつひとつ現状を考察してみましょう。
■訪問介護の給料と加算について
まず、給料ですが、既に処遇改善加算や特定処遇改善加算において訪問介護は一番高い支給率となっています。
国としては事情を鑑みて制度に組み込んではいますが、そもそも算定要件のハードルが高い、更には、経験年数の多い介護福祉士にインセンティブがつく形となっている為、ヘルパー2級の資格で長年頑張っている訪問介護員の方との報酬バランスが崩れる、などの理由から加算を申請しないという事業所さんもあるようです。
■訪問介護に必要な資格について
2つ目は、資格要件です。施設サービスやデイサービスでは無資格でも就業できますが、訪問介護は初任者研修の修了が必須です。初任者研修は130時間の研修時間があります。
もちろん、ご利用者の家に1対1で支援に入りますので、「一人で判断できる専門的知識が必要となる」、このロジックは納得ですが、ハードル高く感じてしまう人がいることも事実でしょう。
■訪問介護員の高齢化
3つ目は、訪問介護員の高齢化です。裏を返せば、若者が集まらない、長年訪問介護員として従事してきた方が高齢化したということになります。なぜ若者が集まらないか?訪問介護は、施設サービスと違い、ご利用者の生活環境に合わせた支援をするという高い技術が求められます(「カメレオンになる」と自事業所の職員は話していました)。
このような技術はもちろん、そもそも一人ということに不安を感じる若者は多いようです。
■現状打開には人手不足の解消が必須!
さて、現状を考察したところで結論に向かいましょう。
質問者さんの現状を打開するには、「事業所の人手不足を解消する」ことが、すぐ取り組める解決策だと思います。とういうことは求人広告を出すということになりますが、「そんなことずっとやっています」と怒られちゃいそうですね。しかし、以下のポイントを確認してみてください。
■人が集まる求人の書き方を教えます
① 働いてもらいたい層を明確にした求人戦略を打っていますか?
<ターゲット例>
初任者研修を修了済みで一度介護に従事したことがある。
育児が落ち着いてきたので少し働こうと思っている(40〜50代の女性)。
自分の家族の介護を考え、知識をつけようと初任者研修は修了した。
修了後すぐには自信がなく就業しなかったが、少しチャレンジする気になっている(50代の女性)。
→上記の方は、最初から長く働くのはハードルが高いと感じています。短時間で時給が高く、働く時間の自由度も高い訪問介護は魅力と感じるかもしれません。
② 事業所のホームページはありますか?
→ 研修体制や同行訪問など、一人の不安を和らげるサポート体制を明記
③ SNSで事業所の近況など発信していますか?
→ 明るい職場雰囲気を伝える
■きちんと考えて求人を出すことがポイント
どうでしょう?求人はただ出していたのでは全く意味がありません。
特に①があった上での②③は必須です。
そんなの忙しくて考えている暇はないと思うかもしれませんが、考えて求人を打たないと現状の打破はできません。なにせ、みんな人材を確保することに必死ですから。
求職者はホームページ、SNSなどあらゆる媒体を通じ、少しでも条件のいいところ、働いてみたいという魅力を感じるところを探しています。
もしかしたら、相談者さんの事業所さんは、あまり考えず求人を出しているかもしれませんので是非確認してみることをオススメします。
コロナウイルスによる失業者も増えていると聞きます。求人方法を工夫すれば、訪問介護の働き方に魅力を感じる人は必ずいるはずです。
「でも、やっぱり難しい」と思われるなら総合的サポートをしてくれるマイナビさんに相談してはいかがでしょうか?(忖度ではありません笑)
■最後に
国の制度に文句をいっても早期の解決策にはなりません。
まず、できるとことから諦めず実践していきましょう。必ず道は切り開かれることを信じて。
訪問介護の人手不足、解決法は「給料を上げること」ではない
ゆりかごホールディングス株式会社 代表取締役 株式会社ゆりかご 代表取締役 茨城県訪問介護協議会 副会長 茨城県難病連絡協議会 委員 水戸在宅ケアネットワーク 世話人 介護福祉士・社会福祉士・精神保健福祉士・看護師・介護支援専門員・相談支援専門員
訪問介護事業者の人手不足を解決する方法は、賃金の改善だけではないと感じます。
訪問介護の人手不足については様々な要因が考えられます。
■訪問介護が人手不足に悩む原因
訪問という業務特性による賃金の低下
訪問介護は、利用者宅に訪問する移動時間が必ず発生します。当然ながら移動時間も業務時間ですから、賃金が発生します。
しかし、介護報酬の仕組み上、報酬は訪問時間に応じて発生する仕組みになっています。そのため、移動時間中の賃金を確保するには、介護報酬ベースでの賃金設計が難しいのです。
移動時間といっても、地域によってはかなりの長時間になることもあります。その部分を考えながら時給を設定しようとすると、どうしても時給額が少なくなってしまい、求人として魅力を感じにくいという点があります。
従業員視点でも、毎月の給料にバラつきが生じる
では、従業員の視点で見るとどうでしょうか?
利用者が入院したり、突然キャンセルがあったりすると、1か月あたりの訪問件数にばらつきが起こります。
そのため、パートや登録ヘルパーという時給制で働いていただくような形では、毎月どのくらいの収入が得られるか予測しにくくなってしまいます。
それに対し、通所介護(デイサービス)などは出勤時間から退勤時間まで、利用者様が入院しても、キャンセルしても勤務時間は変わらないため、毎月の給与も大きく変わらないと思います。これにより、訪問介護以外の業種を選ぶ方も多いのではないでしょうか。
介護保険の範囲内・範囲外の判断をするのが難しい
さらに、訪問介護にはグレーゾーンという領域が多いという点があります。
訪問介護ができる業務は介護保険法に基づいて決められています。
しかし、その業務の具体的な範囲や程度については利用者様の状態によってそれぞれ異なるため、人によって業務の程度が変化する難しさがあります。
例えば、「利用者様の家の掃除」という仕事だとどうでしょうか?
訪問介護の生活援助という業務に掃除がありますが、家族も利用する共有部分は原則掃除できないという決まりがあります。
・排水溝の掃除はやっていいのか
・レンジフードの掃除はどうか
・庭掃除はどうか
など、ケースによっては介護保険の適応除外となるケースも多く、わかりづらいと感じる方も多いのです。
特に、ケアプランを作成するケアマネジャーも、この訪問介護のグレーゾーンに迷うことを考えると、別のサービスを利用したほうが良いという方針の方も一定数いらっしゃいます。
ヘルパーがやってはいけないなこと一覧 5つの判断方法と、具体的な断り方も | ささえるラボ
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求人募集に資金を投入できない事業所も
また、訪問介護の依頼自体が介護保険開始当時と比べて、相当減少しています。
これにより、休業や廃業をする事業所も多いですし、当然求人などへ資金を投入する余裕もないという事業所も多い傾向にあります。
一部の劣悪な事業所によるイメージの低下
介護保険スタート時には、ゲリラ的に訪問介護事業所がたくさん立ち上がりました。その中には労務環境が劣悪な状況も多く、雇用保険に加入していない事業所、賃金未払いなど処遇面で問題のある事業所も多かったのです。
これにより、訪問介護のイメージが悪くなってしまいました。
経営的に危ないという印象や、他業種と比較して労務面がしっかりしていないと感じ、訪問介護はやりたくないと考える人もいらっしゃると思います。
弊社にも、前の事業所で「社会保険対象になっていても、加入してもらえなかった」「退職後に離職票が作成されず、失業保険をもらうのに苦労した」などの理由で転職したいという方がいらっしゃいました。
緊急時対応など、仕事自体の心理的ハードルの高さ
訪問介護は利用者様の自宅に一人で訪問するので、訪問中に何かがあったら一人で対応できるかどうか不安が大きいという声もよく聞きます。
実際には、訪問時の業務内容については、アセスメントをした上で手順を統一し、訪問するという形をとります。
そのため自分ですべてを判断して行っているというわけではありません。
しかしながら、利用者様が急変した時の対応をする場合は、一人で行う心細さを感じるかもしれません。
訪問介護の一日の流れとは?ヘルパーとして働く前に確認しておきたいことも | ささえるラボ
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■事業者目線で、人材確保のためにできる5つの工夫
研修と、教育体制の強化
「訪問業務はひとり」という不安を払しょくするために、研修などの積極的な参加支援として研修費全額支給や、公休を利用せず勤務時間内で研修ができるような仕組みを作っており、不安軽減に努めています。
また、新人や新たな担当の訪問時は、可能な限り同行訪問やOJTを実施し、なるべく不安がないように支援しています。
処遇改善加算等、処遇面の見える化を行う
介護職員処遇改善加算等の制度を最大限に活用し、給与に反映しています。
その状況をホームページにも公開しており、職員には就業規則や給与規程もデータ配布しています。有給休暇取得率や育児休業・休暇や介護休業・休暇、リフレッシュ休暇などについても積極的に職員へ取得を促しています。
処遇改善手当てとは?ベア加算とは?分かりやすく解説! | ささえるラボ
https://mynavi-kaigo.jp/media/articles/5112022年10月からスタートしたベア加算(介護職員等ベースアップ等支援加算)とは?分かりやすく解説!介護職の給料アップにつながる介護業界の人手不足を解消するために国が創設した「介護職員処遇改善加算」。要件を満たした事業所には加算金が支給され、「処遇改善加算手当て」として従業員に配分されます。加算の仕組みや目的などの基礎知識を紹介します。
訪問介護の魅力を発信
私の場合は介護福祉士養成校や看護学校でいくつか授業を受け持つ機会をいただいています。
自社PRをするのですが、そこで弊社の特徴である「ナラティブアプローチ」を実践に取り入れた訪問介護の事例紹介をしています。活動状況をみていただき、共感いただくことで求人につながるケースもありました。
訪問介護に関連した、多角的な事業展開をする
弊社については、訪問介護を軸として
・障害福祉サービスの居宅介護(介護保険の訪問介護と同じです)、
・同行援護(視覚障がいをお持ちの方対象の外出支援サービス)、
・行動援護(知的障がいや精神障がいをお持ちの方を安全に外出するための支援)、
・移動支援(移動が困難な方への外出支援)
を展開し、幅広いニーズに対応できる体制を構築しています。
また、重症度や状況に応じて定期巡回随時対応型訪問介護看護や夜間訪問介護といったサービスも展開しており、その方に合わせた自立支援ができる体制を整えることにより、介護予防からお看取りまで幅広い視点で活動ができることで、新鮮な視点をいつでも持てる取り組みをしています。
従業員持株会の設立
部門の中核となる職員を選定し、会社の株式を職員へ譲渡し、決算後の経常利益に応じて配当金を支払うことで、インセンティブを付与しています。これにより中間管理職クラスの離職予防に努めています。
■地域包括ケアシステムの要、訪問介護の人材確保は総合的な視点が必要
訪問介護は、在宅介護の要です。
しかしながら、事業所数の減少など地域的にも訪問介護事業所が不足しているという声は少なくありません。
訪問介護のイメージアップ、採用、訪問介護事業所同士の連携など、トータルで考えていく必要があります。
「介護職の人手不足」に関連したお悩み
■「給料が安いから介護職を辞めたい」わけではないんです
世の中は介護士の給料を上げようとしていますが、私は給料が安いからじゃなく、人が足りなくて忙しく、ぎすぎすしてるからやめたいと思うことがあります。
単に給料が上がったら人が増えるんでしょうか?
■給与面だけでなく、労働環境の改善が必須
するどいご質問、ありがとうございます。
私も同意見で、給与を上げる「だけ」では、介護職は増えないと思います。
■人手不足の要因は
人が足りなくて忙しく、ぎすぎすしているとのこと。
これを読んでいる方の中に、同じように悩んでいる人も多いのではないかと思います。
まさに、介護関係の仕事を辞めた理由で最も多いのは、「職場の人間関係に問題がある」です。
以降、「将来の見込みが立たなかった」「法人や施設・事業所の理念や運営のあり方に不満があった」と続き、「収入が少ない」は5番目です。
つまり、人手不足の要因は、給与以外の労働条件、労働環境にもあります。
もちろん、命を預かるという仕事、専門性を備えた仕事に対して見合った報酬をもらうべきです。
しかし、いくら給与が高かったとしても、働く環境が整わなければ、人材は定着はしません。
■現場のマネジメント不全も問題に
労働環境の改善のため、ICT化や介護ロボットの導入なども進んできており、活用に期待していますが、そもそも、現場のマネジメント不全という要因もあるのではないかと思います。
人が足りず、本来マネジメント業務にあたるべき立場の人が実務に追われ、組織の課題に気づけない、気づいても手が回らない……
そうなってしまうと、悪循環です。
これはもちろん、組織としてしかるべき人が考える必要があるのですが、介護職員ひとりひとりが、チームの課題として考え、行動していく必要もあると思っています。なぜなら、チームでのコミュニケーションが、ケアの質に直結するからです。
■最後に
介護業界全体が、人手が足りないという課題を抱えています。
決して楽ではない状況ですが、ぎすぎすについて、ぜひ職場の人に相談してみてください。
組織で課題について話し合い、働きやすい職場環境を整えていくことが、1つの策になるのではないかと思います。
茨城県介護福祉士会副会長
特別養護老人ホームもくせい施設長
いばらき中央福祉専門学校学校長代行
NPO法人 ちいきの学校 理事
介護労働安定センター茨城支部 介護人材育成コンサルタント
介護福祉士 社会福祉士 介護支援専門員 MBA(経営学修士)