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療育施設をはじめとする発達支援の現場や保育・教育現場でも、グレーゾーンの子どもに接する機会は増えています。そんなとき、現場で働く職員はどのようなことに気をつければよいのでしょうか。発達障害の種類やグレーゾーンの子どもの特徴、適切な対応方法や支援機関など、子どもの発達支援に携わる人、携わりたい人が知っておきたい情報について解説します。
発達障害の種類
2.ADHD(注意欠如・多動性障害)
3.SLD(限局性学習障害)
※参照:厚生労働省 発達障害の特性(代表例)
■1.ASD(自閉症スペクトラム)
また、環境や予定の変化に対して強い抵抗を示すことがあり、特定の物事に強いこだわりを持つ傾向も見られます。これらの特性は人によって異なり、日常生活にさまざまな影響を与えることがあります。
■2.ADHD(注意欠如・多動性障害)
これらの特性は、本人の努力や意思とは関係なく現れるものであり、周囲の理解や環境の工夫によって、より安心して過ごすことができるようになります。
■3.SLD(限局性学習障害)
かつては「LD(学習障害)」と呼ばれていましたが、現在では「SLD(限局性学習障害)」が正式な名称として用いられています。こうした特性は、本人の努力不足によるものではなく、脳の情報処理の仕方に由来するものであり、適切な支援や理解によって、学びやすい環境を整えることが可能です。
発達障害のグレーゾーンとは?
診断がついていない場合でも、日常生活や保育園、学校などの場面で困りごとや課題が生じることは少なくありません。そのため、子どもの特性や状況に応じて、専門家による適切な支援や環境調整が求められます。早期の理解と対応が、子ども自身の安心や成長につながる大切な一歩となります。
発達障害のグレーゾーンの子どもに見られる特徴
なお、発達障害の特徴には個人差があり、発達障害の傾向があっても、必ずしもこれらの特徴すべてがあらわれるわけではありません。また、ASD、ADHDの両方の傾向があるというように、一人の子どもに複数の発達障害の特徴が見られるケースもあります。
※参照:厚生労働省 発達障害の特性(代表例)
※参照:発達障害ナビポータル 自閉スペクトラム症
※参照:発達障害ナビポータル 注意欠如多動症
※参照:発達障害ナビポータル 限局性学習症
■ASD(自閉スペクトラム症)の傾向がある場合
■乳幼児期(0歳~6歳まで)
・他人と視線を合わせようとしない
・同世代の友だちと遊ぼうとしない
・決まった道順や手順にこだわり、順序が変わるとパニックになる
・くるくる回るものをじっと見ていることが多い
ASD(自閉スペクトラム症)の傾向がある子どもは、未就学の乳幼児期から、言葉の発達がゆっくりであったり、人とのコミュニケーションが難しかったりする様子が見られることがあります。また、興味や関心が特定の物事に偏っていて、強いこだわりを示すこともあります。
ただし、乳幼児期の子どもには発達の個人差が大きく、発達障害ではなくても言葉の習得が遅い場合があります。そのため、言葉の遅れが見られたとしても、ASDかどうかを乳児期に判断するのは難しく、一般的には3歳以降に診断がつくケースが多いとされています。
■小学生(6歳~12歳)
・友だちとケンカになりやすい
・急な予定の変更があるとパニックになる
・気持ちの切り替えが苦手
・光や音などに過敏に反応する
ASD傾向がある子どもが小学生になると、クラスでなかなか友だちができなかったり、人が大勢集まる場所に行きたがらず集団の活動に参加できなかったりと、学校生活で悩みや課題を抱えがちです。
■ADHD(注意欠如・多動症)の傾向がある場合
■乳幼児期(0歳~6歳まで)
・何か気になることがあると、食事を中断して動き回る
・友だちと遊んでいるとき、オモチャを奪ってしまう
・かんしゃくを起こしやすい
ADHD(注意欠如・多動症)の傾向がある子どもには、乳幼児期のうちから、じっとしていることが難しく、常に体を動かしていたり、思いついたことをすぐに行動に移してしまったりする様子が見られることがあります。また、感情のコントロールが難しく、かんしゃくを起こすなど衝動的な反応が目立つこともあります。
ただし、こうした行動は、発達の途中にある幼い子どもにはよく見られるものであり、すぐにADHDと判断することは難しい場合があります。乳幼児期には、個々の発達のペースを見守りながら、必要に応じて専門家の意見を取り入れることが大切です。
■小学生(6歳~12歳)
・忘れ物が多い
・友だちとケンカになりやすい
・急な予定の変更があるとパニックになる
・気持ちの切り替えが苦手
・光や音などに過敏に反応する
小学校に入学すると、授業が始まり、宿題が出されるようになるなど、従うべきルールや集団での行動が求められる場面が増えていきます。その中で、ADHD(注意欠如・多動症)の特徴である注意力の欠如や衝動性が、乳幼児期よりもはっきりとあらわれるようになることがあります。
そのため、子どもが小学生になってから保護者がADHDの傾向に気づき、専門の医療機関を受診するケースも少なくありません。学校生活の中で見えてくる困りごとをきっかけに、適切な支援につながることが大切です。
■SLD(限局性学習症)の傾向がある場合
■乳幼児期(0歳~6歳まで)
多くの場合、周囲が子どもにSLDの傾向があることに気づくのは小学校入学以降です。
■小学生(6歳~12歳)
・絵本や児童書を読みたがらない
・「め」と「ぬ」、「わ」と「ね」などの形が似た文字の書き間違いが多い
・鏡文字を書いてしまうことが多い
・暗算ができない
・時計が読めず、時間が分からない
SLD(限局性学習症)の傾向がある子どもは、小学校に入学すると、読み書きや計算といった学習面で課題を抱えることが多くなります。SLDの中でも、文字を読むことに困難がある状態は「ディスレクシア(読字障害)」、文字を書くことに困難がある状態は「ディスグラフィア(書字表出障害)」、算数や計算に困難がある状態は「ディスカリキュリア(算数障害)」と呼ばれています。
ただし、SLDの表れ方やその程度は子どもによってさまざまであり、一人ひとりの特性に応じた理解と支援が求められます。
グレーゾーンの子どもへの接し方
発達支援の現場では、子ども一人ひとりの特性や個性に合わせた細やかな対応が求められますが、ここでは、グレーゾーンの子どもへの基本的な接し方のコツを解説します。
2.肯定的な表現でアドバイスする
3.具体的に伝える
4.よく観察し、特性に合わせて工夫する
5.目標を細かいステップに分けて取り組む
※参照:厚生労働省 発達障害の理解
■1.共感し、寄り添う
着替えや食事などを嫌がる場面では、まず「嫌なんだね」と子どもの気持ちを受け止めてあげましょう。そのうえで、なぜその行動が必要なのか、どんな目的があるのかを、穏やかでわかりやすい言葉で伝えるようにすると、子どもも安心して行動に移しやすくなります。
■2.肯定的な表現でアドバイスする
子どもに声をかけたり注意をしたりする場面では、できるだけ自信を失わせないように、肯定的な表現を心がけることが大切です。
たとえば、グループでの療育中に、ほかの子どもから道具を取り上げてしまった場合、「そんなことしちゃダメ!」と否定するのではなく、「次は〇〇の順番だから、〇〇に渡そうね」と伝えるようにしましょう。そして、渡すことができたら「ちゃんとできたね」と褒めてあげることで、子どもは安心感と達成感を得ることができます。
■3.具体的に伝える
たとえば、「もう少し待ってね」と言う代わりに「5分待ってね」と時間をはっきり示したり、「ちゃんと片付けて」と言う代わりに「ブロックをおもちゃ箱に入れてね」と、何をどうすればよいかを具体的に伝えるようにしましょう。こうした工夫によって、子どもが状況を理解しやすくなり、安心して行動に移すことができます。
■4.よく観察し、特性に合わせて工夫する
たとえば、目で見た情報を理解するのが得意な子には、口頭で伝えるよりも予定をリストにして視覚的に示すことで、スムーズに行動できることがあります。また、物をなくしやすい子には、あらかじめ物の置き場所を決めておくことで、探す手間や不安を減らすことができます。
■5.目標を細かいステップに分けて取り組む
たとえば「Tシャツを着る」という行動も、「Tシャツを手に取る」「前後を確認する」「頭に通す」「腕を通す」といったように、いくつかのステップに分けることができます。一つのステップができたらしっかり褒めて、習慣化したら次のステップへ進むといったように段階的に課題に取り組むことで、子どもは安心して成長していくことができます。
発達障害グレーゾーンの子どもを支援できる勤務先
■児童発達支援事業所・センター
■放課後等デイサービス事業所
■保育所等訪問支援事業所
【その他の相談・教育機関など】
■児童相談所
■発達障害者支援センター
■保育園・幼稚園
■小学校・中学校などの学校
■療育施設
発達障害の子どもはもちろん、診断を受けていないグレーゾーンの子どもでも、支援が必要であることを示す医師の意見書があれば、療育施設を利用することができます。
■児童発達支援事業所・センター
児童発達支援事業所で働く児童指導員や保育士の主な仕事内容は、トイレや着替えといった日常動作の指導、言葉の遅れが見られる子どもへの言語指導やトレーニングといった療育です。
児童発達支援センターも6歳以下の障害児を対象にした通所型施設ですが、より規模が大きく、地域の障害児支援の中心的な役割を担う施設とされています。児童発達支援事業所と同様に日常生活の指導や言語訓練などの療育のほか、子どもの発達に不安を感じる保護者からの相談への対応、地域の児童発達支援事業所で働く職員向けの研修なども行っています。
■放課後等デイサービス事業所
放課後や土曜日、夏休みや冬休みなどの長期休暇中に、児童指導員や保育士などの職員が、療育や生活支援を行います。保護者への子育てに関するアドバイスや情報共有などの保護者対応も業務の一環です。
■保育所等訪問支援事業所
児童指導員や保育士などの職員が、定期的に保育園や幼稚園、小学校などを訪問し、障害のある子どもが集団生活に適応できるように手助けします。あわせて、施設の教職員への指導やアドバイスも行います。
■その他の相談・教育機関など
■児童相談所
子ども本人はもちろん、家族、学校の先生、地域住民など、誰でも相談可能です。受け付けている相談内容は、保護者の病気や死亡などの理由で子どもが家庭で生活できない、虐待の疑いがあるといった相談のほか、発達の遅れや不登校など、多岐にわたります。
児童相談所では、利用者さんの相談内容に応じて児童福祉司や児童心理司、医師、保健師などの専門職が対応し、アドバイスや指導、トレーニングなどの援助を行います。事情があって家庭で生活できない子どもがいれば、施設に入所させる、里親に預けるといった方法で保護する場合もあります。
■発達障害者支援センター
発達支援は、療育や教育に関するアドバイス、発達検査の実施が中心です。センターによって職員に求められる要件は異なりますが、社会福祉士や精神保健福祉士、臨床心理士、言語聴覚士などが活躍しています。
■保育園・幼稚園
保育士や幼稚園の教員が保育や教育を行うなかで、子どもに発達障害の傾向があることに気づいた場合は、まず上司や園長に相談する必要があります。そのうえで、保護者に共有する、児童発達支援事業所・センターでの相談や療育につなげるといった対応をとることもあります。日常の保育や教育のなかでは、特性や個性を踏まえた対応や配慮をすることが大切です。
なお、保育園と幼稚園には、前者がこども家庭庁管轄の児童福祉施設であるのに対し、後者は文部科学省管轄の教育機関であるという違いがあります。2006年に認定こども園制度が始まってからは、保育と教育を一体的に行う認定こども園も増えています。認定こども園は、こども家庭庁が管轄しています。
■小学校・中学校などの学校
特別支援学級では、少人数で一人ひとりの特性に合わせた学習指導が行われます。通級では、通常学級に通いながら週1〜2回程度、個別の支援を受けることができます。これらの担任や指導教員には教員免許が必要ですが、特別な免許は不要です。ただし、専門性を高めるために特別支援学校教諭免許の取得や研修が推奨されています。
また、多くの公立校にはスクールカウンセラー(公認心理師・臨床心理士など)が配置されており、発達の悩みや不登校、いじめなどの相談に対応しています。スクールカウンセラーとして働くことも、子どもたちの支援に関わる重要な役割のひとつです。
まとめ:適切な支援でグレーゾーンの子どもの生きづらさを軽減できる可能性がある
療育(発達支援)や保育、教育の現場では、グレーゾーンの子どもに接する機会やその保護者から相談を受ける機会もあるでしょう。発達障害やグレーゾーンに関する基本的な知識を身につけたうえで、子どもや保護者の気持ちに寄り添って対応することが大切です。
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