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介護人材の不足が原因?最近起こった訴訟事案とは

介護人材の不足が原因?最近起こった訴訟事案とは

愛知県春日井市の特別養護老人ホームでの誤飲による死亡事故に対し、施設側の注意義務違反が認定され、計約1,370万円の支払いを命じた。というニュースに対して、介護事業者側の視点で解説します。ご家族との信頼関係構築と人材不足解消がより大切な時代へ突入してきています。【回答者:伊藤浩一】


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介護人材の不足が原因?最近起こった訴訟事案とは

ご家族との信頼関係構築と人材不足解消がより大切な時代へ突入

伊藤 浩一

https://mynavi-kaigo.jp/media/users/14

茨城県介護福祉士会副会長 特別養護老人ホームもくせい施設長 いばらき中央福祉専門学校学校長代行 NPO法人 ちいきの学校 理事 介護労働安定センター茨城支部 介護人材育成コンサルタント 介護福祉士 社会福祉士 介護支援専門員

今回は、下記のニュース記事を踏まえて事業者側・職員側の視点で解説します!

ニュースの内容を要約すると「ある特別養護老人ホームで、職員らが見守りを怠った結果、入所していた女性(当時80歳代)が食べ物を喉につまらせて死亡したとして、遺族が施設側に計約3,550万円の損害賠償を求めた結果、地裁は、施設側の注意義務違反を認定し、計約1,370万円の支払いを命じた。」という内容です。

ニュースの詳細はこちら(読売新聞オンラインの記事に遷移します)

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判決のポイントは「職員らが見守りを怠った」のか否かとの点だったのだろうと想像できる

記事の内容だけでは情報が少ないことをご了解いただいた上で私見をお話しします。

女性は「以前から食事をかき込んで食べ、たびたび嘔吐していた」との記述から
ご自身の身体状況が認識できない中重度の認知症の可能性
(そもそも特別養護老人ホームなので要介護度3以上の方)と
食べ物の飲み込みに支障がある嚥下障害があったのではと想定できます。

また、「吐いた食べ物で窒息する危険性を予見できた」との判決から比較的長い期間このような状態で生活していたことも推測できます。

さぞかし介護する側としては難しいケースだったのではないかと想像する一方、ご家族の女性に対する想い(大切に考える)にも共感いたします。

介護事故による訴訟事案は増加していくと予想 その3つの理由とは?

私自身、ここ数年、他の施設長さんたちと情報共有する中で、このような訴訟事案が増加していることを実感しており今後、このような介護事故による訴訟事案が増加するのでは?と予想しています。

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①ご家族の介護サービスに対する意識が高まっている

高齢者の増加により介護保険法施行から20年が経ったいま、自己負担額は増額の一途をたどり、高所得者は2割負担に加え3割負担まで制度化されました。

つまり、お金を払った対価としてサービスが納得いかなければこのような状況に陥る可能性が高くなることはみなさんも想像がつくでしょう。

②「高齢者を施設に入れる」ことに対する抵抗が薄れてきた

私が入社した20年前はまだ「お世話してもらっている」という意識がご家族に強かったと感じます。なぜなら、高齢になっても親を自宅でみるのは当たり前、返って施設に入れる事自体が世間体が良くない風潮だったからです。

しかし、今は介護サービスを利用することが当たり前の世の中になりました。
まして大切な家族ですから生死に関わる事故となれば、私たちの対応次第で関係性が拗れてしまうことも残念ながら起こりうると言えるでしょう。

③介護人材不足も増加要因と考えられる

このコロナ禍、現場の人手不足は深刻化を増しました。

コロナ前でも現場の人手不足は課題であったにも関わらず、

・濃厚接触者に該当してしまう
・コロナにより急な学級閉鎖で出勤できなくなった
・第8波では実際に多くの職員が感染する など

職員同士での調整が必要になることもあり、通常よりも少ない人数で現場対応をしなければならないことが連日続くなんてこともあったでしょう。

このような状況下で見守りを怠ったとなっても事実は事実…。
コロナだったから仕方がないとはなりませんよね。

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今後、改善していくために。まずはご家族との信頼関係構築が大切!

介護事故によるご家族との関係性悪化は、日頃からのコミュニケーションによって防ぐことができます。その際、きめ細やかにご利用者の状況報告を行うことが大切です。
悪いことばかりでなく、良い情報の報告を行うことを心がけましょう。

また、定期的なカンファレンスで私たちがご利用者をどこまで分析し、思いを汲み取っているのか
そして、それをどのようにケアに活かしているのかをご家族にお伝えしましょう。

そうすることでご家族と一緒に考え、共有することができ信頼関係の構築につながります。

【まとめ】私たち一人一人が変化していくことで安心できる介護サービスを提供できる

2023年5月に新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけが5類に移行することは、
とても明るいことですが、私たちはより一層、気を引き締めてご家族とのコミュ二ケーション図っていく事が大事だと考えます。

このコロナ禍、ご家族とのカンファレンスもままならない、ましてや面会ができない状況は、ご家族に大きなストレスを与えることになってしまったと思います。

様々な感染対策はこれからも重要です。しかし、社会がオープンに変化する中、その変化に対応できなければご家族の不信感を募らせる要因となるでしょう。

また、人材不足に対してもあらゆる業界が人材を求めています。
「人がいないんです」は言い訳になりません。

私たちが自発的に変化していくことが、今後のより安心できる介護サービスの提供に繋げられるでしょう。

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この記事のライター

茨城県介護福祉士会副会長
特別養護老人ホームもくせい施設長
いばらき中央福祉専門学校学校長代行
NPO法人 ちいきの学校 理事
介護労働安定センター茨城支部 介護人材育成コンサルタント
介護福祉士 社会福祉士 介護支援専門員 MBA(経営学修士)

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