ホームヘルパー(訪問介護員)の食事作りの仕事内容とは?気を付けるポイントを解説
■執筆者/専門家
・(有)⽻吹デザイン事務所介護事業部アモールファティ代表 ・アモールファティスクール⻑ 介護福祉⼠/介護⽀援専⾨員/介護技術指導員/⽇本語教員/社会科教員 介護職員実務者教員/社会福祉主事任⽤ 理論と経験に基づく「優しく丁寧に美しい介護」を理念に実践的な介護技術研修/コミュニケーション研修及び介護離職防止の為一般企業様向けに「介護セミナー」を実施しています。
食事とは、生命の維持や健康に生きていくために、日常生活の中でも特に欠かせないものです。
健康を維持するための「栄養」は勿論のこと、精神的・文化的な暮らしを支える「食べる楽しみ」も重要な意味を持っています。
そのため、ただ栄養が取れるだけでなく、「美味しい、楽しい」と感じながら、ご利用者がその人らしく満足できる食事を提供することが求められます。
買い出しの際に気を付けるポイント
食事作りにまず必要なこととしては買い出しです。
買い出しの際に気を付けるポイントを解説します。
1.まずは予算の確認をし、理由のある場所で買い出しをしましょう
買い出しのものが予算内で購入できるかを事前にチェックすることが大切です。
またご利用者の行きつけの場所、指定場所で買い物をしましょう。どこでも良いという場合は「理由ある場所」を購入先するといいでしょう。
理由のある場所というのは、「他のスーパーより安い」「近い」「特売をやっている」などです。
2.ご利用者やご家族の要望を受け入れながら、食材の在庫をチェックしましょう
賞味期限切れがないかや現在の冷蔵庫の状況(食材の在庫)をチェックし、足りないもの、余剰な物を確認しましょう。その際にアドバイスを行うことも大切です。
また、ご利用者が食べたい食材は四季折々異なるかもしれません。このような可能性も想定して相談にのりましょう。
3.服薬している成分やアレルギーなどから、禁じられている食材がないかにも注意が必要
食べてもよいものに制限がある場合は「諦めてもらう」のではなく、代替となる食材の提案をすることが大切です。食べたい意欲を大切にしましょう。
また食材選びのポイントは、後述します。
4.買い出しの食材選びは常に客観的に
買い出しはヘルパーがひとりで行くため、ヘルパー自身の価値観が優先される可能性が高くなります。ヘルパーは自分自身を常に客観視するよう心がけましょう。
5.買い出しの際は、金銭の扱いに注意しましょう
買い出しに行く前のお財布の残高を、ご利用者あるいはご家族に確認して、ノートやメモに必ず記載し、あとから確認できるようにしておきましょう。原則、立て替えはお断りとしたほうがよいでしょう。
またご利用者がポイントカードを持っておらず、ヘルパー自身がポイントカードを持っている場合でも、ご利用者の買い物分のポイントをヘルパー自身のカードに計上するのはやめましょう。
場合によっては罪に問われる可能性もあります。
先述の通り、買い出し後は、必ずレシートと残高がわかるようにノートに記入し、ご利用者や家族に確認してもらいましょう。
調理支援の際に気を付けるポイント
次に調理支援に関して、気を付けるポイントを解説します。
1.支援時間を守ること
ご利用者の食事形態への配慮は必要ですが、限られた時間内で調理をしなければなりません。できる限りご利用者の要望を尊重しつつも、支援時間内にできないものについては難しい理由を伝えましょう。
2.調理器具が揃っているか
ご利用者宅には、調理をするうえで必要な物品が準備されていないことがあります。調理器具が揃っていない場合でも、代替できるもので工夫し調理をしましょう。
しかし、代替可能なものさえない場合もあります。そのような場合は、サービス提供責任者に相談しましょう。介護計画上、必ずサービス提供責任者が介護の手順書も作成しているはずです。そちらも確認するようにしましょう。
3.食事形態は日々変化することも
食事形態はご利用者の嚥下機能や口腔内の事情によって変化があります。
現場にいるヘルパーこそが一番事情を知っており、変化にも気が付きやすいです。
変化があった場合は速かに報告しましょう。
カンファレンス等で話しあい、普通食・軟菜食・きざみ食・ペースト食・ミキサー食など複数の段階のどの段階なのか見極めて調理するようにしましょう。
4.衛生管理も重要
調理器具や食器などの衛生管理も重要なポイントです。
汚れ落とし→すすぎ→殺菌→乾燥などで食中毒や感染症対策を意識しましょう。
作り置きの際に気を付けるポイント
ケアプラン(居宅サービス計画書)に作り置きが含まれる場合、作り置きを行う場合があります。
そのような場合に気を付けるポイントを解説します。
1.ケアプランに沿って作るようにしましょう
食事作りには、「昼用」「夜用」の「2回分に分けて置く」というようなプランもあります。
そのような場合は、2回分の量に分けるようにしましょう。
それぞれに調理した日にちと時刻、保存状態をタッパやお皿にわかるようにして置きます。
高齢者の方は、手指の筋力の低下で蓋が開けづらいこともあります。ご利用者に合わせて、ラップをかけて置く・蓋を緩めて置くなどの工夫をしましょう。
2.衛生管理に注意しましょう
腐らないように、冷蔵保存・冷凍保存をしましょう。食中毒予防を意識します。
食材選びの際に気を付けるポイント
次に食材選びに関してのポイントを解説します。
病歴やアレルギー、服薬の内容によって食べてはいけないものなどはケアプランから確認しましょう。ご利用者の好みなどの情報は、ご利用者や家族とのコミュニケーションの中で把握をするといいでしょう。
1.ご利用者の価値観を大切に
人はどなたでも自分の価値観を軸に生きています。例えばお味噌一つにしても、味噌のメーカーや種類が豊富にある中で、ご自身のお気に入りがあることもあります。
但し、要望が今の健康状態を害するものであれば、頭から否定をするのではなく代替になるものを提案しましょう。
2.四季を意識し、旬の食材を取り入れるといいでしょう
日本には四季があり、その季節で入手しやすい旬の食材もあります。
ご利用者が迷っているようなときは、食材から四季を感じて楽しんでもらえるように提案するといいでしょう。
3.ヘルパーの主観にならないように
買い出しのパートでも触れましたが、ヘルパーの主観にならないよう注意しましょう。
例えば、安いからと大量の食材を購入したり、暮らしに合わない大きなサイズのものを購入してしまうと、かえってたり、賞味期限が切れても使用していたり…といった危険が伴います。ご利用者の暮らしと習慣を念頭に選びましょう。
ヘルパーの独断で「これがあったら便利だから」「多分、これが食べたいだろう」「安かったから」などで食材を選ぶのは、ご利用者の自主性を無視することになり、介護の専門性に反します。ご利用者の意向を尊重しながらの支援を意識しましょう。
栄養バランスの整った食事を意識しましょう
食事を通して、身体や体調を整えるためにも、栄養バランスの考慮は必要不可欠です。ご利用者の体格や持病・健康状態、生活状況を考慮しながら、身体活動に応じた適切なエネルギー量を摂取できるように準備する必要があります。
■主な栄養素
たんぱく質・脂質・糖質・ミネラル・ビタミン・食物繊維などの栄養素をバランスよく摂取できるように魚介類・肉類・卵類・乳製品・穀類・いも類・砂糖及び甘味料・豆類・野菜類・果実類・きのこ類・海藻類などから、主食・主菜・副菜・汁物のような献立を考えましょう。
また、前日に何を食べたのかも念頭に、偏りがないようにしましょう。
■味付けの工夫
味には甘味・塩味・苦味・酸味・うま味の五味がありますが、加齢に伴って味覚にも変化が出てくるため、高齢者は味を感じにくくなります。
濃い味付けをすると塩分も糖分も摂り過ぎになるので、注意が必要です。
主菜を中心に味をつけることで、主食であるご飯が進んだりします。
このようなメリハリをつけた味付けにしてみるのも良いでしょう。
また、塩分を控えるために、ブラックペッパーやクミンなどのスパイスを使用するのもおすすめです。
まとめ/美味しい・楽しいと感じる瞬間の提供を
いかがだったでしょうか。
食事は生きがいにも繋がり人にとっては心身の健康のためには欠かせないものですね。
「美味しい、楽しい」と感じながら、ご利用者がその人らしく満足できる食事を提供できる助けになればうれしいです。
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