本日のお悩み
私の働いている施設で発熱した利用者様が出ました。抗原検査にかけたところ陽性となったので、施設独自の感染対策を実施していました。
ただ、身内にも介護施設で働いている者がおり、普段から「施設でコロナが発生、もしくは疑わしい場合は教えてくれ」と言われていたため身内に現状を伝え、PCR検査の結果が出るまでは施設への報告を待ってほしいとお願いしました。しかし結果的に報告されてしまいました。(身内の働く施設の方針です。)
その後、PCR検査で陰性が証明され、対策は解除となりましたが、後日施設長から他施設の者へ情報を漏らしてしまった事を批判されました。介護リーダーなのだから結果が分からないうちは情報を漏らすな。との事でした。
今回の件で、他施設の者へ情報を伝えてしまったことは事実ですが、施設長の言葉に違和感や責任を感じてしまい、リーダーを辞退したいと考えるようになりました。
正直、私の中では、第一に家族を守る為に『抗原検査を受けた利用者がいるので対策しているが、PCR検査の結果が分かるまでそっちの施設にはまだ言わないで。』と身内に報告しただけなのに、施設長の方から情報の漏洩を批判されたことに、仕事へのやりがいや生き甲斐を見失ってしまいました。
職場のコロナに関する方針も決まっていなかったし、施設長の言う「リーダーなのだから情報を漏らすな」というのは施設長の考え方であって全職員へ伝達されていなかったし、それを知っていたら私も黙っていたと思います。私には家に小さな子供もいるので、もし知らぬ間に保菌していてうつしてしまったらと不安な面もあったのに、なぜ責められてしまったのか理解できません。
私は間違っていたのでしょうか?もし間違っていたのならリーダーを辞退したいと思っていますし、この件がハラスメントに当たるのかどうかも知りたいです。よろしくお願いします。
相談者:mio さん
新型コロナウィルスのもたらす職場内の心のディスタンスに注意
ご質問ありがとうございます。
本題に入る前に、曖昧に捉えられている読者の方もいらっしゃると思いますので(実は私もそうでした)、抗原検査とPCR検査の違いを確認しましょう(ご存知の方は読み飛ばしてください)。
■「抗原検査」と「PCR検査」の違い
この二つの検査は新型コロナウイルスの「何」を検出するのかが違います。
PCR検査は、新型コロナウイルスに特徴的な一部分の「遺伝子の配列」を検出します。一方、抗原検査はウイルス特有の「タンパク質=抗原」を検出します。
当初は、抗原検査キットで陽性になった場合も、新型コロナウイルス確定の診断となるとされていました。しかし、抗原検査が普及するにつれて偽陽性患者が散見され、抗原検査で陽性になる方の中には、実際には新型コロナ感染症ではなく、他の何か異なる抗原に対して陽性になっている方が少なからず存在するということがわかってきたそうです。その結果、抗原検査は簡易的で、すぐに結果は出るものの正確性に欠けるため、抗原検査を主体的に行うということは少なく、PCR検査と合わせて行い、診断を確定させるとの流れになったようです。
ということで、ご質問者さんのケース、施設長さんの気持ちとしては、「抗原検査は陽性だったが、まだ確定はしていない。PCR検査結果がでるまでは対策をとりつつ、陰性であればなんでもなかったことで済むので、事を荒立てず経過をみる」という感じではなかったのではないでしょうか・・・。(私も施設長の端くれ、気持ちはわかります汗)
■判断に落ち度はありませんが、ハラスメントとは言えないかもしれません
では、本題です。
今回の件、職場のコロナに関する方針も決まっていなかった、もちろん情報の扱いに対するルール等の職員への周知もしていなかったことを踏まえると、小さな子供もいる質問者さんの判断は全く落ち度がなかったと私も思います。百歩譲って施設長さんが施設を風評被害から守りたい気持ちが強かったとしても、その思いやその思いに基づく方針を職員に語っていなかったことは良くなかったでしょう。
しかし、ハラスメント=嫌がらせ(パワーハラスメントと仮定する)として該当するかには、①優越的な関係に基づいて(優位性を背景に)行われること 、②業務の適正な範囲を超えて行われること ③身体的若しくは精神的な苦痛を与えること、又は就業環境を害することのすべての要素が満たされること(厚生労働省)とありますので、ハラスメントとはいえないのではないでしょうか。
■自分の気持ちをはっきり伝えてみましょう
今回の件、質問者さんのリーダーとしての思いは大きく傷ついたと思います。
しかし、文面から職場を辞める気持ちにまでには至ってないようですね。
提案ですが、これからも継続して同職場で働く気が質問者さんにもおありなら、「嫌な思いをした」、「リーダーを辞めようと思った」ことをはっきり、施設長さんに伝えたらいかがでしょう。もしかしたら、「悪かった、自分もどうしていいかわからなかった」などと本音がでるかもしれません。その時、心のわだかまりは少し解けるのではないでしょうか?
■目に見えない不安に要注意
新型コロナウイルスは、身体への害はもちろん、人の心にも不安という大きな害をもたらしています。そして何より、この目に見えない不安が、人と人との心の距離を開き、社会に悪影響を与えているのも事実です。
質問から質問者さんのリーダーとしての資質は十分にあると私は思います。
施設長さんも本音で話してくれることを望んでいるかもしれません。
だれだって裸の王様になりたくありませんから。
茨城県介護福祉士会副会長
特別養護老人ホームもくせい施設長
いばらき中央福祉専門学校学校長代行
NPO法人 ちいきの学校 理事
介護労働安定センター茨城支部 介護人材育成コンサルタント
介護福祉士 社会福祉士 介護支援専門員 MBA(経営学修士)